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10-3 すごいなぁ。x2


「なんだかよくわかんないけど仕事も出来る面白いおねーさんってことでいいんですよね。あたしマリーシャって言いますよろしくお願いしますっ。いつも嫁のイオンがお世話になってます!」


 そしてそんなこと言われれば乗ってくるのがマリーシャです。

 私は構いませんけど、それ、ゲームでも定着させる気ですか?


「嫁云々はスルーして下さい調子に乗るので。私はシーラと言います。今日は相談に乗っていただき、ありがとうございます」


 突っ込みいつもご苦労様です。


「よろしく二人とも。もしかして二人はイオンさんのリアルフレかな? 二人もかなり可愛いんだけど、もしかしてイオンさんの回りって可愛い子だらけ?」


 だらけかどうかはわかりませんが、マリーシャとシーラさんはそうですね。

 今ではエスの皆さんもそうです。


「マリーシャさんは元気印で、シーラさんはクールなアヤメのお姉……いや妹ね。二人の装備作りたくなっちゃうわねー……作っちゃわない?」


「お金は無いけど作りたいですっ」


 多くの人がそうだと思いますよマリーシャ……。


「お金は大丈夫じゃないかな。レイチェル、これが今日の本題ね」


 キイさんがストレージから【鉄鉱石:一級】を取り出し唐突に本題に入ることになりましたが、そのアイテムを見た瞬間、レイチェルさんの顔が引き締まりました。


「これをここに居る全員、それぞれ五個ずつ入手したの」


「本当に一級品……まだ二級までしか確認されてなかったのに、よくそんな数を手に入れたわね……。相手は?」


「メタルイーター。オレスト三番坑道に繋がる洞窟でね」


「そんなところにメタルイーターが居たの? 今まで発見されなかったのが奇跡ね……」


 感心するような口調ですが、どうも魔物自体は知ってたようです。


「知ってたの?」


「アカデミアから名前はだけは聞いてたの。そいつを倒せば良質な金属素材が手に入るかもって。でもどの辺りに居るのかさっぱりのうえ基本洞窟の中らしいからなかなか見つからないしで、正直諦めてたのよ」


 “アカデミア”……というのは確か学術クランの名前だったですね。

 こないだ拠点で雑談中に聞きましたが、ゲーム内でのいろいろな情報を集め考察する研究所的なクランだそうです。


 ちなみに似たようなクランとして、いろいろな謎を実地検証する“TAI-ATARI(体当たり)”というクランもあるそうですが、アカデミアとかなり密接な関係なので一括りにされているんだとか。

 むしろ分かれてるとわかりにくいので合併しろと言われてるそうです。


 でも見たことのない魔物の情報ってどうやって調べるんでしょう……やっぱり本とか聞き込みでしょうか。どちらにせよ大変そうです。

 探すだけにしても私たちは情報をもらったのでおおよその場所がわかりましたが、それも無しに探すのは相当大変ですね。


「とにかく事情はわかった。これについては匿名希望の冒険者が手に入れたってことで、私からアカデミアに報告入れとくわ。そうしたら誰か個人が追求されることもないから。あとでメタルイーターの詳細教えてね」


「わかった。お願いね」


 メタルイーターの件についてはこれで大丈夫ですね。


「あとはこの素材をどうするかだけど、みんなどうするかは決めてる?」


 見回しながら言うレイチェルさん。


「私は~新しいメイスの作成をお願いします~。こういう機会でもないと作らないので~」


 メイスって、多分武器のことですよね。

 今まで鈍器と呼んでました……。


「うちは全売りって言いたいとこやけど、バルガスに売って余ったらやな。多分欲しがるやろ」


 アヤメさんは金属系の装備はしてませんしね。確かにバルガスさんなら欲しがると思います。


「あたしは籠手みたいなの欲しいかな。手から肘の辺りまでガードできる感じの。何も無いと不安でさ。軽くしてほしいけど大丈夫?」


「防御力より取り回しよね? やってみるわ」


 キイさんです。以前の防具は長袖でしたが、今の防具は袖無しですからですね。


「あと余った素材は返してね」


「あら、買い取りじゃなくていいの?」


「……あの剣フェチが欲しがるかもしれないから、一応ね」


 言葉は素っ気ない言い方ですが、キイさんの顔は少しだけ赤いです。

 剣フェチというのは多分プルストさんのことなので、さっきのお返しみたいなものでしょうか?

 キイさん的には嬉しいことだったようです。


「あたしは新しい剣が欲しいですっ。……でも防具も欲しいんですよね……なんかいい方法ないです?」


「またそんな無茶を」「大丈夫よ」


 遮るようにレイチェルさん。相談したらしっかり考えてもらえますからね。


「一級鉄鉱石は結構高く買い取るわよ。見たところ二人の装備は中堅どころだから、素材にするのと余ったのを買い取りにしてもらえれば、全身揃えても今より良い装備になるわね」


 私のときと同じパターンということですね。


「やったっ、それでお願いします!」


「いいわよ。既製品をカスタムする? それともオーダー?」


「オーダーメイドお願いします! みんなの見てたらあたしも欲しくなったんでっ」


「……私もお願いします」


 マリーシャは即座に、シーラさんも少し考えてお願いしました。

 もともと装備を考えたいと言ってましたし、いい機会だったんでしょうね。


「じゃあ二人はあとでじっくり相談と言うことで。イオンさんはどうする?」


「私は売却ですね。今の装備の改造をお願いします。この装備、気に入ってるので」


 買ったときに説明されただけですっかり忘れてましたが、今の武器と防具は改造枠が五個ずつありました。

 強化で性能を上げるだけでもいいですね。こちらはお金があれば出来ますし。

 手持ちの素材を合成してもいいかもしれません。どんな効果が追加されるのかわかりませんが、それはレイチェルさんが詳しいと思うので相談に乗ってもらいましょう。


 作り直したほうが性能の良い物になるかもしれませんが、今の装備はとても気に入ってるので何か手がないかと考えてたら思い出したのです。

 あまり良くない判断だったらレイチェルさんから確認が入ると思いますし……。


「いいわね。ベースが良い装備だから、強化だけでもまだまだ使えると思うわよ」


 レイチェルさん的にも大丈夫のようなので、これで決定です。


「新しい装備を見られると思ったのに残念。でも気に入った物はそう簡単に変えないもんねー」


 少し残念そうにやっぱりかーと言うマリーシャ。よくわかってます。


「でも高く買い取るのはいいけど大丈夫? こんなに数あるのに」


 キイさんの少し心配するような問いかけ。

 高価な素材だからって無制限に買い取っていいわけではありませんよね。

 高く買い取ってもらえるのは嬉しいですが、あまり無理してもらうわけにもいきませんし。


「うちの資金を舐めないで。もともと使う予定もあったし、一級ともなれば在庫抱えてたっていずれ使うことになるわ。それに次の公式ベントで使うかもしれないから」


 次の公式イベントについては、こないだの公式イベント後すぐにメールが届いてました。

 でも日程が八月ということ以外は内容も不明で、詳細は近日公開としか書かれてませんでしたけど。


「次の公式イベントは生産職にもスポットが当たるんじゃないかって噂なのよ。実際にイベント中に生産しろって言われると時間が足りないと思うかもしれないけど、時期的に夏休みだから複数日にまたがるんじゃないかとも言われてるの」


 複数日を使って行われる、生産職向けの公式イベントですか。

 リレーが舞台では参加はできても活躍は難しいですからね、生産職の方は。

 そういう公式イベントがあるのも納得です。


「どんな内容になるかわからないけど、それに向けて素材も揃えておこうかと思ってね。むしろ丁度いいタイミングだったというわけよ。噂が外れて戦闘系でも需要はあるから」


「そんな噂出てるんだ。まぁ戦ってばっかの公式イベントじゃマンネリになるしね。そういうことなら安心して買い取ってもらおうかな」


 売れる見込みがあっての仕入れということですね。


「何の問題もなくなったところで、それじゃあ装備について決めていきましょうかー!」


「待ってましたー!」


 これこそ本当の本題といった感じのレイチェルさんと、つられるようにテンションを上げるマリーシャ……。

 シーラさんも楽しみのようで止める気配がありません。新しい装備なんですから仕方ありませんね……。


 ――ストッパーがありませんの……。


 大変な場所に来てしまったのかもしれません……。




「というわけで逃げてきました」


「それはなんと言いますか、ご苦労様です」


 今はルフォート西の森で、久しぶりのおやつタイムです。

 私の装備の内容だけ先に決めさせてもらって逃げてきました。

 私が嫌がるのを知ってたマリーシャが気をつかってくれたからです……本当に助かりました。


「それで今日は服装が違ったのですね」


「はい、今改造してもらってます」


 精霊さんの言葉の通り、装備はそのまま預けてきたので今は修理時に着る代替服です。

 と言っても以前頂いたワンピースではありません。今日はキュロットパンツにブラウスです。これもシンプルで着やすいものでした。

 待ってるあいだ空を飛びたいので、ズボンタイプはないですかと聞いたら即座に出てきたんです。

 そこまで準備してあるなんてさすがですと思いました。

 ですが……。


『今までそんなサービスなかったよね、どういうこと?』


『さ、最近始めたのよ』


『ふーん。デザインもイオンに似合ってるね』


『偶然これしかなかったのよ。ええ』


『へー。ワンピースはイオンのストレージから出してたけど、それってお客さんに配ってるってこと? じゃー私も欲しいんだけどなー』


『今ちょっと在庫が……』


『そう、その辺はあとでゆっくり聞きましょうか』


 丁度在庫が無くなってしまったようですが、なにやらそれだけではないような感じが……。

 気にはなりましたが逃げるほうが先決だったのでそのまま出てきました。

 マリーシャの目の色が変わってたので危ないところでした……。


「この新しいドーナツもまた素晴らしいですね……柔らかい生地にほどよい甘さ。一口ごとに新しい喜びが訪れるかのようです……」


 新作のハニーも気に入ってもらえたようです。

 このゆったりした空気は落ち着きます……。


「あの精霊様、よろしければ私のももらってくださいっ」


「ありがとうございますグリーン。ですがそれは貴方がイオンから頂いたものです。気軽に譲ってはいけません」


「はいっ! 考えが行き届かず申し訳ございませんですのっ」


 私は気にしませんが、各三個に抑えると言ってましたからね。

 ドーナツを見る視線には、少し後悔が含まれてるようですけど……。


 さっきから恐縮しっぱなしのぐりちゃんですが、ここに来ると必ずこうなるんですよね。と言っても今日で二回目ですけど。

 一回目は公式イベントより前です。スキル修得と戦闘訓練をしたあと、少しだけ時間があったのでぐりちゃんの紹介とお礼だけしていたんです。


 そのときわかったんですが、なんでもこちらの精霊さんは精霊の中でも高位の方だったようなのです。

 それに対してぐりちゃんは新しく生まれたばかりの若い精霊という扱いのようで、どうも子供と大人とか、新入社員と役員のような関係になるようです。


 言われてみれば納得でした。魔素減少の影響をから守るために封じ込められたぐりちゃんと、活動が制限されているとはいえ今までこうして活動していた精霊さん。

 それとぐりちゃんは契約がなければ活動できませんが、精霊さんは契約する必要はありません。

 どっちが強いかとなれば間違いなく精霊さんですね。


 ……精霊さんも、初めて会ったときは封印されてなかったか、ですか?

 一応聞いてみたんですが……。


『あれについてはいろいろありまして……私であって私で……というか、せって……がどうとか……あ、これ口にしては駄目でした。聞かなかったことにして下さい。やっぱり秘密ということで』


 それ以上は聞きませんでした。

 精霊さんにもいろいろあるんでしょう。


「今日も堪能させていただきました。いつもありがとうございます、イオン」


「喜んでもらえたら良かったです。作った人にも伝えておきますね」


「お願いします。残念ながら今の私では、まだ森から出ることはできませんから」


 残念ながらと言葉では言ってますが、その声に残念そうな響きはありません。

 でもどこにも行けないというのも不便じゃないでしょうか?


「あの、精霊さんが森から出る方法はないんですか?」


 なので聞いてみます。

 ここに来るのは好きですが、一緒に外で食べるのもいいと思うので。


「特に何かをする必要はありません。時間が解決します」


 待ってればいいということでしょうか?


「以前にもお話ししましたが、魔素不足については改善へと向かっています。何もせずとも、いずれ森の外に出ることもできるでしょう」


「ちなみにいつ頃になりそうですか?」


「今の状況がそのまま続いたとして、ほんの百年ほどでしょうか」


 ほんの、ですか……。


「精霊には魔素さえあれば永久とも言える時を過ごすことが出来ますから。百年などあっというまです」


 感覚が違いますね……。


「ちなみに時間を縮める方法は……」


「ありますが、今のイオンには不可能です」


 バッサリ切り捨てられました……。


「繰り返しになりますが、私が森から出られないのは魔素不足が原因です。そして魔素を世界に満たすには、精霊の力が最も適しているのです」


 世界に満たす……【風精霊の封石】について聞いたときも言われましたね。

 ということは……。


「グリーンのような契約精霊が増えると、魔素が満ちやすくなる……ということですか?」


 その通りですと、笑顔で頷かれました。


「ですが契約は一人の精霊としかできません。ですから、イオンには不可能なのです」


 そういうことでしたか……。


「言っておきますが、イオンがグリーンと契約しただけでもかなりの時間が縮まっているのですよ? 貴方は十分に貢献しているのです。感謝することはあっても、それ以外を言うつもりはありません」


 どうにか出来ないかと思ったらかえって慰められました……中途半端な気づかいは駄目ですね……。

 でも。


「もちろんイオン以外の人間が契約するのであれば、話は違いますが」


 私の考えを読んだように言葉が続きました。

 契約したい人はきっと大勢居ると思うので、それについて聞きたいんですが……。


「それぞれの祭壇については、この森から東西南北の方向に配置されているはずです。風は南でしたね。他は南以外の三方にあるでしょう。封石がどこにあるかまではわかりませんので、そちらは探していただく必要がありますが」


 考えを読んだかのように、聞きたいことを全部言われてしまいました。

 精霊さんの力なのか、年季がなせるわざなのか……。


「今、変なことを考えませんでしたか?」


「一体何歳なのかなぁ、と」


「お姉様!?」


「貴方の素直さは美徳ですね。ところでグリーン、私の年齢が何か触れてはいけないものであるかのような様子ですが、どうしてそう考えたのですか?」


「申し訳ございませんでした!」


 ぐりちゃん、今日は失敗の多い日のようです。


「でも都合がいいですね。ここからどの方向に行ってもあるなんて。それに街までありますし」


 ルフォートから四方向にあるなんて、むしろ出来すぎのような……。


「それは当然です。だからこそ、森の側に街が出来たのです。今となっては、その面影はありませんが」


 あ、そうですね。便利な場所だからこそ街が出来たのが始まりですよね。

 とんだ思い違いをしてしまいました。


「ただこれも付け加えておきますが、契約が増えればただそれだけで外に出られるというものではありません。時間が短くなるのは事実ですが、それがどれほど影響するのかはわからないのです。ですから今まで通り、自然な貴方でお願いしますね」


 明確な数字になってるわけではありませんから、どれほど縮まるかなんてわかりませんよね。

 それに私が契約するわけではないんですから、無理のしようだってありません。

 せいぜい意識して祭壇を探してみるとか、封石を見つけたら必要な人に譲るとか、そのくらいだと思います。

 なので今の私に出来るのは、今までよりほんの少しだけ手を伸ばすといった程度です。


「わかりました。無理のない範囲で動いてみますね」


「十分です。むしろこうやって来ていただけるほうが、私には嬉しいですので」


 そう言ってカフェオレを飲む精霊さん。

 このゆっくりした時間は私も大好きですからね。

 他にも方法はないのかなとも思いますが、“今の私”には不可能とも言われましたし、そのうち違う方法を教えてもらえるかもしれません。

 無理をすることよりも、ここでの時間を楽しむことを考えましょう。


 ……マリーシャからメールが来ました。やっと終わったんでしょうか。


『マリーシャ:ごめーん全然終わりそうにないよー! 私のどころかシーラのだって決まりきってないし……イオンと遊びに行きたかったのにこっちも楽しすぎるのが悪いんだよー! ゴメンナサイ今日は諦めたほうがいいかも……』


 諦めましょう。

 少し残念ですが、これからずっと遊ぶ機会はありますからね。

 むしろ後腐れないように、今日のうちにしっかりと終わらせておいて下さい……。


 そうと決まればコーヒーをお代わりしてまったりです。

 ひたすらのんびりしましょう……。




期待していただいた方には申し訳ありませんが、イオンの新装備はまたの機会に……。

マリーシャたちとタイミング被ると目立ちませんし。



Q:アカデミアとTAI-ATARIが合併してほしいのって作者の都合なんでしょ?

A:ちちちち、ちがいますよ?


Q:精霊さん変革したんじゃないの? 三個に抑えたままなの?

A:すぐに戻したら説得力ないので。


Q:レイチェルさんの着せ替えプランは潰えたの?

A:現在も争いが続いてる模様です。


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