親子
「さあ…殺し合いだ…」
男が、なんの感情も乗せずにそう呟いた。
「分裂したぐらいで朕に勝てると…」
少年の呟きが止まる。
男の両肩から、スーツの袖から抜け落ちるようにして、その右腕と左腕が、音を立てて床に落ちたのだ。
落ちた腕から、肩、胸と、裸体の男が再生されていく。
スーツを着た男を中心に、裸体の男が二人並んでいた。
裸体の男達が立ち上がりつつ、その体に服を纏う。
中心の男と同じ黒いスーツだった。
スーツを纏ったばかりの、二人の男が、その片腕を床に落とす。
右側の男は右腕を。
左側の男は左腕を。
「数を増やしたところでマイクロマシンの制御は…」
少年の言葉が、再び、中途半端に止まる。
中心に立つ男が笑みを浮かべている。
「俺の身体には三十八個の霊子回路がある。」
少年の眉根が歪む。
「その霊子回路も再生される。」
男の言葉が終わると同時に、少年が動いた。次々と増殖する男、これ以上増えさせてはダメだ。
その直感が、少年を動かした。
粒子化光速移動。
自身の身体を粒子にまで分解し、亜光速で移動、目標地点にて自身の身体を再構築する。
粒子になっての移動の場合、空気の粒子の間隙を進むため、衝撃波そのものは発生しない。
しかし再構築の速度を音速にまで上げれば、物質構築時に空気を圧縮し、それは、衝撃という波となって、周りにある物を吹き飛ばす。
少年は、中段突きの構えのままに自身の身体を再構築した。
亜光速で飛んで来る突き技である。
男が喰らえば、その腹に穴が開き、衝撃波によって千切れ飛ぶ筈であった。
少年の予想通りに男が千切れ飛ぶ。
衝撃波に逆らって、男の上半身が、右腕で少年の首を掴む。
「くっ!」
男の上半身から、消えた下半身が生まれ、吹き飛んだ下半身からは、上半身が生まれる。
男がズボンを再構築しながら、少年の顔に膝を叩き込む。
「がっ!」
躱すことのできない少年は、まともに男の膝を喰らった。
両サイドの二人の分裂体が少年に拳を飛ばす。
「くおっ!!」
粒子化光速移動。
少年が消え、男の頭上で再構築。
「ふんっ!!」
高密度の空気が、少年の右腕で渦を巻く。
二万気圧にまで加圧した空気の渦。
周囲の空気が、一瞬で少年の右腕に収束し、的となっていた男が、その吸引力に引き摺られる。
その空気の渦を男の頭に叩きつける。
轟音を鳴り響かせながら、指向性を持たせたまま、その空気の塊を解放、磨り潰されるようにして、男が一瞬にして血に塗れた肉片と成り果てる。
他の男達が少年の顔を狙って足を飛ばす。
再び、粒子化光速移動。
「けっ!!」
行方を知っているかのように、男の顔が上を向く。
三人の男が同時に飛び、何もない空間に向かって跳び側頭蹴りを放つ。
高さを変えた蹴り足が三本。
その中心に少年が現れる。
「がっ!!」
頭、腹、足と、同時三カ所に蹴りを受ける。
少年の頭蓋内に骨の折れる音が鳴り響く。
錐揉みをしながら少年が弾け飛ぶ。
落下地点には、既に別の男達が待ち受けていた。
粒子化光速移動。
少年が、男達から距離を取って現れる。
同じ姿形をした男達が群れとなって少年へと走る。
走らない男達は次々と増殖を繰り返す。
「ちっ!」
少年が左手を前に向ける。
少年の左腕が光る茨を纏い、その掌から荷電された粒子を撃ち出す。
塊となっていた男達が消し飛ぶ。
同時にマンションの廊下を囲っていたコンクリートの壁と天井が蒸発しながら吹き飛んだ。
光り輝く粒子の塊が、一条の線となって空へと吸い込まれる。
「へっ派手にする。」
男が呟きながら、次の一団を送り込む。
少年が右手を差し出し、今度は右手から荷電粒子を撃ち出す。
最上階とはいえ、屋上にはエレベーター機械室の塔屋もある。
その屋上が、二発の荷電粒子によって脆くも崩れ落ちる。
「ちっ」
男が伊敷を拾い上げながら、空へと逃れる。
次々と増殖していた男が十数人にまで減っていた。
その対面には少年が飛翔している。
高空にあって男が周囲を見回す。
二発の荷電粒子は、街にハッキリとした爪痕を残していた。
「酷いことをする。」
男が無表情に呟く。
「どうせ、戦争になるんだ。かまわないさ。」
少年が平然と答える。
「それよりも…」
少年が言葉を区切って笑う。
「分裂体の数が少なすぎて、朕のマイクロマシンを奪うことができないんじゃないのか?」
男が少年を睨む。
男の演算能力が、少年の演算能力を上回る前に、少年が大量の男達を荷電粒子で消し飛ばしたのだ。
「それに、分裂するにもある程度の大きさが必要なようだ。さっき磨り潰してやった奴は分裂しなかったしな。」
だから、少年は荷電粒子を繰り出した。
少年が消える。
男が伊敷を放り出し、他の男が伊敷を受け取る。
男が虚空に向かって蹴りを放つ。
少年が現れ、その蹴りを顔面に受ける。
男は、少年の発生させた衝撃波に吹き飛ぶ。
その先に、少年が荷電粒子を右手から撃ち出すが、男は既にそこにいなかった。
建物を蒸発させながら荷電粒子が地面に穴を穿つ。
「お楽しみはこれからってことだ。」
男と少年が笑い合った。
「トロヤリ、どうしてお前が此処にいる?」
黒いスーツ姿の男が、長髪の少年に問い掛けるが、少年は黙したまま、男を見詰めていた。
男が俯き溜息を吐く。
「今すぐ、俺の家族を連れて国に帰れ。」
男が憐れむ瞳で少年に話し掛ける。
「父さん」
少年が口を開く。
父さんと呼ばれた男が顔を上げる。
「僕と一緒に帰ってよ。」
少年の言葉に男の眉が顰められる。
「俺の世界は此処だ。ソッチには帰らん。」
「うあああああああああああっ!!」
少年が絶叫しながら走った。
男が不快感に顔を歪ませる。
少年の真直ぐな突きを男が左手で払う。
男の左を滑るようにして少年が転がり抜ける。
男が首を鳴らしながら、少年へと体の向きを変える。
「お仕置きが必要だな…」
気だるげな表情、退屈な空気を隠そうともしない男が、右手をズボンのポケットに入れたまま、少年を見下ろす。
男が少年に近付く。
少年の瞳に浮かんでいるのは恐れ以外の何物でもなかった。
少年は男を父さんと呼んだ。
年の頃は六歳。
物理的に父に逆らえる年齢ではない。
心理的にも同じだ。
管理、監督、制御、教育、矯正、支配、いずれも与える側と与えられる側が存在する言葉でありながら、その意味合いは違う。
しかし与えられる側に、その意味の違いは分からない。
知らない内に管理され、監督され、制御され、教育され、矯正され、支配される。
いずれも、与える側の意図によって、その言葉が変わる。
子供は、その感情で言葉を使う。
宿題をしなさいと叱られるのか、助言されるのか、強制されるのか。
与える側が躾けだと言えば躾かもしれない。
教育だと言えば教育かもしれない。
男は、今、少年を躾けるつもりだったからお仕置きという言葉を使った。
しかし少年にはそう思えなかった。
怖い。
感情が、心がそう叫んでいた。
ちがう。
こんなの父さんじゃない…
こんなに怖い父さんなんて見たことがない。
どうして、そんな、そんな目で僕を見るの…?
「悪い子だ」
ウソ…父さんが僕をそんな風に言ったことなんてなかった…
僕の顔を見れば、いつも笑って抱き上げてくれたじゃないか…
父さんの手が僕の襟を掴む。
持ち上げられる。
この手は父さんの手だ。
風切り音。
風景が変わる。
空が見えて、小さな建物が、入れ替わり、入れ替わり、次つぎと見える風景が変わっていく。
なに?
なにが起こった?
『トロヤリ!気をしっかりと持てっ!!』
源也オジサン?
『飛ばされたんだ!!下を見ろっ!』
した?
屋根瓦が小さく見える。
玩具の家が並んでる?
『上空四十メートル!父親が来るぞっ!!』
影が僕を覆う。
父さんだ。
凄い形相で僕を睨んでいる。
右手を振り上げて、どうするつもり?
「ぶっ!!」
お腹が痛い…
「がっ!!」
い、痛い…こ、呼吸ができない。
『しっかりしろ!』
源也オジサン、い、一体なにが起こったの?なに?
『お前は父親に叩かれたんだ。叩かれて地面に激突した。』
じ、地面に?
『そうだ。私がお前の身体を強化した、だから生きているが、しっかり防御しろ。』
ぼ、防御?
『くっ、いいから立て!来るぞ!』
「な、何が起こってるんだ…」
「…」
黄瀬が呟き、樫本は言葉を発することもできなかった。
男が少年の襟を掴み、後方へと放り投げたように見えた。
実際に放り投げたのかどうかは見えていない。
男の最初のポーズと最後のポーズがそのように物語っていただけだ。
少年が消え、男も消えた。
二人を発見したのは樫本だった。
「う、上だ。」
その言葉で、上を見るが、黄瀬には発見できなかった。
樫本が屈んで、かなり上の方を見ているのを確認して、その視線の先を黄瀬も追った。
「な…」
言葉が出て来なかった。
ロールカーテンと暗幕の隙間に見えた二人は、遥か高空にいた。
男が少年を右手で叩く。
少年の姿が、再び消えた。
その直下で轟音と煙が上がる。
家の庇が吹き飛び、電柱が揺れて、電線が音を立てて伸縮を繰り返す。
その光景を見て、黄瀬が「な、何が起こってるんだ…」と呟き、樫本は答えることができなかった。
近隣の住民たちが窓から顔を出している。
かなりの音が響き渡っていた。
気になった住人が、家から出て来て、何が起こっているのかと周りを見回す。
「お、応援を…」
黄瀬が携帯を取り出しながら、そう声に出した。
「それは困る。」
黄瀬と樫本が同時に振り返る。
白いスーツ姿の男が立っていた。
二人は何が起こったのかわからなかった。
思考が止まった。
白いスーツ姿の男は、外で少年と戦っている黒いスーツ姿の男に似ていた。
着ている服と眼鏡を掛けているのが違うだけで、人としては全くの同一人物だと思えた。
その男が、目の前にいる。
「き、きさま…」
樫本の言葉を男の右手が遮る。
二人は動けなかった。
動かなくなった。
男がどこか遠くを見詰める。
「そっちはどうだ?」
『住民の避難は開始したよ。』
『マイクロマシンの散布は完了、結界を構築するね。』
「よし。カナデラの結界構築作業が完了次第、トロヤリとリンクを結ぶ。」
樫本と黄瀬が、夢遊病者のように立ち上がり、揺れながら部屋を出て行く。
男はその姿を静かに見守り、一人になって、そして、消えた。
男が、少年に覆い被さるようにしてその顔を覗き込む。
少年は反射的に顔を右手で庇った。
男が右手を高く上げた。
右手が消える。
アスファルトを削り取った痕跡を残して少年が消える。
家のカーポートから破壊された車やクーラーボックスなど、様々な物品が吹き飛び、壁の一部が破壊され、掃き出し窓が粉々に砕ける。
男が壊れた家を覗き込む。
家を貫通する穴。
二軒の家を貫通していた。
男が、その穴から家に上がり込み、家を出る。
二軒目の家を通り、道路に出る。
少年が倒れていた。
男が右足を上げる。その直下には少年の顔があった。
「待て。」
男が足を地面に下ろす。
少年を跨ぐようにして立つ男が、声のした方に顔を振り上げる。
空中に、白いスーツ姿の男がいた。
自分と同じ顔をした男だった。
違いは着ている服と眼鏡だった。
「何森…テメエ…」
男の顔が憎しみに歪む。
男と白いスーツ、何森と呼ばれた男が睨み合う。
男は感情をその視線に乗せ、何森はなんの感情も露わにしていない。
「マサト、お前、ズレたな。」
何森が口を開く。
「ああ?」
マサトと呼ばれた男が、怒りを吐き出すように応える。
「霊子体、精神体の周波数が俺達とズレた。だから、俺達と話せなかった。」
マサトが顔を伏せ「ちっ、そういうことか。」と、呟く。
「兎に角、マイクロマシンを散布したからな。俺達はこの周辺の住民を避難させる。」
何森の言葉にマサトが顔を上げる。
「なに?じゃあ、プロトタイプゼロにもマイクロマシンを使われるじゃねぇか。」
マサトの言葉に何森が微笑を浮かべる。
「ソッチは大丈夫だ。お前は、お前の家族をトガナキノに送りたいんだろう?だったら、ソッチに集中しろ。」
何森の言葉に、マサトが更科家の方へと視線を転じる。
再び何森に視線を戻した時、そこに何森はいなかった。
「ちっ」
マサトは、ハッキリと舌打ちした。
『トロヤリ、意識をハッキリ保て。』
無理だよ、源也オジサン。
『何が無理なんだ。立て。』
無理だ。あんなに怖い父さん、見たことない。
『父さん?あれが、お前の父親だと思っているのか?』
源也オジサン?
『違う。俺だ。イズモリだ。』
イズモリさん?
『目を開いてよく見てみろ。』
トロヤリが、薄っすらと目を開く。
ボンヤリとした影が、焦点を合わせて一人の男をハッキリと映し出す。
黒いスーツ姿の男、マサトが喋っていた。
マサトの視線を追う。
宙に浮かぶ白いスーツを身に纏ったイズモリと話していた。
『目の前の男はマサトだ。お前の父親、トガリとは違う。』
イズモリはマサトと話しながら、トロヤリに話し掛けていた。
そのイズモリの言葉にトロヤリが目を眇める。
『よく見ろ、お前の父親はこんなにも老けていたか?こんなにも卑しい顔をしていたか?』
トロヤリの目に、徐々に、徐々にだが、力が戻る。
『奴は、お前の父親じゃない。トガリの人格が崩壊して、別人格となったマサトであってトガリじゃない。』
トロヤリが両手に力を込めて上体を起こす。
『俺とカナデラ、イチイハラの力でお前のフォローをしてやる。』
マサトが視線を下に向けた。
弱々しい怯えた小動物。
マサトはトロヤリのことをそう思っていた。
しかし視線を下に向けた時、そこには牙を剥いた獣がいた。
トロヤリの胸骨が波打ち、頭が跳ね上がる。
背筋と肋間筋で頭が高速で跳ね上がったのだ。
それを見て取ったマサトは、自分の股間にトロヤリの頭突きがくると直感した。
マサトが両腕をクロスさせて、自分の股間をガードする。
トロヤリの胸骨が、あり得ない角度と柔軟性で曲がり、頭が、その更に下を通り過ぎる。
マサトは尻を蹴られた。
前に向かってたたらを踏む。
振り返る。
片足でしゃがんで、もう片方の足を高く蹴り上げたトロヤリの後姿。
「貴様、父親に向かって…」
マサトは言葉を途中で呑み込んだ。
トロヤリからハッキリと伝わってくる熱量を感じたためだ。
トロヤリが上げた足を回しながら、片足でゆっくりと立ち上がる。回した足に引かれるようにして、トロヤリの身体がゆっくりと回る。
立ち上がる。
上げていた足が地面を踏みしめる。
右足を一歩、踏み出した格好で、膝を曲げ、その両手を前に突き出す。
小指、薬指、中指、人差し指と順に握り込み、親指で握る。
左拳が出来上がる。
右手は、小指と薬指を折り曲げ、中指と人差し指、そして親指を鉤状に曲げる。手首を反らして手根部をマサトに晒す。
左手は拳、右手は様々な局面に対応できるように自在拳をつくる。
『この形は、拳にもできるし、掌底で打つこともできる。指先を鍛えていれば、弧形拳にもなる。でも、一番、肝心なのは、手首を反らすことだ。』
『反らすこと?』
『そうだ。手首を反らすと、自然と脇が絞まって広背筋に力が溜まる。』
『ホントだ。脇が絞まってる。』
『だろ?脇が、よく絞まるように指をこの形にして、手首を反らすんだ。』
『へえ。』
『この手の形、ヤート流では自在拳って言うんだ。』
『うん。わかった。』
「ふうううううううううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅ…」
長い呼吸。
トロヤリが体の芯から息を吐き出す。
『いいか、長い呼吸が大事なんじゃないぞ。』
『そうなの?』
『そうだ。要は、霊子を体の中で回すことが大事なんだ。』
『回す?』
『そう、人間の身体ってのは、ジッとしていても動いている。』
『どういうこと?』
『ジッと立っていても、呼吸もするし、心臓だって動いてるだろ?』
『あ、そうか。うん、動いてる。』
『呼吸して心臓が動いているってことは血も体中を奔り回ってる。その流れに霊子を乗せるんだ。』
『どうやって?』
『霊子は指向性を持っているから霊子なんだ。だから、イメージだよ。そのイメージを体の中で作るんだ。一旦、息を吐き出し、血流を自分の意志で回しているように意識する。吸い込んだ時に血流を止めるイメージ、そのイメージに沿って霊子が回るようになる。』
「すうううううううううううううううううぅぅぅぅ…」
トロヤリが体の深い所へと空気を送り込む。
『この呼吸法は新神武道でも基本の呼吸法になってる。』
『じゃあ、母さんに、父さんが教えたの?』
『そうだよ。でも、お前にできるかどうかわからないけど、この先がある。』
『先が?』
『ああ、獣人の母さんにはできないことだ。』
『母さんにはできない?』
『回した霊子を回したままに、外に溢れさせるんだ。』
『溢れさせる?』
『ああ、回転した霊子は、周りの幽子を引き寄せ、その場にお前の制空圏、まあ、つまり、結界だな。その結界を作り出す。』
トロヤリの身体が蒼白く発光する。
ボンヤリと輝く光が、次第にその光量を引き上げ、その範囲を広げる。
「ちっ虚仮脅しを…」
マサトが、その光を無視して足を前へと進める。
マサトの爪先がその光に触れる。
引き摺り込まれるようにして、マサトの爪先が、あらぬ方向へと向きを変え、バランスを崩したマサトは、全身でその光に接触した。
「なにっ!?」
激流に翻弄されるように、マサトの身体が振り回され、弾き飛ばされる。
「ぐあっ!!」
マサトは激しくアスファルトに叩きつけられた。
『その結界は物理作用を持っている。だから、相手を弾き飛ばしたり、引き寄せたりすることができるんだ。』
『へえ』
『まあ、できるようになるかどうかはお前の修練次第だがな。』
「できるようになったよ。父さん。」
トロヤリが呟きながら、倒れたマサトに向き直る。
「やっぱり、お前は父さんじゃない。」
マサトは両手を地面についたまま、黙って、トロヤリの言葉を聞いていた。
「父さんなら、ヤート流霊子操術に弾き飛ばされる訳がない。」
トロヤリは、構えながら、堂々と言い放った。
お読みいただきありがとうございました。各話が長くなって申し訳ありません。設定に沿ってのストーリー進行となっておりますので、随分とややこしい作品になってまいりました。ここまで見捨てずに読んでいただいている方には感謝しかありません。ありがとうございます。
本日の投稿はここまでとなります。もうすぐ完結です。ありがとうございました。