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俺達のパーティーは何かがおかしい  作者: お茶大好きなお茶目さん
このパーティーはおかしい
16/22

仕事探そか


リュウの買い物を終え、俺が欲しかった短剣をコッソリと購入し、ガルフの店”ミラーナ”を後にした俺達は、取り敢えず車のあるルッタの店に戻り、二階のルッタの家で寛いでいる訳だが、兎に角、お金がない。


「リュウ、今の今まで聞いてなかったけどさ、昨日やったかな?あの、メデューサ草の採取した時の報酬って幾らなん?」


あの時、なんか聴くなって言う雰囲気醸し出してたからな。

今なら大丈夫やろ。


「メデューサ?」


「あれ?ちゃう?」


メデュ…メデュ………思い出せん。


「メディク草の事?」


「あっ!それ!」


「で、それがどないしたん?」


「その時の報酬よ。ナンボやったん?」


「………」


なんの無言やねん。

つか、その恨めしそうな目付きやめい!明後日の方向に向けてるけど、傍目から見てて怖いわ!


暫く黙って待っていると、ようやく答えてくれた。衝撃の事実を。


「140や」


「……え?なんて?もう一回言って」


あれ?俺の耳、おかしくなったんかな?

今、140って聴こえたんやけど…。

……嘘やんな?


「140バリスや」


「嘘やろ…」


ーーゴンッ


俺、本日一番の落ち込み度です。

ガルフの店の時よりも落ち込んでます。


頭を机に叩きつけて意気消沈する程にショックを受けた。

言ってしまうと、これからの生活が脅かされて家計が火の車。お金を管理する俺は先が見えずに撃沈しました。


机に顔を伏せながら俺は尋ねる。


「あれだけ頑張ったのに…?」


「おん」


「50本も集めたのに…?」


「おん」


「なんでやねん!コンチキチョーッ!」


ーーゴンッ、ゴンッ、ゴンッ


余りにも冒険者と言う職業の稼ぎが少なすぎて、言いようのない苛立ちや不安などを覚えて頭で机を連続ノック。


ハタから見れば、ヘッドバンキングの失敗版を繰り返す、ただのイカれた変人野郎だろう。


今度ばかりはリュウと言えども笑わずに真剣な表情で報酬に怒りを抱いていた。



〜〜〜



場所を移動して車の中。

後部座席を片付けて、お菓子とジュースを中央に用意して、向かい合って座る俺とリュウ。


「では、これから緊急『あら、お金がヤバイですわ。即刻稼ぎましょう』の作戦会議を行う」


「はい!」


「なんでしょうか、リュウさん?」


「もう一回お前が笑われて、それで金稼いだらええと思う!」


「あれは偶然じゃ!誰がピエロの真似事なんてするかっ!もう二度とせぇーへんわ!」


「えー、アレ、結構稼げてたやん。笑われるだけで稼げるとか、ええやんか」


「アホか!お前は良くても俺は悪いんじゃ!それで俺のプライドはズッタズタじゃ!」


「えっ?お前ってプライドあったん?」


「あるわ!コンチキチョーッ!」


はい。緊急会議終わり。

短かったね。けどね、俺の精神はリュウの暴言に保たなかったよ。


俺は車内から飛び出して、井戸に顔を突っ込んで、


「クッソォォォォ!!」


叫んだ。

これまでの鬱憤を全て吐き出す勢いで叫んだ。


お母さん…俺、見知らぬ土地で頑張ってるよ。

心身共に疲労して、今にも泣きそうやけど、頑張ってるよ。


そして、なかなか助けに来てくれない弟と妹よ。

お前らにも一言物申す……クソ喰らえ。


さて、気持ちが少しばかりスッキリしたから、思考を切り替えて先の事を考えよう。


まずは、そうやな…。


「リュウ、仕事探そか」


俺の叫びを聞きつけて車から降りて来たリュウに言った。

しかし、リュウは簡単に人の言う事を聞く人間じゃない。それに超が付く程の面倒くさがり屋だ。


「やってるやんけ」


言うと思ったよ。けど、世間はそんなに甘くないの。厳しいの。

私達、そう言う世知辛い世の中で生きてるのよ。分かる?


……って、リュウが分かるはずないな。


「はぁ…あのな、冒険者だけやと俺ら食ってかれへんから、もう一つ仕事を掛け持ちして、食い扶持(ぶち)稼ごって言ってんねん」


「は?なんで俺がそんな面倒くさい事せなアカンのよ?」


リュウの分からず屋!

面倒くさがらんといてぇな!

俺ちゃん困っちゃうよ!乗り気でイっちゃってよ!


はぁ…。


「せなアカンねん。武器と防具買ったから残金が心許ないねん。他の仕事せな、チンケな冒険者の報酬やったら生きてかれへんよ」


「ちっ」


舌打ちされた…。

けれど、納得はしてくれたと思う。

踵を返して、一切振り返らずに車に戻っちゃったけど…。


ま、まぁ、なんとかなるでしょ!

ポジティブな考えは大事よ!


ってなわけで、先の予定を脳内で組んどかなきゃね…。

後で躓くのは嫌やし…。



〜〜〜



「ーーってな訳で、ええ仕事ないかな?」


夜。晩飯を終えてからルッタに相談してみた。

リュウは食べてすぐに身体を拭きに井戸へと向かった。おそらく、その後、すぐに寝るだろう。


「ユウさんの料理って凄く美味しいですし、飲食店でも開いたらどうでしょうか?」


「開くって言っても、金掛かるんやろ?」


「そうですね…では、宿屋の食堂とかで働いてみてはどうでしょう?」


「うーーん…あり、かなぁ…?」


想像しようとしてみたけど、全く想像つかない。


俺が料理人かぁ…そう言えば、小学生の頃に料理人を夢見た覚えがあるけど、俺みたいな人間が出来るわけなくて、中学に入って速攻で諦めたっけ…。


少しだけなら、やってみよっかな?

人付き合いとか苦手やけど、いつもみたく笑ってればなんとかなるでしょ。


「良ければ、僕の知り合いの宿屋を紹介しましょうか?」


……してもらった方が、絶対楽。

けれど、途中で辞めたり、問題を起こしたりしたら、ルッタに迷惑が掛かるし…。


うーーん…。


「僕の事は気にしなくても良いですよ。それに、その宿屋は従業員を募集していたので、丁度良いと思いますけど」


「せやなぁ〜…けどなぁ〜」


煮え切らない。

何かあってルッタに迷惑が掛かると思うと決断を躊躇ってしまう。


「それじゃあ、一日だけやってみるってのはどうでしょう?彼方には僕から言っておくので」


ルッタ君、優しい。

中々煮え切らない発言ばかりする優柔不断人間の面倒を見てくれるとか、優しすぎる。


「うん……うん。それで頼むわ」


ルッタ君の優しさに甘える事にした。

そして、同時に、出来る限りルッタ君に迷惑が掛からないように働こうと決意した。



〜〜〜



翌日。


最近変わらない朝を迎え、朝食を作り&食べてから冒険者ギルドへと向かう。


今日もリュウは元気だ。


冒険者の仕事で街の外へ行って、リュウが持ってきた草むしり…じゃなくて…えーっと……なんとか草の採取依頼を俺一人で行い、昼までに合計50本を採取して街に帰宅。


リュウが依頼完了の報告をしている間に俺は先にルッタの家に戻って昼飯を作り、帰ってきたリュウと仕事を一時中断したルッタと俺とで一緒に食べ始める。


そこまではいつも通りと言っちゃ、いつも通りだ。

だけど、ここからが違う。


「ユウさん。昨日の件、伝えておきましたので後で案内しますね」


「あっ、うん。頼むわ」


食後の休憩中に言われた。


正直言うと、かなり緊張してる。それと、同時に色々な不安も出てくる。


どんな店なのか?

どんな人が働いているのか?

どんな客が来るのか?

嫌われないか?

嫌がられないか?

相手は優しいか?


などなど、頭の中では目まぐるしい程の不安が渦巻き、今にも押し潰されそうになっている。


「何の話や?」


そんな時、リュウが話に参戦してきた。

っと言うよりも、気になって尋ねた方だが。


「俺、昼から別の仕事してみよかなぁ〜って思って、ルッタに紹介してもらってんよ」


「宿屋です」


「そか。頑張れ」


素っ気なっ!?

そこは、『俺もやろかな〜』やろ!?

他人事で済ますなよ!

誰の為に働こうとしてると思ってんねん!


と、言いたいが、言っても仕方ないと思う。

だって、リュウやもん…。


「リュウさんは昼から何をするんですか?」


「んなもん、寝るに決まってるやん」


「………」


リュウは即答した。そして、ルッタ君は絶句。

俺は溜息しか出てこない。


分かりきってた事だ。

リュウは、とにかく面倒くさがり屋で、働かない事に関しては初めて会った時から既に極めてた。達人級とでも言ってもいいくらいだ。


やる時はやる人間なんやけど、その”やる時”ってのが稀なんよなぁ…。


「ルッタ、行こか…」


「は、はい…」


淡い期待を抱いて無残にも撃沈してしまった気落ちした俺は困惑気味のルッタを連れて部屋から出て行く。


これ以上、リュウの事を気にしても仕方ないからね。

だって、リュウだもん。


それから、ルッタの家を出て、数分も掛からぬ内に目的地に辿り着いた。

宿屋の名前は『滝の雨』。

…深く考えたらいけないやつだ。


その宿屋を前にして、俺は一言物申す。


「お・と・な・り・さん!?」


まさかの、まさか。

歩いて1分も掛からなかった。


例の、毎朝下着が干してあるお隣さんだったのだよ!

近いねっ!!


ルッタは俺の反応に苦笑いを浮かべて、宿屋に入って行った。

俺も置いてかれまいと慌ててルッタを追い掛けて宿屋に入る。


そして、宿屋に入って即座に掛かった言葉が、


「いらっしゃ…な〜んだ、ルッタかぁ〜」


ルッタだと知った瞬間、目に見える程にガッカリとした女の子が帳場に居た。

歳はルッタと同じぐらいだと思う。

ソバカスがお似合いだ。


「『な〜んだ』って酷くない?エルミル」


成る程。名前はエルエルか。覚えとこう。

ってか、これがルッタの普通の喋り方か。なんか、新鮮。


「だって、お客さんじゃないもーん」


随分と仲良さげだね。

おじちゃん、羨ましいよ。


「折角、昨日言ってた人連れてきたのに、帰るよ?」


「えっ!?どこっ!?……って、居たぁ!」


おいおい。もしかして、今の今まで俺に気付かなかったんか?


ルッタと一緒に入って来たのに?

ルッタの背後に居たって言っても、俺の方が身長高いのに?

そんなに俺って影薄かったっけ?


ちょっと泣きそう…。


「その反応は酷いと思うよエルミル」


「あっ!ごめッ!…ごめんなさい!」


ルッタに指摘されて謝ろうとしてたけど、噛んだみたいで言い直してる。

言い終わったら、終わったで、噛んだ舌を出して痛がっている。

忙しいね、この子。


「それじゃあ、紹介するからーー」


「分かった!呼んでくる!」


ルッタの言葉を最後まで聞く事なく、エルエルは走り去って行った。

元気なのは良い事だけど、人の話は最後まで聞こうね。

ルッタが困ってるよ。


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