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2.アインスター

 こんにちは、周藤亜衣奈です。


 …私、どうやら一度死んでしまったようなのです。


 え?嘘だって?

ええ、できることなら私もそう思いたいです。でもどうやら間違いなさそうなのです。


 周藤亜衣奈は多分コンビニで黒ずくめの男に刺されて死んでしまいました。ああ、多分というのは死んだ時の記憶はありませんのであくまで推測なのです。


 初めは黒ずくめの、えーとマッコリ、そうマッコリです。マッコリに刺されて、子供になる薬を飲まされ、体が縮んだのかと思って慌てましたが、どうやら違ったようです。


 …目覚めたときに声が出なかったのが幸いしましたね。声に出して喋ってたら妄想癖だとかアニメの見過ぎだとか言われかねませんもの。


 それで多分、マッコリに刺されて死んでしまったのでしょう。

…気が付いたら私、赤ん坊でした。


 それだけでは死んでしまった根拠にはならないのですけど、おかしなことは他にもたくさんありました。まず言葉が全然わかりません。赤ん坊なので私が喋れないのは仕方のないことなのですけど、どうやら聞いたことがないような言語なのです。しいて言えばドイツ語に近いでしょうか。

 死ぬ前の私は日本人ですから日本語と、英語、ドイツ語、ラテン語を使うことができましたし、なんとなく聞き取るくらいなら他にも数か国語はわかります。研究者としては多言語は必須なのです。


 しかしここでの言葉はそのどれにも当てはまりませんでした。そして私は攫われていたり保護されていたりする様子もなく、ここでは家族のように可愛がられているのです。


 ああ、今はこちらの言葉は覚えました。もともと語学は得意ですし、赤ん坊の頭は柔軟ですねえ、スポンジのように言葉を吸収していきました。


 そうしてわかったことですが、私のここでの名前はアインスター・アルティノーレというようです。アインスターが名前でアルティノーレが家の名前です。


 …そして私、どうやら貴族らしいのです!ひやっほう!


 ただし貴族といっても爵位はありません。私のお父様が王国騎士で王国騎士は皆、貴族の末端階級なのだとか。


 お父様は名をパウルといいます。パウル・アルティノーレ。お母様はマリアンヌ・アルティノーレ。金髪のとても綺麗な女性です。髪をカールに巻き、バランス美に溢れた容姿にちょっと下がった目じりが優しさを湛えています。ああ、お父様も騎士らしいがっしりとした体つきでまあまあ端正な顔つきです。髭がチクチクするので、頬を擦り寄せてくるのはやめてほしいのですけど…


 そんな両親のおかげか、私も成長するにつれ美少女の片鱗を見せるようになりました。

…自分で言うのも何ですが。


 それはもう以前の私とは比べ物になりません。お母様のようなスッと通った鼻筋と可愛らしいぱっちりした瞳、お父様譲りの紅い髪、まさにアニメの世界のような美幼女なのです。


 あとは2人の兄がいます。上のお兄様はリヒャルト、下のお兄様はエーリッヒといいます。そして私が長女の五人家族です。


 家が下級貴族ということがわかり、最初に目覚めた部屋、私の部屋だったのですが、その絢爛さに

もしかして私、とびきりのお金持ち!?

と思ったのですが、そうでもないようです。普段の生活はそこそこ質素でした。


 むぅ、残念。



 もう一つ驚いたことは、この世界にはなんと魔法が存在します。大事なことなのでもう一度言います、魔法があるのです!なんということでしょう、イッツァファンタジー!!


 言葉を覚えた私はお父様の書斎にあった本を読みました。初めのうちはお手伝いさん、ああ彼女は

ターニャといいます。私の家の所謂メイドさんでよく私の世話をしてくれています。


 おおぅ、リアルメイドだよ、初めて見た。

 

 ターニャは普段は優しく面倒をみてくれるのですが、言葉遣いなど貴族としての立ち振る舞いに関してはことのほか厳しく、以前の記憶がある分、慣れない言葉遣いに苦労しています。


 ちなみにもう一人、ハンスというおじいちゃん執事がいます。お金持ちじゃなくても執事やメイドは

必ずいるものらしいです。


 その彼女に本を読みながら読み書きを教えてもらい、徐々に難しい本も読めるようになって、片っ端から書斎の本を読み漁りました。研究者としては知識を蓄えなければいけません。


 お父様が騎士なのでほとんどは剣術や武術、それに戦術などの本でしたが、その中に魔法に関する本が

あったのです。


 魔法!未知の領域!これは是非とも研究しなければなりません。もしかしたら私も魔法が使えるようになるのかしら、うふふっ。


 後でお父様に魔法の事を尋ねたら、うちは騎士の家系だから魔法は必要ないと言われてしまいました。

しょんぼりです。


 そして魔法で代用しているせいか、この世界は科学が発達していません。電気もありません。部屋にあった豪華なシャンデリアも魔法の道具のようです。


 まあ、これでわかってもらえたと思います。ここは私が元居た世界とは全く違う世界なのです。前の世界で死んでしまった私は、何の因果か魔法のある世界に生まれ変わりました。それも以前の記憶を持ったままで。前の世界でアニメで観たような異世界転生?というのでしょうか。


 とにかく私はアインスターとしてこれから生活していかなければなりません。不思議なことはたくさん。

どうして私は生まれ変わったのか?

どうして私は以前の記憶を持っているのか?

魔法とはどのようなものか?

きっと他にも研究の対象となるようなことがいっぱいあるはずです。


 

 ああ、早く研究がしたいなあ。

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