第十二話
冒険者ギルドのギルドマスターであるヒューズマンが前へ出る。
「…アルテラお姉さま。お父様とあの方、どういった関係なのかご存知ですか?」
アミュルスが小さな声で尋ねてくる。
騎士として行動する際に冒険者ギルドに立ち寄ることもあり、顔を合わせることもあった。それでも、父上との関わったことなど聞いたこともない。
「いや、私も知らん。」
そう答えると、そうですかと一層小さな声で呟き、下がった。
「ヒューズマンよ。あなたにはこれを献上しましょう。」
大臣は、マネキンの首にかけられてあったネックレスを手に取った。
ネックレスには虹色に輝く美しい宝石がついており、日の光を浴びて神々しく見えた。
「こちらには、全属性耐性のスキルが付与されております。」
「大臣。私は、こんなもの受け取れない。」
ヒューズマンは大臣の目をじっと見つめていた。
「ヒューズマン!受け取れ。」
グレイガスが言う。
正直な話、素性を知らない彼を信じたくはない。父上の形見となる物を、受け取ってもらいたくはなかった。しかし、グレイガスは違うようだ。グレイガスは、彼の事を知っているようで、それも心から信じているような気がする。
ヒューズマンは、振り向いてグレイガスの目を見た。その目には一瞬、躊躇の念があったように思えた。
「…そうか。グレイガス、お前も私に受け取れというのか。」
そう言って、前を向く。
大臣もまた、ヒューズマンを信頼するような目をしていた。
「…わかった。私も、王の意思を継ごう。」
ネックレスと受け取り、自分の首にかけた。
「…力が湧いてくるようだ。」
ネックレスを撫でながら、そう言った。
「お渡ししました、各々の装備は未だ誰も使ったことのないものです。研究中といっても良いものでしょう。しかし、ヒューズマンの言った通り、魔物の活発化や魔王の討伐など、これから先やってくる脅威は増える一方です。しかし、王自らがこの国を、世界を守るために犠牲となりそれらのアイテムを召喚しました。王の意思を継ぐ、それは魔物全ての殲滅を意味します。」
日光の光に照らされ、輝く玉座を見る。
父上の姿はそこにはない。瞼に焼き付くほどに見てきたあの姿は、もう二度と見ることができない。
何が悪いとかそういうものではないと思う。しかし、王は勇者だけでなく、我々の力を信用できていなかった。理由は明白だ。弱いからだ。
ダンジョンの攻略や、魔物の討伐。中々上手くいっておらず、死人が多く出ている。そこに魔王が現れたのだ。
しかし、そんな我らにも強力な武器ができた。
「王は、我らの勇姿を見守っているはずです。」
これからはもっと鍛錬の時間を増やし、魔物の討伐数もまた増やそう。そして、もっと強くなり、父上に後悔されないようにしなければならない。
「…そろそろ行かせてもらうとしよう。」
ヒューズマンが、そう言って扉の方へ向かう。
「待ってくれ、ヒューズマン殿。」
私はヒューズマンを呼び止めた。
「どうか致しましたか、アルテラ殿下?」
立ち止まり、こちらを向いた。
「ちょうど、活発化した魔物を討伐しようと考えていたところだ。あなたもそうだろう?隊を編成し、待たせているのだ。付き合ってもよいだろうか?」
悪い奴ではなかったし、グレイガスにも信用されている。
それに、魔物を相手にするなら味方が多い方がいいだろう。
「ええ。最近は事務内容が多かったのですが、後回しにしてもいいくらいに魔物が現れているようで。戦闘も久しぶりなので、少し不安はあったところでした。協力していただけたら嬉しい限りですね。」
私は、彼の隣へ行く。
振り返り、大臣へ向き直る。
「大臣、早速良い知らせを期待していてくれ。」
そう言って、玉座の間を出ていく。
私の隊は、女性の騎士のみでできている。
男性よりも力が弱いとかそういうことはなく、我が隊はこの国の軍隊の中でも上位に位置しているくらいだ。
私は、ヒューズマンと共に城から出た。
事前に城の前で集まるようにと伝えていたので、出ると皆が整列して待っていた。
「すまない、待たせた。」
みんなの前に立つ。
「お気になさらないでください。姫様、その足の鎧、お似合いですよ。」
副隊長のユリアがそう言うと、他の隊員も口々に褒めてくれる。
「ふふっ。ありがとう。…それでは討伐に向かうとするか。ああ、知っているだろうが改めて紹介させてもらう。彼は冒険者ギルドのギルドマスターのヒューズマン殿だ。今日は、共に魔物の討伐をすることになった。無礼の内容に」
「ええ。ご紹介に預かりました、ヒューズマンと申します。今日はよろしくお願いします。」
そうして、私たちは外へと向かった。
ヒューズマンは、マスターということもあるのだろうが、城に来る前から情報を蓄えていたようで、道中に色々と聞き、特に魔物が集まっているというところへ向かうことにした。
ちらほらと魔物は現れるが、その数は普段以上の数であった。それでもまだ数は少なく、余裕で対応することができる。
未だ、装備に付与された神速というものに慣れてはいないが、実戦で慣らしていこうと思う。
「アルテラ殿下、慣れない装備ですが大丈夫ですか?」
ヒューズマンが心配してくるが、不要だ。一歩一歩歩くだけでも練習になっているのだ。早く慣れて、自分のものにしなければならない。
向かう先は、城の南の方にある森だ。ダンジョンとは関係ないのだが、その奥には大蛇が済んでいると言われているのだ。
私自信魔物が好きすぎて、中々書くことが進まなかったです。
十三話からは、またダンジョン内の主人公視点で進んでいきます。




