表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/36

十六話:触手+ちょこっと掲示板


 ズンズンと。

そんな擬音が聞こえるように、睨みを効かせ歩み寄る魔法少女。

 

 ヒラヒラのふわっとしたスカート。 歩く度に揺れるツインテール。 揺れない胸元にはリボンが付いている。 手に持つ杖は細長く、C型の先端の中央には赤い宝石が浮いている。


「コスプレじゃないんですけどっ!? 魔法少女とか言ったら消し炭にするわよっっ!!」


 だったらそんな恰好しなきゃいいのに。


「わ、わかったよ……」


 突きつけられる杖を前に、無難に答えておこう。

近づいて来て分かったが、少女という年齢でもなさそうだしな。

 大学生くらいだろうか。 あれ、余計にコスプレ臭が……。


「分かればよろしい〜〜♪」


 ニコリと笑う女性。

感情の起伏が激しそうだ。 つまり苦手なタイプ。

 俺に向けていた杖を振り回し、また詠唱を始めた。

炎の渦は戦場を紅に彩る。 信さんたちごと巻き込んでいるけど平気なのだろうか?



「いやー、助かったぜ? 鳳凰院一華さんよ」


「ありがとねー!」


 戦闘を終わらせた信さんたちがやって来る。 どうやら巻き添えにはならなかったようだ。

 あれだけタフネスを見せていたガーディスタチューも、炎の渦に巻き込まれHPを減らしていった。 


「あり……」


「おお、凄い鉄仮面! コスプレ?」


「違う……」


 コミュ力が高い。 すぐに打ち解けアルマと状況説明をし始める。


「一人なの?」


「うむー。 ここが一番遠いからさぁ、テレポでぶっ飛ばして来た♪」


 会話をしながらも外縁部の周り進んでいく。


「来たれ燃やし尽くす者、精霊の息吹よ吹き荒れたまえ。 紅蓮の旋風――フィアヤーストーム!!」


 現れるガーディスタチューに紅蓮の炎が襲い掛かる。

俺たちのPTは魔法少女姿の女性、鳳凰院一華を仲間に加えマテリアルタワー攻略を再開した。


「いやぁ、来たら雑魚が倒してあったからラッキーだったよぉ」


「こっちもメイジが来てくれて助かったぜ? しかも、トップランカーとはな」


 なんか凄い人らしい。 恰好ではなく、コルルオンラインのトップランカーの一人らしい。 

落武者と魔法少女が楽しそうに会話をしている。


「信くんちょっと仲良くしすぎじゃないかしら? ……戻ったらお仕置きね」


「……」


 あれ、優しいハピさんから、ドスの効いた声が……。

結構、束縛強い系なのか? 手に持つシトリがびくりとふるふるし始める。


「守護獣の卵? 祭壇あったのかぁ! ウマウマ羨ましい〜〜」


「いや、守護獣だよ」


「えっ? ああっ……噂のタマゴ型かぁ!」


 シトリについてはあまり話したくないのだが。

興味深げにジロジロと見てくる。 というか普通に奪われる。


「ふぉおおお! めっちゃブルブルしてるっ!!」


 シトリは『離せっ』と言わんばかりにふるふるMAXである。

それが逆に面白かったのか、片手で持ったり頭に乗せたりとやりたい放題だ。

まぁ、すぐには能力も気づかれないかな? 少しくらいなら平気だろう。



「ここから中に入れるな」


 中心の壁に階段があり中へと進める。

中は狭い通路が続き、遺跡の迷路となっていた。


「ここでガーディスタチューにごり押しされたら、ちとヤバいか?」


「問題無し! ガーディの処理は任せて〜〜♪」


 鳳凰院一華は自信満々に答える。

 

 PTは進み通路の角からモンスターの気配が。


「メテオ」


 やや前傾に体をくの字に曲げ杖を内で構えた、体を伸ばすと同時に杖を向け詠唱する。

放たれる隕石。 上空に浮かぶ魔法陣から燃え盛る隕石が気配のあった角へと落ちてくる。


「――っ!」


 爆撃。

姿を現したガーディスタチュー二体は直撃を受けた。


「メテオ……最高威力スキル……」


「だねぇ。 タメも長いし、着弾まで時差があるから難しいんだけど。 流石だね!」


 続く炎の渦。

火炎系ダメージの連続攻撃にガーディスタチューは早々に倒される。

 先ほどまでの苦労が嘘のようにガーディスタチューを倒していく。


「ふんふん〜♪ なんか調子イイぞぉーー!」


 進む。 

鳳凰院一華のスキルがモンスターを焼き払う。

上機嫌な彼女の鼻歌をBGMに、入り組む遺跡を進み中央の広場へとやって来た。


「ボスだな。 ナイトメア系か?」


 タコみたいな。

頭にたくさん目玉がついていて、複数の触手のような足。 見た目の気持ち悪いボスモンスターはふよふよと宙を浮かび、広場を漂っている。


「時間もないし、サクッと燃やしてやんよぉ♪」


 バフの掛け直しすらせず、メテオを放つ大勢を取る鳳凰院一華。

信さんが慌ててボスのタゲを取る。 


『押しとおる!!』


 アルマとレフィーさんが左右に展開し、ハピさん演奏が響く。

俺はシトリを抱え様子見。 まずはシトリの置く場所を見極める為だ。


「メテオ」


 こちらの動きにボスが動き出すと同時。

鳳凰院一華の一撃が直撃する。


「クリムゾン・スラッシュ!」


 紅の大斬円。


「んっ!」


 雷鳴と純白の雷光。


「飛燕!」


 空色の斬撃。


 各自の攻撃がボスへと直撃する。

俺には確かにそう見えた。 けれどもその直後、ボスの姿が掻き消える。


「えっ」


 シトリの置き場を探すため後方から眺めていた俺には、鳳凰院一華の後方へと姿を現したボスがよく見えた。


「ふぇ? ――きゃッ!?」


 絡めとられる魔法少女。


 マテリアルタワーのボス『幻夢のナイトメア・アサッム』の触手が魔法少女の体を絡めとる!


「「オオ!」」


 見えそうで見えないふんわりスカートが捲れ上がり、抜け出そうともがく彼女の体が締め付けられる。

 その光景に俺と信さんの息の合った感嘆の声が漏れた。


「信くん?」


  ハピさんの冷気を含んだ声も漏れた。


 

◇◆◇



 狭間の刻。

中央で行われているワールドボス戦は芳しくない。


「一時離脱する!!」


「ごめん。 こっちもマナポ尽きたーー」


 マテリアルタワーの効果により特殊効果をランダムで発生させるボス。

範囲攻撃や雑魚の無限召喚によりマナクリスタルを破壊され、MP切れを起こしているPTが多い。


「一華の奴……遅い」


「しょうがないですよ……」


 ボスの強烈な攻撃に耐えるナイトがポツリと不満を漏らし、プリーストの女性が溜息を一つ吐く。

 その間も闇の化身は召喚された雑魚を食べ、HPを回復させる。

巨大な体躯から放たれた闇の雷球。 それはナイトの青年を越え宙を舞い、レイドPTの中心で炸裂した。


「ぐっ!」


「きゃああ!?」


 プレイヤーの間を連鎖する漆黒の雷撃。

それはマナクリスタルを破壊するに十分な威力を持っていた。


「すみません! 最後の破壊されましたぁあああ」


 絶望的な報告がレイドPTを駆け巡る。


「一華ちゃん早くーー!!」


 プリーストの女性の声が戦場に響く。



 

◇◆◇



コルルオンライン掲示板

>雑談板

>>【並行詠唱?】鳳凰院一華様スレ part1【いいえ、台詞です】


――――――――――――――――――


24:頑駄無


 つまりアレは意味がないと?


25:ぱらっち


 >>24

 無い


26:くると


 >>24

 まな板


27:トマホーク


 タメの間にネタで言ってるだけだろ?

 

28:アット


 メテオの威力おかしくない?

 精度も半端ないけど

 タンク以外じゃ即死する


29:ぐんぐる


 今日のパンツは白


30:兄者


 >>28

 火力特化だからなぁ

 対火炎75%でも10kダメは出てるはず


31:ちっぷ


 エリュシオンとのダンジョン戦は

 魔法少女をどれだけ潰せるか


32:ぐんぐる


 ダメ食らうと服が破ける


33:くると


 >>32

 マジか!? 

 ちょっとPKしてくる!!


34:ゲジゲジ


 >>33

 合掌(-人-;)


 ・

 ・

 ・

――――――――――――――――――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ