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魔狩りのトガリ  作者: 吉四六
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娘に好かれてるって最高!

この話は短いです。

 テルナドの方へと向き直る。

「テルナド。」

 俺の声にテルナドが俺の方へと顔を向ける。

「じき出発になる、用意しておけ。」

 俺はブローニュを治療しながら、テルナドに向かって話し掛ける。

「うん。なにかあるの?」

 俺はテルナドの言葉に頷く。

「ジェルメノム帝国に潜入することになる。」

 全員が俺に注目する。

「奴隷解放のためなの?」

 トンナが俺に聞いてくる。

「ああ、それは切っ掛け、いや、結果的には奴隷解放になるか。」

「どういうことなんよ?」

 アヌヤに向き直る。

「ジェルメノム帝国ってのは、洗脳奴隷を金剛とかの兵器に使ってる奴らなんだ。」

 全員が眉を顰める。

「その兵器を使って周辺諸国に戦争を仕掛けてる。」

 言葉を切って、全員の顔を見回す。

「その戦争を止めさせるために、ジェルメノム帝国の戦力をトガナキノに集中させる。」

「だからジェルメノム帝国に潜入するんだね?」

 トロヤリの言葉に俺は頷く。

「そうだ。トガナキノに戦力を集中させれば、他の国との戦争が止まる。」

「で、パパはジェルメノム帝国の奴隷を解放するの?」

「ああ、そうしようと思ってる。」

「アチシも行くし。」

 え?

 俺は思わずサクヤの顔を凝視する。

「何言ってんだよ。そんなの無理に決まってるだろ。」

 サクヤの顔がブー垂れる。

「そんな顔したって駄目だぞ、父さん、遊びに行くんじゃないんだからな。」

 サクヤの目が俺を睨む。

「テルナド姉ちゃんは行くし、アチシも行くし。」

 もう、トンナ達が言うこと聞いてるのに、今度は娘が言うこと聞かないよ。

 トンナがサクヤの後頭部を(はた)く。

「痛し。」

 叩かれてるのにサクヤは俺を睨んだままだ。

「いい加減におし、父さんを困らせるんじゃないよ。テルナドは大きいから良いんだよ。」

「じゃあ、父さんがアチシを大きくすれば良いし。」

 再びトンナがサクヤの頭を叩く。

 いや、トンナ、ちょっと叩き過ぎじゃね?

「お前じゃ、邪魔になるだけだって言ってるんだよ。いい加減にしないと酷いよ。」

 俺はサクヤの前にしゃがみ、サクヤの頭を撫でる。

「サクヤ、父さんの大事なサクヤ。父さんはお前のことが大好きだ。」

 サクヤが俺を睨んだまま頬を紅潮させる。

「ホントは連れて行きたいけど、それは無理だ。父さん、父さんじゃない姿でジェルメノム帝国に行くんだ。」

 サクヤの両眼に涙が溜まる。

「ちゃんと時々帰って来るから、大人しく待っててくれ。」

 サクヤは返事をせずにクルリと回って俺に背中を向けた。肩が震えている。俺はサクヤの頭を撫でながら立ち上がり、トンナ達を見回す。

「ジェルメノム帝国に潜入したら、俺はジェルメノム帝国側の人間として、トガナキノに攻めに来る。」

 俺の言葉に全員の眉尻が吊り上がる。サクヤの体がビクリと竦むのが、俺の手に伝わる。

「トロヤリ。」

 俺はトロヤリを見下ろす。トロヤリが真剣な表情で俺に視線を合わせる。

「スサノヲを使えるようにしておく、お前はスサノヲで父さんの侵攻を阻むんだ。」

 トロヤリが驚く。

「トンナ、アヌヤ、ヒャクヤ。」

 俺は呼んだ順番に女達の顔を見回す。

「必死で俺と戦え。俺からトガナキノを護り切るんだ。」

 俺の言葉に三人の女達の体が一瞬だけ震える。

 トンナが口角を上げる。

 アヌヤが牙のような犬歯を覗かせる。

 ヒャクヤが満面の笑みを見せる。

「パパとやり合うのは久しぶりなの。」

「ホントなんよ。父ちゃんとヤルとなったら、体が震えてくるんよ。」

「うん、楽しみにしてる。トガリとじゃれ合うなんて、ワクワクしてくる。」

 女達。

 俺の女達は強い。

 戦うことが大好きな女達、こうして見ると頼もしい限りだ。

 俺は笑う。

「じゃあ、俺は、一旦、魔獣狩りユニオンに戻るよ。」

「うん、でも、暫くはこっちにいるんでしょ?」

 トンナが頷きながら聞き返してくる。

「ああ、ジェルメノムとフランシスカの終戦調停の事前調整にセディナラが行くから、その後に俺達はトガナキノを脱出するよ。」

「シュウセンチョウティってのには、父ちゃんが行かなくても良いんかよ?」

 アヌヤ、せめて、終戦調停って言葉ぐらいは知っててくれ。

「うん、多分、大丈夫だとは思うけど、もしかしたら、行くかもしれない。」

「ふ~ん。」

 ヒャクヤとトンナも終戦調停の意味を解ってないから、理解してる風を装ってる。

「母さん、終戦調停ってのは、国同士の戦争を終わりにしましょうって約束をすることだよ。」

 察しの良いトロヤリが、下から母親たちのプライドをズタズタにする。

「わ、わかってるわよ!わかってるんだから!ホントよ?ホントにわかってたんだからね?」

「そ、そうなんよ!トロヤリに教えて貰わなくってもわかってるんよ!」

「そ、そうなの!抽選調停ぐらい知ってるの!」

 ヒャクヤ、別の言葉になってるぞ。

 俺は、最後に、もう一度、サクヤの頭を撫でる。

 サクヤは最後まで俺の顔を見ようとしなかった。


「戻ったぞ。」

 スーガとトドネが書類から顔を上げ、俺を出迎える。

「お帰りなさいなのです!」

 トドネが書類をばら撒き、俺に飛び突いて来る。

「ぐぼっ!」

 いや、ホントに突いて来てるんだよ。字面通りだよ?

 トドネが「ま、またやっちゃったのです。」と、言いながら、ばら撒いた書類を集め、スーガが「お帰りなさいませ。」と静かに挨拶する。やっぱり、トドネには怒らねえのな。コイツ、ロリっ気があるんじゃなかろうな?

「カルザンはまだ戻らないのか?」

 俺は、自分の席に向かいながら、スーガに聞く。トドネは書類を集めたあと、俺に抱き付き直したので、ズルズルと引き摺られてる。

「はい。まだ、お戻りになられていません。」

 なんだ、まだ、手間取ってるのか。面倒くせぇなぁ。

 俺は自分の席に向かわず、立ち止まってトドネを引っぺがす。

 後襟を摘ままれ猫のようにぶら下げられて、トドネが「トガ兄ちゃんも行くのですか?」と聞いてくる。

 俺は溜息を吐く。

「そうだな。ちょっと、行って来るよ。」

 トドネを床に下ろして、俺は瞬間移動で安寧城の前庭に飛んだ。

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