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ラストサクリファイス  作者: 木下たたら
第一章 全ての始まり
3/6

町案内

 ……たかし……おーいたかし!

 

 フェイが俺を呼ぶ声が聞こえる。目をゆっくり開けると流れてきた小さな雲の塊からひょっこり顔だけ出した優しい太陽が青空を照らしている。


 どうやらしばらくの間気を失っていたようだ。


「お、目が覚めたみたいだね」

 

 フェイは申し訳なさそうに頭を掻く。


「ごめんね、なんか変な話しちゃったみたい」

 

 そう言って俺のそばに寄り、屈んで抱き起こそうとする。俺はフェイの肩を借り片手を地面につけ体を起こしながら言う。


「大丈夫、あんまり覚えてないからな。ありがとな」

 

 こちらが軽く笑顔見せると向こうも同じように返してくる。


「よかった。じゃあとりあえずどっかで休む?」


「いや、いいよ。どっか他の所へ行こう。今ここに居るのは居心地が悪い」


 俺が倒れていたせいか周囲の目がくまなくこちらへ向けられて居る。


横目に見える花屋の女の子も心配そうな目でじっと見つめていた。


「了解。それじゃあこの町に来たばかりのたかしのために町の中を案内するよ」

 

 俺はフェイの肩を叩き言う。


「よろしく頼むぜ。先輩」


 フェイは俺にウインクして町の中へ向かって歩き出し俺もその後を追った。

 両側にいくつかある食べ物屋から良い匂いが漂っている。

 

 しばらく歩くと正面に市場と同じ程の幅の大きな建物があった。味のある白っぽい煉瓦造りの建物で目線を少し上げたところに大きなモニター、その上にはローマ字表記で"ミモザタウン"と書かれている。

 

 モニターには全身黒の男と白の男が闘っている様子が映し出されている。


「まずここがこの町のメインになるメインホールだね。ここでグループが拠点を持って組織化されたギルドってやつに登録できたり、この町の事とかこの世界の事とかの説明なんかも聞けたりするよ」


 俺は腕を組みながら頷く。


「なるほどな。あのモニターに映ってるのはなんなんだ?」


 フェイは一瞬考えたような顔した後またいつもの笑顔に戻り、


「あれは今は僕らには関係ないから気にしなくていいよ」


 そう言って話をはぐらかされる。


「それでこの建物の右手にある小道がギルドハウスが建てられる土地で、左手にあるのが個人の家のだよ」


 フェイが手を向けた方向にはそれぞれローマ字表記で"ギルドハウス" "個人住宅"と書かれていた。


「へえ家が持てるのか。やっぱり結構高いの?」


「ピンキリだけど僕のところは10万くらいだよ」


 (10万か……)


 自分の所持金1000ランドを思い出し、途方にくれる。


「まあまあそんな顔しないで、10万くらいすぐに貯まるよ」


 俺はそうなのかと安心した顔でフェイを見た。


「よしじゃああとは鍛冶屋と神殿だから広場の方に戻るよ」


 そういって元来た道へと引き返す。道中また食べ物屋からいい匂いが漂ってくる。


「なあさっきから気になってたんだけどいい匂いしない?なんか食べない?腹減らない?」


「そうだね。けどたかし1000ランドしか持ってないでしょ?それにこの後武器を買わなきゃだから残りじゃあんまりいいもの食べられないよ」


 俺は少しにやけた顔する。


「じゃあフェイ先輩のおごりで!」


 そう言って両手を合わせてフェイを見つめる。


「だーめ。最初から甘やかすとろくな大人にならないからね。狩りに行ってお金稼いでからね」

 

 俺は期待を裏切られ残念そうに肩を落とす。


「いやもう俺大人なんですけど……ていうかお前意外とスパルタなんだな」


「働かざる者食うべからずってね」


 俺はとほほとさらに肩を落としてフェイとともに歩き出す。


 広場の方に近付くとフェイが右手の方を指差しそちらへ向かって歩く。するとそこは小さな屋根だけの小屋のようなところで手前にはカウンタテーブルがありそこに店主が立っている。

 

 後ろには棚があり色々な武器防具が並べられており、奥の方からはカンカンと鉄を叩くような小気味の良い音が響いている。


「いらっしゃい!何をお探しですかい?」


 店主が威勢のいい声で出迎える。


「初心者用の大剣ってあるかな?」


 フェイが尋ねる。


「初心者用の大剣ね、それじゃあこれなんてどうだい?アイアンソード720ランドだ」


「あ、じゃあそれで」


 間髪入れずにフェイが答える。


「いや、はやっ! 俺が買うんだよね? 俺がお金出すんだよね?」


「そうだよ。でもまあ職業で扱える武器って限られてるしたかしは剣士だから大剣か刀しかないよ」


「ああそうなのか。うんまあじゃあ大剣でいいか。ていうか俺剣士なのか? どこで分かるんだ?」


「ステータスって心の中で念じてみて」


 言われた通りに念じてみる。すると目の前にステータス画面が現れその中に剣士と書いてあった。


「ほんとだ、でもなんで分かったんだ?」


 フェイは得意げに答える。


「勘」


 こいつ感が鋭いやつなのか。女じゃなくて良かったなと心の底で思った。


「何はともあれこれで借りに行く準備ができたから出発しよっか」


「あれ、神殿はいかないのか?」


「死んだらその時いけるでしょ?」


 さらっと恐ろしいこと言うやつだと思ったがこれくらいつかみどころのないやつの方がなんだか頼り甲斐があるような気がした。

 

店主から受け取った大剣を背中に担ぎ、俺達は鍛冶屋を出て、外へと通じる広場の奥へと向かった。

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