1.目覚め
う、うう……
目を開けると白い天井にキラキラと輝くシャンデリア。
眩しい!
それにここ、どこ?
ぼんやりする頭で思い出そうとする。
確か…、そうだコンビニでカップ焼きそばを買おうとして…
え!?前に並んでたおじさんに刺された?うん、刺されたよね。
うっ…
スッと刃物が胸を通った時の熱い感触が蘇り、思わず顔をしかめる。
じゃあここは病院?でもこの天井…、とても病院には思えないよね。まるでお嬢様の部屋だよ。
真白でしっくいのような天井に絢爛なシャンデリア、女の子が憧れる貴族の物語に出てくるような部屋だなと思う。
体を動かそうとしても手が動かない、足が動かない、首も回らないし声も出ない。
まあ、動かないものは仕方ないよね。
そういえば佐藤君に連絡はいってるのかな、着替えとか持ってきてくれると助かるんだけど。数日分なら研究室に置いてあるから大丈夫かな。粘菌、どうなったかな、ちゃんと記録とってるかな……
そんなことを考えていると、カチャリ、とドアが開く音がする。
足音が近づき、ああ、誰か来てくれたんだなあ、と思っていると・・・
「△△△△△、△△△△△!!!」ドタドタドタ…
あらら、慌ててどっか行っちゃったよ。
英語?いやドイツ語?何言ってるか聞き取れなかった。
間もなく慌てた様子で数人が部屋に入ってきた。
「△△△△△、△△△△△!!!」
何か喚きながら立て続けに入ってくるものだから、ちょっと怖い。
こちらは動けないし、どうしよう、と思っていると・・・
ギュッと覆いかぶさるように抱きしめられる。
…お、重いよ。
押しつぶされそうな感触に耐えていると、するりと軽くなり視界に女性の顔が映る。金髪の髪をくるくるとカールにしたとても綺麗な女性だ。
「△△△△△、△△△△△」
どう見ても日本人ではないよね。
…えっ?泣いてる?
その瞳からは大粒の涙が次々流れ落ちている。
「△△△△△、△△△△△」
何言ってるかわからないけど、綺麗な人は泣いていても綺麗だね。
そんなことを思いながらうっとりと見つめていると、今度は手を握られた。自分で手は動かせないけど握られた感覚はわかる。そして大変なことに気づいた。
…あれ?オカシイ。私の手、短い?あれ?
今までにない感覚に戸惑っていると、むんず、と抱きかかえられる。
…あれ?私、軽すぎない?
抱きかかえられて自分の体の変化を確信した。私、小さくなってるぅぅぅ!
あれか、あの私を刺した男、まさかの黒ずくめの一味か!子供になる薬を飲まされた!?
私、子供になった?頭脳は大人ってやつか!
霧が晴れたように頭がすっきりして思考が加速するのが自分でもわかる。研究の最中に何か閃いたり新しい発見があった時なんかに妙に頭の中がクリアになるのだ。そうすると正体がバレるのはまずい?えーと、偽名!本棚本棚、どこかにないかな。
その時私を抱えていた女性が鏡の前に腰かけた。
あっ!?
鏡に映った自分であろう姿に驚愕する。その後の言葉が出てこない。
鏡に映ったのは子供ではなく、可愛い赤ん坊だった。