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懲りない奴

 昨日、組織がなんとしても確保したい超能力者の少女エリシアを巡って、マグメルという組織は敵対する別の武装組織と大都市アウロンのど真ん中で銃撃と超能力による戦闘を繰り広げた。

 エリシア確保が失敗した時点でマグメルの『活動』の実行班の精鋭であるラファエラ率いる武闘派能力者達は速やかにその場を離脱し、テレポーターの力によって離脱した。

 参加していたテレポーターは自分の周囲にいる人間を全員制限なく瞬間的に場所を移動するという力を持つため、誤って敵や無関係の人物を自分達のテリトリーに連れ込まないよう場所を選び、尚且つ移動先が自身の見知った場所で安全であるという保証がなければ能力を使えない。

 なので仲間の一人がもたもたしてテレポートのタイミングを逃したとして、敵のいる場所にのこのこともう一度瞬間移動してくるという判断は危険行為であり、貴重なテレポーターを失う可能性を危惧する幹部ブライアンの方針から原則禁止されていた。

 そのためパイロキネシスの能力者ヒューンは現場に取り残され、一度は警察にとって逮捕された。

 警察病院から留置所へ移送される直前に隙を突いて仲間が能力を使って救出してくれたものの、その後アウロンにいるマグメルの人間で一番の権力を持つブライアンに厳重に注意を受け、反省と休暇を兼ねてしばらく組織の活動に関わらないよう通達された。

 彼は焦っていた、発火能力の持ち主の自分は戦闘が起こる現場に出てこそマグメルの人間としての価値がある。なのに謹慎を食らって建物の中に引き籠っているのは、戦力外扱いされたのと何ら変わりない。

 超能力が周囲の人間にバレて恐れられ孤立した自分にとって、超能力者が集まって作られたマグメル以外に自分の居場所は今はない。

 組織のために活躍しなければ、そう躍起になった彼は謹慎命令を無視して外出し、エリシアを探し回った。

 そして数分前、彼と仲の良いマグメルの人間からアウロン中央駅前にてエリシアが発見され、ラファエラ達武闘派のチームが確保に動くという情報を手に入れ、自分が先に一人でエリシアを捕まえて手柄を上げようと現場に急行したのだ。

 だというのに目的地の直前でガラの悪い二人の男に絡まれ、面倒だったのでパイロキネシスを後先考えず見せびらかすように人前で発動させた。

 なんにせよ相手はビビッた、今のうちにエリシアがいるとされる駅の前へ、そう思っていると一人の人物が猛然とした速度で迫ってきて、あっという間に彼の体を硬い歩道の上に容赦なく倒してきた。

「いっ……だ、誰だ、おいおま……!」

 地面に打ちつけた顔や体がジンジンと痛む中、怒りと苛立ちをこめて叫びながら自分を組み伏せる野郎の顔を見てやろうと目を動かしたヒューンだったが、

「……っ、やっと見つけたわよ、犯罪者」

 その人物の顔は昨日戦闘が起こった場所で警察から逃げようとした時に彼の前に立ち塞がり、彼の能力に怯える事なく淡々と彼を取り押さえた、黒髪のポニーテールがよく似合う女性の警察官のそれと全く同じだと気付き、恐怖とも驚きともとれる感情で頭が真っ白になったヒューンは、途中まで発していた罵声を自然と引っ込めてしまっていた。


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