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第十六話

サブタイトルを間違えていました。申し訳ございません。

第16話→第十六話

 少し短いと思った水晶のあった、ゴーレムがやってきた方の道へ転がって進んだ。そこから先も、違和感のある水晶がある道へ曲がって進んだ。

 奥へと進んでいくにつれて、その違和感も大きなものになっていった。


 水晶は、砕けていると自動的に回復していっているのだ。

 俺が食べたところは根元から食べるように意識していたせいもあって、そこにあった水晶は完全に消えたか、もしくは回復をしていたとしても完全復活まではかなり遅いだろう。


 見るからに短くなっている水晶を発見し、さっきまで近くにいたんだろうと、確信が付いてきた。

 

 ついに、回復前の砕かれたままの水晶を見つけられた。


 ついさっきここを通ったことは間違いないはずだ。

 そこでまた、俺は別の違和感を感じて止まった。

 

 俺がここまで来たのは、大きくなった拳によって砕かれた水晶を追っていたからだ。と言っても、本当にその方法で水晶が砕かれているのかはわからない。それでも、そこに可能性があったから、信じて追いかけてきた。

 俺の違和感を感じたところは、その拳が水晶を破壊してきたことに対するものだ。


 さっきまで、俺が転がっていたから気づかなかったのだが、どうにも音が聞こえてこないのだ。

 水晶に限らず、岩であっても砕くときには音がするはずだ。

 

 「…戦っているとしても、その音も聞こえない。」

 ほんの短い間、考えに考えていた。


 何も聞こえないということは、グングニルがゴーレムから逃げ切れたということだろうか。もしくは、勝った。考えたくはないが、その逆もあり得るかもしれない。

 俺が、ただ右手から逃げていただけだったというのと、グングニルが虫だったということもあって、今もなお逃げ続けていると思っていたのが混乱の原因だと思う。

 

 「考えていても意味ないか」

 今どうなっていようと、取りあえずは合流しないといけない。

 グングニルがいないと、ダンジョン攻略には不安しかない。

 

 砕けた水晶を追っていると、手前に何の形跡も残っていない水晶を発見することができた。しかし、ここは道の途中だ。曲がれる角も存在しない。

 周りを見回すが、グングニルはいない。ゴーレムもいない。

 

 「…神隠し?」

 ファンタジーな世界なのだから、神隠しがあり得ないとは言えない。目で見ても分からないけど、実は 壁に隠された曲がり道があるというのもあり得なくはない。

 

 砕けた水晶と、生きてる水晶との間の道の壁だけを、右手でノックをすることにした。

 間隔は、見た感じでは一メートル程度だからすぐに終わるだろう。


 「いや、一メートルだったらそこが道だろ。」

 そう言って、ノックするために用意したハンマー型の右手を後ろに下げた。そして、壁に頭突きをする。


 隠された道があるとは心の底から思っているわけではない。

 いきなり痕跡が消えてしまい、次に何をするべきなのか見えなくなってしまっているのだ。ファンタジーだから何でもありだろうと思い込んで、色んなことに挑戦しようと思っても間違ってはいないだろう。


 壁に頭突きをするも、頭に衝撃が来るだけで、そこには岩だけで道はなかった。


 ―――来るッ!!


 天井から、何かの動きを察知した。それは、俺目掛けて高速で落ちてきているようだった。

 急いで後ろに下がり、自分の元いた場所に拳を叩きこむ。


 何者かは分からないが、かなりの速度で落ちてきたのだ。空中で止まったりすることはないと踏んでの攻撃だ。


 ガキンッ!!


 バレットを撃ちこんだものの、俺の右手は弾かれてしまった。

 俺が三階層で出会った魔物は、まだ二種類だ。決めてかかるわけにはいかないが、手ごたえからしてゴーレムだと思う。

 さすがに、また拳だけとは思えない。


 落ちて来た物を注意深く観察してみる。

 砂埃が舞っている所為で、シルエットしかとらえることができないのだが、その影は徐々に大きくなっていっているように見えた。

 

 更に後方へ跳ぶ。


 「……ゴーレムの、中心だけか?」

 両手の影が見えない。ぼやけている所為か、本当に両手が無い状態なのか。

 両手が無いのであれば、今、俺を追っていた奴とは別の方の手が、グングニルを追っているのだろうか。


 「待てよ?同じ奴とも思えないな。」


 この階層に、ゴーレムが一体しかいないはずがない。いや、ゴーレムのパーツが彷徨っているだけで、ゴーレムというわけではないと思うのだが、そのあたりはどうでもいい。

 

 拳の場合は機動性に優れていたと思うのだが、頭、胸、腰、足が揃っているともなると、動きが遅いのではないかと思える。

 逃げるのであれば、全力で転がっていれば難なく逃げ切れると思う。

 

 砂ぼこりに、赤く光る球が現れた。

 シルエットの位置から察するに、頭部の中心が光っているように思える。

 球に思えたそれの光は、俺を見つめる様に揺れていた。


 なんとなく嫌な予感がし、止まっていてはいけないと思い、俺を見つめる光から逃れようとゴーレムの後ろへ飛びこむ。

 

 キィィィイイイイイン!!!


 ゴーレムは、高い音をどこからか発すると、嫌な予感がより一層高まった。


 「ビームか!?」

 ファンタジーならありえる。

 ビーム系の攻撃は受けたことが無い。それに、俺の想像しているビームの速度から逃れることは不可能だ。しかし、これまた想像上のビームではあるが、それは一直線に伸びる攻撃だ。

 

 焦り出す心を落ち着かせる。


 「……避けきるぞッ!!」

 ビームから逃れることはできない。

 俺が逃げる、もとい避けるのはゴーレムの視線からだ。

 

 人間のような関節はないので、頭はくるくると回ることができるはずだ。しかし、その速度はゆっくりしたもののはずだ。


 ビイイイイイイイイイイイ!!!!!

 

 機械音のような、大きな音を立てながら、赤い光が一直線に伸びていく。どこまで伸びて行っているかは見えない。

 俺を追うように頭を回し、壁にビームをぶつける。大きく抉れる壁を見て、背筋が凍るようだった。

 案の定、頭はゆっくり回っているので、下部を捨てずともギリギリ避けきれている。


 ゴーレムの頭の周りをまわっていれば、いつかはそのビームがやむと思う。下手に攻撃をして、体勢を崩させでもすると、せっかく制御できているような攻撃の規則性をぶち壊すおそれがある。

 ここは黙って、ゴーレムの頭をまわっていようと思う。


 体感で数分が経ち、ようやくゴーレムの頭は止まり、光もまた収まってくれた。


 ようやく攻撃ができる。

弾かれるとは思うが、何度も打ち込めば拳のように砕くことができると思う。

 

 右手の尖った側を、ゴーレムの頭部の魔石のような部分に打ち込む。

 スキルを使えば、自動的に右手が飛んでいく。それを利用し、一メートルも離れていない位置から連続でバレットを撃ちこむ。

 呼吸もしなくていい上に、疲れも感じない。永続して放つことができる。


 しかし、またもやゴーレムの頭部にある魔石が赤く光り出した。


 急いで右手を下げ、避ける用意をするが、ゴーレムはビームを放たなかった。

 放たないどころか、別の行動をとり始めていた。


 腹部を大きく開いたのだ。

 そこにはフロックのような歯が生えており、上部の裏側には大きな魔石が付いてあった。


 噛みつこうとしているのか?警戒していると、口の中心に黒い靄が現れた。

 黒い靄はゆっくりと回り始めた。それは、生前に教科書で見たブラックホールのようなものだった。


 ビームで崩れたりして、地面に散らばった岩がひとりでに動き始めた。


 俺の体も勝手に動いているように感じたが、感覚に違和感を感じた。

 進化をする際に、体が勝手に動くなんてことがあったが、それとは全く違っていたのだ。

 勝手に動いている気はするが、右手を動かせたり口をパクパクとさせることはできた。


 床に散らばった岩は、ゆっくりとゴーレムの許へ集まっていく。そして、掃除機に吸われる埃のように、口の中に入っていった。


 口の中のブラックホールが、体外にある物を吸い集めていることは明白だ。それに、その吸引力も上がって行っているように感じた。

 

 「……逃げないと!!」

 流石に、食べられるともなれば逃げる必要がある。立ち止まったままでは、耐えきれるとは思えない。現に、俺の体も吸い寄せられているのだ。

 転がるにしても、浮かされては意味がない。しかし、それ以外に対抗手段がない。


 そうしていると、頑張って耐えていた右手に、前方から飛んできた岩にぶつかった。そして、一瞬だけ力が抜けてしまった。

 ハンマーの形になっていた右手は、そのままゴーレムの口の中へ飛んで行ってしまった。


 食べられた。


 まだゴーレムの口には入っていないのだが、口に近づくにつれて、吸引する力が上がって行っている。耐えきれるとは思えないくらいに、その力が強くなっている。


 「…いや、待て。落ち着け。」

 右手は、下部同様に作り直すことができるはずだ。だったら、今の右手を犠牲にすることで、何かしらのダメージを与えておきたい。

 

 食べること自体に、時間をかけさせる方法がある。

 より大きな岩にしてやれば、一瞬で食べることはできないはずだ。それは、身を持って知っている。

 でも、俺とゴーレムの大きさとで考えると、不安がある。


キィィイイイイン!!!!


 迷っていると、後方の、ゴーレムの方から高い音が聞こえてきた。

 

 「嘘だろ……!?」

 ビームを放たれた瞬間に、口を開いてゴーレムの方へ下がる。吸引される勢いと合わさって、下がる速度が増していくはずだ。その勢いのまま進めばゴーレムの向こうへ飛んで行けるかもしれない。

 もしも、ゴーレムの口の方へ向かって行ったとしても、途中でバレットでも撃って天井へ打ち上げれば、ゴーレムの後ろに行ける可能性もあるし、それができずとも時間を数ぐことができるはずだ。

 

 どっちみち死ぬ。そう思ったところで、デメリットだらけの行動はとりたいとは思えない。


 ビームから逃れられるとは思えない。吸引を避けきれたとしても、ビームが残っているのだ。

 …でも。


 「………..グングニル、ごめん。死ぬわ!」

 そうは言うものの、本当に死ぬつもりはない。改めて、覚悟を決めただけだ。

 

 口を開いて、ゴーレムの方へ飛んでいく。

 吸引力が強すぎて、自分でも制御しづらいくらいにまで速度が高まっていく。


 ゴーレムに近づくにつれて、吸われる強さが高まっていっているのを体で感じる。


 第16話も読んでくださりありがとうございます!


 頭が悪いので、伝えたいことを伝えきれず、伝えるべきことを伝えられていなかったり。

 主人公の見ているものを妄想して書いているつもりですが、まだまだ妄想力が足りていないようです。


 ゲーム同様、レベル上げのシーンやスムーズに進まない展開は苦にも感じます。俺ツエエエでうおおおお!と無双していれば、もう少し楽なんでしょうね。


 このような場で愚痴を言ってしまい申し訳ございません。


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