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魔狩りのトガリ  作者: 吉四六
62/405

段取り八分って言うじゃない?準備は大事だよ?

残酷な描写があります。

 少女を捕らえたパクデルが、三人の獣人を伴い帝城へと戻って来た。

 帝城の第二軍門にて、衛士がパクデルに問い掛ける。

「この少女は?」

 パクデルは、衛士を一睨みしてから、億劫そうに答える。

「侵入していた魔法使いですよ。情報部に連絡して、尋問の準備をするように伝えなさい。」

 衛士がパクデルに敬礼し、すぐに受話器を取り上げ、軍情報部に連絡する。

 パクデルが、魔法陣の上を通過し、魔法陣が赤く輝く。

 衛士が準備していた霊子を拡散させる魔道具をパクデルに渡す。

 パクデルが両手首にその魔道具を留める。

 魔道具に書かれた術式が赤く輝き、術式の起動を衛士に教える。

 三人の獣人が、魔法陣の上を通過しても反応はしない。

「この少女は、魔法使いでは?」

 獣人が、肩に担ぐ少女、その少女に対して、魔法陣が反応しなかったためだ。

「少女を魔法陣の上に下ろしなさい。」

 パクデルの命令に、獣人が、少女を魔法陣の上に直接下ろす。

 魔法陣が微かに緑色に輝く。

「少女には獣人拘束用のスーツを着せました。ほとんど魔法は機能しません。」

 衛士が「了解致しました。」と敬礼してから下がる。

 獣人が、少女を抱え上げ、再びパクデルに追従する。

「その少女は牢に放り込んでおきなさい。私は作戦司令部に報告に行きます。」

 獣人とパクデルが別れる。

 城とは思えない簡素な造りが続く廊下、その廊下を進んで、大きな観音開きのドアの前でパクデルは立ち止まる。

 静かにノックし、入室の許可を待つ。

 ドアを女性が開く。

「第一魔法師団師団長パクデル・カンデ、現在時帰城、報告案件二件、作戦提言一件のため、入室の許可を求める。」

 女性が恭しく頭を下げる。

「少々お待ちくださいませ。」

 ドアが閉じられるが、少しも待たずに、再び、ドアが開かれる。

「お待たせいたしました。どうぞ。」

 パクデルが入室し、女性が部屋のドアを閉じる。後ろからパクデルを回り込んで、奥のドアを開く。

「入れ。」

 男の声がそのドアの向こうから響く。

「入ります。」

 真直ぐの姿勢のまま、パクデルが入室し、執務机に座る男に対面する。

 パクデルが頭を下げ、脱帽時の敬礼をする。

「第一魔法師団師団長パクデル・カンデ、只今、戻りました。」

 姿勢よく座る男は、立派な口髭をたくわえた体格のいい男だ。

 その男が、パクデルの顔をチラリと見る。

「報告案件二件から聞こう。」

 重い声。

 一重瞼の目が、睨み付けるようにパクデルを射抜く。

「はっ一件目は、アンパク・カンデ大佐及びボクデク・カンデ大佐、両名の死亡です。」

 座る男の眉が撓り、眼光の鋭さが増す。

「原因を簡潔に述べよ。」

「侵入者確保作戦行動中、侵入者の魔法攻撃によって死亡しました。」

 男が背凭れに体を預ける。

「貴様らが、魔法を発動させた後、精霊の活動が止まったな?あの現象はなんだ?」

 パクデルが、少しばかり俯いてから答える。

「私も初めて目にする現象でしたのでなんと申し上げてよいのか…」

「うむ。」

 男が、重々しい空気を吐き出すように溜息を吐きながら口を開く。

「二人を殺害する程の手練れ、どうやって貴様は生き残ることができた?」

「はい、精霊の活動が停止しましたので、少女が、隠し持っていたナイフで二人を殺害、その後、私がナイフを確保、獣人によって捕縛させました。」

 男が沈痛な面持ちのままに、一旦、瞼を閉じ、開く。

「もう一件の報告案件は?」

「はい、その侵入者を確保、現在、捕虜留置場に投獄している旨のご報告であります。」

 椅子を回転させて男が横を向く。

「うむ、情報を引き出すことができなかったか?」

 この国では、侵入者は現場で殺すのが通常の対応である。

 魔法使いが、現場で侵入者を捕え、情報を引き出した後に殺すのだ。

 それを実行しなかったということは、情報を引き出すことができなかったことを意味する。

「はい。精霊が活動を停止しておりましたので、しかしながら、精霊の活動を停止させるほどの魔法力は、各段の物かと思い、何かと使い勝手があると判断したのも事実です。」

 男が頷く。

「で、あろうな。貴様らのトライデントアタックを防いで見せたのだからな…」

 男がパクデルに向き直る。

「弟二人を失った貴公の胸中、如何ほどの物か、察するに余りある。」

「はい、恐縮です。」

 男がシガレットケースから葉巻を取り出す。

「しかし貴公は、弟二人と力を合わせることで、その力を軍に認められてきた、よって、貴公は中佐に降格、魔法師団長の任を解く。」

「はい。」

 パクデルが背筋を伸ばして返事をする。

「以降は魔法師団、作戦本部付き将校として扱う、任にあっては通達を待て。」

「はい。」

 男がシガーカッターで葉巻の吸い口をカットする。

 葉巻を右手ではさみ、そのフット、先端部分に向けて左手をかざす。

「火の精霊有りて、パクジー・ケンブリッジの名の下、命じる。灯の焔、紅蓮となりて、標的燃さん。灰化炎(グレイファイア)。」

 電気が短絡するような破裂音、その破裂音がした一瞬で葉巻のフットが炭化する。男が炭化した葉巻の先端から左手を少し離し、再び呪言を詠唱する。

「火の精霊有りて、パクジー・ケンブリッジの名の下、命じる。灯の焔、燻る炎となりて、標的燃さん。赤熱炎(レドーブァイア)。」

 左掌の上に炎が灯る。

 距離を取って、葉巻の先端を炎の直上にかざし、ゆっくりと回す。

 男が葉巻を咥え、ゆっくりと息を吸い込んでから息を止める。

 男の頬が膨らんだまま、煙が口角から漏れ出してくる。男が上を向いて、煙が吐き出される。

「では、貴公の提案する作戦案件を聞こう。」

「はい。確保した捕虜の洗脳及び兵器化を提案いたします。」

 男がパクデルを睨む。

「出来るのか?」

 パクデルが真直ぐに視線を合わせる。

「やり遂げます。」

 男が、もう一度、葉巻を吸い込み、ゆっくりと煙を吐き出す。

「貴公の仇だ、殺すことなく兵器化することができるのか?」

 パクデルが右拳を胸に当てる。

「私の増幅器(ブースター)にしてみせます。」

 真摯な目。

 男が、パクデルの目を見詰める。

「よかろう。貴公が、その捕虜を兵器化することができれば魔法師団師団長への復職を検討しよう。」

「ありがとうございます!」

 男が頷き「帰って良し。」と、退室するように告げる。

 パクデルが頭を下げて、脱帽時の敬礼をし、キビキビとした動きで男の前からドアにまで下がる。

「失礼いたします。」

 パクデルの言葉に、男は片手を持ち上げ、それをもって返礼とした。


 捕えられた少女の下にパクデルが現れる。

 三人の獣人を従えている。

 鉄格子の向こうで、虚ろな瞳をパクデルに向ける少女は、床にペタリと座り込んでいた。

 情報部の人間が二人、既に到着しており、牢の錠前を開けようとしていた所だった。

「パクデル大佐。」

 情報部の人間が、パクデルに対して脱帽の敬礼をする。

 パクデルは返礼として軽く頭を下げる。

「この少女は私の増幅器とすることとなった、ケンブリッジ将軍のご許可も頂戴してある。」

 情報部の男が、パクデルの言葉に頷く。

「増幅器に仕立て上げる際に、同時に情報も引き出す、よって、この少女は私の預かりという形で処置する。」

 情報部の男が頷き「了解しました。」と、答える。

 パクデルが、獣人に顎で指示する。

 獣人が頷き、情報部の男から牢の鍵を受け取る。

「出せ。」

 獣人に命じて、その少女を牢から連れ出す。

「それでは、我々は引揚げますが、報告書の方は…」

 パクデルが情報部の男の言葉を遮る。

「承知している。引き出した情報は、情報部に全て渡す。」

 情報部の男が頷き「では、私たちはこれで引揚げます。」と、言って再び敬礼をしてから、この場から立ち去った。

 重い足取り、引き摺られるようにして少女が連れ出される。

「霊子拡散回路の設定が強すぎるか。」

 パクデルが一言呟き、少女の襟首を掴んで服を無理矢理引き下げる。

 大きく開いた襟首に、手を差し入れ、獣人拘束用スーツに取付けられた霊子拡散回路の設定を弱める。

 霊子拡散回路は、装着者の霊子を周囲の空間へと拡散させる。

 獣人を拘束する時に使用される服だ。

 この霊子拡散回路は魔法使いにも有効である。

 霊子を拡散されるため、物質構成の力場も弱めるため、その結果、装着者には倦怠感が、常に付きまとい、魔法を行使する霊子そのものが枯渇し、魔法を使用できなくなる。

 パクデルも、この獣人拘束用スーツを常に身に纏っている。身体各部位で分割脱着できるスーツだ。パクデルはこのスーツを逆の使用方法で装着している。

 パクデルはクルタスによって改造された人間である。

 霊子回路を後天的に植え付けられており、そのため、精霊回路に見られる強い自制心の発生がない。

 その代わりに、高い演算能力を有することができる。

 それに伴って、より多くの霊子を必要とすることとなった。

 足りない霊子を周囲の空間から収集するために獣人拘束用スーツを身に纏い、霊子拡散回路を逆転稼動させているのだ。

 高い演算能力を手に入れ、強力な魔法を使えるようになった代わりに、そのスーツを脱ぐことはできない。

 スーツを脱げば、霊子の枯渇が身体内で発生し、パクデルの体は粒子となって分解されるからだ。

 しかし城中において、凄まじい魔法力を持った者を、たとえ味方とは云え、野放しにすることはできない。

 そのため、霊子の拡散量を調節したブレスレット型霊子拡散回路を、パクデルは、身に付けさせられるのだ。

 少女の目に生気が戻る。

「ど、どこに…」

 それでも言葉を発することは億劫そうだった。

「兵器開発工場だ。」

 一拍遅れて、少女の顔が歪む。

「い、イヤだ…」

 拒絶の言葉は、パクデルには届かない。

 この国の兵器開発工場とは、対象者の人格の崩壊と精神体の消去がイコールとなる。

 薬と洗脳魔法によって、精神体だけを殺すのだ。

 そして、金剛か、戦闘機か、下手すればミサイルの弾頭に脳を埋め込まれる。

 少女は、そのことを知っている。

 抗うことが許されない力で、獣人が少女を引き摺る。

 パクデルが足を止める。

 獣人も足を止める。

 少女の瞳に希望の火が灯る。

 パクデルがゆっくりと振り返る。

 やはり、ゆっくりと屈んで、少女の顔に自分の顔を近付ける。

「チャンスをやろう。」

 無感情な瞳を少女に向けて、パクデルが、呟くように話す。

 少女はその言葉に縋りつくように頷く。

「一度だけ魔法が使えるようにしてやる。」

 少女の目が、驚きによって大きく見開かれる。

「兵器開発工場に入って、お前はクスリを打たれた後、システムに繋がれるな?」

 少女が力強く頷く。

「システムに繋がれた時、そのシステムを破壊しろ。」

 少女の瞳に、殺気にも似た色が浮かぶ。

「ただ破壊するだけじゃ駄目だ。」

 少女がぎこちなく頷く。

「軍部に、システムを破壊したことが知られれば、お前は殺される。」

 少女の瞳に、力強い、生きることへの執着心が見て取れる。

「システムが異常をきたしても、軍部には知られないようにする工作が必要だ。」

 少女が力強く頷き、拳を握り締める。

「システムを操作している人間達には俺が洗脳精霊を侵入させてやる。」

 少女の鼻息が荒くなっている。

「システムを破壊することができれば、継続的、限定的に魔法を使えるようにしてやるから、その人間達はお前が操作しろ。」

「わ、わかりました。必ず成功させます。」

 パクデルは、表情を変えずに腰を伸ばす。

 少女を見下ろすその目は、あくまでも冷徹だ。

「お前が失敗しても、俺が実行する。」

 いつでも少女を切り捨てることができる。

 そのことを暗に仄めかす。

「成功させます。」

 力強い言葉。

 パクデルが前を向き、再び歩き出す。

 獣人が歩き出す。

 少女は引き摺られていなかった。

 しっかりと自分自身の足で歩いていた。


 衛士がパクデルの姿を認め、重く分厚い鉄扉を開く。

 金属の擦れ合う音と共に、巨大な鉄扉が、その車輪を転がしながら開いていく。

 異様な臭いが漂い出す。

 フルメイルに身を包んだ衛士が、パクデルに敬礼し、入室を促す。

 こびり付いて、茶色く変色した血が、そこら中に見て取れる。

 冷たい鉄の床に鉄の壁、その金属の造作に無数の傷が刻まれている。

 五十の椅子が並び、その椅子全てに拘束具が取り付けられていた。

 椅子の向こう側にはベッドが並んでいた。

 異様なベッドだ。

 拘束具は無い。

 寝転がることができるような風呂桶に見える。

 白いゲルが満たされ、顔だけを出した状態で奴隷達が浸けられている。

 浸けられた奴隷達は、皆、虚ろな瞳をパイプだらけの天井へと向けていた。

 五十の椅子には、五十人の人が縛り付けられ、頭に電極の付いたヘッドギアを被せられている。

 椅子に座る人の表情は、虚ろで、口の端から泡を吹いている者もいる。

 白衣を着た軍医らしき者が数人、椅子の間を歩き回って、椅子に取付けられているハンドルを微妙に回して、何かを調節していた。

 壁には人が吊るされている。

 人でできた壁のように、壁には無数の人が吊るされていた。

 足には足錠がはめられているが、手錠ははめられていない。

 指錠がはめられ、その指錠から伸びた鎖で吊るされている。

 指錠をはめられている指は様々だ。

 親指を失った者は、人差し指にはめられ、人差し指を失った者は、中指にはめられている。

 繋がれた指が壊死し始めている者が何人もいた。

 少しづつ、人間の部位を削り取っていく作業だ。

 指がなくなれば、手首、手首がなくなれば、腕、そうやって人間の肉体を削り続け、脳だけを取り出す作業だと、パクデルは聞かされたことがある。

 実際はどのような作業なのか、見たことはない。

 見ようとも思わなかった。

 臭いが嫌いだからだ。

 一度、嗅いだら忘れることのできない強烈な悪臭。

 その臭いを嗅いで以来、ここでのことは聞くことも嫌いだった。

 しかし今、パクデルは、その場所にいるし、その作業工程も見ている。

 来なければならなかったからだ。

「あら?大佐がいらっしゃるとは、お珍しい。」

 部屋の中央、軍医たちに指示を飛ばす女性が、パクデルに気付く。

 人間の汗と老廃物、そして排泄物の()えた臭いの中、甘い麻薬の香りが漂っている。

 異常な空間。

 形容すべき言葉が、他に思い付かない。

 色を消失したような錯覚に陥る空間で、唯一、色を保ち続けている女が、パクデルに向かって笑う。

「しかも、お一人じゃないですか、いつも三人で行動されているのに、今日はどうしたんです?」

 特注の赤と黒の軍服、その上に白衣を纏った女が、獣人三人と少女を無視して、パクデルに笑い掛ける。

「二人は死にました。」

「え?」

 女が驚きの声を上げる。

「私は間もなく降格され、師団長の任を解かれます。」

「トライデント大佐がシングル大佐になったってことですか?」

 パクデルが忌々し気に女を睨む。

「あははははははっ!シングル大佐だって!まるで独身男みたいだ!まあ、独身なんでしょうけど!」

 鉄の部屋で、女の声が木霊する。

「大佐でもなくなります。そんなことよりジェニクシェン少尉。」

 女が口を閉じる。

「この少女を、私の増幅器に仕立て上げたいのです。」

 パクデルが、囚われの少女を指し示す。

 ジェニクシェンと呼ばれた女の気配が変わる。

 観察者としての目が大きく見開かれ、少女の顔に近付き、少女は、その目から逃れようと顔を背ける。

 女が少女の体臭を嗅ぐ。

カンデ(・・・)族、ですね?」

「そうです。」

「拘束具を着ているということは、魔法使いですか?」

「そうです。この少女にアンパクとボクデクの二人は殺されました。」

 女が、少女から顔を離し、背を伸ばす。

「それ程の魔法使いなのですか?」

 女の言葉にパクデルが頷く。

「わかりました。それでは、将軍のご許可は?」

「書面が必要ですか?」

 女が(かぶり)を振る。

「書類は後日で結構です。ただ、それ程の魔法使いを増幅器にするとなると、私の一存では、ちょっと…」

 女の言葉に、納得顔でパクデルが頷く。

「作戦案件として提案した所、ご許可を頂戴しております。今日の報告書と合わせて、作戦案件の一つとして将軍の決裁を頂戴するつもりですので心配する必要はありません。」

 女が、軽い調子で何度も頷く。

「わかりました。そういうことでしたら良いでしょう。まあ、お二人を失くされた訳だし、その代替えとしては申し分ないでしょうね。」

「その通りです。二人の代わりに、この少女には頑張ってもらいたいものですよ。」

 女が頷き、歩き始める。

「では、こちらへ。」

 女に続いて、パクデル、獣人と続き、少女が引き摺られるようにして歩く。

 更に、その後ろには、少女が逃げないようにと二人の獣人が追随していた。

 人が、吊るされていない壁には、ドアが並んでいた。

 やはり鉄扉であった。

 そのドアの一つに女が立ち、ドアを開ける。

 中には手術台があって、厳めしい機械が並んでいる。

「その子をココに。」

 女が、手術台に少女を載せるよう獣人に指示する。

 少女が、抵抗を試みるが、魔法を使えない少女の力では、獣人の力に抗することはできない。

 体を捩る少女を、獣人が手術台に寝かせ、拘束用のベルトを巻き付けていく。

 女が、鼻歌を歌い出す。

 鼻歌混じりに微笑む女が、ドリルのような開口器を少女の口に捻じ込み、開口器の尻に付いているつまみを回す。

 ドリル状の突起が、つまみの回転に合わせて開き、少女の口を開かせる。

「これで、舌を噛み切る心配はないわよ?」

 女が、艶然とした笑みを浮かべながら、少女に囁きかける。

 再び、鼻歌が部屋に流れる。

 並ぶ機械からコードを伸ばし、その先のクリップを少女の指先に取付けていく。

 手指、足指、その全てに取付ける。

 コードを伸ばした機械の電源を入れ、メーターのつまみを調節し、モニターに映し出される波形を眺める。

 女の鼻歌が止まる。

 訝し気な表情をパクデルに向ける。

 そして、再び、モニターに視線を移す。

「どうしましたか?」

 パクデルが近付き、女が、一歩、下がる。

「どうしたのです?汗がひどいですよ?」

 パクデルが、右手を差し出しながら女に近付くが、女は、パクデルが近付く分だけ後ろに下がる。

「その機械、もしかして、霊子の周波数を調べる機械ですか?」

 女の腰が手術台に当たる。

 女が手術台の少女へと視線を投げ掛ける。

 まるで、助けを求めるように。

 少女は、顔を真っ青にしたまま手術台の上でジッとしていた。

 さっきまでの抵抗が、嘘のように。

「そうなのですね?その機械は、霊子の周波数を調べる機械なのですね?」

 パクデルが、愛想の良い笑みを浮かべて近付く。

 そのパクデルの腕から、魔力を制御する腕輪がスルリと抜け落ちる。

 少女が恐れを含んだ目で見詰めるのは、女ではない、パクデルだ。

 重い音を立てて、魔力制御用の腕輪が床に落ちる。

 少女の視線を追うように、女がパクデルへと視線を転じる。

「困りましたね。魔法陣の時は拘束用スーツと獣人で誤魔化したのですが、まさか、増幅器(ブースター)化手術でバレるとは思いませんでした。」

 パクデルの笑みが、残忍なものに見える。

「結構苦労したんですよ?霊子量をコントロールしてたんですから。」

 女の視界を、パクデルの手が半分以上塞ぐ。

「や…」

 女は、最後まで言葉を発することは叶わなかった。

 パクデルの右手が、女の顔を覆った時、女はその姿勢のまま時間を止めた。

本日の投稿はここまでとさせて頂きます。お読みくださいまして誠にありがとうございました。

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