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10-8 すごいなぁ。x2


 最後の実を回収して空に上がったら、ロロさんとメグルさんが魔物に囲まれてたので急いで戻ってきました。

 もう少しでロロさんが攻撃されるところでした……危なかったです。

 そのまま今度はジャガイモなのか岩なのかよくわからない魔物と戦うことになって、ロロさんは拳銃で戦ってました。


 もう一人のメグルさんは、なんと二本のダガーが武器でした。

 両方で切ったかと思ったら片方で攻撃を防いでもう片方で攻撃してと、忙しくも見えますが活発そうなメグルさんらしい戦い方でした。

 あんなに囲まれてるのに全部避けるか防いでたので、メグルさん自身も強いみたいです。

 そういえばバルガスさんが実力もあるクランだって言ってましたっけ。すいません、少しだけ意外に思ってしまいました……。


「少しはスッキリしましたー!」


 ようやく全部倒し終えて、言葉通りの表情で声を上げるメグルさん。

 囲まれてるのが鬱陶しそうでしたからね、そう言うのも無理ないと思います。

 それはそうと。


「ありがとうございます、先ほどは助かりました」「さっきは助かった」


 魔物に体当たりされそうだった件でロロさんにお礼を言ったら、同じ言葉が重なりました。

 ロロさんの場合はそこまで危なそうではありませんでしたけど、気付いてなさそうだったのでつい飛び込んでしまいました。

 少しだけ口元も緩んでくれてますので、一応ですがお役に立てたようです。


 ……あれ? 何か引っかかるような……。


「ロロさん! イオンさん! 少しお話があります!」


 気に掛かったことを吹き飛ばすようなメグルさんの声。なにやら怒ったような表情です。

 やっぱりさっきの失敗についてでしょうか……。


「イオンさんは何であんな攻撃避けられるんですか! 威力はともかく密度はかなり凄いのに全部避けきって、相変わらず心臓に悪いですね! ロロさんもなんであんなに攻撃当てられるんですか! こんなに距離が離れててしかもあんな速度で走ってる相手に一発も外さないなんて、貴方はゴ○ゴですかサ○トーですかっ! それに一発でレアMOB判別までするし、“鷹の目”に心眼ついたら“神の目”ですよ!」


 ……えっと……怒られてるわけではない……ですよね?

 隣のロロさんもどう判断していいのか、首をかしげてます……。


「しかも練習のつもりがもう依頼達成ですよっ。二人が凄すぎるおかげで、やること無くなりましたよ!」


 達成?


「でもまだ一体しか倒してませんけど」


「言ってませんでしたけど目標数は十五個だったんです。でも今二十個くらい手に入れてましたよね。ホントは一体につき四、五個くらいで、三体か四体狩ればいいかなーって考えてたのに、まさか全部回収するなんて思いませんでしたよ……」


「そ、そうだったんですか。すいません、途中から何か楽しくて……」


 ロロさんも頷いてます。

 ロロさんと二人であっちに誘導こっちに誘導ってやってるの、楽しかったんですよね。

 次第に効率化されていって、回収スピードがどんどん上がっていくんです。

 気が付いたら全部回収してました。


「なのでもしよかったら、もう一回くらいやってみたいんですけど……」


 ダメですか? とロロさんを窺ってみますが……ロロさんも頷いてくれましたっ。

 メグルさんは……。


「多い分は報酬が増えるだけなので、お二人が大丈夫ならどうぞ……(私、やっぱりいらない子です……)」


 許可が出ましたっ。


 というわけでその後、もう三体ほど素材回収したのと、ロロさんの武器のテストもしてから帰りました。

 なんでもあの凄い威力の武器、出来たばかりで実戦テスト中だったそうです。

 それなのにいきなり命中させるって、作った人も当てる人もどっちも相当すごいんじゃないですか……?


 それにしてもロロさんと一緒に戦うのは本当に楽しかったです。

 動く私と動かないロロさん。やってることは全く違うのに、でも不思議と噛み合って。

 エスの人たちと似たような感じがありますね。お互い任せてくれるというか勝手にするというか。


 上手く言えませんがとにかく楽しかったです。

 機会があれば、また一緒に戦いたいですね……。




◇◇◇




 た……。


 楽しかったぁ!


 イオンさんと戦うのすっごい楽しかったっ。

 私がやってることはいつもと変わらないのに、でも全然違ったっ。


 メグルさんは連携の練習って言ってたけど、でも私たちがやってたのは連携とかそんなのじゃないと思う。

 ただ自分の役割を果たしただけ。それこそ、相手の動きなんてほとんど気にしなかった。


 イオンさんに都合の良いように、魔物の逃げる方向をコントロールしてたって?

 それはそのほうが効率がよかったってだけ。むしろイオンさんは正面から飛び込むことになって、危険だったことのほうが多いはずだし。

 だから気にしてたのはイオンさんというより、魔物のほう。

 イオンさんもそうだったんじゃないかな。私が狙いやすいと言うより、どうしたら速く魔物を追い込めるか、みたいな。


 でもそれがすっごい楽しかった!

 イオンさんのことなんて全然気にしてないのに、でもどんどん効率よくなっていくの!

 最後のほうなんて魔物は同じところぐるぐる回るだけだったし。多分いじめてたようにしか見えないよ。

 こんなに楽しかったのいつ以来だろ……今の武器を使う前にも無かったと思う。


 今の武器になってから……というよりその前から一人で戦ってばかりだったけど、一応パーティを組んで戦うことはあった。

 でもあの頃の、人に合わせてばかりだったあの頃とはもう何もかもが違った。


 私が今の武器になる前は、それこそいろんな武器を試した。

 スタンダートな剣だって使ったことあるし、格闘用の籠手とか弓だって使ったことがある。

 でもいろんな理由から、結局諦めた。


 剣とか槍みたいな普通の武器はみんな使ってるし、はっきり言って需要が無かった。

 だから隙間を埋めたりどんなパーティでもサポートできるようにと思って、弓を持ったり魔法も試したけどやっぱりダメだった。

 鳥族って何をやっても強くならないって思われてるから、どんな武器を持っても相手にされなかったんだよね……。

 だからたまにパーティに入れてもらってもフレンド登録もせずお別れしちゃって、今みたいに一人で戦うようになって……。


 それでレイチェルに、『遠くから攻撃できて簡単に使える威力の高い武器』があれば私でも戦えるのになーってつい愚痴を言っちゃって、それで出てきたのが今の武器。


 威力は凄かった。一発ごとに魔石を使い捨てるから申し分ない。

 簡単にも使えた。細かい技術はどうあれ、最終的にはただ引き金を引くだけなんだから。

 それに確かに遠くまで届く。

 『試作品だから最初は五百メートルで命中せるのが目標、これから伸ばしていく』って聞いてたけど、私が撃つと何故か簡単に当ててしまった。

 言われるままに距離を伸ばしていったら千メートルを超えてしまったのは、自分でも本当に驚いた。

 しかも、他の人は全然命中出来なかったから余計に。


 この武器で飛んでいくのは、実弾じゃなくて魔法。

 魔法だって風の影響を受けるけど、でも風の影響以上に曲がっていく。

 というか、どこへ曲がるかわからない。


 職人さんたちは頑張って調べたけど、結局原因は不明。

 武器の精度とか場所のせいだとか、いろいろ替えたけど特定はできなかった。

 でも私だけは命中させることが出来たし、なんとなく理由がわかった。


 多分だけど周囲の魔力とか、そういう見えない力の影響を受けてるんだと思う。

 このゲームで魔力操作をできる人は、魔物が魔法を発動させるのを光として見ることが出来る。

 私は特に訓練とかしなくても見ることが出来た。


 だからなんとなくわかるけど、この世界って風というか空気中にも魔力が含まれてると思う。

 アカデミアの人によるとこの世界は魔力の元になる魔素っていうのがあるらしいから、私の意見も信憑性があるってことになった。

 それで私には、そういうのがなんとなく見える。

 光として見えるわけじゃないし、具体的にこうだって表現することも出来ないけど……でも、見える。


 それに気付いてからは、今度は動いてる魔物にも当てられるようになった。

 多少のズレなんて関係ない。どう曲がっていくかわかるんだから、もう弾が飛んで行くその道筋が見えるようなもの。命中するのは当たり前。

 私は、すぐに力を示すことが出来た。


 でも、誰ともパーティを組めなくなってしまった。


 だって他の人が居たって居なくたって同じ結果を残せるんだから、それなら居ないほうが効率が良い。

 確かにスコープを覗いてるあいだは無防備だけど、私を守るために誰か居るくらいならそのままやられてもう一度戻ってきたほうが、雇うコストがかからないしその人だって自由に戦える。

 魔物を追い込む役が居れば待機時間も減って効率が上がるかもしれないけど、追い込む役にだって損害は出るし、だったら私一人が待ってれば損害も出ない。


 それでも何度かパーティを組んだことはあるけど、ピンチに気をつかって魔物を撃つと『あれはおびき寄せていたんだ』と言われ、撃たなかったら『見えてたのに何で撃たなかったんだ』と言われた。

 言葉だけ聞くと自分勝手に聞こえるけど、多分それは違う。

 私の戦い方が他の人と違いすぎるせいで、誰も私との連携が出来なくなったんだと思う。

 普通は目に見える範囲内に居て、声を掛け合って戦ってるもんね。

 戦い方は誰とも違ううえに、声が届かないどころか見えないところに居る私との連携なんて、難しいに決まってるよ。


 それに気付いてからはパーティを組まなくなった。

 一人のほうがずっと楽だったし、私も一人で集中してるのが好きだったから。


 でもイオンさんと一緒に戦った今日は、全然違った。

 私が私の思うまま好き勝手してるのに、でもそれが相手のためになってる不思議な連帯感。

 何をしても対応してくれるし、逆に何をされても対応できる自信があった。

 自信の根拠なんて何も無いのに、不思議とやれると思った。


 こんな戦いもあるんだなぁ……。

 だからなんとなく今日が終わるのがもったいない気がして、追加で三体も倒してしまった。

 イオンさんも嬉しそうに付き合ってくれるから、ついお願いしちゃったよ。


 本当はもっと戦いそうな勢いだったけど軽く見た感じ残り三体しか居なかったし、『狩り尽くすといつリポップするかわからないんで勘弁してください! 他のクランに怒られます!』ってメグルさんに言われて諦めた。

 本当に残念。


 できれば、また一緒に戦いたいなぁ……。


 そんな楽しい戦いが終わって、今はルフォートまで戻ってきた。

 イオンさんは隣を歩いてるけど、メグルさんはもう居ない。

 依頼人のところに素材を持って行くって言ってたから結界石の広場でお別れした。

 メグルさんもいい人だったなぁ、こんな私にも明るく話しかけてくれて。なのにぶっきらぼうにしか返せなくて本当にごめんなさい……。


 私はレイチェルに会いにバトルデイズに行くところ。

 テスト結果の報告と、弾の補充しないといけないから。

 調子に乗って結構撃っちゃったけど、全然後悔はしてない。一応黒字だし、何より楽しかったから。


 イオンさんは少し聞きたいことがあるっていうことで付いてきてる。

 一緒に歩くとまた視線が気になるかなって思ったけど、今度は不思議とそんなことはなかった。

 夕方前で人が減ってるのもあったけど、それ以上にイオンさんの笑顔を見てたから。

 あんな魅力的な笑顔見てたら他の人の視線なんて気にならないよ。もうそれだけでズルい。

 アイガードしてるときはほとんど表情も動かさないようにしてるけど、私も多分笑顔だったと思う。見えないかもしれないけど。

 そんなわけで、今日の私はとても楽しい時間を過ごすことが出来た。




「おかえりなさい。二人で帰ってくるなんて思わなかったわ。成果はどうだったの?」


 部屋に入るなりレイチェルに聞かれる。

 気になるよね、私だけが帰ってくるかと思ったら二人だったんだから。


「素材の数は十分すぎるほど集まったようで、今日で完了となりました」


「……そう、それはよかったわ」


 レイチェルの笑顔が一瞬固まった……ような気がする。

 結果を告げたイオンさんが素敵な笑顔だったからだよね。結果のせいじゃないよね。

 練習のはずが完了してるんだから、無理ないけど……。


「それでロロが戻ってきたのはわかるけど、イオンさんはどうしたの? 装備に不備があった?」


「いえ、装備はいつも通り最高でした。特殊効果も役立ちましたし。ただちょっと聞きたいことがありまして……」


「それは良かったわ。それで聞きたいことって?」


「えっと……」


 あれ、なんで私のほうを向くの?


「レイチェルさんにではなくロロさんになんですが……」


 私?

 ここまで付いてきたってことは、往来では話しづらいことなんだよね。

 一体どういう内容なんだろ……。


「嫌なら断ってくださいね。その……アイガードを外してみてもらえないかなと……」


 アイガード?

 少し困る、かな。

 これを付けてると寡黙な私に切り替わるけど、外すといつもの私になっちゃうんだよね……。

 メガネを外したら人格が変わるような感じ。レイチェルから軽い調子でやってみたら、って言われて始めたんだけど、これがなかなか効果があった。


 現実でもメガネを着けてるけど、あっちは着けっぱなしだからもう体の一部。

 ゲームでは普段着けてないけど、切り替えるときだけ着けるようにしてる。

 これをスイッチみたいに意識すると結構切り替わるようになった。

 寡黙キャラ扱いされだしたころに始めたんだよね。表情隠せるし、そのほうが似合うからって。

 そのあと、スーツとコートが出てきたときには『仕組まれた?』って思ったけど……。


 うーん……でも少しくらいならいいかな。イオンさんならあれこれ言うこともないと思うし。


「少しだけ」


「すいません、無理を言います」


 私だってそんな人を見たら気になるもん。しかも午後はずっと一緒に居たもんね、仕方ないよ。

 それに気持ちよく一緒に戦った相手なんだし、これくらいはいいかな。


 それじゃ外してるあいだも寡黙な自分で居られるように、少しだけ気合いを入れて……よし。

 アイガードを外して、イオンさんに素顔を晒した。


「…………」


 イオンさん、無言。

 驚くとかじゃなくて、何かを確認するような感じだけど……どうしたんだろ?


 ……見られてる……。

 …………まだ見られてる……。

 ………………も、もういいかな?


「あの……」


 な、何かな? 寡黙モードが抜けそうだから、声は出せないよ?


「多分なんですが……」


 多分何? あ、目の色が赤いのは気にしないでね。充血とかじゃないからそういう色だから。ていうかなんでこんな色にしたんだろ……髪が黒だから赤が映えるかなーなんて簡単に決めちゃったけど、今考えたら……。


「黒田先生ですか?」


 ……………いま、なんて?


「私、生徒の新なんですけど」


 せいとのしん…………ってえ!?


「えぇぇぇぇぇっ!! 新さんーーーーーーーーーっ!?」



2/14誤字修正しました。


バラしてスッキリ。


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