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魔狩りのトガリ  作者: 吉四六
71/405

さあ、始めようか

 ウロボロスのハンガーハッチに飛び込み、バハムートを静かに下ろしてから、オロチを着艦させる。

 俺に続いて、テルナド、サクヤ、トドネのヴァルキューレが着艦する。

 酷い有様だった。

 テルナドのヴァルキューレは両手が使い物にならなくなってるし、サクヤのは、片腕と片足がダメになってる。トドネに至っては頭がない。

 ハンガーに降りて、俺は三機のヴァルキューレを見上げながら溜息を吐いた。

 オルラが降り立ち、「ちょっとやり過ぎたかね?」と、俺に聞いてくるが、俺は頭を振って「そんなことないよ。コイツらにはいい勉強になっただろうからな。」と、答える。

 その三人がションボリと降りて来る。

 三人が横目で見合わせ、一斉に、上目遣いで、覗き込むようにして俺の方を見る。

 俺は口角を上げて笑う。

「三人とも今日は落第だな。」

 俺の言葉に三人ともがガックリと項垂れる。

「いいか?竜騎士同士の戦いとなったら相手の霊子に呑み込まれちゃダメだ。」

 俺の言葉にトドネとサクヤが首を傾げる。

「どういうことなんしか?」

 サクヤが疑問をそのままに口にする。

「うん、竜騎士は霊子の力で動くし、霊子の強さでその能力が変わる。」

「そ、そのことはわかっているのです。でも、霊子に呑み込まれるという意味が解らないのです。」

 トドネが具体的な疑問に言い換える。

「つまり、お前らは婆様が相手ってだけで、最初から勝てないと思い込んでた。」

 俺の言葉に三人が俯く。

「その思考が霊子に乗って、霊子の指向性を弱めることに繋がったのさ。だから、婆様の霊子に同調させられて、つまり、婆様の霊子に呑み込まれて、簡単に斬られたんだよ。」

 そう、霊子の周波数を同調させない限り、斬られることはない。

「周波数を変えたつもりはないんし。大体、そんな器用なことできんし…」

 サクヤが口を窄めて呟く。

「周波数を変えさせられたんだよ。婆様の呼吸や動きに合わせられて自然と霊子の周波数を変えさせられたのさ。」

 俺の言葉に三人が驚く。

「そ、そんなことができるの?」

「そんなのズルいんし!」

「そんなこと、学校では習っていないのです!」

 俺は大きく笑う。

「できるさ。婆様ならな、ただ、俺にはできないけど。」

 俺は自分の周波数を想ったとおりに変えることができるので、オルラのような技は身に着けていない。また、身に着けられるとも思ってはいない。

「でもサクヤ。」

 サクヤが顔を上げる。

「お前には周波数を変えることはできるはずだぞ。」

「えっ?」

「だって、お前達は母さんのお腹にいる時に霊子回路を作ったろう?」

「そ、そのことはわかってるんし。」

「その時に霊子の周波数を変換するコンバーターも作ってるんだから、お前はオルラ婆様の周波数を検知特定して、周波数を変えられるんだ。」

「そ、そんなこと!」

 サクヤが驚きのままに顔を固まらせる。

「まあ、自然とできるようになるかと思って教えてなかったけど、今後は意識することだな。」

 俺は呆気に取られている三人を見回す。

「で、サクヤ、トドネ。」

 俺の呼び掛けに二人が開いていた口を閉じる。

「なんしか?」

「はい!なんですか?!」

「魔獣の話、してきてくれた?」

 俺は二人に魔獣のことを話してくれるようにと頼んだ。皇帝に魔獣に対する知識を植え込むためだ。

 皇帝は殺戮戦争以前に生まれた可能性があるから、魔獣のことは、当然、知っているだろう。しかし、この世界において魔獣が、どのように使用されてきたのか、把握しているかは不明だ。

 Bナンバーズと呼ばれる魔獣は人口調節のために何森源也が使用していた兵器だ。イデアが管理し、人口が増え過ぎたと判断した場合、人口密度の高い場所に粒子化光速移動で送り込まれ、魔獣が規定数の人間を喰うと元の場所に戻されていた。

 現在、ハルディレン王国で発生した魔獣災害によって、魔獣はその管理から離れ、好きなようにこの世界で暮らしている。それでも、人々は魔獣とは、突然、現れる予測不可能の災害だと思い込んでいる。そのことを皇帝に認識してもらう必要があったのだ。

 だから、俺はサクヤとトドネに頼んで、魔獣とは、突然、現れ、突然、消えるモノだと皇帝に刷り込ませたかったのだ。

「してきたんし。」

「ちゃんと話してきたのです!」

 俺は二人の答えに頷く。

「皇帝はなんて言ってた?」

 サクヤとトドネが首を捻って中空の一点を見詰める。

「イデアの仕業か…とか、言ってたんし。」

「何森め…とも言ってたのです。」

 よし、皇帝の中でイデアと魔獣が繋がったな。

「ご苦労さん。二人が頑張ってくれたお蔭で奴隷解放作戦を実行できるよ。」

 俺の言葉に二人が満面の笑みを浮かべる。

「ま、ざっとこんなもんし。」

 直後にサクヤが澄まし顔で顎を上げる。

「役に立てて良かったのです!」

 トドネは俺に抱き付いて来る。

「ドネちん!なにしてるんしか!」

「私に対するご褒美なのです!」

「ご、ご褒美は人からもらうものなんし!」

「良いのです!自分に自分でご褒美を上げるのです!」

「そ、そんな自分勝手なご褒美なんてないんし!」

「今ここにあるのです!」

 揉める二人を俺は引き剥がす。

「わかったよ、ご褒美なら作戦の後で上げるから。」

 二人が動きを止めて同時に大きく笑う。

「さあ、そろそろ、他のクルーが婆様の出迎えに集まってくるからな、俺がヘイカ・デシターってことを忘れるんじゃないぞ。」

 テルナド、サクヤ、トドネの三人が表情を引き締め、三者三様の返事をする。

「じゃあ義母さん、そっちはそっちで適当にしといてくれ、俺はこのキトラと打ち合わせをするから。」

 俺はオルラに振り返って声を掛ける。

「ああ、わかったよ。これでも一応、王太后だからね、それなりの対応はしとくよ。」

 オルラが俺達から離れ、サクヤを先頭にトドネ、テルナドの三人が俺の足元に視線を落とす。

「気になってたんし。キバナリなんし。」

「そうね、どうしてキバナリが此処にいるの?」

「虎柄の可愛いキバナリなのです。」

 キトラさんが三人に向かって恭しく頭を下げる。

 前足を畳んでお尻を上げて、尻尾をピンと立てている。長い犬歯の先端を床に着けて耳を後ろに倒しながら「お初にお目にかかります、この度、国王陛下の新たな使役魔獣となりましたキトラと申します。何卒、よろしくお願い申し上げます。」と、中々、しっかりとした挨拶をする。

「そうなんしか。よろしくなんし。」

 サクヤがキトラさんの頭を撫でる。キトラさんも喉を鳴らしてご満悦だ。

「でも駄目よ、ここじゃ、国王陛下じゃなくってヘイカ・デシターっていう、ただの魔狩りなんだから、皆にバレないように気を付けてね。」

 サクヤに変わってテルナドがキトラさんの頭を撫でる。

「はい、気を付けます、ご忠告ありがとうございます。」

 トドネが横からキトラさんをいきなり抱き上げる。

「可愛いのです!あたしもキトラちゃんのようなキバナリが欲しいのです!」

 トドネがキトラさんに頬擦りしながら抱締める。

「トドネ様に抱締めて頂けるとは身に余る光栄でございます。」

 俺の後ろでカルザンが微妙な顔付になってる。

 そりゃそうだ、この猫被りっぷりというか、急変ぶりはどうよ?

「キトラさん、それじゃ、ちょっとばかし元の大きさに戻ってくれるかな?」

 キトラさんがトドネの腕からスルリと抜け出し、音も立てずに着地する。

「承知しました。しかしながら陛下。」

「うん?」

「私のことは呼び捨てにして下さっても大丈夫なのですよ?」

 何が大丈夫なの?その言葉の裏には、俺以外の人から呼び捨てにされたら切れますよ?ってことしか読み取れないんだが?大体、キトラさんは俺のちょっと苦手なタイプだ。

『なのに使役魔獣にしたのか?』

 だって、キトラさんのこと、よく知らない内に使役魔獣にしちゃったから。

『いい加減、その行き当たりばったりな考えなしはなんとかならんのか?』

 ならねえよ。

「いや、キトラさんはキトラさんで。」

「そんな、呼び捨てにしていただいた方が使役魔獣っぽくてよろしいではないですか。」

「うん、キトラさんは、十分、使役魔獣っぽいから大丈夫です。」

「そうですか?」

「そうなんです。」

 このキトラさん、なんか、ブルジョアなオバはんみたいなんだよなぁ、そのオバはんが、無茶苦茶な理屈を理路整然と言いながら怒りそうでよぅ。なんか、苦手なんだよなぁ。

 キトラさんが若干シュンとするが、ちょっと距離を取っておきたいところだ。ま、撫でることに関しては、俺的にはウェルカムなのだが。

「では、少し離れてください。大きくなりますので。」

 キトラさんの言葉に従い、俺達はキトラさんから離れる。

 キトラさんが周囲の幽子と構成元素を摂り込み、一気に巨大化する。

 全長五メートルの虎型キバナリだ。

「じゃあ、キトラさん、ちょっと尻尾の部分を貰うね。」

「どうぞ。」

 わざわざ、尻尾を巻いて、俺の前に尻尾を差し出してくれる。こういうところは素直でイイ子なんだよな。

 丁度二十センチぐらいの所でキトラさんの尻尾を分解して切り離す。

「じゃあ、小さくなってもらっても構わないから。」

「承知しました。」

 頭を下げながらキトラさんが小さくなる。小さくなると尻尾の長さも元通りだ。

 通常の大きさだったキトラさんの尻尾は太い、太いので、二十センチぐらいの長さでも普通の猫と変わらない重さを有している。

 俺の腕の中で、その尻尾が徐々に変容し、キトラさんと同じ虎柄の猫になる。

「ニャウ。」

 キトラさんセカンドの誕生だ。

「こんにちは。」

「オウ。」

 あれ?

 俺はキトラさんの顔を見る。キトラさんが「なんですか?」と聞いてくる。

「いや、この子は雌?雄?」

 俺はキトラさんセカンドを抱え直しながらキトラさんに聞いてみる。

「雌ですよ?私の分裂体ですから。」

「ですよねぇ。」

「テメエ、失礼じゃねぇか。俺を雄と勘違いするなんてよぅ。」

 話し方が雄なんですけど?

「ああ、ゴメン、いや、なんか話し方があまりに本体と違い過ぎるんで、遂、雄かと思って。」

「なんだぁ?テメエ、俺の話し方が気に入らねぇってのか?ああ?俺の話し方に何か問題でもあんのかよ?テメエに迷惑かけてねぇだろうが?」

 ああ、面倒臭いタイプだわ。

「いや、別に迷惑はかけてないから別にイイよ。それより、普通のキバナリサイズになってくれる?」

「なんだ?普通のキバナリサイズってのは?俺はこのサイズで生まれてきたんだ、このサイズが普通のサイズなんだよ。」

 うん、面倒臭い。

「だから、大体、五メートルぐらいの大きさになってくれよ。」

「ケッ、だったら最初っからそう言えよ。時間の無駄じゃねぇか。」

「ああ、そうだね、ゴメンよ。」

 キトラさんセカンドが俺の腕から跳び下り、すぐに五メートルサイズのキバナリになる。

「じゃあ、今から君にはジェルメノム帝国の帝城でちょっと暴れてもらうから、この通信機を付けてもらえるかな?」

 俺はキトラさんセカンドの耳の穴に合わせた通信機を再構築する。

「はあ?ちょっと暴れてこいだぁ?なんで俺がそんなことしなきゃいけねえんだよ?」

 うん、段々ムカついてきた。

「いや、そのために分裂体を作ってもらったんだから、その本来の目的を果たしてもらうためにね…」

「お断りだ!」

 うん、ブチっとな。

「ゲブッ!!」

 音を立ててキトラさんセカンドの頭がハンガーの床に叩きつけられる。

 うん。俺です。イラっときて、思わず殴ってた。

「一々、説明すんのが面倒なんで、素直に言うこと聞いてくれる?」

 床に伏してるキトラさんセカンドに俺は笑顔でお願いする。

「は、はい…」

 うん、素直になってくれた。

「それと…」

「はい…」

「話し方は女の子らしくしよっか?可愛らしくね?でないと、俺、イラっとくるから。」

「…はい…す、すいませんでした…」

 俺は笑顔で頷く。鞭の後は飴がいるからね。

 俺が頭を撫でようと、右手を動かすと、キトラさんセカンドがビクリと体を震わせる。

「大丈夫だよ。俺の言うことを聞いてくれるなら殴ったりしないよ?」

「は、はい…」

 うん、キトラさんセカンドの声が若干震えてる。まあ、性格が最悪そうだったので、罪悪感なく仕事をさせられる。

「殴って言うこと聞かせるなんて、ダメな飼い主代表みたい…」

「ホントなんし…」

「ま、まあ、相手はキバナリさんですから…」

 あれ?急に耳の調子が悪くなったぞ?テルナド達の声が聞き取り辛い。

 俺は立ち上がる。

「さあ、それじゃあ仕事だ。」

 俺はキトラさんセカンドの耳に通信機を押し込み、首を振って、立てと指示する。

「いいか。これから、帝城の一角、奴隷が捕らえられている部屋にお前を瞬間移動で送り込む、そこで、人を殺さないように建物を壊しまくって暴れるんだ。」

「はい。」

 キトラさんセカンドが立ち上がって神妙な面持ちで頷く。

「お前に対抗するためにカンデ族の男と小さな女の子の魔法使いが現れる。カンデ族の男の方は俺の分体だ。」

「はい。」

「お前は、捕まってる奴隷を片っ端から喰う振りをしろ。」

「は?」

「ああ?」

「い、いえ、なんでもないです。」

「とにかく、奴隷達を丸呑みにしろ、絶対、噛むんじゃないぞ。」

「は、はい。」

「よし。じゃあ、俺は先行してジェルメノム帝国に向かう。お前はイデアが瞬間移動させるからな、それまで此処で大人しくしてろ。」

 キトラさんセカンドが頷く。

「わかりました。」

 俺は振り返ってカルザンに目を止める。

「カルザン、ドルアジのオッサンは?」

 カルザンがオルラの方に視線を向ける。

 オルラは乗組員の盛大な歓待を受けていた。全員が跪き、オルラに恭しく頭を垂れている。その中にドルアジもいる。

 俺はオルラの前に行って、跪く。

 オルラが眉を顰めるが、しょうがない、今の俺は一介の魔狩りであって、オルラは王太后様だ。

「ジェルメノム帝国への偽装のためとは言え、王太后様にはご無礼を働きましたこと、お許しください。」

 オルラが俺の言葉に鷹揚に頷く。

「うむ、致し方なきこと、妾が無理を言って我儘を押し通したのだから気にするでない。」

 オルラの言葉に、俺は一段と深く頭を垂れる。

「ご無礼を承知で私めの差配をお聞きいただければ、幸いでございます。」

「うむ、申せ。」

 うん、やっぱり、オルラは堂に入ってるわ。

「差し迫った状態となっておりますれば、王太后様には別室にてお体をお休めいただき、私めは、トガリ国王陛下より賜っております奴隷救出作戦を実行いたしたいと考えております。」

 オルラがちょっと考える。

 おい、おい、ちょっと考えるって、おい、作戦に加わるなんて言うんじゃないだろうな?

「差し当たっての段取りと致しましては、私めが、ジェルメノム帝国帝城に潜入、お連れ頂いたキバナリを使って帝城内にて混乱を起こします。その隙に奴隷を保護することとなっております。」

 オルラの眉尻が残念そうに下がる。

 まったく、やっぱり参加するつもりだったな。

「その作戦、妾も加わることはできぬか?」

 諦めねぇな。

「できませぬ。この作戦のために下準備を施してございますれば、急な変更は不安要素となりまする。」

 オルラが肩を落とす。

「お主がその作戦を立案したのだな?」

「はい、左様でございます。」

「では、結構、いい加減なのではないか?」

 グッサリくることをサラッと言ってくれる。

「いえ、下準備を致しておりますので、そのようなことはございません。」

「左様か?最初は計画を立てておっても、いつも、行き当たりばったりに事を進めておるではないか。」

 オルラ、初対面の人間のこと、知り過ぎイイイ!

「卒爾ながらオルラ王太后様はどなたかと勘違いしていらっしゃるようです、私めとオルラ王太后様は初対面でございます。その初対面の者のことを以前からご存知のようなお話しぶり、オルラ王太后様の身近などなたかと勘違いしてらっしゃるのではございませんか?」

 うん、大事なことだから二回言っといた。

 オルラが体裁を整えるために咳払いを二つ。

「左様であった、その方が幼き頃の国王陛下に瓜二つに思えたのでな、妾の勘違いであったわ。」

 もう、早々に部屋に引っ込んでてもらおう。

 俺は首だけを横に振ってカルザンを呼びつける。

 カルザンが走って来て、オルラの前に跪く。

「オルラ王太后様、この者を供に付けます。私のおらぬ時は、この者がこの船の指揮者となりますので、この者と行動を共にしていだたきとうございます。」

 オルラが溜息を吐きながら頷く。

「あいわかった。」

 俺は下を向いたまま、カルザンに「では、一旦、オルラ王太后様をお部屋にご案内しろ。」と命じる。

 カルザンが跪いたまま頷き「失礼いたします。」と言ってから立ち上がる。

「ではこちらへ。」

 カルザンが、オルラを恭しく先導する。

 オルラは大人しくカルザンの後を付いて行くが、物欲しそうな視線を此方にチラリと向ける、ガン無視の超絶スルーだ。

 オルラがハンガーから出て行って、全員が立ち上がる。

「はあ、まったく、やれやれだぜ。」

 全員が溜息を吐いている。

 王族がいるってだけで、結構、疲れるわぁ。

『それを言うなら、テルナドにサクヤとトドネ、三人もいるじゃないか。』

 ああ、そう言えばそうだわ。

 訂正、オルラがいるってだけで、結構疲れるわぁ。

『成程、それならわかる。』

 全員が肩をほぐしたりして緊張を解いている中、俺は全員に呼び掛ける。

「注目!!」

 全員が俺へと視線を向ける。

「いいか!これからジェルメノム帝国の奴隷救出保護作戦を実行する!」

 全員が緊張の色を見せる。

「トガナキノと開戦すれば奴隷達が大量に死ぬ!兵器にされてしまった奴隷達を救う手立てはないが!兵器にされる前の奴隷達を救うことはできる!」

 全員の頬が紅潮する。

「ジェルメノム帝国、帝城にゲートを設置する!そのゲートはウロボロスの第一救命艦に繋げるからな!ドルアジの指示に従って保護しろ!」

「了解!!」

 全員が声を揃えて大声で返事する。

 一斉に自分達の部署に戻ろうと走り出す。

 そんな中、俺はドルアジを呼びつける。

「オッサン」

 俺の呼び掛けにドルアジが俺の方へと歩き出す。

「どうしやした?」

 返事をしながら近付いて来るドルアジの言葉に俺は一つ頷いてから口を開く。

「これからジェルメノム帝国の奴隷を救命艦に瞬間移動させる。オッサンは移動させてきた奴隷の面倒を看てやってくれ。」

「でも、何の準備も、ってか、段取りもしてませんぜ?」

「物資は十分にあるだろう?」

「へい、物資は十分にありやす。」

「じゃあ、施療班に診察させて、飯食わせてから風呂に入れりゃいいだろ、だから動線の確保だけしっかりしとけ。」

「わ、わかりやした。」

 ドルアジが走り出す。ドタドタとした不器用な走り方だが、ドルアジも一生懸命だ。

 よし。

 開戦だ。

 トガナキノとジェルメノムの戦争じゃない。

 世界との開戦だ。

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