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魔狩りのトガリ  作者: 吉四六
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果たしてこの三人に魔獣が狩れるのか、甚だ疑問ですが、仕方が無いと諦める

 会話シーンでほとんどが埋まっております。実験的にやってみました。わかりにくいと思った方には申し訳ありません。

 まず、ドルアジが酔った。

 続いてブローニュが酔って、森に囲まれた草原に着陸して、ちょっと休憩、と、いうことになった。

「それにしても、お前が酔わなかったってのは意外だな。」

 俺の言葉にカルザンが首を傾げる。

「いや、お前、結構カメラ越しに色んな所を撮影してたろ?カメラ越しだと酔いやすいと思うんだけどな。」

「そうなんですか?」

 カルザンはケロッとしてる。

 ケロッとして、ブローニュのロッパーを撮影中だ。

「ちょ!あんた!なに撮ってんップ!ウッ!!」

 あんまり真正面からケロケロッパーは見たくねえから、俺は目を逸らす。

 俺は、隣で寝転んでいるドルアジに声を掛ける。

「ドルアジ、これを目に掛けとけ。」

 熱い蒸しタオルを再構築してドルアジの目の上に落とす。

「すまねえ。」

 ごつい指で丁寧にタオルを畳んで閉じた瞼の上に蒸しタオルを載せる。こういうところは几帳面なのナ。

「そう言や、カルザン以外は飛行機が初めてか?」

「ああ。お嬢は知らねえが、俺は初めてだ。」

 こいつもやっぱり御嬢って呼ぶのな。元筋者で俺の義兄弟、セディナラも女の子のことはお嬢と呼んでいた。荒事師の決まり事かなんかかね?

「お前も年下の女の子のことはお嬢って呼ぶのな。」

「ヘルザース閣下の娘だからな。」

「ヘルザースの娘だとお嬢か?」

「ああ。」

「他の女の子ならなんて呼ぶんだ?」

「普通に娘とか、あの子とかって呼ぶぜ?」

「どうして、ヘルザースの娘だとお嬢になるんだ?」

「だから、俺よりも立場が上の娘だからお嬢になるんだよ。」

「ああ、成程ね。そういう基準か。」

「そういう基準だよ。」

「お前の娘って可愛いよな。」

「なっ!!」

 ドルアジが勢いよく起き上がる。

 恐怖と怒りが綯交ぜになった難しい表情だ。

「心配すんなよ、最初(はな)っからお前の娘に手を出すつもりはねえよ。」

 怒りの色が濃い。

「お前の娘を脅しの材料にしたからな。一応、娘さんが不慮の事故で死んだりしないように守ってたんだぜ?」

「ああ?!」

「そういきり立つなよ。あの時は、必要だと思ったんだよ。洗脳奴隷をほっとく訳にはいかなかったからな。」

 ドルアジは口を紡ぐが鼻息が荒い。

「俺にも子供がいるからな。」

 空を見上げると少し曇ってきた。

 雨が降るかもしれない。

「子持ちの男を必死にさせるには、あの脅しが一番だと思った。」

 雲の流れが速い。俺はドルアジに向き直る。

「だから、お前に酷いことしたって自覚はある。すまなかった。」

 素直に頭を下げる。

「けっ。」

 ドルアジが背中を向けて、再び寝転ぶ。

「あん時は、マジで、ひでえ目に遭ったぜ。腕も足も圧し折られるし、散々脅されて最後は娘を人質だ。」

 俺はドルアジが照れているのだとわかる。

「お前の怪我については謝らねえぞ。自業自得だからな。」

「ああ、そうだ。オメエを罠に誘い込んだんだからな。手足の一、二本を折られても仕方がねえ。」

「そ、仕方がねえ。」

「ぬかしやがれ!」

 ドルアジが起き上がって俺と目を合わせる。

 ドルアジの肩から力が抜けて、口角が上がる。

 俺もそれに合わせて軽く笑った。

 草の香りが強くなってきた。雨が降るな。


 バギーの中で雨を凌ぐ。

 俺達が着陸したのは南ウーサ大陸の北端、現代日本で言うところのベネゼエラあたりだ。

 北ウーサ大陸と南ウーサ大陸は完全に分断されており、アーゾン川の形状もアマゾン川とは違った流域を形成している。

 ブラジルの北方で西から東に向けて、ほぼ一直線に流れていた川が、大きく蛇行する形状に変形している。

 そのせいでアーゾン川は四カ国に渡って流れている。

 アーゾン流域の熱帯雨林地帯は小国を跨り、十四カ国に渡る。

 今、俺達のいる草原はトルザンス王国と呼ばれている。以前、トンナ達と巨大な地龍の亜種を狩った国だ。

 このまま南下すれば目的のティオリカンワ王国に到着する。

「今日はここでビバークするか。」

 当初から、現地入りする前にどこかで一日を使って、全員の装備を整えるつもりだった。

 その予定が少し早まっただけだ。

「ええ?ホテルとかに泊まらへんの?」

「ブローニュ、基本は野宿だぞ?お前、サバイバル教練、まだ受けてねえのか?」

「いや、受けたよ。受けたんやけど、その…」

 後部座席でブローニュが俯く。

「なんだ?歯切れが悪いな?サバイバル教練を受けたのに、野宿になんか不都合があるのか?」

 俯いていたブローニュが顔を上げる。

「お風呂!お風呂に入らなあかんねん!あたし!一日に一回はお風呂に入らんと!お肌が酷いことになるねん!」

「なんだ。魔狩りに向いてねえじゃん。」

「う!」

 ブローニュが背中を反らして上を向く。

 再び、顔を俺に向ける。

「魔狩りはできんねん!でもな!お風呂!お風呂がいるねん!!」

 あまりの剣幕に俺は追及することを諦める。

「じゃあ、外行って来いよ。」

「え?」

「雨がシャワー代わりになるだろ?」

「うっ!」

 俺はタオルを再構築して、ブローニュに差し出す。

「石鹸とシャンプーも作ってやろうか?」

「う、うん…」

 顔を俯かせたまま、ブローニュがバギーの窓から、ぎこちなく抜け出て行く。

 俺はバギーのエンジンをかけてアームを稼働させ、バギーを上へと移動、飛行機と接合させる。

「窓を真黒にするぞ。」

 窓ガラスを全て真黒に変色させ、外を見えなくする。

「へえ。お前さん、意外に紳士だな。」

「当たり前だろ。俺は元々が紳士なんだぜ。」

「そうですね。陛下は女性に対しては、基本、優しいですよね。」

「でも、カルザン様よう。ブローニュのお嬢は、結構、胸がでかかったぜ?見たくねえのか?」

「そりゃあ見たいですよ。男ですから。でも、男だからこそ我慢するんじゃないですか。」

「おお、言ってくれるね。流石は元皇帝陛下様だ。」

「ドルアジさんは覗きとか、平気そうですもんね。」

「まあな。」

「このオッサンなら強姦だってしてるさ。」

「なっ!何言ってやがる!そんなことする訳ねぇだろ!」

「奴隷とかにやってたんじゃんねぇのか?」

「商品に手を出す訳がねえだろ!売りモン傷つけてどうすんだ!」

「へえ、商売に関しちゃ真面目だな。」

「そりゃそうさ。いい加減な商売じゃ客が付かねえからな。お足がなけりゃお(まんま)だって食えねえ。」

「お足ってなんですか?」

「ああ。金のことだ。」

「お金のことをお足って言うんですか?」

「ああ。金は、あっちに行ったり、こっちに来たりするだろ。だからお足というのさ。」

「へえ。面白いですねヤート語って。」

「まあ、最近じゃあ、あんまり使わねえけどな。それよりもドルアジが知ってたってのが驚きだよ。」

「ああ、俺も最近行くようになった酒家で教えてもらったのよ。」

「オルファルだな。」

「ですね。オルファルさんだ。」

「なんだ?あそこの女将を知ってるのか?」

「知ってるも何も、オルファルさんは陛下の熱烈な大ファンで、店に飲みに来いって煩いらしいですよ。」

「へえ。オメエ、モテるんだな。」

揶揄(からか)いやすいんだよ。」

「いえいえ。陛下はモテます。」

「手ぇ出してねえのかヨ?」

「出す訳ねぇだろ。後が怖いわ。」

「イイじゃねえか。肌のきれいな黒人で、美人だしヨ。」

『ドルアジっていい奴かも。』

 お前は…

「だから後が怖いって言ってるだろ。居酒屋の二階で飲んだくれてろってのかよ。」

「いいじゃねえか。そういうのも結構良いもんだぜ?」

「ええええ?私だったら嫌ですねぇ。こうやって、魔獣狩りに出かける方がワクワクして面白いですよ。」

 面白いか…面白くなるかねぇ?

「まあ、カルザン様ならそうでしょうね。しっかし、俺も色々やってきたが、まさか、魔狩りになるたぁな。そもそも、普通の人間に魔獣なんて狩れるのかい?」

「まあ、無理だな。」

「え?」

「なに?!」

「ど、どうして私たちを連れて来たんですか?!」

「どうすんだよオメエ!俺達を殺す気か!?」

「まあ、色々考えてることがある。今夜にでも教えてやるよ。」

 中腰になった二人が同時に座り直し、同時に顔を見合わせる。

「そんなことより(おせ)えな。なにやってんだ?」

「女のシャワーだろ?時間が掛かるのは当たり前だぜ?」

「そうですよ。女性は身だしなみに気を使うんですから、ゆっくりと待ってあげましょうよ。」

「ああ、たしかにウチの女どもも時間が掛かるわ。」

「女どもって、あのデカい姉ちゃん以外にも女がいるのか?」

「いるよ。怖いのとズレてるのとオッサンみたいのが。」

「酷いですよ。女性のことをそんな風に言うのは。」

「本人には言わないよ?」

「当たり前です。」

「まあ、ウチのカミさんも似たようなもんだ。年季が入って来ると平気で屁をこきやがる。」

「ああ、そりゃあ、ウチではないな。」

 チビルことはしょっちゅうだけど。

「そうか、なら、まだ女を意識してるな。」

「そんな風になるんですか?」

「そうなりますぜ。カルザン様もよう、今の内から慣れとかねえと女に幻滅するぜ?」

「やだなあ。奥さんが平気でオナラをするなんて…」

「幻滅ってことは幻想を持ってるからするんだよ。」

「そりゃ持ちますよう。男性とは違って(たお)やかで優しいんですから。」

 うん。そりゃ、お前だ。

「はは。カルザン様、嫋やかな女なんかこの世にゃいませんぜ。強いか狡いかのどっちかですよ。」

「そ、そうなんですか?」

「まあ、狡いってのは言い過ぎかもしれねえが、計算高いって意味ならそうだな。」

「へ、陛下まで。」

「ウチのカミさん連中を見てみろよ。狡かったり計算高かったりはしねえが、皆、ツエエぞ。」

「まあ、確かにお強いですねぇ。」

「嫋やかだったり、お淑やかだったりするのも計算の内だよ。俺は嫌いじゃねえけどな。」

「おっその心は?」

「お淑やかにしてるってのは男を引きつける計算だろ?じゃあ、色んな所で我慢してるのさ。それこそ、屁が出ねえように我慢したりな。そういうのって可愛いじゃねえか。」

「なるほどな。夫婦になったらその計算もいらなくなるから屁をこくってことか。」

「そういうこと。」

「じゃあ、陛下の奥さんたちも、皆、計算高いんですか?」

「そんな訳ねぇだろ。あいつらが計算高いんなら、世界中が天才だらけになっちまうわ。」

「酷い言いようですね。奥さんたちに対しては。」

「そうだよ。あいつらのことを酷く言えるのは俺だけだからな。他の奴らが、あいつらのことを酷く言ったら、俺が全力でブッ飛ばす。」

「なんだかよくわかんない理屈ですね。」

「そうですかい?そんなもんですぜ?」

「ドルアジさんもそうなんですか?」

「ええ。ウチのカミさんは、そんなに美人じゃありませんが、ウチの従業員が陰でカミさんのことをブスだってぬかしやがったんですよ。」

「ええ?…酷いですね。」

「もう、その日の内にフクロにして叩き出してやりました。」

「そ、それはまた…なんとも…」

「そんなもんだよ。愛してて、愛されてるってわかってるから、酷いことが言えるのさ。」

「おっ。言うねぇ。」

「俺は言うよ?嫁さんには愛してるって言うようにしてる。人は簡単に死ぬし、突然いなくなるからな。言っとかないと寂しさと後悔を相手に残す。お前らにも好きな相手がいるなら言っとくことをお勧めするよ。この仕事はいつ死んでもおかしくないからな。」

 二人が黙る。

 俺は経験済みだ。

 現代日本に妻と子供そして、介護中の父親を残してきた…

 …子供…?

 おい。

『どうした?』

 俺の子供は娘だったか?息子だったか?

『カナデラ、マサトと代われ。』

『わかった、マサト、コッチに来なよ。』

 あ、ああ。

 瞬間的に俺は無意識領域へと落ち込み、カナデラと交代した。

本日の投稿はここまでとさせていただきます。お読み頂き、ありがとうございました。

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