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第二十四話

投稿時間が遅れてしまい申し訳ございません!

 ダンジョンの壁を貫通させ、また変形に変形を重ねて出来上がった穴掘りに特化した両手を、やってやったぞという顔でグングニルに見せつけた。


 「見て見て!土龍の爪だって!!」

 縦横共に一メートル近くある大きな手だ。俺の体よりかは小さいのだが、手だと思うと十分に大きい。それに横幅は俺の三つ分くらいの大きさだ。

 掌と共に指も太く広い形状になっており、そこから伸びる爪もまた太く鋭いスコップのようになっていた。

 土龍の爪というスキル名は、俺の想像が正しければ漢字で土と竜と書くはずだ。

 スキル名を土竜と書くのであれば、俺の作り出したこの手は土竜の手に近しいものなのだろう。ここだけのところ、自分の手がカメノテのようにも見えてしまっていた。


 『え、どりゅう?さっき、どりゅうの爪って言わなかった!?どりゅうって土龍だよね!?』

 グングニルがまたもや一人で騒いでいる。

 確かに俺は、この世界では世間知らずというものなのだろう。前世でも世間知らずだったわけだけど。


 「うん、多分その土龍だよ。」

 何に戸惑っているのかはわからないが、とにかくすごいことなのだろうから偉そうな顔をしておこう。


 『ほんと、君って何者?土龍ってドラゴン系の中位に位置する魔物なんだよ?名前を持つ土龍の場合は上位にまで伸し上がるらしいし…….』

 中位ってなんか微妙だな。身長順で並んだ時の、一番前でも一番後ろでもなく真ん中辺りにいる奴みたいな。


 『なんか微妙だなって雰囲気を醸し出しているけど、十分に大事なんだよ!?ドラゴン系って魔物の中でも最強と言われている系統で、そこの中位ってことは、他の系統の上位に並ぶこともあったりしてだね!』

 なるほど。つまり強いのか。


 「ふっふっふ!かっこいいだろう!!」

 調子に乗って、浮いた手と共に適当なポーズをとる。


 『ああ、ごめんね。うん。』

 

 「……こ、これで、奇襲作戦もできそうだよね!」

 恥ずかしくなったので話題を変えてみる。いや、その奇襲をかけるというのがどちらかというとメインだったか。


 『うーん。穴掘りのコツを掴めたりしたら、岩の捕食と一緒にできて、いい作戦とも言えるんだろうけどね。相手も僕たちの居場所に気付いているかもしれないし、少なくとも真っ直ぐ近づいてくる存在には気づけると思うんだ。』

 ということは奇襲はできないということか。でも、だとしたらこっそり近づいて行ったとしても意味が無いはずだ。


 「いや、いける……と思う!進化をしたことで、どこからでもムーベンを放てるし、作った岩なんかも放てる。それに、この手だって体からある程度離していても自由に動かすことができるから、迎撃されたところで俺たち自身には何のダメージも受けないはずなんだよ!」

 スローックの時に、右手や下部を何度も犠牲にしてきたから、この戦法には自信がある。それに、スローックの時以上に綺麗な形に変えられるし自由が効く。指にムーベンを内蔵させ、近くで切り離してバレットとして撃ちこめば、最高火力の攻撃を与えられるはずだ。


 『そっか……うん。良いとは思うよ。でも、僕の持ち込んだことなのに、全部君にまかせっきりなのが嫌だよ。』

 

 「俺の攻撃というか、ムーベンの爆発を耐え抜くような人がいたら、意識は引き付けるからこっそりと近づいて貫いてほしいし。魔法使いがその爆発なんかを耐えられるようにしていつんだったら、俺がどうあがこうと攻撃は届かないはずだから、こっそりと貫いてほしい。」


 『僕は暗殺者か何かかな?分かった。君の影に隠れて、暗殺させてもらうよ。』

作戦は決まった。後は、俺の穴を掘る技術にすべてが任せられたような物か。


 「それじゃあ、早速掘っていくか!!」

 さっき開けた穴の方を向き、穴の中を通る。


 壁を掘りながら捕食をしていたので、下に岩も落ちていないし綺麗な穴になった。横幅は一メートルも無かったが、高さは一メートルを少し超えていたと思う。自分の身長くらいならばしっかりと理解しておきたいのだが、ダンジョンに身体計測なんてものが無いからわからない。

 壁の分厚さは、二メートルも無いだろうと思うくらいで結構深かった。


 (いや、通れたしいいか。)

 そう思い、考えるのをやめた。

 方角がわからないので、冒険者らがどの方角にいるかは言えないが、方向は分かっているので掘り進める。

 今の俺って迷路殺しだな。何かズルい手を使っている気がしてならないが、できるものはできるのだから仕方がないか。


 壁を掘っていると、グングニルが話しかけてきた。


 『今の君の捕食って、どうやっているの?岩を削ってるように見えるし、すくっているように見えるんだけど、何故かその岩が壁から外れた瞬間に消えてて、不思議なんだ。』

 興味深くジッと見て来ていた理由がわかった。


 「スローックだったときと変わって、この体には口が無いんだよ。でも、異空間というのか亜空間というのか、体の中に入れることはできるし取り出すこともできる。言ってみたら、全身が口みたいなものなんだ。壁ごと食べることはできないから、削って食べるようにしているんだよね。」


 『全身が口……それって、すごく強いんじゃない?いや、それどころじゃなくて……はあ。自覚が無いんだもんね。』

 ため息を吐いて呆れられてしまった。

 まあ、自分がすごいだなんて自覚のある人なんていないんじゃないか?いたとしても、ナルシストだなんていわれる特殊な人たちだろう。いや、自信を持つことは必要だし、偏見になっちゃうか。


 『そういえばさ、君のその一人称は俺なのに口調が妙に優しいのってなんでなの?』

壁を掘る作業には慣れてしまったので、ある程度は気が逸れていても続けられる。それでも、俺の手は止まってしまった。

 変だったとか、自分の人格を否定されたとかそう言った物が原因ではない。


 「変だった……?」

 そう尋ねてみると、「ぎこちなかったよ」と答えられる。


 『君、やっぱり変だよ。ダンジョン内だから、生まれた者に多少の知識や技術、能力、レベルがあってもおかしくはないんだけど、物質系なのに感情があったり、ダンジョンとは関係ない知識があったりって、なんというか、中に本当に人間がいるみたい。』

 グングニルは魔物だ。だから、中身が敵に当たる人間だとバレてはいけない。勝手にそう思っているだけだが、もしも裏切り者だとか騙されたとか思われたら最悪だ。

 グングニルは信頼しているし、少しは信頼されているとも思っている。でも、それは魔物である俺だ。人間である俺ではない。


 『前世なんて変なことはないだろうし、ダンジョンに巻き込まれた人間とか、感情のある魔物だったり。ああ、あの残虐な攻撃を思いつくということは悪魔系がダンジョンに巻き込まれたとかかな。』

 ブツブツと小さい声で何かを言っていた。岩を掘る音にかき消されて、俺には聞こえなかった。


 俺の口調が変なことには、ちゃんとした理由がある。

 元々の口調が人間らしすぎるモノだったからだ。実際人間だったのだから仕方がない。だから少しだけ、魔物であるグングニルの口調をまねていたのと、生まれたての幼さのある口調をまねていた。慣れないことをしたせいで、ぎこちなくて変だと言われてしまったが。

 一人称が俺になっていたのは、単純に癖で間違えてしまったからだ。ただ、ピルバットも自分の事を我と呼んでいたりと変わっていたから許されるだろうと開き直っていた。


 「よし。次々」

 冒険者のいるところまで、あといくつの壁があるのかはわからないが、とりあえず、最初の一枚に合わせて二枚目を貫通させることができた。最初の一枚と同じくらいの分厚さだった。

 壁を越えていくと、ムーベンの群れがいたので石化させて捕食しておいた。


 口調が人間らしすぎると、もしかしてと疑われてしまう可能性が合った。結局は違和感を与えてしまっていたみたいだが。


 『無理をして変な口調になっているんだったら、今は僕しかいないんだから無理しなくてもいいんだよ。』


 「気を使わせてごめん、ありがとう。」


 『ダンジョンの魔物にしては変わっているけど、まあ隠し事があるのは人間も魔物も一緒だし、気にしなくていいんだよ。こちらこそ気を使わせちゃってごめんね。』

 グングニルだったら受け入れてくれそうなんだけどな。


 「あの冒険者らを倒せたら、俺の秘密を教えるよ。」

 

 『わかった。君がそう言うんだったら楽しみにしているよ。』

 微妙な空気になってしまったが、岩を掘る速度は変わらない。


 『そういえば、今の君の種族名を聞いていなかった気がするんだけど、今はなんていう名前なの?』

 暇なことには変わりなかったようだ。


 「今はタイタンナックルっていうらしいよ。その名前の通り、自由に両手を使えるんだ。」


 『タイタン……タイタンって、聞き覚えあるんだけどな……』

 そう言ったきり、何かを思い出そうと黙りこくってしまった。


 十分くらい経っただろうか。三枚目の壁がどうにも向こうの道に繋がらない。

 方向は合っているはずなのだが、一向に道に出られない。さっき貫通させた二枚の壁よりも掘っている。壁四枚分は掘っているはずだ。


 『あ、物質系の上位の魔物だ!!そうだ。過去にあのアマルカルド王国を滅ぼしたっていう魔物の一匹だよ。巨大で強固で、魔法すら受け付けないっていう、あの巨人タイタンだよ……!!』


 「巨人……」


 『ま、まあ君は巨人とは思えないんだけど、でも確かに王国を滅ぼしたという魔物こそタイタンだったはずだよ!』

 俺は見ての通り、人間と比べても小さいサイズだけど、俺の名前に入っているタイタンという魔物は、そんなに大きくて強い魔物なのか。

 中学生に王国と言ってもパッとは出てこないし、どう考えても想像すらできないが。


 『そっか!君は、もしかしたらすごい魔物なのかもしれないね!!そっか、そっか!!』

 憧れのような目で俺を見てくる。

 

 「でも、グングニルだってすごい魔物なんじゃないの?」

 名前からして物騒だし、神話に登場する最強クラスの武器と同じ名前だし。


 『でも、ゴーレムよりかは弱いよ。』

 

 「相手が悪かったんだって!ほら、そのタイタンだって、水中での戦いは絶対に弱いだろうし!適材適所っていうし、虫系の魔物だったら物質系が苦手でも仕方ないよ!!」

 それにダンジョンだったら、魔法も使いにくいらしくて本来の力のすべてを使えるってわけでもないし。俺だって、生まれたこのダンジョンだから無茶苦茶な攻撃ができるけど、外でも同じことができるのかと問われると、上手くいけるだなんて断言はできない。


 『確かに、そうだね。うん。トランスキンみたいな岩ではない魔物だったら倒せるし、適材適所というのも間違ってはいないね。』


 『それにしても、随分と掘ったみたいだけど道に出ないね。』

 グングニルの言う通りで、俺は道の横幅の三つ分ほどを掘っていた。


 「ダンジョンの自動修復で、最初に貫通させた壁とその次に貫通させた壁は直っちゃってる。閉じ込められる前に早く道に出ておきたいな。」

 

 それから数分後、洞窟の道五つ分くらいを掘った頃、ようやく道に出ることができた。


 『やっと出られた!お疲れ様!!』

 まだ終わってはいないが、長い道のりだったため、グングニルは疲れてしまったようだ。暇だったこともあって、精神的な疲労の方が強いだろうが。

 冒険者たちも移動をしているようだが、それも含めても尚かなり近づけたと思う。


次回は遅れないように頑張ります!


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