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10-4 すごいなぁ。x2


 その冒険者は異質だった。


「よーし全員気を抜くなよ、この辺はもう魔物の縄張りだからな。気を抜くとやられるぞ」


 今日の仕事は魔物相手の素材採取。

 魔物を倒し、その素材を依頼主に届けるのが仕事。

 その冒険者は、そんな魔物相手の仕事しか引き受けなかった。


「お前が気を抜くなよ。あそこにフクロウさん居るぞ」


「は? ……うぉっ、マジでわからなかったぞ」


「潜伏スキル高いなぁ、こんなに近づくまで気付かなかった」


 それだけなら異質と言うほどではない。

 魔物討伐専門を自称し、戦ってばかりの冒険者というのは少なからず存在する。

 魔物相手の仕事はその内容、そしてクエスト、プレイヤー依頼に関わらず、危険度の高さから高額な報酬のものが多いからだ。


「にしてもフクロウさんが居るならダメだな。帰るか」


「え、ちょっと待ってくださいよ。なんで帰るんですか。ていうかあの人なんでこんなとこに一人なんですか」


 だが他の仕事は一切受けず、しかも一人で活動しているとなると話は別だろう。

 いくら専門を名乗ろうが無制限に仕事があるわけでもなく、そういうときは違う仕事も受けるのが普通である。

 そのうえ仕事で受けるとなれば、ただ討伐だけの仕事でも、自分には手が負えないからという理由がほとんどであるし、素材採取となれば当然その素材は貴重で手に入りにくい物が多い。

 そしてそういった物であるということは、多くは魔物の強さと直結する。

 故に、高位の魔物討伐を行う者たちこそパーティを組んで戦う。

 それが常識だ。


「何でって言われても、フクロウさんはいつも一人だぞ」


「お前フクロウさんのこと知らなかったのか」


「知らないっすよ。それよかホントに一人なんですか? どっか別の場所に居るとかじゃないんですか」


「居ないって。居ても役に立たないし」


 常識のはずだが、その冒険者は一人だった。

 索敵を担当し、時に囮となり有利な地形へおびき出す者もいない。

 逃げようとする相手を魔法で捕縛する、サポート役も居ない。

 一人で探し出し、一人で仕留めるのだ。


「いや意味わかんないっすよ。大体どうやって一人でスタンピードホース狩るんすか。絶対やられますよ」


 今の獲物はスタンピードホース。

 街道から外れ森を越え、そこに広がる小さな平原でのみ確認されている馬の魔物だ。


 この魔物は一見すると普通の馬だが、人が近づくと突然暴れだすという習性がある。

 大人しそうに草を食べていたその姿が突然豹変し、冒険者を蹴飛ばし踏みつぶそうと突っ込んでくるのだ。

 しかもひとしきり暴れ終わったら、そのままの勢いで逃げていく。


 大きな音や魔法に反応するといったものではなく、ただ近づくだけで暴れだすのだから厄介である。

 もし出現する場所が、こんな人の近づかない平原ではなく街道沿いであったのなら、間違いなく初見殺しとして名を馳せただろう。


 この魔物を倒す方法はいくつかある。

 囮役がひたすら攻撃を耐えきり、逃げようとしたところを捕えて叩く方法。

 ダメージを無視して最初から大技で押し切ってしまう方法。

 よく選ばれるのは、このどちらかだ。


「どうやったらって、こっから狩るんだよ」


「はぁ?」


 だがその冒険者はどちらも選ばず、スタンピードホースが反応する範囲外から仕留める方法を選ぶのだ。

 それなら誰でも出来るだろうと思うかもしれないが、事はそう簡単ではない。

 確かに範囲外から攻撃することは可能だが、それも一撃だけの話だ。

 範囲内に冒険者が居なければ、攻撃を食らったスタンピードホースは逃げ出すのだ。

 相手は馬でなので、当然逃げ足は速い。

 足を止めているところを狙うだけならともかく、走っている体に当てるのは至難の業である。


 しかもスタンピードホースが反応する範囲は、およそ半径百メートル。

 そんな狙うだけでも難しい距離なのに、そこに威力も必要となると一体どのような攻撃を行うのか。

 よほど威力の高い術スキルか、それとも魔法スキルか。

 いずれにしても、普通の方法ではないということは間違いなかった。


「いやマジ意味わかんないっすけど……大体スタンピードホースだって居ないし。まさかあっちから向かってくるまでずっと待ってんすか」


「いや、フクロウさんがスタンバってるなら居るはずだ。ただ俺らに見えないだけだ」


「アレでスタンバってる……?」


 その冒険者は、今まさにスタンピードホースをしとめんとしていた。

 厄介な魔物を倒すため、一撃必殺の大技を繰り出すべく……寝そべっていた。

 比喩でもなんでもなく、地面に体を預けうつぶせに寝そべっているのだ。

 周りから見れば何をやっているんだと言いたくなる体勢だが、本人は至って真剣だった。

 そして標的以外は何も目に入らないほどに集中し、武器を構え、筒状のソレを覗いていた。


「多分アレだな。フクロウさんの真っ直ぐ正面だ。俺視界レベル低いから、すんげぇ小さくしか見えないけど」


「……俺見えないっすよ。ていうか居たとしてどうやって攻撃するんすか」


「後ろからじゃよく見えないか。横に回ってみればわかる」


「近づいていいんすか?」


「ダメならもう怒られてる」


「そうっすね。それじゃ…………いや、何すかアレ」


 ひたすら心を落ち着かせ、微動だにしない。

 風の音も、鳥の鳴き声も聞こえないかのように動かない。

 魔物と冒険者の距離は、簡易距離計によるとおよそ五百メートル。

 冒険者はただただ動かず、スコープ越しに標的を見据え、そして――


ドンッ!


 引き金を引いた瞬間大きな音が周囲に響き、数瞬の後にスタンピードホースの眉間、急所に一つの穴を開け(クリティカルヒット)、そして魔物は消え去っていった。


「ほら、あそこにエフェクトが出てるだろ」


「……マジでここから倒したんすか……しかも一頭倒すのにめちゃくちゃ苦労するスタンピードホースを一発で……」


 冒険者は体を起こし手早くメニューを操作、素材を無事入手したことを確認した。

 だが目標数には達していなかったらしく、メニューを閉じると未だ地面に置きっぱなしだった自らの武器を持ち上げ、次の目標を探し始めた。

 周囲を僅かに見回しただけで次の獲物を発見。バイポッドをたたみスリングを肩に引っかけ、次の狙撃ポイントへ移動を開始した。


「つうわけだ。フクロウさんが居るならこの草原ほとんど射程圏内だからな、後から来た俺たちは大人しく引き下がったほうがいいんだよ」


「なんなら交渉してみるか? お手伝いするんで素材分けてくださいって」


「手伝いが出来ればだけどな」


「……すんません無理っす。あんなスナイパーのお手伝いなんて出来るわけないっす……」


 その冒険者の肩で揺れる武器は、現実世界ではSVDと呼ばれる物に酷似していた。

 それは数百メートル先からターゲットを打ち抜くための武器。狙撃銃(スナイパーライフル)と呼ばれる物であった。




 ……なんであの人たち帰っちゃったのかな? まぁいっか。次行こっと。




◇◇◇




「ありがとやっしたー!」


 思ったより簡単に狩れたから、ついいっぱい買っちゃった。

 ホントはあそこのドーナツがよかったんだけどなぁ。美味しいのに売り切れないから凄くよかったのに、お店の人は嬉しいだろうけど私は残念……。

 でも気のせいかな、少し屋台が減ってる気がする。フランクフルト屋さん無くなってるし。


 気のせいと言えば、さっきの人たちなんで帰っちゃったんだろ。

 何か話してるような気がしたんだけどよく聞こえなかったんだよね。声をかけられたわけでもなかったし。

 別に独り占めなんてしないし横取りもしないんだけど……。

 よくわかんないけど何か都合でもあったんだよね。きっと。


「お疲れー。どうだった? レベル上がったでしょ」


「はいっ。おかげさまで二つも上がりましたー」


「ホントありがとー」


「なんのなんのー。初心者を引っ張るのは先輩プレイヤーの役目だからね」


「そうそう。全然気にしないでいいから」


 楽しそうな声の先には、新人さんと先輩プレイヤーみたいな四人組のパーティ。

 いいなぁ、ああいうの。どっちも楽しそうで。


 …………私、なんでこんなことやってるのかな。


 ダメダメ。そんなこと考えちゃダメ。

 でも……これこそファンタジー! みたいな光景見ると、私だけ何やってるのって思うの、おかしくないよね?


 あっちの子いいなぁ。いかにも駆け出し冒険者ですって感じの、革の防具に片手剣。

 むこうの子は見習い魔法使いっぽいローブだし……。

 うん。やっぱりああいうのがファンタジーゲームだよね。

 私なんて黒の上下に黒のコート。それにスポーツ用サングラスみたいなアイガードまでつけて……もう映画の仕事人にしか見えないよ……。


「こわっ、なんですかあの真っ黒い人……」


「これってファンタジーゲームですよね。あれスーツ? 黒いコートまで着て……何であんなカッコしてるんだろ」


 うぅ……そう思うよね……そうだよね……。


「しーっ! あの人見かけだけじゃなくて実力もあるから!」


「怖いと言うんじゃない。アレは格好いいと言うんだ」


「だな。寡黙で冷静な仕事人プレイヤーだ」


 やっぱり仕事人って言われたぁ!


「見かけは少し威圧感あるけど、“カラス”といえば知る人ぞ知るプレイヤーなんだよ」


 カ、カラスはきれい好きなんだからねっ。……って聞いたことあるだけだけど……。


「そうなんですか? でも……」


「言いたいことはわかる。でも事実なんだから仕方がない」


「そうそう。ソロでワイバーンとか強MOB狩る人なんて、あの“フクロウ”さんくらいだな」


 今度はフクロウ……ああ見えて梟は強いんだからねっ。……って何かで読んだ気がする……。


「えぇっ、それはいくらなんでも……」


「いやマジなんだよ。強い人が何人も証言してるし、その中にはナイツオブラウンドのリーダー、マスグレイブだって居るんだよ」


「本当ですかっ!?」


 会ったことはあるけど、一緒に戦ったことなんてないけどね……。


「見かけによらずすごいんですね。でもカラスとフクロウのどっちが名前なんですか?」


「それがわからないんだよ。基本ソロ専だからほとんどパーティ組んだことないらしくて。だから見かけが黒いからカラスとか、こんな遅い時間帯にしか出てこないからフクロウとか呼ぶんだよ」


「知ってる人も居るんだけど、わかりやすいからみんなこっち使うんだってさ」


「他にもあるよ。悪魔、暗殺者、あと“タカノメ”とか呼ばれたりするらしいけど、こっちはよくわからん」


 あ、悪魔に暗殺者!? 怖そうなのしかないよ……。


「物騒なのばっかり……鳥族なのにすごいんですねー」


「鳥族でも強い人なんて居るんですねー。そっか鳥族で翼が黒い(・・・・)からカラスなんですね」


「最初に言ったやつ誰うまだよなー」


 『鳥族なのに』、かぁ……。

 早く素材持って行こうっと……。




「っていうことがあったんだよ……」


「そんなの撃っちゃえばいいじゃない」


「PKなんてするわけないでしょ! こんな武器でやったらただの殺人犯だよ!」


 机をバンバン叩いて言ってもビクともしないんだから。

 ホントに誰が犯人だと思ってるの……。


「レイチェルがこんな武器くれなかったら、こんなことにはならなかったんだよっ」


「そんな武器で実力を発揮したロロのほうが悪いでしょー。責任転嫁しないでよ」


 うっ。確かにそうなんだけど……。


「ロロの希望は『遠くから攻撃できて簡単に使える威力の高い武器』だったでしょ。こっちとしては試作品のつもりで作ったのよ? しかも職人の暴走で。なのに銃を持ったことも他のVRで経験したこともないプレイヤーが、いきなりまともに扱えるなんて思わなかったわよ」


 ううっ。そうなんだけど、そうなんだけどぉ……。


「想定の倍以上の距離でも平気で命中させるしそのうえクリティカルも量産もして。風を読んで……じゃなくて魔力の流れみたいなのがわかるんだっけ。まさか鳥族の目の良さをそんな風に生かすなんて、誰も想像できなかったわよ」


 わ、私だって思わなかったもん……でもなんとなくわかるんだからしょうがないでしょ……。


「防具だって黒い翼が目立つって言うから黒い防具にしてあげたんじゃない。本当はもっと可愛い装備にしたいのに。そもそもなんで黒にしたの。中二病だったの?」


「違うよ! ……ただその……白って可愛い子じゃないと似合わないなって思ったから……」


「だから正反対の黒にしたの? 十分可愛いのに」


「もう可愛いなんて言われる歳じゃないもん……」


「それ、かなりの数の女性に喧嘩売ってるからね」


 そう言われても嬉しくないよ……。


「じゃあ話を戻すけど。本当に武器を変えたいなら相談に乗るけど、どうする?」


 やっと仕事の手を止めて顔を上げたけど……こういうときはちゃんと真剣になるんだから……。


「いつも真面目だったらいいのに……」


「いやよ。で、どうするの? ロロが希望するんだったら、本当に作るわよ?」


「…………このままでいい」


 ……少し考えたけど……うん、別に武器のことは嫌いじゃない。

 やってることはただ待って、狙って、引き金を引く。これだけなんだけど……。

 でも、ああやってる自分は嫌いじゃない。


 現実ではちょっとしたことでも慌てちゃうことがあるのに、スコープを覗いてると不思議と集中して冷静になれるんだよね。

 集中しすぎて狼の魔物に囓られてもスコープ覗いてたことだってあったし。そのあとすぐにやられちゃったけど……。


 それにひたすら待ってやっと仕留めたときってものすごい嬉しいんだよねっ。

 いろいろ言われるのはイヤだけど、この武器……というか戦い方自体は嫌いじゃない。むしろちょっと好き。

 だからそう簡単に変えたいとは思わないんだよね……こんな武器だけど。

 それに、


「なんか忙しそうだし、そんなときに私の武器まで作ってもらうわけにもいかないしね」


 私が答えると小さく笑ってすぐに机に視線を戻すレイチェル。

 本当に仕事が溜まってるみたい。


「そんな本音を隠さなくてもいいのに」


「隠してませんっ」


 バレてる……。


「でもそういうことなら安心したわ。本当に」


 下げたと思った顔をすぐに上げて笑顔を向けてきたけど……あれ、なんか嫌な予感……。


「実は今日良い素材が入ってね。いつもの職人が新作に取りかかり始めたわ」


「え、でも私そんなこと……」


「前にもう少し威力が欲しいって言ってたじゃない。【SVDカモシレナイナニカ】は元は対人用だから、今度は対物用で作るって言ってたわよ」


「た、たいぶつ!? 兵器とかよくわからないけど、ものすごく物騒な響きに聞こえるよ!?」


「そりゃね。車やヘリを撃つようなやつだから」


「私に一体何を撃てって言うの!」


「ワイバーンは一発じゃ倒せなかったって言ってたじゃない。今度はイチコロよ」


「あ、あんなのを一発!? どんな大きさなの!」


 よくわからないけど、大砲みたいなサイズになるんじゃないの?


「確か予定では【M82A2ラシキナニカ】って言ってたから……これね」


 そう言ってWEBページを開いてくれたけど……あ、思ったより大きくない。

 今使ってる【SVDカモシレナイナニカ】の全長は私の身長の四分の三くらいの大きさ。

 拳銃よりはずっと大きいけど、銃床(肩に当たる部分のこと。私も最近知ったんだけど)とか木の素材で作られてるから、そこまで重くない。

 それに普段はカメラの三脚みたいな足(これは二脚だけど)を立てて地面に置いて、私も地面に伏せてることが多いからほとんど気にしてない。


 今見てる【M82A2ラシキナニカ】は、それより一回り大きい感じかな?

 今度はほとんど金属製でかなり重そうに見えるけど、でも肩に乗せるタイプだから少し重くても持ち運べそうだし、これなら……って!


「なんか分厚い鉄板に穴が開いたり壁が粉々になったりしてるよ!?」


「すごいわねぇ」


「すごすぎるよ!」


「強くていいじゃない」


「危なすぎるよ!」


「大丈夫よ」


「何が!」


「貴方が使い方を間違えるわけないじゃない。黒田せんせっ」


「っ! ……ゲームで名前言うのはやめてよ……」


 昔っからズルいんだから……葉子は……。

 先生、の部分だけそんな生徒っぽく言って……もう……。


「それにあくまでゲームなんだから、本物と一緒の威力なわけないじゃない。似てるのはあくまで形だけ。実際には弾丸じゃなくて、魔法が飛んでるだけなんだから」


「それはそうだけど……」


 レイチェルの言う通り、形がいくら似てても飛んでいくのは弾丸じゃなくて、魔法。

 マガジン(弾倉)に入っているのは魔石で、銃の中でその魔力を増幅。それが発射されるだけ。

 誰が使っても同じ威力を出せる、ただの魔道具。

 だから体も魔力も弱い鳥族の私でも、問題なく使うことが出来る。


 普通の魔道具と違うのは、一発ごとに一個の魔石の魔力を使い切るようにすることで、通常の魔道具より威力を込められるようにしていること。

 それを銃全体で増幅。弾丸の形に成形してから発射するから周囲に拡散することもなく、一点に威力を集中させることができる。

 そこまでしないとあの威力にはならない。……って職人さんが言ってた。

 そんな仕組みだから、込める魔力を押さえて威力を弱く調節する機能はあるけど、強さには限界がある。

 だからレイチェルの言う通り、本物(実弾)と一緒なはずはない。……のだけど……。


「でもちょっと待って? 今使ってる【SVDカモシレナイナニカ】は元は対人用なんだよね? なのに人間より大きな魔物だって倒してるんだけど、それって本物より威力が強いってことじゃない?」


「…………」


「やっぱり! それが大きくなったらもっとすごいことになるじゃない!」


「そんなこともあったりなかったり?」


「あるよ! 大体ただでさえ弾が高いのに、そんな威力が出る弾って一体いくらするの!」


 初期型は本当に一発ごとに魔石を一個、しかも一個数万ゼルもする中級魔石を使い捨てにしてたからいつも赤字だった。

 でもそれでは威力が大きすぎることが多かったから、威力調節機能を付けてもらってプラマイゼロ。

 次はマガジン側も改良してもらって、屑魔石を使えるようになってようやくプラスになった。


 屑魔石って言うのは見かけの悪い魔石のこと。宝石と一緒で形が変だったり傷が入ってたりする石。

 そういうのは魔力自体はあっても魔力の出力が悪いとかで、下級魔石かそれ以下の扱いになる。

 しかもこのゲームでの魔石は装飾品としての価値もあるから、そういう意味も含めて結構安くなる。

 だけどそのせいでプレイヤーショップでは買い取りしてないこともあるし、NPCの買い取りも二束三文。捨てちゃう人も居たんだって。


 そこを何とか改良して、屑魔石でも普通の魔石みたい使えるようにしてもらった。

 ……簡単に言ったけど、それってものすごいことだよね? 企業秘密だから私も詳しいことは教えてもらってないし。

 でも活用方法があるってわかったせいで屑魔石も値段が上がったんだよね……。

 まだ真似してるとこは無いらしいけど、成功したときのために確保してるんだって。こっちはいい迷惑だよ……。


 そんなわけだから結局弾代は高いまま。

 最初よりは安くなったけど、それでも一発ごとに結構な金額が出ていく。


 それに強い魔物相手だとやっぱり一個分使わなきゃならないからやっぱり使い捨て! 今日のスタンピードホースとか!

 だから依頼料が高い討伐系の仕事ばっかりやってるのにっ、しかもバトルデイズからの仕事なら魔石代は値引きサービス(無料じゃないよ!)してくれるって言うからやってるのに!

 威力が上がるだけならともかく、出費も大きくなるだけじゃないの!


「さ、さぁ~その辺はまだ出来上がってないからなんとも……」


「なんともじゃないの! そんな武器いらないから中止して!」


「多分無理……みたいねぇ」


 レイチェルの言葉が終わるより前に、部屋のドアを乱暴にノックしながら声が聞こえてきたんだけど……。


「レイチェルさーんM82のサンプル出来たんで試射用に魔石下さーい! あとロロさんにも試射に付き合ってほしいって連絡しといて下さーい!」


「……今日素材が手に入ったんだよね。早すぎない……?」


「趣味だからね、本気度が違うわよ。【SVDカモシレナイナニカ】なんて、簡単な構想言っただけなのに三時間でサンプル持って来たし。普通、全くの新作魔道具なんてもっと時間かかるはずなのにね」


「……今日忙しそうなのに……」


「だから、その仕事終わらせたら遠慮無く作っていいわよって言っただけよ」


「それが原因なんじゃない!」


 ここの職人さんたちの腕がいいのは知ってるけど、そこに自分の欲望もプラスされたら……っ!


「その声はロロさんっすね! 丁度良かった試射に付き合って下さーい!」


「だってさ」


「もぅ……どうしてこうなるの……」


 ゲームの中でまでこんなに疲れるなんて……もぅ……。




◇◇◇




※ロロが去った後の、新人と先輩のやりとり。


「だが今や鳥族だからって馬鹿には出来ない」


「そうなんですか?」


「あ、私知ってるっ。イベントで大活躍した人が居るんですよね」


「そう! 五人抜きして優勝に導いたプレイヤーが鳥族だ!」


「しかも初めての飛行プレイヤーだからすごいよなー」


「え、でも鳥族って飛べないんじゃ」


「って言われてた。でも飛んだんだよついに」


「しかもボスだってソッコーで倒してたし。見てたけどマジやばかった」


「へぇ~」


「あれを見て飛行方法がもう一度研究され始めたから、それが確立したら鳥族ブーム来るかもしれないんだよなー」


「それは言いすぎだけどな。でも飛べるってだけで一気に可能性は広がるしな」


「だからその飛んだプレイヤーといいカラスさんといい。少ないけど強いプレイヤーも居るんだよ、鳥族には」


「要はどんな種族でもやり方次第ってわけだ。スタンダード種族だからって安心してると、いつの間にか抜かれるかもよー?」


「そ、それはヤダ」


「早く次のクエスト行こうよっ」


「よーしそれじゃ次はどれがいいかなー(カラスさんのおかげでパーティ解散にならずにすんだー!)」


「今の時間ならレアMOBだって居るだろうし、そっち狙ってもいいかもな(フクロウさんあざーっす! 必ずフレンド登録してみせます!)」


2/3 誤字修正しました。 銃の表現について若干加筆しました。話の流れに変更はありません。


注:本文中に出てくるのはあくまで魔道具です。実際の銃器と照らし合わせた突っ込みはご遠慮くださいますようお願いします。

突っ込みどころだらけだと思いますがお願いします!(土下座)


ファンタジーゲームのイメージが崩れる! と思われる方、本当にごめんなさい……目を生かそうとした結果テンプレになりました……。


そんなわけで、今話の主役ロロさんに登場して頂きました。

次も頑張ってもらいます。お財布のためにも。


それはそうとお礼を。

銃の分解整備ゲー、とても参考になりました。感想欄で教えてくださった方、ありがとうございます。

話に生かすことができるかわかりませんが、イメージするのがものすごく楽になりました……。



Q:なんでSVD?

A:とりあえずセミオートから選びました。文中でも言ってますが簡単に扱えることが条件だったので。

あとラフに扱ってもよさそうなのと、安価に作れそうなイメージ(実際は知りません)があるので、早い段階で制作できてもいいかな、と。


Q:なんでM82A2?

A:やっぱり文中でも言ってますが、肩に担げるので構えながらの移動が簡単そう&いろんな方向に撃ちやすいのかなーと(実際は知りません)。

反動がどれくらい凄いかはわかりませんが、ゲームなので女性でも撃てます。ステータス補正あるので。


あと拳銃も出ます。節操のない選択だなと言われそうですが、次はアレです……。

サブマシンガンとかアサルトライフルの予定はありません。ロロさんのお財布の関係上、連射が出来るものは……。


各銃器の外観や詳しい説明はWikipediaさん等をご参照ください。とても書き切れませんし。


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