新たな仲間
もうすぐ日付が回ろうかという時、俺は瞼を開けゆっくりと身体を起こす。フェイはまだ寝息を立ててぐっすりと眠っている。
(狸寝入り成功! ほんとにこの世界では睡眠欲ってのはなさそうだな。この俺でも全然起きてられたぜ)
俺は物音を立てないようにゆっくりとドアを開き外に出る。
「出るなって言われると出たくなっちゃうんだよな、男っていうのは」
店は全て閉まっており、人っ子一人いない町の中を抜け町の外へ出る。
外に出て空を見上げると星がいくつもあり薄暗いが、なんとかあたりが見渡せる程度の視界を保っている。
最初に発見したのはおそらく昼間に戦ったウサギ型の魔物ラビィだろう。目が血走り毛は逆立ち、口元からは鋭い牙を覗かせている。
「レベル6か、昼間の倍だな。金も経験値も稼げそうだ」
俺は昼間と同じ様に魔物を観察する。どうやら夜は少し行動パターンが違う様だが、それを把握し隙を見て攻撃を仕掛ける。
振り下ろした剣は魔物に当たり相手は怯むが、まだ倒れない。
「流石に一撃じゃ死なねえよな。もういっちょ!」
再び隙を見て剣を振る。剣は相手に当たり今度は魔物が倒れ、煙と共に消える。
「2発か。楽勝だな。この調子でどんどん行くぞ」
その後何匹かラビィを倒した後、同じく昼間の魔物が凶暴化したのであろう奴らと戦いながら進んで行く。
「フェイがあんだけ脅すからどんなもんかと思ったら、案外大したことねーな」
気付けばレベルは7にまで上がっていた。俺は意気揚々とフィールドの奥へと進んで行く。
すると森の入り口付近に光が見えた。光の正体を確認しようと俺は急ぎ足でその方向へと向かう。
近くまでくると、そこではランタンを持った女の子が魔物達に取り囲まれていた。その子は取り囲む魔物を追い払う様に、左手の盾と右手のメイスをそれぞれ振り回していた。
「ちょっとなんなのよこいつら! どっか行きなさいよ! しっし!」
俺はすぐさま魔物の群れへと突っ込み剣で切りつけ前転して起き上がり、女の子と背中合わせになりながら態勢を整え魔物達の方へと向き直る。
「大丈夫か?」
「え、ええ。大丈夫よ、ありがと」
少し恥ずかしそうに礼を言うその子に対して俺は言う。
「ならよかった。けどしっしじゃ魔物は追い払えないと思うぞ? 猫じゃないんだからさ」
「うっさいわね! 分かってるわよそんなこと!」
俺は不満げに女の子に対して言う。
「お前、助けに来てやったヒーローに対してなんだその態度は!」
「助けに来てやったってあんたがさっき斬った魔物まだピンピンしてるじゃない!」
そう言われて先ほど攻撃した魔物に目をやるとHPがほんの少し減っていただけであった。レベル10以上の強そうな魔物達が、俺たちを囲み睨んでいた。
「あんたヒーローならこの状況をなんとかしなさいよ!」
女は左右にふんわりとした二つ結びで亜麻色の髪、赤の戦闘服の様な格好で歳は十代後半ほどだろうか。頭の上にはアイカ レベル9と表示されていた。
(俺よりレベル上なのかよ……こりゃやばいな)
俺は一息つき、諦めた様な顔をして言った。
「すまん、無理だ。後は神頼みでもするしかないな」
俺は十字を切る様な真似をし、最後に額の前に手をやり目を瞑って祈る。
「こんな時に冗談言ってる場合? 全く頼りにならないわね」
怒り心頭の彼女をよそ目に俺は祈りを続けたまま現実逃避する。彼女は呆れて溜息をつき肩を落とす。
すると次の瞬間、目を開けていられない程の眩しい光が辺り一体を照らす。その光を浴び、魔物達が次々と甲高い呻き声を上げ、段々と塵になって消えて行く。
「やあ、無事かい?」
発光が収まり声がした方を見ると、先程まで魔物達がいたその後ろにフェイが何食わぬ顔をして立っていた。
「助かったぜフェイ! お前なら助けに来てくれると思ったよ」
「絶対思ってないでしょ? 忠告無視して勝手に出て行ったくせに」
「悪い悪い、つい好奇心にかられてな。男ならわかるだろ?」
俺は反省の色も見せずに言う。そこに彼女が割って入る。
「あんた全く反省してないじゃない! いい? こういうのがヒーローっていうのよ!」
彼女が礼を言ってフェイに握手を求める。
「ありがとね。あたしアイカ! おかげで助かったわ。えっと、フェイでいいのかしらね?」
フェイが握手に答える。
「いえいえたまたま通りかかっただけだから。フェイでいいよ。よろしく」
「あっじゃあ俺も、あきです。よろしく」
アイカは俺が差し出した手を力一杯握り言った。
「一応助けて貰ってありがとう。少しは時間が稼げたわ」
「なんだよ一応って素直じゃねえなあ。ていうかお前一人だろ? 仲間になるか?」
「良いけどあたし、グループじゃあんまり役に立たないわよ。回復師だけど武器メイスだから回復使えないし」
「なんだよそれ宝の持ち腐れだろ! メイスなんて捨てちまえ! フェイみたいに杖とか使え! 杖!」
アイカは不機嫌になって言う。
「うっさいわね! あたしはちまちま回復なんかしてるより、動き回って敵倒してる方が好きなの!」
少し間を置いた後彼女が続ける。
「うんまあ、でも……これからグループでやっていくんならまあ、回復役になってあげても良いわよ」
「よっしゃ! じゃあ決まりだな! さっさとそれ捨てて新しい武器買いに行こうぜ!」
「ちょっとあんた! 言い方ってもんがあるでしょ! 訂正しなさいよ!」
二人のやりとりを黙って笑顔で聞いていたフェイが切り出した。
「まあまあその辺にして武器も買わなきゃだし、とりあえず町に戻ろうよ」
気が付けば空は少しずつ明るくなり太陽が頭をひょっこり覗かせていた。
『そうだな』
『そうね』
フェイが杖をかざし呪文を唱えると、三人は青白い光に包まれそのまま町の方へと向かい消えていった。




