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魔狩りのトガリ  作者: 吉四六
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え?あれ?

本日の投稿は、この一本だけとなります。

 ウロボロスには既に乗組員が乗り込んでいた。

 魔獣狩りユニオンをマネージメントするスーガが奴隷解放保護局の中から選定した、その局員たちだ。

 奴隷解放保護局の局員は魔獣狩りユニオンに登録している魔狩りでもある。

 整備員、運航スタッフと、ウロボロスを操艦するための最低限の人数だ。実戦に参加するメンバーは俺、カルザン、カルデナ、ブローニュ、ドルアジ、そして、テルナドの六人だ。

 戦闘員の数は少ないが、少数精鋭…って訳でもないけど、なんとかなるだろう。うん、そう信じたい。多分、なんとかなると思う。なんとかしていこう、うん。

 俺達は竜騎士を後部ハンガーに着艦させて、早速、総指揮ブリッジに上がる。

 既に乗組員が発進準備を完了させて待機状態だった。

 俺はメインシートに座り、乗組員の顔を見回す。

 テルナド、カルザン、ブローニュ、ドルアジが頷き、カルデナがソッポを向く。

 俺の隣にサクヤとトドネが立って、俺と一緒に右手を前方に差し出す。

「魔獣狩り専用国体母艦!発進!!」

「発進なのです!」

「発進するんし!」

 イエィ!娘達とハモったぜ!

 六発のメイン霊子エンジンが唸りを上げ、操艦員達の声がブリッジ内を行き交う。

 国体母艦ウロボロスが動き出し、直ぐに成層圏へと届くだろう。

 俺はサクヤとトドネを見下ろす。

「なんで!お前らがいるんだアアアアアアッ!!!」

 なんでだ?!なんでコイツらが居る?!

「来ちゃったのです。」

 トドネがニッコリ笑う。

「来てあげたのし。」

 サクヤが当たり前のような顔で言い放つ。

「えええええ?おかしいよ?おかしいよ!お前ら!なんで?なんで王族がこんなに大勢いるの?三人もいるのっておかしいだろオオオッ?!」

 もう卒倒しそうだよ!

「大丈夫なのです!あたしがデシター君のお手伝いをするのです!」

 なんで?なにに対してそんなに張りきってるの?

「アチシも手伝ってやるし。」

 お前も言うこと聞けよ!

「イヤ!サクヤ!すぐに帰れ!今すぐ帰れ!真直ぐ道草しないで家に帰りなさい!!」

「心配するなし、大体、人質は多い方が便利だし。」

 何が?何に心配してるの?なんでお前、そんなに堂々としてんの?

 サクヤが俺の方へと顔を向ける。可愛い顔で思いっきり笑いやがる。

「テル姉が言ったのし。」

「はあ?!」

 テルナドが大声で疑問を叫ぶ。

「ヘイカ・デシターは父さんより強いし、なら絶対最強し!」

「ああ…」

 テルナドが納得したように頷く。

 いや、ヘイカ・デシターは俺ですけど?

「だから、アチシはヘイカ・デシターの弱点を見付けるし。」

「あっ」

 ハタと気付く。

 このブリッジに居る操艦員達は俺の正体を知らない。奴隷解放保護局に協力している、ただの魔狩りだと思っている。

 俺は、今、ヘイカ・デシターであってサラシナ・トガリ・ヤートではないのだ。

「ヘイカ・デシターの弱点を見付けて、父さんを勝たせるし。」

 サクヤの立ち位置を認識した。

 人質となり、ヘイカ・デシターの弱点を見付けて、その弱点をサラシナ・トガリ・ヤートに報せ、そうして、サラシナ・トガリ・ヤートに勝たせる。この茶番の最後はそうなるのだと言っているのだ。

 くっ!

 誰かが、サクヤに入れ知恵したな。

 トドネがソッポを向いて笑ってやがる。

 トドネかぁ…たしかにトドネは頭が良かった。でも、こんな策略を巡らすような子じゃなかったぞ。

 二人はブリッジの操艦員達の目の前、俺の正体を明かすことのできない状態で、自分達はサラシナ・トガリ・ヤートに勝たせるために人質役となると宣言しやがった。

 ここで、俺がサクヤ達を無理矢理、新神浄土に戻そうとしたら変に思われる。

 イヤ、駄目だ。頑張れ!俺!

「必要ねえよ!俺がちゃんと負ける演出すりゃあイイだけの話じゃねぇか!王族を三人も乗せて敵地に潜入なんて、できる訳がねえだろ!」

「でもぅ…」

 トドネが口を開く。

「私たちを新神浄土に帰そうと思ったら、ウロボロスを、一旦、新神母艦に帰還させなければならないのです。」

「あっ」

 そうだ。このウロボロスには新神浄土どころか他の国体母艦に通じるゲートがない。

 元々、国体母艦同士で行き来ができるゲートは造っていない。地上と各国体母艦を往来できるゲートは造ってあるが、そのゲートも封鎖の方向で動いている。

 クルタス事件を受けて、簡単に往来できるゲートの設置は危険との判断からだ。月面基地や深海基地に関してもそうだ。

 月面に関して言えば、軌道エレベーター基部、その人工島までは、航空艦を使用しなければならないし、軌道エレベーターで成層圏を超えて衛星基地に到着、衛星基地から航宙艦に乗船して、月を周回している静止衛星で乗り換え、その乗り換えた航宙艦に設置されているゲートを使用して月面基地に到達するのだ。

「イヤ、じゃあ、お前達はどうやってウロボロスに乗艦した?何かに乗って来たんだろう?それに乗って帰れよ!」

 トドネが笑う。

「送って来てもらったのです!」

「は?」

「義母さんに送ってもらったのです!」

「はあああああ?」

 え?トネリが?トネリが送ってくれた?

「頑張って来るんだよ!と、言って、送ってくれたのです!」

 アイツは戦地に向かうっていうのに、保育園か何かに送迎してる母親気分か?

「ボス。」

「ああっ?!」

 なんだよ!うるせぇな!

「い、イヤ、もうすぐジェルメノム帝国に到着しますが…」

 操艦員の一人が、時間が差し迫っていることを教えてくれるが、今はそれどころじゃない。

「待てよ!ちょっと待て!ちょっと、今、どうするか考えてるから!」

「し、しかし…」

「なんだよ!うるせぇな!ちょっと黙ってろよ!!」

「ジェルメノム帝国から無線が入って来てまして…」

「はあ?なんだよ!なんで俺達が到着したってわかってんだよ!?大体、早過ぎねぇ?ジェルメノム帝国に到着するの!早過ぎんだよ!」

『落ち着け、ジェルメノム帝国にはレーダーがある。それにウロボロスの巡行スピードならこんなもんだ。』

 わかってるよ!わかってるけど!どうすんだよ?この状況!

『諦めろ。下手な動きをさせるよりも監視下に置いた方がイイだろう。』

 俺は、瞼を閉じて、深い所から息を吐き出し、気持ちを落ち着かせる。って、落ち着かねえわ!

『兎に角、二人にも仮面を作ってやれ、年齢詐称はバレる可能性があるからな、気を付けて変化させろ。』

 わかったよ。二人は王族じゃなくって、俺の仲間扱いだな?

『そうだ。テルナドはお前と使徒契約を結んでいるから、テルナドを奪われる心配はないが、サクヤとトドネはジェルメノム帝国からなるべく距離取らせた方がいいだろう。』

 うん、そうだな、そうだ。俺の目の届かない所で心配するよりも俺の目の届く範囲で監視した方がイイ。

 俺は二人を睨む。

 二人が一瞬、肩を竦ませる。

 二人の髪色を変える。

 サクヤは茶色い短髪に、トドネは逆に茶色い長髪に変化させる。

 サクヤの青い瞳をブラウンに変え、身長を少しばかり伸ばして、トドネと同じぐらいの身長に変える。

 手の上に仮面を再構築、目の周りを隠すだけの簡単な仮面だ。

 その仮面を二人に渡す。

「あいがし。」

「ありがとうなのです!」

 サクヤとトドネが嬉しそうに、その仮面を受け取る。

「サクヤ、帰ったらトンナ母さんに怒ってもらうからな?」

 仮面を装着しながらサクヤの肩がビクリと跳ねる。

「へ、へ、へへへ、平気、なんし…」

 声が震えてる。

「トドネ、お前はオルラ婆様に怒ってもらうからな。」

 トドネも肩を跳ねさせる。

「えっ?ええ…」

 項垂れる二人を無視して、俺はウロボロスの一斉放送のスイッチを入れる。

「全乗組員に通達、今から各自の簡易錬成器に仮面のデータを送信する、各乗組員は、各自でその仮面を再構築し、その仮面を装着、寝る時と風呂に入る時以外は、絶対に外すな!」

 俺は、サクヤとトドネに渡した仮面と同じデザインの仮面データを各簡易錬成器に送信する。これで、サクヤとトドネが目立たたなくなる。二人は俺と一緒に行動するが、それでも、この組織の幹部だと思われないようにすることができる。

「いいか、シンボルマークはこの仮面だ。皆もなるべく外さないように頼む。」

 俺はテルナドたちに向き直って念を押す。

「わかったよ。」

 テルナドもオリジナルの仮面を再構築してる。

「イヤ、テルナドは、仮面、いらねぇだろ。」

「え?どうして?」

「だって、お前は、人質なんだから。」

「じゃあ、トガナキノに攻め込んだ時にどうやって戦うの?」

「イヤ、お前は戦わないよ?」

「どして?」

「人質だからだよ。」

「今だけでしょ?」

「ううん。ずっと人質。」

「ヘイカ・デシターに惚れて、寝返ったって設定にしない?」

「しないよ?」

「可哀想なのです!テル姉だけ除け者は可哀想なのです!」

 トドネ、お前、ガックリしてたろ?なに言ってんの?

「いや、何を…」

「そうなんし。デシターはテルナド姉さんのこと、除け者にするんし。」

 サ、サクヤ?お前までもう復活したの?

「いや、そんなことは…」

「デシター、かまへんやん、傍に居てる方が護りやすいんちゃう?」

 ブ、ブローニュまで?こ、コイツは親子の問題に首を突っ込んで来るなよ。

「フンッ自分の娘に戦うな、とは、やはり、小さい男だ。」

 なに言ってんのコイツ?カルデナ、お前、子供を心配するのは父親として当たり前だろうが。

「じゃ、と、いうことで、私も参戦ってことで。」

 テルナドが嬉しそうに仮面を装着する。

 はあ。もう溜息しか出ませんわ。

 カルザンとドルアジが気の毒そうにこっちを見てる。そう思うなら、お前らも俺のフォローに入って来いよと言いたい。

「デシター。」

 サクヤが俺の裾を引っ張る。

「はあ?」

 もう、気の抜けた声しか出ない。

「アチシの竜騎士を造ってくんなし。」

「…」

「あっ!いいな!デシター君!あたしの竜騎士も!」

「…」

「私も造って欲しいのです!!」

「…」

 なにコレ?

 戦争するんだよね?トガナキノと。

『…そうだな。』

 一応、戦争は茶番だとしても、ジェルメノム帝国は敵国認定だよな?

『…うむ。』

 その敵国に潜入しに行くんだよな?

『…そうだ。』

 デシターって竜騎士、造れねえのに、造るの?

『いざという時、戦線から離脱できるように小さめの竜騎士を造ってやったらどうだ?』

『あ!じゃあ!俺、造りたいのがある!』

 カナデラ、お前まで…はあ…もう、好きにしてくれ…

『じゃあ、兎に角、この場は造れないってことで、なんとか誤魔化せ。』

 俺はサクヤの頭を撫でながら、「俺はお前らの父さんじゃないんだから竜騎士は造れないよ。」と応えてやる。

 トドネが笑う。

「大丈夫なのです!トガ兄ちゃんに連絡して、造ってもらった竜騎士を送ってもらうのです!」

 うん、大声でそう言ってくれると助かる。

 俺はブリッジの操艦員に聞こえるようにワザと大き目の声で応える。

「わかったよ!わかった!お前らの竜騎士を送ってもらえるように頼むよ!」

「あのう…」

 ブリッジの操艦員が申し訳なさそうに割り込んでくる。

「ああ?」

「いえ、そのジェルメノム帝国からの無線は…」

 ああ、忘れてた。

「ああ、スマン、繋いでくれ。」

 操艦員がコントロールパネルを操作して、ジェルメノム帝国からの無線をスピーカーに切り替える。

『応答せよ。国籍不明の貴艦は、ジェルメノム帝国の領空に接近している、これ以上接近する場合は、ジェルメノム帝国に対する侵略行為とみなして迎撃する。至急、国籍、目的を報せよ、どうぞ。』

 うん、そりゃそうだ。

 俺はマイクを待って、操艦員に目顔で合図を送る。操艦員が無線での応答ができるように俺のマイクと無線機を繋ぐ。

「こちらは、神州トガナキノ国から脱出して来たヘイカ・デシター。ジェルメノム帝国皇帝陛下との盟約に従い、魔狩り専用国体母艦、ウロボロスを奪取して来た。受け入れ態勢を整えられたし。どうぞ。」

 しばしの沈黙。

『師匠か?!』

 皇帝陛下だ。

 声だけで嬉しそうなのが伝わって来る。

「陛下、約束通り、竜騎士を奪って来たぞ。」

『でかした!流石は俺に師匠と呼ばせるだけのことはある!』

「で、この後はどうしたらイイ?」

『おう!朕がそっちに行く!帝城の上空にまで来い!』

「いいのか?」

『構わん!早く来い!帝城からでもそっちの機体は良く見える!早く乗ってみたいのだ!』

 俺は口角を上げる。無邪気なもんだ。

「わかった。帝城上空に向かう。」

 俺以外の皆は無邪気な皇帝陛下に呆れ顔だった。

お読み頂き、誠にありがとうございました。

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