魔獣狩りユニオンには加入者が増えずに職員だけが増える
魔獣狩りユニオンの事務所に顔を出す。
今日は、吹きさらしのベランダに瞬間移動してから、自分の姿をヘイカ・デシターに変容させて事務所のドアを潜る。
「お!おはようございます!!」
夕方に近い時間なのに、おはようございますって、ここは芸能事務所か?それともテレビ関係の事務所か?
元気なハスキーボイス。どこかで聞いたことのある声だが、思い出せない。
ぎこちない愛想笑い。
濃い化粧。
コーカサスだろうと思われる白い肌なのに、顔だけが異常に真っ白で気持ち悪い。ってか、能面?
長い茶髪に真赤なリボン。
白いフリフリレースのハイネックTシャツにニットで編んだベビーピンクのジャケット。
どピンクのスカートは裾に白いフリルの付いたミニスカートだ。
首を傾げるのは、白いニーソーの上から、ピンクのフリル付きソックスを履いている点だ。なんで、靴下二重にしてんの?
赤いパンプも目に染みる。
俺は、しばし固まり、呼吸も止まってた。
「だ、誰?」
誰と聞かれて、派手なオバサンが、そのままのポーズで固まる。
オバサンの後ろからスーガが顔をのぞかせ、「ハルタ元連邦捜査局局長ですよ。」と教えてくれる。
「ああ、え?えええ?えええええ?」
一声で三回吃驚したよ。
え?
まだ、吃驚するよ。
い、いつの間に厚化粧のオバサンに成り下がった?
「オ、オバサン化してる…」
あ、声に出てた。
ハルタが固まってる。
首から下は汗を思いっきりかいてるのに、顔には一粒の汗も出ていない。
『ほう、現代日本の芸者並の技術だな。』
『いや、あれって技術って言うか、脇に硬く絞った手拭いとかを挟んでるらしいよ。』
『へえ、クシナハラの言うことで初めて感心したよ。』
『ただ単に化粧が分厚過ぎて汗腺が埋まってるだけでしょ?』
『いや、この化粧はあれだな、きっと、敵をビビらせるための戦化粧ってやつだな!!』
ハルタの顔が徐々に泣きそうな顔になってくる。ダイジョブか?皹入らねえだろうな。
「い、いや、ゴメン。その、つい、口から出ちゃって、その、ホントにゴメン。」
愛想笑いも消えて、ハルタが項垂れる。
「いえ、良いんです。私もちょっと無理があるかなぁとは思ってたんです。三十も過ぎたオバサンにもなって、このミニスカートはちょっとなぁって思ってたんです…」
え?そこ?いや、その前に、そのドギツイ化粧をなんとかしようヨ。
「いや、そんな化粧するからアレなんであって、別に服装は…うん。ちょっと、服装も変えようか?」
ハルタがじんわりと涙を溜める。
「ええ?泣くほどなの?いや、ゴメン、ホントにゴメンって。」
「三十も超えた女が、子供にオバサン扱いされたぐらいで何を泣いているんですか。とにかく、泣くぐらいなら直ぐにその化粧を落として、普通の格好に着替えてきなさい。」
おう、スーガはやっぱり鬼だな。
ハルタの顔付が豹変する。
勢いよくスーガに振り返り、噛み付くように歯を剥いて怒鳴り出す。
「何言ってんだい!ただの子供にオバサン扱いされたって泣くもんかい!陛下に気に入って頂こうと頑張ったのに!陛下にオバサン扱いされたからショックなんだろうが!!」
あれ?
俺は、今、一〇歳の子供の姿だぞ?なんで陛下ってバレた?
「ハルタ、俺の名前、言ってみて。」
ハルタがキョトンとした顔で俺の方を見る。
「俺の名前、言ってみて。」
ハルタが首を傾げながら俺の名前を口にする。
「サラシナ・トガリ・ヤート国王陛下でございますが…」
うん、国王陛下は名前じゃないよね?まあ、呼び捨てにはできねえだろうけど。
俺は掌を左右に振って「ちゃうちゃう。」と否定する。
「え?」
ハルタが更に首を傾げる。
「俺の名前はヘイカ・デシター。サラシナ・トガリ・ヤート国王陛下とは別人なの。」
ハルタがキョトンとする。
「ヘイカ・デシター…?」
「そ、ヘイカ・デシター。」
「ああ!」
ハルタが相槌を打ちながら合点のいった顔をする。
「陛下でした~。」
両手を広げて顔の周りに添えるな。
一瞬でムカッときた。
保母さんが子供に、いない、いないバ~ってしてる時のポーズじゃねぇか。なに可愛く見せようとしてんだよ。
「お前、死刑になるつもりでそんなことしてんのか?」
割と素でムカついた。
「い、いえ…すいません…可愛子ぶって…」
「じゃあ、その手を下ろせよ。」
「は、はい…」
ハルタが両手をお腹の前で組んで、シュンと項垂れる。
「とにかく、俺の今の名前は、陛下でした~。じゃなくって、ヘイカ・デシター。わかった?」
俺は偽名を一音一音区切ってハッキリと言った。
「御意。」
わかってない。
「だから、俺は普通の、いや、普通じゃないけど、国王とはなんの関係もない一〇歳の子供なの。だから、御意とか、俺を国王扱いしちゃダメだぞ。」
「ぎ、や、あの、ハイ。わかりました…」
おかしいな、ハルタってもっと怖い姉ちゃん的な印象だったんだけどな。
「それにしても俺の正体がよくわかったな?まあ、ハルディレン王国でも一〇歳の姿をした俺のこと、陛下って呼んでたけどよ。」
ハルタが元気に顔を上げる。
「そりゃあ、わかりますよ。なんてったって私の子供を助けて下さったのは一〇歳の頃の陛下ですから。」
俺は眉を顰める。
「それにしたって一〇歳の姿だぞ?なんで、十六歳の俺だってわかるんだよ?」
「それは、やっぱり、陛下だからじゃないですか?」
「は?よくわからん。どういう意味だ?」
ハルタが難しい顔をして首を傾げる。
腕を組んで「う~ん…」と、唸り出す。
「なんとなくって言うか、その、直感ですかね?神がかったお力をお持ちですから、そのお姿を自由にできるんじゃないかと、まあ、そんな感じですか?」
なんだ、ハルタにも、今一、よくわかんねえのか。
「まあ、いいや。とにかく、その化粧を落として来いよ。話はそれから聞くよ。」
ハルタが途端に真面目な顔つきになる。
「お前はスッピンの方が美人なんだから。」
ハルタの背筋が伸びる。
「ハ、ハイ!!」
本棚の裏に設置してあるミニキッチンに勢いよく駆け込んで行く。
なんだ、いきなり元気になりやがったな。
「ヘイカ・デシターは随分と人を使うのが上手ですな。」
激しい水音を耳にしながら、俺はスーガを横目で睨む。
「なに?どういう意味だ?」
まるで、普段の俺は、人を使うのが下手みたいな言い方じゃねぇか。
スーガが澄ましたままで、肩を軽く竦め、俺の問い掛けをスルーする。
「で、本日は、ずっとデシターでいるのですか?」
俺は一番奥の椅子に座り、足を机の上に放り出す。
「ああ。今日からは、しばらくデシターで活動するんでな。このままだ。」
スーガが眉を持ち上げ、訝し気な表情を作る。
「お妃さまは、よろしいので?」
俺は目を閉じながら頷く。
「ああ、あいつらは、俺が奴隷解放のために世界中をだまくらかすだろうって読んでやがったよ。だから、邪魔はしねぇんだと」
「フッ。それは、それは、中々にご慧眼ですな。」
俺は欠伸をしながらスーガに話し続ける。
「お蔭で俺は分体を作る必要もないし、しばらくはヘイカ・デシターのまんまだな。」
スーガが書類を作成しながら眉を上げる。
「さて、それは如何ですかね。いつ何時、予期せぬ事態が発生するとも限りませんからな。」
「はっ!そんなもんが発生するならいつでも来やがれってんだ。軽く捻って、チョチョイだね。」
スーガが口角を上げてニヒルに笑う。厭らしい笑い方をしやがるな。コイツも悪役の方が似合いそうだ。
「で、ハルタが急にどうしてここに?」
書き物をしている手を止め、スーガが顔を上げる。
「陛下が仰ったのでしょう?ハルタを奴隷解放保護局の局長にしろと。」
「ああ、確かに陛下が仰いましたね。」
俺は、今は、ヘイカ・デシターだ。その態度を貫く。
「ですから、細々とした打ち合わせに来たと言っておりましたよ。」
俺は欠伸しながら「ああ、なるほど。」と、生返事だ。
事務所の扉がノックされる。
「予定にない来客ですね。」
たしかに、カルザン達ならノックしないで入ってくる筈だ。
スーガが立ち上がって、ドアを開ける。スーガの肩がピクリと跳ねる。なんだ?何を吃驚してやがる?
俺はスーガに隠れて見えない来訪者の顔を見ようと首を伸ばすが、、それでも来訪者の顔は見えない。
「こんばんは。魔狩りの資格登録試験に参りました。」
俺も肩がビクッと跳ねた。
おあっ!
アッブねえ。コケそうになっちまったよ。
「は、はあ、それでは、どうぞ、お入り下さい。」
スーガが来訪者を招き入れる。
スーガの大きい影から、女の子が現れる。
トドネよりも二歳年上で十四歳の女の子だ。
俺のよく知っている女の子だ。
そうだった。
忘れてた。
どうしよう?
テルナドが魔狩りになるって言ってたんだよ。
ヘイカ・デシターの一件はテルナドには、言ってないよ。絶対、ヘイカ・デシターの一味に加わるって言ってくるよ…どうしようか?
『知らん。』
『どうすればいいのかな?』
『一味に加わっても良いと思うけどね。』
『加えても良いじゃねぇか!』
『女の子は多い方が楽しいしね。』
はあ…お前らは気楽で良いよ。
テルナドが勢いよく頭を下げる。
「こんばんは。サラシナ・テルナド・ヒラギと申します。魔狩りの資格登録にはこちらの試験に合格する必要があると聞いて参りました。よろしくお願いいたします。」
うん、シッカリ挨拶できる子に育ったね。父さんは嬉しいよ。でも、今は父さんじゃないんだ。ゆくゆくは悪の魔狩り、指名手配されるニヒルなヘイカ・デシターなのだよ。
「で、父さんは、どうして子供の姿をしてるの?」
うふふ。シッカリとバレてます。
『笑ってる余裕があるのか?』
余裕が無いから笑ってんだよ。
スーガが、テルナドの後ろから『ほれ見ろ』って顔で俺の方へと視線を投げかける。
クソ。チョチョイっと捻ってやるヨ!
「はあ?何を言ってやがんだ?父さん?明らかにテメエの方が俺より年上じゃねぇか。」
テルナドが首を傾げる。
一拍置いて、左手を右の拳でポンッと叩く。
「ごめんね。お父さんに出会った時の姿にあまりに似てたから、間違えたのね。」
棒読みで言うなよ。
「な、なんだそりゃ。訳わかんねぇこと言ってんじゃねえよ。」
テルナドが俺に近付いて来る。
「それにしても、あんた変わってるよね?」
「へ?」
テルナドの指先が俺の頬に近付き、俺は首を反らして距離を取る。
「この左頬の傷。この国にいるのに、どうして消さないの?」
「お、思い出の傷なんだよ。」
テルナドが腕を組んで胸を反らす。
「へえ、おセンチさんだ。」
「な、なんだそりゃ?」
テルナドが嫌な笑い方をする。
「あたしにも思い出の傷ってのがあってね。」
え?嘘。
「父さんに助けてもらった時に付いた傷なんだよね。」
ええ?そんなのないぞ。
「見せたげる。」
そう言って、おもむろに服の裾をたくし上げる。
「こら!やめろ!はしたない!そんな傷ねえくせに!なにやってんだ!」
テルナドが手の動きを途中で止めて、冷めた目付きで俺を見る。
うう。
「語るに落ちたってヤツだね?」
「うう。」
テルナドが顔を近付けてくる。
「で?どうして父さんが一〇歳の頃の姿でいるの?」
「じ、事情があるんだよ。」
俺は思わず顔を背ける。
「事情を聞かせてよ。」
「いや、聞かなくていい。」
「…」
テルナドが口をへの字に曲げる。
「そんな顔したって駄目だぞ。それに、そんな顔してたら、ずっとそんな顔になっちまうぞ。」
更に口をへの字に曲げる。眉間には皺が寄り寄りだ。
「ほら、皺になるからやめなさい。折角可愛い顔してんのに、大人になってから困るぞ?」
おべんちゃらを混ぜて言ってるのに、テルナドが睨むのをやめない。もう、困ったなぁ。
「ふ、不合格にするぞ…」
つ、使いたくなかった。使いたくなかった最終兵器。
俺は顔を逸らしながらそう言った。
不意にテルナドが頬にキスしてくる。
「お父さん、大好き。」
おお、お、おい、い、い、いきなり何言ってんだよ…すっげえ嬉しいじゃねぇか。
「な、なに言ってんだよ。父さんなんて、もう、テルナドのこと大大大好きだよ?」
「じゃあ、教えて?今度、お父さんの好きなアップルパイ作ったげる。」
ええ?も、もう、しょうがねぇな、ちょっとだけなら良いか?
「も、もう、しょうがないなぁ。ちょっとだけだぞ?」
「うん、うん。ちょっとだけで良いよ!」
もう嬉しそうな顔しやがって、可愛いなぁ。
「父さん、世界中の奴隷解放のために動き出すんだよ。」
「ええ!すっごおい!やっぱり、あたしの大好きなお父さんだ。」
おいおい、そんなに褒めるなよ。照れるじゃねぇか。
「そ、そうか?」
「うん、凄いよ!それで?それで?どうして、一〇歳の姿でいるの?」
う~ん。娘に愛されるってホント、マジで気持ち良いよなぁ。
「うん、父さんがそのままの姿で行動すると、元連邦国の王族にはバレるだろ?そうなるとトガナキノが、直接、奴隷解放に動いてるってことになって、内政干渉とか色々と面倒なことが起こるじゃないか?」
「ああ、そういうことか!だから、トガナキノとは関係ない人がやってるってことにしなきゃいけないんだ!さっすがあ!お父さんって頭イイ!」
「そ、そうかぁ?そうかなぁ?」
「うん、凄いよ!でも、トガナキノの装備を使わないで魔獣狩りなんてできるの?お父さんだってバレないようにするには、力だってあんまり使えないよね?」
おお、やっぱりテルナドは頭が良いな。感心するよ。トンナ達に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいよ。
「ああ、そうなんだよ、だから、この格好で、トガナキノの最新国体母艦と最新の竜騎士を盗むのさ。そしたら父さんの力を使わなくっても魔獣が狩れるだろ?な?」
「ああ!そうか!じゃあ!お父さんはお尋ね者になるんだね?」
「そうそう、だから、お前には内緒に…」
俺は固まった。
「そっかあ、だからあたしに内緒にしときたかったんだ?」
「…さ、催眠術?」
『そんな訳あるか。』
スーガが溜息を吐く。
テルナドが背筋を伸ばし、顎に人差し指を当てて呟く。
「じゃあ、あたしの役どころは、お父さんに誘拐されたお姫様ってところか…」
テルナドが嫌な笑みを見せる。頬が、若干、紅潮している。
「いいじゃん。いいじゃん!!攫われたお姫様って!なんかドラマがあっていいじゃん!」
俺は項垂れながら頭を抱えた。
事務所には、激しい水飛沫の音だけが響いている。ハルタ、一体どんだけファンデーションを塗りたくったんだ…
「軽く捻って、チョチョイでしたな。」
スーガが書類と睨めっこをしながら呟きやがった。
「ああ、たしかに…チョチョイだったな…」
「なにが?」
テルナドが会話に混ざってくるが、俺は「いや、なんでもないよ。」と応える。
「それで、魔狩りの資格試験ってどんなことすれば良いの?」
ああ、それね。もう、どうでも良いや。
「良いや、このまま、ちょっと魔獣を狩りに行こうか?それで、俺が適性を見るってことで合格にしとこう。」
テルナドが顔を顰める。
「いいの?また、そんないい加減にして。」
俺は小刻みに首を縦に振る。
「いいよ。いいよ。」
スーガが一枚の書類を差し出してくる。
「丁度良いのがあります。出没する時間帯も夜が多いようなので、今から行っていただけますか?」
俺はその書類を受け取り、目を通す。
テルナドが後ろに回り込み書類を覗き込む。
「なになに。実態が判別できない、白い靄のような煙のような物質構成?被害者は気が狂ったように暴れ回る?なんじゃこれ?魔獣か?」
スーガが手を止めて、こちらを見る。
「何か判別できておりません。しかしながら魔獣の可能性も捨て切れませんので、調査という名目で受理いたしております。」
「ふうん。」
想像してみる。
雲霞のような魔虫の群れが可能性としては考えられるか…
サンプルを採って、火炎放射で一掃だな。
『魔虫なら、減数割合に応じた定数増殖に注意する必要があるな。』
そうか、増殖機能があったな。イデアに確認させる必要があるか…
『イデアならメンテから復帰してる。大丈夫だろう。』
俺は立ち上がる。
「よし、行くか?」
テルナドに問い掛ける。
「うん!」
元気よくテルナドが返事する。
激しい水音が、まだ、響いてる。まあ、ハルタはほっとこう。
俺達はベランダに出て、ガラン号に乗り込む。
「瞬間移動で行かないの?」
テルナドがガラン号に接続したビッキーに乗り込みながら、俺に聞いてくる。
「ああ、カルザンがテレビ放映用にってことでな、お前も慣れといた方が良いだろ?」
「そっか。」
止めていた動きを再開させて、テルナドがビッキーの窓から体を捻じ込む。
スーガが運転席の窓を覗き込んでくる。
「カルザン様たちには連絡しなくてもよろしいのですか?」
俺は運転席からスーガへと顔を向ける。
「カルザンは、この前の編集作業で放送局、ドルアジは奥さんとしっぽりやってる。」
スーガが頷いてから首を傾げる。
「ブローニュは?」
俺は顔をひん曲げる。
「ブローニュは、なんか夢見心地で変なことになってるからパス。」
俺との結婚が一歩進んで悶え苦しんでいる。
「うわあ。なんか、父さんにプライベートって知ってる?と、問い詰めたい。」
俺にとってトガナキノ国民にはプライベートはない。
俺が意図すれば、マイクロマシンが全ての情報を送ってくれるからだ。
「プライベートなら知ってるよ。知ってるから邪魔しないように見とくんだよ。」
「うわあ。堂々としてるところが、また、なんとも父さんらしい。」
「心配しなくてもお前達のプライベートは見ないよ。」
そう、家族のプライベートは見ない。こっちがショックを受けることもあるからだ。だから、トンナの変態ストーカー気質を見抜けなかった。
「ま、あたしは、見られて困るようなことってないけどね。」
助手席で頭の後ろで腕を組みながらテルナドが気楽に応える。
「そうだな。トクサヤが生まれるまではヌイグルミを抱っこしないと寝られないとか、その程度だよな。」
後ろで腕を組んだまま、みるみるテルナドの顔が真っ赤になる。
「み、見てんじゃん。」
「偶々な。」
そう、偶々だ。ホントに偶々。
『自分にも嘘を吐けるようになったら、嘘吐きとしては筋金入りの本物だな。』
俺はビッキーのエンジンを始動させる。
ビッキーが持ち上がり、ガラン号に接続される。
「行くぞ。」
「うん。」
ガラン号が静かな霊子エンジンを唸らせ、フワリと離陸した。
お読み頂きありがとうございました。本日の投稿はここまでとさせて頂きます。ありがとうございました。




