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魔狩りのトガリ  作者: 吉四六
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犯罪行為には手を染めてはいけないと思っていても染めてしまうのです

 マイクロマシンの数は少ない。

 周囲の状況を知るには心許ないし、粒子化光速移動、瞬間移動もできない。

 視認できる距離なら、自分の体を分解して移動することはできるが、移動先の状況がわからない状態では、物質化した時に何が起こるか判断できないので危険だ。

 粒子が、物質が重なる状態になれば、そこで核爆発が発生する。

 だからと言って、無制限にマイクロマシンを流入させるのもよろしくない。

 この世界にはプロトタイプゼロがいる。

 奴にもマイクロマシンが使える。この世界に問題を起こす原因になる。奴が画策する戦争勃発に手を貸すことになる。

 マイクロマシンの流入を制限する必要がある。

 ブラックホールに作った分体を使って、ブラックホールその物をコントロールし、マイクロマシンの流入を制限する。

 制限したマイクロマシンの量では、俺の周囲六メートル程を取り囲む程度だ。

 しかし、それでも十分だ。

 俺の体内には、霊子回路とマイクロマシンがあり、トガリの世界にある量子コンピューターと波状量子コンピューターは世界線を越えて俺とのリンクを結んでいる。その俺の周囲にはマイクロマシンと量子情報体が、右目は粒子さえも見ることができ、右耳はあらゆる周波数の音を拾う。

 そして、俺の霊子体はあらゆる周波数に合わせることができる。つまり、物質の質量方向を自由に変換し、触ることなく物質を動かすことができる。

 チートだ。

 この世界においても俺はチート能力を持っている。

『自由に使える霊子量は減って、意識の割合はブラックホールと向こうの世界に割り振っている。しかも、ブラックホールはその超重力で分体に影響を与えるから、スピードも落ちている。その点を忘れるな。』

 わかってる。

 意識を割り振っているからには分体からの影響を本体も受ける。

 トガリ世界の分体は保存カプセルに入れられているだけではなく、その目を塞がれ、耳も塞がれている。寝転がっている感覚は微妙にだが伝わってきているが、本体の感覚器官に影響が出ないように保存されている。

 こちら側でも、今、俺が使っている身体とスーツケースに仕舞ったトガリの身体を保存する場所が必要だ。

 金が要る。

 犯罪行為にも手を染めることになるだろう。

 だから、俺、マサトとは違う戸籍も必要だ。

 マサトは一介の公務員であり、聡里の夫であり、咲耶の父なのだ。犯罪行為が発覚すれば、家族が苦しむ。

 チート能力を使って犯罪とは立証できない形で犯罪行為をする。だが、犯罪を行っていることに感づかれる可能性は残る。

 犯罪行為をなるべくしない形で、プロトタイプゼロを探し出す。

 金を作るか?

『いや、紙幣は賛成しかねる。(きん)を売る方が間違いないだろう。』

 足が付かないってことか?

『そうだ。紙幣には通し番号がある。』

 (きん)を売るのに身分証が要るな。

『正規の物を複製する。その為に戸籍をしっかり作っておいた方がイイだろう。』

 どうする?

『適当なファーストフード店に入れ。コンセント、スマホを充電できる店にな。』

 了解。

 街角で見かけたファーストフード店にフラリと入り、適当なセットを注文する。

 店員に「お持ち帰りですか?」と聞かれて、「店内で食べます。スマホを充電できますか?」と聞き返す。

「はい、できますヨ。」

 女性店員がにこやかに返答してくれる。

 俺はスーツの内ポケットに右手を差し入れると同時に財布を再構築し、財布の中には小銭を再構築する。

『早速、法を犯したな。』

 小銭なら偽物になることはないだろ?

『まあな。』

 金を支払い、注文した品物を待つ間に店内を見回す。

 久しぶりに見る現代日本の風景に感慨を抱く。

 注文したセットの載ったトレーを持って、二階席に移動する。

 周りに、なるべく人のいない席に座り、テーブル横の壁に据え付けられているコンセントを確認する。

 プラグ付きのUSBを再構築する。

 スマホをポケットの中で再構築して取り出し、左手に持つ。

『よし、USBポートを左手に作る。』

 え?

 俺が聞き返す間に俺の左掌の側面、小指側にUSBポートが構築される。

 なんだよこれ?

『コンセントにプラグを挿し込め。』

 で、USBは俺に挿し込むのか?

『当然だろう?この流れでUSBをスマホに挿し込んだら、お前は馬鹿認定されるぞ?』

 感電しねえだろうな?

『絶縁体で保護してある。神経節と繋ぐから痺れる感覚はあるがな。』

 もう、頼むぜ?

 プラグをコンセントに挿し込み、USBをスマホに挿し込むふりをして、俺の左手に作ったUSBポートに挿し込む。

 左手が俺の意志に反してピクリと跳ねる。

 結構、痺れたぞ?

『俺達の意識を電気信号に変換して電線に流す。』

 話、聞いてる?

『聞いてる。どうでもイイからスルーした。わかったのか?』

 わかったよ。で、俺の意識を電気信号に変換してどうするんだよ?

『電力会社をハッキングする。』

 は?

『個人情報はネットに繋がずにイントラネットに繋いでいる可能性が高い。』

 なに?イントラネットってネットじゃないの?

『イントラネットは会社内などの閉鎖環境内でのネットだ。インターネットのように世界各国に繋がっている訳じゃない。』

 はあ。

『それでもサーバーにデータが集約されているからサーバーに侵入することができれば個人情報を書き換えることができる。』

 うん。

『問題はイントラネットのサーバーは、その場に、直接、赴いて、端末かサーバーにアクセスする必要がある。』

 ああ、まあ、そうだよな。どのパソコンからでも繋げられるんじゃ、インターネットだもんな。

『そうだ。ただ、どのコンピューターも電源がなければ稼働しない。』

 うん。そりゃそうだ。

『だから電源コンセントを使う。』

 うん。それは、わかった。いや、電線でそんなことできるのか?

『できる。再構築したスマホで検索してみろ。』

 いや、検索してまではイイよ。で、電力会社をハッキングする理由は?

『電力供給の地図を入手しなければ、目的のサーバーがわからんだろうが。大きな建物なら変電設備も備えている。その辺が障害にならないように電力会社から各情報を確認するんだよ。』

 ああ、そうか、そういうことね。うん、わかった。

『頭の中で地図を展開しておけ。』

 了解。

 俺は脳内で住宅地図を展開する。

『行くぞ。』

 ああ、いつでも…

 突然、電力系統地図が俺の脳内に展開され、先に広げていた住宅地図と重なる。

『ここか。』

 は、早えな…

『当然だ。俺達の演算能力に太刀打ちできるコンピューターが、この世界に存在するとは思えん。』

 そ、そうか。

『ここか。』

 区役所か?

『いや、市役所だ。あと税務署にも侵入する。』

 ぜ、税務署?

『それと、警察、法務局、外務省にも侵入しとくか。』

 お、おいおい、そんなに侵入する必要があるのか?

『ある。個人情報保護法に基づき、各行政機関が持っている個人情報は共有、連動していない。だから、各行政機関に侵入して、個人情報を書き込む必要がある。』

 そ、そうか。

『名前を決めろ。』

 ああ、じゃ、じゃあ、九頭寺(くずでら)正臣(まさおみ)って感じでどうだ?

『年齢は適当に決めるぞ?』

 ああ、なるべく、俺達の実年齢に…

『五十一歳に設定した。誕生日はお前の誕生日だ。このへんは、お前が言い間違えたりする可能性があるからな。』

 そ、そりゃどうも。まあ、誕生日を変えると干支を間違えたりするからな。

『免許証、パスポート、住基カードを再構築しろ。』

 了解。

 俺は財布の中に免許証と住基カードを再構築し、ポケットの中にパスポートを再構築する。

 なんか、映画で見た工作員がやっていそうなことを、この昼日中にファーストフード店でやってるって、凄い罪悪感なんですが。

『すでに真黒だな。』

 犯罪行為をなるべくしないようにと思ってたのに、病院を出てからやったことって、犯罪しかしてねえよ。

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