戦闘特化型魔法使い
残忍な描写があります。
『来たな。』
ああ、お出ましだ。
左目では、ハッキリと視認できないが、俺の右目はシッカリと捉えている。
男の霊子が揺れている。
『詠唱を既に終えている。来るぞ。』
先手を貰う。
分厚い空気の層を再構築させて、俺は男に向かって一直線に走り出す。
分厚く固めた空気の層が障壁となって、発生し続ける爆炎を押し退ける。
「焼き尽くせ!大焦熱地獄!!」
発動の呪言。
男の周りで銀色の煌きが発生する。
『金属粉!リチウムか!空気の層を厚くしろ!』
眼前まで白い爆発が迫る。
轟く炸裂音が建物を抉り、石畳を砕く。
倒れていた獣人が巻き込まれ、消し炭と化して吹き飛ぶ。
俺と男の障壁に挟まれ、白い火炎が柱となって起立する。
建物が五棟吹き飛んだ。
地面が、くり貫かれたようにクレーターを形成している。
地面の下にいた魔法使い六人も死んだ。
建物の上で気絶していたヤートも死んだ。
俺の後ろにいた獣人は、俺が障壁を広げたために生きているが、男の後ろにいた五人の獣人は死んでいる。
男にとっては味方も敵も一緒のようだ。
「あれ?生き残ってますね。おかしいな、結構、真剣に殺したつもりだったんですが。」
高い声。
俺の後ろで気配が動く。
「やっぱり一人じゃ無理だったんですよ。最初から僕と一緒に殺せばよかったんです。」
七三に分けた髪型は黒い。
スラリと伸びた長身に見合った色男、俺の前に立つ男と後ろに立つ男の外見は同じだ。
双子の魔法使い。
粒子化光速移動、瞬間移動のできる魔法使いが二人。
「あなたもアジアン系のようですが、族名は?」
後ろの男が、この場に似つかわしくない質問をしてくる。
「ヤートだよ。」
二人の顔が同時に驚く。
「ヤートに魔法使いがいるとは驚きですね。」
前の男が、ワザとらしく目を丸くさせる。
「まったくです。でも残念、カンデ族なら、もっとできる魔法使いになれたのに。」
後ろの男が溜息交じりに頭を振る。
「本当です。優雅に才能あふれるカンデ族なら、僕たちのように、できる魔法使いになれるのに。」
前の男が顎先を上げる。
「でも、ヤートという時点で駄目ですね。人間でもない。穢れた生き物は消去しなくては。」
後ろの男が口角を上げる。
俺は両者の姿を捉えられるように横向きに立つ。
「拝見する限り、君の魔法は肉体強化が主のようですから、逃げるなら今の内です。」
俺の右側、後から出てきた男が宣う。
「でも、逃がしませんけどね。」
粉体爆発を起こした男が宣う。
俺は、口角を捻じ上げ笑う。
「気に入りませんね、その笑い方。」
「まったくです。今すぐ殺してあげましょう。」
俺は、二人の言葉に俯きながら笑う。
「最後に聞いてあげましょう。何が可笑しいのです?」
「最後に聞いてあげましょう。気が狂ったのですか?」
俺は残忍な笑みを見せていたと思う。
「久しぶりだよ。」
二人の顔が、訝しむように眉根を寄せる。
「殺しても呵責のない相手ってのは。」
二人の眉間に皺が刻まれ、同時に右手を俺に差し向ける。
「時止めの精霊に我が名を持って命じる…」
「劫火の精霊、ゲヘナの地より来たれり…」
二人が同時に高速詠唱を始める。
待ってやる。
完全なる敗北を貴様らに贈ってやる。
俺が殺さないように手加減したヤートと獣人を、貴様らは殺した。
無関係の民間人たちを蹂躙した。
俺はヘルザースと約束した。
人を殺さないと。
だから、お前達も殺さない。
殺してくれと叫んでも殺してはやらない。
豪風が起こる。
俺を足止めにするために三人目の魔法使いが詠唱し終わったのだ。
わかっていた。
三人目がいることは。
粉体爆発を起こした男は、呪言を詠唱しながら粒子化光速移動して来た。
粉体爆発の詠唱と同時にできることじゃない。
粉体爆発の威力に比べて、その範囲規模は小さかった。
粉体爆発を起こす男、粒子化光速移動させる男、そして、爆発規模を限定させるために結界を張っていた者がいたことになる。
つまり三人。
俺の前に現れた二人の他に、もう一人いることになる。
二人が、俺にグダグダと喋り掛けていたのはこの魔法を待っていたからだ。
三人目が、唱えていた、俺の足を止めるための魔法。
俺にバレていないと思っていたのか。
風が巻き、俺に向かって、風が奔る。
小さな俺の体がフワリと浮き上がり、俺の体を疑似無重力で縛り上げる。
『酸素と水素が収集されてる。』
爆発規模を広げるつもりか?
『威力を上げるつもりだ。』
後から現れた男の詠唱が終わる。
「…氷結せよ!鉢特摩地獄!!」
分子運動が停滞し、一瞬で酸素と水素が氷結する。
俺は、分厚い空気の障壁を盾に、その全てを押し退ける。
俺の周囲一メートルで氷の世界が創り出される。
リチウムを使って粉体爆発を起こした男の詠唱が終わる。
「…焼き尽くせ!大焦熱地獄!!」
銀色の粉体が氷結の世界を舞う。
炎が灯ると同時に世界が白く燃え上がる。
リチウムの爆発は強力だ。
自己燃焼物質であり、水と反応を起こすため、消火するには大量の水が必要になる。
冷えた空気が、突然の熱膨張で、その破壊力を倍加させる。
凍った水素と酸素が分解されて、二次的に水素爆発を引き起こす。
コイツら、この一帯を吹き飛ばすつもりか?
これ以上、死人を増やすんじゃねぇよ。
俺の量子情報体が黄金の輝きを放つ。
辺りを金色の光が覆い尽くし、人も建物も飲み尽くす。
一瞬で爆発を収縮させてやる。
「なに?!」
「な、なんですか!これは?!」
俺を中心に襲った、ギガトン級の爆発。
広げた俺の霊子体が、一瞬で爆発を包み込み、爆発のエネルギーに対して俺の指向性を持った霊子が、その爆発規模を抑え込む。
プラズマ放電は核融合炉の反応さえも抑え込む。
俺が、生み出した炭素の塊に、霊子を注ぎ込んで質量を圧縮し、拡散しようとするエネルギーをその炭素へと向かわせる。
俺の霊子体で包み込んだ爆発が、その炭素へと爆縮するように指向性を与える。
拡散する筈の爆発が、一瞬で俺の手の内に納まり、俺は、指先から発したプラズマ放電によってその爆発を圧縮閉塞させた。
今、俺の掌の上には、プラズマ放電によって包み込まれたギガトン級の爆発がある。
本来なら半径三百メートルを巻き込む爆発だ。
それを小指の先サイズにまで圧縮したことで、反応が続いている。
核融合炉と化した可能性もあるな。
霊子金属で、小さな容器を生成し、ドラゴニウムでその容器の外殻を作る。
霊子金属が周囲の幽子を摂り込み、拡散しようとするエネルギーに対し、循環、回転するように質量方向を変換させる命令を書き込む。
その容器に、俺は、出来上がった爆発のプラズマ球を放り込む。
音を立てて蓋を閉める。
ポケットにしまってから、二人を交互に見る。
「で?」
黄金の輝きの中で、俺は、二人に対峙する。
俺の言葉に二人は反応できていない。
「三人目は出て来ないつもりかな?」
俺の言葉に、三人目は粒子化光速移動を試みるが、俺がその粒子を捕まえる。
俺は、目の前にその三人目を引き摺り出す。
「え?」
俺の目の前に現れた男は、驚きの顔で俺と対面する。
三つ子だ。
三人とも同じ顔、同じ体付きをしている。
その三人目の足を刈る。
無様に、男が、俺の目の前で転がる。
右足を男の胸に乗せ、霊子体を同調、動きを封じる。
男の頬を切って、血をすくい取り、男の髪の毛を抜いて、俺は男の遺伝子を解析する。
「き、貴様!兄さんを離せ!!」
最初に現れた男が、呪言詠唱を開始する。
どうぞ、ご勝手に、だ。
「三人とも同じ遺伝子だろ?ま、適当でいいか。」
男の呪言詠唱が止まる。
「精霊が反応してない…」
俺の量子情報体を活性化させている。
六十四万人の量子情報体が高速で稼働しているのだ。
周囲の幽子を喰らい尽くす。
これで、この一帯のマイクロマシンが活動を停止する。
俺の霊子を送られていないマイクロマシンは稼働することができない。
離れた所で、この闘いを監視していたとしても、もう、見ることも聞くことも敵わない。
獣人は、量子情報体から隔絶させている。
「分解。」
俺の言葉と共に三人の男が分解される。
レジストしようとしても無理だ。
俺の演算能力の方が遥かに上回っている。
「再構築。」
三つ子が再構築される。
三人の体が一つになって。
「な、なんだ!これは!!」
三つ子が互いに顔を見合わせる。
「面白いだろ?」
三つ子が俺の顔を見る。
「頭が三つ、体は一つ、三人仲良さそうだったからな。一つにしてやった。」
三つ子の顔が驚愕に歪む。
「頭が肩の上に三つてのは、重くて肩が凝ると思ったんでね。腕の先に頭を付けといてやったよ。」
両腕の先、本来は、手のある部位に頭がある。
腕を持ち上げて、三つ子が顔を見合わせている状態なのだ。
「まあ、食道と気管、それに太い血管を腕の中に仕込まなきゃならなかったからな、ちょっと腕が太くなったのは勘弁してくれ。」
「き、貴様!!」
男が激高して立ち上がろうとする。
よろけて転ぶ。
「三人分の脳を生かしとかなきゃいけなかったんでな、一つの心臓だと三人分の脳味噌に血液を十分に送れないんだ。で、悪いが、足は削らせて貰った。」
足から血液を戻す作業は、心臓にとっては重労働だ。
足の長さを三分の一に仕上げた。
三、三、三と数も揃ってる。
「それと、気付いてるかもしれないが、お前達の脳味噌、役割分担を分けといたからな。良いチームワークだったから、その方がやりやすいだろ?」
男達は、もう、言葉を発することもできなくなっていた。
「言語野は真中の男のしか機能してない、聴覚と視覚は三人それぞれに持たせてる。右腕の支配権は、左腕の頭に持たせた。左腕の支配権は、その逆な。」
左腕と右腕が振り回される。
真ん中の男が慌てて喋りだす。
「や、やめなさい!無理に動こうとしてはいけません!!」
真ん中の男が喋ると、両腕の男達も同時に喋る。
「右足の支配権は真中の頭、左足の支配権は共有だ。お前達の霊子回路は左腕に纏めてあるから、上手く使えば魔法も使えるだろ。」
嘘だ。
希望を持たせないと自殺する可能性があるからな。
コイツらの霊子回路は、脳から完全に分離した形で、神経を繋がずに再構築してやったから、マイクロマシンに命令を走らせることはできない。
三人分の霊子体が一つに纏まったのだから、霊子回路をレベルダウンさせたり、取り除いたりすると、肉体が崩壊する。だから、使えない状態で戻してやった。
「それと、排尿と排便には気を付けろ。」
三つ子が俺の方へと顔を向ける。
「三人分の重要器官を一つに纏めたからな、色々と省かなきゃならない部分もあった。」
三つ子が口を開けて、ポカンとした顔になる。
「排尿と排便に関しては、感じることができないようになってる。だから、オムツを穿くように推奨するよ。」
三つ子の顔が情けなく歪む。
「それと、小便と、ケツを拭くことはできるようにしといた方がイイと思ってな。股間に手を付けといてやったから。」
三つ子の顔が自分の股間に向けられる。異様に膨らんだ股間がモゾモゾと蠢く。
「じゃあ、達者でな。」
俺は三つ子に背中を向け、生き残った獣人たちに向き直る。
獣人たちは、呆気に取られて、こちらを見詰めていた。
「ま、待ってくれ!!」
三つ子が縋るような声を上げる。
俺は顔だけを男達に向ける。
「た、助けてくれ!!」
俺は溜息を吐く。
「どこまでも自己中だな。」
三つ子が、困惑の表情を浮かべる。
「まずは謝罪だろ?それから助けてくれって話だろ?」
三つ子が同時に頷く。
「そ、そうだ。すまなかった。許してくれ。」
「ダメだね。許さないよ。」
男たちが絶望の顔になる。
俺は獣人の方へと向き直る。
「あの獣人たちはお前らの配下か?」
「そ、そうだ。なんなら、アイツらを好きにしてくれても良い。な?だから、助けてくれ、元通りにしてくれ。」
俺は、冷めた目付きを意識して作り、三つ子を見下ろす。
その目を見て三つ子が固まる。
「あいつらを呼んで。」
三つ子が同時に頷き、大声を上げて獣人たちを呼び寄せるが、好戦的な獣人たちでさえ、躊躇して動こうとしない。
「き、貴様ら!早くこっちに来い!!軍法会議にかけるぞ!!」
三人の獣人が、ノロノロと歩き出す。
「なあ、どうだ?あいつ等をどうにかしようと思ってるんだろ?な?頼むよ。あいつ等ならどんな風に扱ったってイイ、な?俺を元通りにしてくれ。」
獣人たちには聞こえないように、小声でヒデェこと言いやがるな。
「そうだな、お前らの内、一人だけなら助けてやっても良いな。」
途端に三つ子の顔が醜く歪む。
「誰が助かるか、三人で決めろよ。」
「な、なら、俺だ!俺を助けっデブッ!!」
誰がデブだ。幼気な少女に向かって、失礼な。
「い、痛いじゃないかっ!なにをっギブッ!!」
三つ子の殴り合いが始まった。
右腕の顔の奴は左腕の操作しかできない。だから、左腕の顔を使って真中の奴を殴る。左腕の奴はその逆だ。だから、真中の奴だけが割を食う。左右の連打に晒されるからな。
真中の奴は、唯一、自分が自由に扱える右足をバタつかせているが、足を短くしてやったから、両腕の顔には届かない。
言語野が機能しているのは真中の奴だけだから、三人が同じことを言う。つまり、決められないってことだ。
獣人たちの足が止まる。
自分の上官が、訳のわかんないことになってるからな。ちょっとビビるだろ。
俺は獣人たちに向かって手招きする。
「いいから、こっちに来いよ。来ねぇと真名で命令するぞ。」
三人の獣人たちが顔を見合わせ、再び歩き出す。
さっきまで闘っていた相手に呼びつけられて戸惑わない訳がない。
その歩みは遅い。
自分達の上官が命令をしているのだから、来ない訳にはいかない。しかしその傍には、標的にしていた相手がいる。
上官は敗北しているが、生きて、命令を下している。
どう対処して良いのか判断できないまま、三人の獣人が俺の前に並ぶ。
俺は、敢えて獣人たちに話し掛けずに周りを見回す。
惨憺たる有様だ。
建物が倒壊し、中に残っている住人達は絶望的な状態だ。生き残って避難した住人達は建物の反対側に逃げて、この一帯は静まり返っている。
今も、俺の周囲には獣人五人と殴り合っている三つ子しか生体反応が感知できない。
あとは、死体だけだ。
事が起こって直ぐに、逃げている住人たちは、多数いる。
避難することにかけては、慣れているようだ。
まるで、ゴーストタウンで戦っていたように錯覚する。
俺が戦っている最中も、誰一人、窓から顔を出さずに逃げることに専念していた。
行動としては間違っていない。間違っていないが、どういう国なんだ。
迅速な避難行動ができるということは、それだけ頻繁に今回のようなことが起こっているということだ。
獣人三人に向き直る。
「この騒ぎに、警察、消防、いずれも来ないな?この国ではこれが当たり前なのか?」
三人の獣人が顔を見合わせ、答えてよいのか、また、誰が答えてよいのかと、戸惑いを見せる。
目の前の獣人を指差す。
「オイ、お前、お前が代表で答えろ。」
「は、はい、そうです…こ、この国では警察と消防の仕事も軍が兼ねているので、我々が此処にいることを知っている軍は出動させません。」
俺は、後ろで殴り合っている三つ子にチラリと視線を向ける。
「コイツの力に絶大な信頼があってのことなんだろうな?」
俺の呟きにも似た質問を獣人が拾う。
「は、はい。大佐が出動して負けることなど想定されておりません。」
だから増援はなし、コイツらが出動した時点で、監視体制もガバガバか。
俺は、質問に答えている獣人の顔を見る。
「シガルイ・テンガ。」
獣人の顔が驚きの表情を浮かべる。
「今、俺は周囲の空間を真空の層で隔絶してる。だから、俺の声はお前にしか聞き取れない。」
驚きの表情が恐怖に引き攣れる。
「シガルイ・テンガに命じる。今から俺は貴様にとっての神だ。俺を崇め、崇拝しろ。」
「は、はい。」
シガルイと呼んだ獣人が俺に跪く。
「契約はしない。心配するな、仕事が終われば命令は解除してやる。」
シガルイが頭を垂れる。
「ご命令、ありがたき幸せ。」
あまりやりたくはないが、これからすることには必要だ。
俺は、三人の獣人全員に対して、同じように真名で命じ、殴り合う三つ子に向き直る。
三つ子は自分達の意志で殴り合っている。
俺が、そう仕向けたのだが、その殴り合いに容赦がない。
右腕が真中の顔に噛み付き、右腕が動かないようにしている。左腕だけが額を使って真中の顔を殴り続け、真中の顔はボロボロの状態だ。
その左腕も力が入らなくなってきたのか、動きが緩慢になっている。
右腕が真中の顔の頬を噛み千切り、自由になった途端に石畳に叩きつけられる。前歯がボロボロと石畳に落ちる。
凄まじいなコイツら。
ドン引きですわ。
まさか、ここまで酷いことになるとは思わなかったわ。
『仕向けた本人が何を言ってる。』
「オイ、お前ら、やめろ。」
俺の言葉に、三つ子が動きを止める。
大の字になって精魂尽き果てたようだ。
そんなになるまで人間を殴れるってのは、ある意味スゲエな。
「左腕の勝ちだな。」
そう言った途端に左腕が高々と掲げられ、地面に向かって思いっきり振り下ろされる。
左腕の後頭部が石畳に叩きつけられる寸前で、俺は、三つ子の動きを制御する。
生き残ることに対する執着心が凄まじい。
三つ子の体を粒子へと変換、新たな姿に変換して、一人の人間を再構築する。俺は、三つ子の左腕、その一人だけを再構築した。
「お前の名前は?」
三つ子の一人だった者が、上体を起こして答える。
「…パクデル・カンデ…」
カンデ族らしい名前だ。
「いいか?お前の腹の中に二人を胎児として生かしてある。」
パクデルが自分の腹を擦る。
「霊子回路はお前の体内に再構築してあるが、神経とは繋がっていない。」
パクデルが神妙な面持ちで頷く。
「お前の頭の中には、俺の精霊を仕込んだ。」
パクデルが汗を浮かべる。
「洗脳精霊でも良いが、俺が、一々命令を下すのも面倒だ。だから、俺が起爆スイッチを持った爆弾型の精霊を仕込んだ。」
パクデルの顔が青褪める。
「爆弾型と言っても爆発する訳じゃない。俺は、人が死ぬのが嫌いなんでな。だから痛覚を刺激し続ける精霊だ。」
パクデルの口が半開きになる。
「俺が死んだら起動する。お前が裏切っても起動させる。俺がお前を気に入らないと思っても起動させる。お前のことを面倒臭いと思っても起動させる。俺が暇だと感じても起動させる。」
パクデルの口がだらしなく開き、わなわなと震えだす。
「お前に許されることは、俺の命令に従い、実行することだけだ。」
パクデルが震えながら頷く。
「試しに、どれだけ痛いか体験しとくか?」
パクデルが高速で頭を振る。
俺は、残忍な笑みになるよう意識して表情を作る。
「それじゃあ、お前らの施設、帝城かな?それとも、その地下施設か?とにかく、兵器製造施設に案内してもらおうか。」
パクデルが顔を真っ青にしながら、諦めたように頷いた。




