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ラストサクリファイス  作者: 木下たたら
第一章 全ての始まり
2/6

謎の男

「眩しいな…….」

 

 先程まで窓の無い屋内に居たせいか、やけに薄く雲の掛かった太陽の光が目にしみる。


 背後に噴水のある丸型の広場、そこから四方に道があり目の前の通りには左右から奥へ向けて店がずらっと並んでいる。広場人が数人、店が並ぶ店の通りには大勢の人が行き来しており賑わいを見せている。

 

 恐らく左手前にある花屋からだろうか、花の香りと心地良い温度をゆったりとした風が運んで来る。太陽にしみた目も慣れてきて今が適温だと感じる。


 このままここで寝転んで寝てしまおうかとも思った瞬間町中に声が響き渡る。


《例のアイツ出現‼︎ 皆気を付けろ‼︎》

 

 声に続いて、次は目の前に文章が現れる。これがチャットというやつだろう。

 

 一斉に辺りの人達がざわつき始める。


 (嘘でしょ? この町にアイツが?)

 

 (もう数ヶ月はここにはきてないって話だぜ…….)


 (嘘だろ、タイミングわりー)

 

 町全体が不穏な空気に包まれる中俺は一人溜息をこぼす。タイミング悪いのは俺だよ、どんな危ないやつか知らないけどこの世界に来た瞬間だぞ。

 

 そう不満に思いながらも町の中にいさえすれば安全だろうと気持ちを切り替えて歩き出す。


「とりあえず町の中でも見て回ろうかな」

 

 怯えた顔で皆が話に夢中になっているのを尻目に俺は店が並ぶ市場へと向かった。

 

 最初に貰ったこの世界の通貨は1000ランド。これっぽっちで何が買えるんだろうなとあまり期待せずに考えながら花屋の前を通りかかった時、背後から身体が震え上がるような殺気を感じた。


「よっ」

 

 背後から肩を手で叩かれ思わず肩がビクッと震える。


 振り向くとそこには歳は20ほどで首まで伸ばしたウェーブがかった金髪、背丈は自分よりも少し高め、魔法使いの様な格好で右手には背丈ほどの先が輪っか状になっている杖を持った男がこれでもかという程の笑顔でこちらを見ていた。


「な、なんでしょうか?」


 怪訝そうな顔でそう尋ねると男は、


「僕と仲間にならない?」

 

 なんだそんな事かと先程の感じた恐怖は薄れ誘いに答える。


「いいですけどなんで俺なんです?」

 

 もっともな疑問をぶつけてみると男は少し笑顔を崩して答えた。


「君さあアイツのこと聞いてたのに全く動揺してなかったでしょ? だからガッツあって強そうだなと思って」

 

 俺は本当にそんな理由なのかと疑う様な表情で男を見返す。


「嘘。勘、適当だよ適当。君今一人でしょ? 仲間がいた方が何かと便利じゃん。色々教えてあげるからさ」

 

 初対面でいきなりの上から目線が少し癇に障ったが表情には出さず、男の言っていることはもっともだと思い自分を納得させる。


「分かりました。じゃあ仲間になります」

 

 男はまた満面の笑みを作り直し、


「オッケー、じゃあ決まりね。僕の名前はフェイね、よろしく。グループの申請したから許可しといてね。」

 

 男は何が言い忘れたかの様な顔をして言う。


「あ、あと君僕より年上だよね? 敬語じゃなくていいよ」

 

 そう言われ、そういえばどう見ても年下である男に対して何故か弱腰な対応をしていたものだと気付いたた。

 先程の状況と彼の頭の上に表示されているレベル12という表記のせいだろうか。歳は自分の方が上でもこの世界では彼の方が先輩だ。色々と教えてもらうことにしよう。


「分かった。俺の名前はたかし、よろしくな」

 

 俺は右手を差し出した。


「うん、よろしく」

 

 二人が握手をするとグループが成立しましたという表示とともにフェイのステータスに現在地が示されたものが表示された。


「あれ、俺申請許可とかしてないけどなんでだ?」


「ジェスチャーと言葉の組み合わせでも反応するシステムがあるんだよ。知っててやったのかと思った」


「そうじゃないよ、そんな説明あったか?覚えてないけど、こういうのもあるんだな」

 

 うんうんと頷きフェイが話題を変える。


「ところでさ、たかしは本当の名前なんて言うの?まさかたかしが本名?」

 

 少しにやけながら尋ねるフェイに対し俺はよく分からないまま答えを返す。


「適当につけた名前だけど本名って?」


「前の世界の……いや、そうだよねまだたかしは目覚めてないんだもんね。ううんなんでもない、忘れて」

 

 前の世界?何の事だろう。頭の中に急に霧がかかった様にもやもやする。同時に頭痛が始まり、視界が揺れ動くようになる。だんだん息も荒くなる。


 考えれば考えるほど症状はひどくなる一方で微かにフェイが俺の名前を呼ぶのが聞こえる中、次第に意識は遠のいていった。

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