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あっぷる探偵団

作者: ざぶろ

 3月4日の午後15時、南区にあるマンションで女性の死体が見つかった。発見し通報したのは彼女の友人で、遺体には首を絞められた跡があることから警察は殺人事件として捜査を進めている。


「で、なんですって?」

 竹中芳郎は雑誌から目をあげずに言った。膝の上にのっかったファッション雑誌には細身の男性がクールに突っ立っている。竹中は写真にうつった男性の顔の輪郭をすうっとなぞった。

「ちょっと、今はなしたんですけど!」

 竹中の目の前には一人の女性が座っていて、さっきから熱心に長い説明をしているのだが竹中は相槌をうつ素振りすら見せない。

「ねえ、ちょっと!」

「うるさいな、あなたは」

 竹中はバンと雑誌を閉じると女性に向き直った。

「だから僕じゃないって言ってるでしょう。もうすぐで彩音が帰ってくるので待っててくださいよ」

「そんな時間ないんです。私忙しいんで」

「あっそ」

 竹中はそういいながらも目の前の女性が差しだしてきた写真を手にとった。

 痩せすぎに見えるすらっとした女性がそこには写っていた。

「この人が、失踪しちゃったんですか?」

「そうです! さっきからそう言っているじゃないですか!」

「へえ。この人の名前は?」

「田中李里奈ちゃんです。私は、夜長です」

 彼女の説明はこうだ。

 コンビニのアルバイト先で仲良くなった2つ年上の女性、田中李里奈。二人はとても気があってシフトが終わったあとによく一緒に飲むような関係になった。李里奈は複雑な家庭事情を抱えているようで家族の話になるといつも口を閉ざしたが、そのほかの話題なら話が弾みすぎて気づけば何時間もしゃべり通しになることはよくあったという。

 そんな李里奈が突然バイトをやめた。夜長に相談なしにだ。

 夜長は李里奈になんどもメールを送ったり電話をかけたりしたが李里奈から返事が返ってくることはなかった。ある日夜長は李里奈の家へと行った。何回かインターホンを押したのだが李里奈は出てこない。

 大家さんに事情を説明して部屋のカギを開けてもらうと、そこにはいつもの李里奈の部屋があった。だが李里奈はいなかった。

 夜長は警察に相談しにいった。すると驚くべきことがわかった。李里奈は交際中の男性から失踪届を出されているという。李里奈と家族がほぼ絶交状態にあるので、交際している男性が気になり失踪届を出したという。

「まずびっくりなのは、李里奈に恋人がいたことですよ」

 夜長は愚痴っぽくそう言った。

「そんなの私に一言も話してくれなかった」

 本気でショックをうけている風な夜長に目もくれず竹中は写真を指ですっとなぞる。

「それならもういいじゃないですか。警察に届けを出しているんでしょう? なんで僕らのところに来たんですか?」

「警察はあてにならないからです」

「なんだそれは。警察の方があてになりますよ、確実に」

「いいえ!とにかく、探してください、李里奈を。お願いします!」

 竹中はうーんと考え込んだ。

「そうですね、じゃあ彩音が帰ってきたら相談しますよ」

「お願いします!」

 その時ラジオが15時のニュースの時間だと告げた。竹中はラジオの音量を大きくする。探偵助手としての彼の習性である。


「ええ、先日南区のマンションで女性の遺体が発見された事件で、警察は田中李里奈30歳を殺人の容疑で逮捕しました。田中容疑者はほぼ容疑を認めており……

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