第四話
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...を...に変えました。
行間を開けました。
三話に続き、グラム表現を止めることにしました。
また別の進化があるらしい。その内容によっては、この展開が神になる。いや、可能性というスキルが神となる。
『進化条件達成:レベル、岩の貯蓄量。進化条件未達成:魔石の貯蓄量。』
こっちの場合は、岩の貯蓄量は十分で、ただ魔石が足りないだけか。だったらちょうどいい。このピルバットの魔石をまだ食べていなかった。
『ピルバットを捕食しますか?この質問は、上顎と下顎が揃っていれば省略できます。』
こんな質問があるのか。こんな状況だけど、今日は特にこの声が構ってくれている気がするな。ただ、進化だけじゃなくて、助かる方法を直接教えてくれたらもっと嬉しいのだが。
(捕食するぜ!)
そう思った瞬間、歯を突き刺していたピルバットが消えた。体重を預けていたものが一瞬で消え去ったので、そのまま地面に歯をぶつけることになった。痛みはなかったが衝撃があった。
『進化条件を達成しました。進化しますか?』
(ピルバットの魔石で十分だったか。よかった!)
(進化するぜ!)
岩の貯蓄量は明らかに違うが、魔石が関わってくると特別感がある。魔石の価値は分からないが、食べた量が魔石の貴重さを物語っている。
『進化を開始します。』
その声と共に、俺の体がゆっくりを浮き上がっていく。意識しての物ではなく、勝手に浮かび上がっているのだ。
次の瞬間、どこからか複数の光の弾が現れた。それらは、俺を中心に回りだしたのだが、徐々に光を失って行き、ついに収まったかと思いきや、光の代わりに岩が俺の周りをまわっていた。
俺の周りを好き放題に回っていた岩は、ゆっくり止まって行き、空中で静止した。そして、すごい勢いで襲い掛かってきた。
光の弾が現れたあたりから、俺の脳は追い付けていなかった。初めての進化だ。むしろ追い付けていなくて当然とまで言える。いや、そんなことを言っている暇ではない。
(早すぎる。今からじゃ避けようがないな。)
なんて冷静に分析してみる。さっきまでの戦闘で、俺の体はボロボロだ。痛みがないから、そういった実感はないが、下部がないし、上部も削られている。
それでも、自分の体の頑丈さについては自信がある。すごい勢いではあるものの、死ぬことはないあろう。それに衝撃があるだけで痛みはないし。
ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!
鈍い音を響かせながら、複数の岩が俺の体にぶつかってくる。それほどの衝撃はないし、体勢が崩れる感覚もない。ただ、体が重たく感じた。
最後の岩がぶつかってくる。最後の岩は、ちょうど目の前からやってきて、顔に直撃したため、そこでやっと理解することができた。
確かに、岩はぶつかってきていた。しかし、それらの岩は俺の体にぶつかって散っていくことも削られていくこともなかった。磁石の様に、俺の体にすべての岩がくっついていたのだ。
体が重たく感じることに違和感を感じていたが、目の前を覆うようにして引っ付いた岩のおかげで、そう思い至ることができた。
(でも、これじゃ進化というか退化じゃないか?これじゃあ周りも見えないし、ただ体が重たくなっただけだ。)
そう思ったのも束の間、また岩が光り出した。
(眩しい!瞬きする瞼もないんだからそこまで光らなくてもいいだろ!!)
そんなことを呟いているが、実は俺自身も光っているみたいだった。
体の感覚が薄まっていく。ほんの一瞬だけ、意識が飛んだ気がした。気が付くと自分の感覚に違和感を覚えた。
『進化に成功しました。フロックはスローックに進化しました。新たな感覚神経、部位:腕(右)が誕生しました。スキル:バレットが追加されました。』
これは、右手!?それに、これは下あご!?体力が回復するタイプの進化だったのか!
進化により生まれた、俺の体の右側に浮かぶ岩へ目を向ける。
サイズは四十センチメートルくらいと見た。緑色に輝く宝石のようなものが顔をのぞかせる岩の塊のように見える。これが、進化に必要となった魔石だろうか。感覚としては、一定の距離まで伸ばせる人の腕そのものだ。伸ばせる範囲はもちろん人のそれとは異なるし、指なんてものもない。違和感の塊だが、それは人の腕を前提としたものだ。前世とは全く感覚の異なるフロックの体に慣れた俺からすれば、この上なく便利に感じる。
戦闘もかなり楽になるだろうし、脳はないが衝撃を与えて気分が悪くなることだって減るかもしれない。
口がないので、頭の中でだが「ほっほっほっほっ!」とリズムを刻みながら、腕を動かす。すぐにその感覚にも慣れてくる。
(すぐに慣れられる。これが若さってやつだな。)
なんて呑気なことを考えている余裕など実はない。なぜならば、ピルバットの、魔物をおびき寄せる技の効果はまだ切れておらず、進化をしている際は目が眩んだのか、止まっていてくれたが、今ではそんな様子は一切見せず、敵意をむき出しにしてこちらへ向かってきているのだから。
(下部まで戻ってきてくれるのは嬉しいな。これで、また岩を食べまくることができるし、そうしたら、岩の貯蓄量がどうのこうのと言われずに済む。)
今はもうないが、ピルバットの死体が流していた血だまりの上をビチャビチャと音を立てながら、俺ははしゃいでいた。
そんな俺に向かって、小さな蝙蝠たちが突撃してくる。
(ピルバットの進化前だってことはわかるけど、名前は知らないな...)
他のことを考えていようと、戦闘能力の差は歴然としていた。ピルバットのような水鉄砲のような攻撃がなければ何の脅威もない。ピルバットに進化して出直せと言いたいところである。
戦闘能力の差は歴然としている、そんなことを偉そうな顔をして考えていたが、それほど余裕のあるものではなかった。飛び込んできた蝙蝠を迎え撃つように殴り掛かった右腕は、それほど威力が無いようで、お互い共に弾かれてしまう。
飛び込んできていた蝙蝠は一匹ではなかったようで、迎え撃つように設置した右腕も弾かれてしまった今、体で受け止めるしかなくなっていた。
三体くらいの蝙蝠が突進してきたが、やはり進化は伊達ではなく、衝撃も全くと言っていいほどなかった。弾かれた蝙蝠らに向かって、俺は上部と下部揃えて突進を食らわせてやる。器用に避けられた奴もいたが、俺の腕捌きも負けてはいない。
威力がなければぶつけ方に工夫をすればいい。正面から攻撃するのではなく、後ろや横から右腕をぶつける。
『シンスモバットを五体倒しました。レベルが上がりました。スローックはレベルが二になりました。』
あれ、レベルが二...だと?もしかして、進化はレベルが一にリセットしてしまうデメリットがあったのか?いや、進化しないとかなり危険だったわけだが。
そう考えると、遭遇したのは進化したてのレベルがリセットされたピルバットだったということになる。もしもレベルを上げることができていれば、水鉄砲一撃で俺は終わっていたかもしれない。ピルバットの二の舞にならないように、俺は相手を舐めてかからないようにしなければ。
(ま、まあ、そこで初めて知ることもあるんだけどな!)
右手を弾かれたことをふと思い出す。
フロックたちは動きが遅いので、未だ俺の元へはたどり着けていない。しかし、シンスモバットは次から次へと増えていく。フロックたちは上部を飛ばしてくる攻撃だってできるし、警戒はしておく必要がある。
見た感じ、シンスモバットは骨と皮しかない細い蝙蝠だ。勢いがついていれば右手を弾くことができるだろうが隙をつけば、一撃で仕留めることもできそうだ。
無数に現れるフロックやシンスモバットとの戦いのおかげで、戦い方にも慣れてき始めた。そして、飽きもせず現れ続ける魔物たちに、俺の方が飽きはじめていた。眠気まで出始めて、あくびだって出てしまう。
倒していった魔物を片っ端から口の中へ放り込み、体内へため込んでいく。
右手だけで戦うことができてしまったので、ステータスの確認を並行して行ってもいた。そして、聞き逃していたスキル:バレットを見つけた。
バレットは、高速で右手を発射させる技だった。発射というよりも、発砲といった方が正しい気もする。そもそも右手を発砲するってなんだ。中距離に及ぶ右ストレートでいい。それが一番しっくりくる。
次に、貯蓄量の確認をすることもできた。進化条件を知って初めて貯蓄量を知るというのも不憫すぎて疑問に思ったのだ。
今は、岩の貯蓄のほか、魔石の貯蓄、肉の貯蓄ができていた。肉を貯蓄したところでこの岩の体にどう関わってくるのかわからない。想像してみたが、魔物と肉片を組み合わせたものなどいい結果にはならなさそうだ。一番に想像できたのが、ゾンビだったので考えるのをやめてしまった。
人型になれるのであればなりたい。人型への名残惜しさは尋常ではない。こんな使い勝手の悪い岩の体なんて...いや、人の体以上に使いこなせている気もするんだけどな。ここまで張り切って動いた記憶がまずない。
(あれ?魔物が減ってきたな...というか、威勢が悪いな。戦いたいという意思が伝わってこない。石だけに。)
殺しにかかってくるわけでもなければ、見逃してやりたい。殺しにかかってこられたらそれ相応の対応をするのだが、俺は、基本的に他者を殺したいと思う人ではない。
まだピルバットの技の効果は切れていないと考えると驚異的なものだが、どのくらい時間が経ったのかは俺自身も分かっていないので、驚き方がいまいち合っているのかわからない。
なぜかは分からないが集まろう、そんな風にやってくるフロックやシンスモバットの横を通り過ぎて、久々に洞窟内を徘徊し始める。
すると、ある異変に気が付いた。
フロックが襲い掛かってこないのだ。
何体ものフロックの目の前を通ってみたり、構ってほしそうに目の前をウロチョロしてみたが、いずれも何の反応もしてくれなかった。以前は目の色を変えて襲い掛かってきていたのに、だ。
変だな。気味が悪いとすら思うほどの代わり様だ。
どうせ話すこともできないんだろうな。そう思うと、気が引けてしまい、すぐにフロックらの傍を離れていく。
洞窟内の探索を再開した。すると、どこからか耳障りな音が聞こえてきた。