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魔狩りのトガリ  作者: 吉四六
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どいつもこいつも俺以外の人間には優しいことが判明した

 御前会議が終わって、コルナを外事警察庁に送り届け、俺は魔獣狩りユニオンの事務所に戻る。スーガは、後片付けやら他部局との調整やらで、遅くなるから先に戻ってくれとのことだった。

 俺がトガリの姿で、と言っても仮面を外したクズデラの姿なのだが、最近では見慣れない、その姿で戻って来たので、トドネとディブアン以外の全員が、一瞬、ギョッとなる。

「お帰りなさいなのです!」

 トドネが元気に迎えてくれる。

「おう、ただいま。」

 俺は会長執務室に向かいながら、「トドネ、悪いが甘めのお茶をくれるか?」と声を掛ける。

「了解なのです!!」

 挙手注目の敬礼をしながらトドネがニッコリと笑う。

 俺が会長執務室に入ると、後ろからゾロゾロとカルザン、ブローニュ、ドルアジの順で入って来る。

「なんだよ?なんで入って来るんだよ。」

 そう言いながら、会長席に腰を落とす。

「いや、だって、気になるじゃないですか、御前会議の結果。」

 カルザンがニッコリ笑う。うん、可愛いぞ。

「せや、ディブアンのことが議題なんやろ?気になるやん。」

 ブローニュが頷きながら俺に迫ってくる。

「ああ、後で、お前のお父様が来るんだ。スーガが戻って来て、全員が揃ったら話すよ。ただ、ドルアジ。」

「へ、へい。」

 ドルアジが姿勢を正す。

「お前は取敢えず家に戻ってくれ、今回の魔獣狩りの報酬は、お前のポイントカードに入れとくから。」

「へ?」

「ち、ちょっと!オッちゃんだけ仲間外れにすんの?そんなん可哀想やんか!」

 ドルアジが呆然として、ブローニュが胸ごと迫ってくる。やっぱり、デケエ胸してやがんな。

『トンナちゃんには遥かに及ばないけどね。』

 うん。

 まあ、あれは、世界遺産的な物だから別物だな。

「オッサンが俺と一緒に魔狩りを続けるって言うなら聞いてもらう。けど、オッサンは俺と一緒に魔狩りはできないだろ?今回の御前会議では、緘口令を敷いたからな。魔狩りを辞めるオッサンには聞かせられねえよ。」

 ブローニュが背中を反らせて、ドルアジの方を振り返る。カルザンはドルアジに視線を走らせ、俺へと向き直る。

 真直ぐな視線で、カルザンが口を開く。

「陛下。」

「うん?」

「緘口令をお敷になったのは、やはり、各国の奴隷解放のためですか?」

 俺は眉を顰める。

 その表情が答えになったようだ。

「わかりました。今後は魔狩りであるとともに奴隷解放の戦士として働けばよいのですね。」

 カルザンの奴、わざとドルアジの前で明言しやがった。まったく。

「お、王様!」

 ドルアジが土下座する。

 またかよ。

 まったく、土下座の達人は、これだから困るよ。

「オッサン、土下座はやめろ。軽すぎるぞ。」

「い、いえ!俺を、わたしを!魔狩りとして使ってくだせい!!」

 およ?

「どういう風の吹き回しだ?」

「奴隷解放の役に立ちたいんでさ!」

 ドルアジが顔を上げる。

「あたしゃ、元奴隷商人だ。そのことを後悔なんざしてやせんし、恥じてもいやせん。ただ…」

 俺は黙ってドルアジの言葉を待つ。

「この国に来てから、わたしの考え方ってものがいっぺんに変わっちまったんです。罪なことをしたと思ってやす。罪なことを選んじまったと思ってるんです。ですから…」

「一人でも多くの奴隷を解放したい、か?」

 俺は、ドルアジの詰まる言葉を引き継いだ。

 その言葉にドルアジが「へい。」と返事する。

「でも、そうなると、俺と一緒に行動することになるぞ?怖い、怖いサラシナ・トガリ・ヤート国王とだ。」

 ドルアジが笑う。

「怖くなくなりやした。」

 今度は俺が驚く番だ。

「どうして?」

「へへ。王様の、その、奴隷を救おうってぇ必死のお働きと、魔獣も無碍には殺したくないってお考えです。」

 俺がキョトンだ。

「わたしゃ、感じたんですよ。この王様は、本当に人のことを大事になさるお方なんだと。人を食っちまう魔獣にだってお優しいんだ。なら、人にだって優しいはずだと。そう思えたら、野宿の時に感じたお人柄が本当のお人柄なんだとわかりやした。」

 ドルアジが項を擦りながら話す。

「そうか…じゃあ、一緒に狩るか?」

 俺の問い掛けにドルアジが元気よく答える。

「へい!狩りやしょう!!」

 うん、よかった。折角、仲良くなったんだからな。

「でも、王様とか国王とかって呼び方はやめろよ。ヘイカなら構わねえけど。」

「いえ、そんな、呼び捨てになんてできやせんよ。…じゃあ、これからは旦那と呼ばさせていただきやす。」

 一〇歳の子供に旦那か。うん、変だぞ?

 変だけど、まあ、良いか。これから、ヘイカ・デシターは天下の大悪党になるんだからな。

「じゃあ、オッサン、立てよ。」

「へい。」

 返事をしながらドルアジが立つ。

「それじゃ、ちょっと、御前会議のあらましだけでも話しとこうか。で、その前に。」

 俺は首を伸ばして、ドルアジの向こう側、ドア越しに事務室の方に声を掛ける。

「トドネ、立ち聞きなんてしなくて良いぞ!こっちに入っておいで!」

 ドアが僅かに開いてトドネが顔を覗かせる。

「えへ、やっぱりバレてるのです。」

 可愛いなぁ。

「いいから入っておいで、お茶も持って来てくれたんだろ?」

「ハイなのです。どうぞ!なのです。」

 ちゃんとお盆に載せて持って来てくれるあたり、やっぱ、しっかりしてるなぁ。

「いいか。これから言うことは絶対に誰にも喋っちゃダメだ。御前会議の内容は緘口令を敷いたからな。家族にも言うなよ。」

 全員が緊張の面持ちで頷く。

「まず、魔獣狩りユニオンはこのまま運営されるが、裏では奴隷解放保護局として稼働する。」

 ドルアジの眼差しが、更に真剣味を帯びる。

「魔獣狩りにかこつけて、他国の奴隷を攫って保護する。当然、非合法組織となる。」

 カルザンが頷く。

「そこで、俺、ヘイカ・デシターを使う。」

 トドネが難しい顔で俺の顔を見詰める。

「ヘイカ・デシターを天下の大悪党に仕立て上げる。魔獣狩り専用の装備をトガナキノから盗み出し、好き放題に暴れ回る大悪党だ。」

 トドネが緊張を解いて、安心した顔つきになる。

「トガ兄ちゃんが普段やってることなのです。」

 グッ

 グッサリ来た…

「いや…トドネ…黙って聞いててくれる?」

 トドネが口を両手で押さえながら「ゴメンナサイなのです。」と頭を下げる。

「と、とにかく、ヘイカ・デシターは、魔獣を捕獲する。その方が高く買い取る業者がいるからだ。で、魔獣を捕獲したヘイカ・デシターは、その魔獣がいた国に報酬を要求する。」

 ブローニュが「ふん、ふん。」と言いながら頷く。

「報酬は奴隷だ。魔獣を捕獲して、生かしておかなければならないから、その餌として奴隷を要求する。」

 ブローニュが顔を歪める。

「エゲツないやっちゃなぁ。デシターってそんなことすんの?」

 うん、馬鹿はほっとこう。

「俺達は、別に起ち上げたトガナキノの魔石買い取り業者と取引をする。その時に保護した奴隷も一緒に引き渡す。」

 全員がウン、ウンと頷く。

「俺達は、トガナキノから魔獣狩りの装備品を盗み出した悪党だから、トガナキノから追われることになる。」

 カルザンが目を眇める。

「ち、ちょっと待ってください。い、今、俺達って言いましたよね?」

「言ったか?」

「い、言いました。ハッキリと俺達って言いましたよ。」

「言ったかな?」

「言いました!」

「そうか?聞き違いじゃないか?」

 カルザンが肩の力を抜いて溜息を吐く。

「わかりました。じゃあ、言っていないってことで良いです。でも、私は、奴隷を解放するためなら犯罪者扱いされることも厭いませんが、トガナキノに戻って来れなくなるのは勘弁して頂きたいです。」

 俺はニッコリ笑って頷く。

「その辺のことは、当然、考えてるよ。オッサンには家族もいるしな。ヘイカ・デシターの仲間として活動する時は、特別出張扱いになるから、バレないようにするよ。」

「旦那。」

 ドルアジが難しい顔のまま俺に声を掛けてくる。

「なんだ?」

「魔獣はどうなさるんで?そんなにタイミングよく魔獣が出てくるとは思えねえんですがね。」

 俺は、もっともだと頷く。

「魔獣を、ターゲットにしてる国に追い込むか、キバナリに頼もうと思ってる。」

 全員が納得顔で頷く。

「最初は、段取りをつける練習ってことで、キバナリに頼むつもりだ。」

「わかりやした。すいやせん、余計な口を挟んで。」

「いや、他にも疑問に思ったことは聞いてくれ、お前達には無理を頼むからな。」

 ブローニュが大きな笑顔を見せる。

「そんなんかまへん。あたしは、ちょっとワクワクしてんねん。」

 ブローニュの言葉を受けてカルザンも笑う。

「そうですね。まともな魔狩りと悪の魔狩りの二重生活ですか。城にいた頃は想像もしていなかった生き方です。」

 ドルアジが俯きながら笑う。

「まったくで、まさか、この年になって、こんな大きな荒事をやる羽目になるたぁ。まったく…人生捨てたもんじゃありやせんね。」

 トドネが眉を顰めて、俺を見詰める。

「私も魔狩りになって頑張るのです。」

「そりゃ駄目だ。トドネは此処で受付してくれなくっちゃ。」

 トドネの眉が下がって、口を窄める。そんな拗ねた顔したって、ダメなもんは駄目。可愛いけどダメ。

 ノックの音が訪いを告げる。

「陛下、只今戻りました。」

 くぐもったスーガの声だ。

「おう。入れよ。」

「失礼いたします。」

 俺がこの部屋に居る時は、王様扱いしやがるんだよな。キッチリしてやがるよ。

 スーガに続いてヘルザースが入って来る。

「ブローニュ、お父様に椅子ぐらい出してやれ。」

「ちょ、お父様って言うなや!」

 顔を赤くしたブローニュが、部屋の隅から椅子を持ってくる。

「いや、お気遣いは無用でございますぞ。」

 ヘルザースが俺とブローニュの遣り取りを見ながら鷹揚に応える。

「いや、ジジイには気を遣わねえとな。」

 俺の一言でヘルザースの動きが止まる。

 ブローニュがヘルザースの後ろに椅子を置き、ヘルザースが「うむ。ありがとう。しかし、椅子は必要ないな。」とブローニュに笑い掛ける。

「ジジイが無理すんなよ。腰が(いて)えだろ?」

「はっはっはっは。この国では腰痛など発生いたしませぬ。ですから、お気遣いなく。」

「トガナキノでは病気がすぐに治っちまうからな、いやあ、敬老精神を養うのが難しいわ。だから、座れよ。」

「敬老精神など私には不要でございますぞ。まだまだ、(わこ)うございますからな。」

「はっはっはっはっはっは。白髪頭に皺くちゃの顔で、よくもそんなことが言えるな。神経と心臓だけは大した図太さだ。」

「はっはっはっはっは。どこぞのクソガキのお蔭でございます。神経が図太くなければ、今頃、神経疾患で死んでおりますでしょうな。」

「はっはっはっはっはっは。」

「はっはっはっはっはっは。」

 お互いに笑いながら睨み合って、定例の挨拶が終了となる。

 いつか刺し違えてでもコイツを酷い目に合わせてやる。

「さて、では、いつものご挨拶が済んだところで、本題に入りましょうか。」

 スーガが執り成す。

「一応、コイツらにはある程度の話はしといたよ。」

 スーガが頷きながら「左様でございますか。それは結構でございます。」と澄ました物言いで、応える。

「いや、お待ちくだされ。」

 ヘルザースが待ったを掛ける。

「どうした?」

 ヘルザースが困り顔で「はあ、その、娘を魔狩りから…」と口ごもったところでブローニュがヘルザースに呼び掛ける。

「お父様。」

 ブローニュがニッコリ笑いながらヘルザースに近付く。

「私、魔狩りになりましたのよ。トガリ陛下と一緒にいられるだけで、大変光栄なことと理解しておりますの。でも、先日は更に栄誉なことがございましてよ。」

 誰これ?

 仕草まで貴族みてぇになってるけど、どこのどなたさんですか?

「私、トガリ陛下からのプロポーズをお受けいたしましたの。」

「はああああああああああああっ?????」

 全員がこっちを向く。

 いや、ブローニュは俺の大声を無視して、ヘルザースに話し掛けてる。

「陛下ったら、私のどこがお気に召したのか、私の長年に渡る努力が、遂に叶ったのです。」

 俺も含めて全員がポカンだ。

「ですから、私も陛下の手足となって魔狩りに精進するつもりですのよ。」

 語尾に「ふふっ」てお淑やかな女性風に笑っているが、俺にはブローニュが悪魔に見えてきた。

「ま、待て!待て!待て待て待て待て!!」

 全員がこっちを見る。ブローニュの視線が痛い。慈しむように俺を見てる。

「してない!俺はプロポーズなんて一切!してない!!」

 俺は両手を振り回し、体を目ぇ一杯使って否定する。

「どこをどうやって!どうしたら、その結論に辿り着く?!俺が、一体、いつ!どこで!そんなこと言ったよ!」

 ブローニュの目付きが冷めたものに変わる。

「あら、一昨日の夜、ビッキーの中で、私を、この二人の前で辱められたじゃありませんか。あんなことをされては、私、お嫁に行くことができませんわ。」

 え?あれって、そうなるの?体臭がキツイって二人の前で言ったらお嫁に行けなくなるの?

「国王陛下が、なんの罪もない行政院第一席の娘にお嫁にいけないほどの辱めを与えたのですよ?ならば、陛下が責任をお取りになるのが国王としての当然の務めですわ。」

 コイツ、当然ってところをやたらと強調しやがった。

「それに、トンナ陛下に国王陛下の嫁になりたいか?と聞かれました。私はハッキリとなりますと答えましてよ。」

 え?

 トンナ、嫁になりたいかって言ってた?

『いや、女になりたいかって言ってたな。』

 だよな。

「いや、トンナは女になりたいかって…」

「あら、トガリ陛下は側室をお取りになりますの?」

「いや、その…」

「じゃあ、后ですわね。」

 そ、そうなるか…ならねえよ!

「いや、そもそもの、話その物がおかしいじゃねえか!」

「どうしてですか?」

 カルザンが介入してくる。

 俺は高速で首を振ってカルザンを見る。

「お、おかしくねえの?」

 カルザンが頷く。

「国王なんですから、女性から好きと言われれば、全部、受け入れなければ。」

「はあああああああ?」

「私が皇帝をしている時は、そのようにルドフィッシュから教えられましたよ?」

 え?

 トンナの理屈って無茶苦茶だと思ってたけど、そうでもないの?

「ま、なんにせよ目出度いことだ。」

 ヘルザースが苦々し気に吐き出すように言いやがった。

「目出度いもクソもあるか!!」

 俺はヘルザースに近付き、肩を掴んで、部屋の隅に移動する。

「如何なされたのです?」

「お前、良いのか?自分の娘が俺の嫁になるって言ってんだぞ?史上最低王の后になるって言ってんだぞ?お前、来期も行政院第一席に立候補するんだろ?マイナス要因になるぞ?」

 ヘルザースが冷めた表情で口角を上げる。

「あの娘は、自分の体臭を大変に気にしておりましてな。」

 俺は眉を顰める。

「私が、お前の体臭は好きな者にとっては、大変に好まれるものだから気にすることは無いと申したことがあったのです。」

 口が半開きになる。

「すると、その日からでございます。私が眠ると、娘が毎夜の如く私の枕元に立ちましてな。」

 俺は目を眇める。

「私の鼻先に自分の脇を近づけ、好きになれ~。この臭いが好きになれ~。と囁くのでございます。」

 俺の口はもはや全開だ。

「朝になりますと、わざと体臭が匂ってくるような格好をして、私の周りをうろつくのです。」

 俺の首が傾いでいく。

「娘にしてみれば、父親で実験しているつもりだったのでしょうが、地獄のような日々でございました。それを思えば、陛下に可愛い娘を取り上げられることなど大したことではございません。」

 コイツ、娘を俺に押し付ける気、満々だ。

「へ、変態をものの見事に育て上げやがったな…」

 俺の言葉を受けて、怒るどころか軽く会釈しやがる。

「はい。見事に変態として育ちましたが、こうなれば、魔狩りとして、后として、娘を陛下にお渡しする覚悟ができ申した。娘をよろしくお願いいたします。」

 ひ、開き直りやがった…

 俺は踵を返して音を立てて執務机まで戻る、皆にわかるように椅子にも音を立てて座る。

「ブローニュ。」

「はい。」

 俺はブローニュを睨む。

「トンナは合格だと言ってたが、あと、アヌヤ、ヒャクヤ、コルナの試練が待ってる。そのつもりでいろ。」

『諦めたね。』

 クズデラ、嬉しそうだな?

『色んな娘と楽しめるじゃない。いっそのこと、カルザンにも手を出しちゃおうよ。』

「頑張るわ!」

 両手で拳を作ってガッツポーズ。

 そんなにヤル気にならなくっても良いのに。

「陛下、話を進めてもよろしいですか?」

 俺は項垂れながら手を振って、話を進めろと指示する。

 スーガが頭を下げて「では。」と言ってから、立て板に水の如く話し出す。

「まず、魔獣狩りユニオンの現加入者には、ヘイカ・デシターの仲間となっていただき、陛下が明日にでも建造なされる魔獣狩り専用国体母艦を盗んでいただきます。」

 全員がスーガの話を頷きながら聞いている。

「魔獣狩りユニオンの補充人員は、この度、創設される奴隷解放保護局の局長以下、局員が加入者として活動いたします。」

 全員が「ほお。」と言いながら話を聞く。

「皆さんには、姿を変えて、ヘイカ・デシター一味として活動していただき、普段は普通の魔狩りとして活動していただきます。ヘイカ・デシター一味としての活動は奴隷解放保護局から指定された国に赴き、魔獣を狩り、奴隷を連れ去ること、そして、魔石買取業者に魔獣と奴隷を引き渡すこと、以上です。」

 全員が「ふん、ふん。」と頷き、カルザンが難しい顔でスーガに問い質す。

「ちょっと良いですか?」

「どうぞ。」

「その、ヘイカ・デシター一味として魔獣を狩って、普通の魔狩りとしても魔獣を狩るんですか?」

 スーガが頷く。

「人員の補充ができるまでの間は、そうなりますね。」

 なに?

「それは、ちょっと無理がありませんか?物理的にできるでしょうか?」

 スーガがニッコリと笑う。

「頑張ってください。」

 俺は音を立てて立ち上がる。

「ち、ちょっと待て。それは忙しすぎるだろ!」

 スーガがニッコリと笑う。

「頑張ってください。」

「いや、頑張ればなんとかなるとかいう問題じゃねぇだろ!」

 スーガがニッコリと笑う。

「頑張ってください。」

 ダメだ。交渉することさえ否定されてる。

 ヘルザースが呆れ顔でスーガから話を引き継ぐ。

「とにかく、補充人員は即急になんとか致しますので、それまでの間は四人で魔獣を狩りまくってくだされ。なんと言っても、陛下は普段から、俺は王様なんかじゃねぇ。俺は魔狩りだからな。と、公言なさっておられるのですから。」

 グッ

 そ、その通りなだけに言い返せねえ。

 ブローニュは脳内お花畑状態なのでホワホワしているが、カルザンは冷めた目で俺を見詰め、不安気な表情でドルアジが視線を送ってくる。トドネが自分で自分を指差してるのは視界に入らなかったことにしよう。

 俺は項垂れながら溜息を一つ吐いた。

「では、私はこれにて失礼させていただきます。あと、陛下。」

 ヘルザースの呼び掛けに顔を上げる。

「明日中には国体母艦三隻、よろしくお願いいたしますぞ。」

 その言葉を聞いて、俺は「わかってるよ。」と力なく応え、もう一度、溜息を吐いた。

「ああ、それと、もう一点。」

 スーガが思い出したように口を開く。

「あのディブアンなる子供ですが、しばらくの間、私が引き取ります。」

「え?」

「私はインディーナスカ語を話せますし、家には女の子もおりませんので。」

「そ、そうなの?」

「はい。そういうことでよろしいですか?」

 俺は頷く。

「う、うん。そうしてもらえると非常に助かります。」

「では。」

 そう言ってスーガがヘルザースと共に部屋を出て行く。

「スーガさんて良い人ですね。」

 うん。鬼みたいな奴だと思ってたけど、案外良い奴だった。うん。

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