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2-4 VRゲーム、始めます。

 …………えっと。

 リード君の言葉にしばらく思考停止してしまいます。


「このアホー! そんなにはっきり言うなー!」


「じゃあどう言えってんだよ!」


「私が知るかー!」


「それ酷くね!?」


 二人の言い合いが始まりましたが、マリーシャもそう言うということは……。

 本当に……飛べないということなんでしょうか……。


「ですがさっきCMで飛んでるところ見たんですが……」


「あれを見たのか。CMのあれはNPCなんだ」


 NPC?


「ノン・プレイヤー・キャラクター、略してNPC。プレイヤーじゃなくてコンピューターで動かされてる人ってことだな」


「コンピューターが動かしててもゲームのキャラが出来てるんだったら、同じ種族では飛べるということなんじゃないんですか?」


「まぁ理屈的にはそうなんだろうけど……やってみれば分かるか。イオン、その翼試しに動かしてみな」


 翼を動かすと言われても、ここにはコントローラーとか無いから自分で動かすしかないんですよね。

 翼の動かし方なんて知らないです。


「ショップで話してた時に尻尾は動かせるって言ったけど、あれも全員が動かせるわけじゃないんだ」


 尻尾も全員が動かせるわけではない、ですか?


「なんて言ったらいいかよく分からんけどな、たまに居るじゃん、足の指を器用に動かせる人とか、耳を動かせる人とか。でもああいうのって、動かせる人にやり方聞いても動かせない人は動かせないだろ?」


 居ました。父の友人に耳を動かせる人が居て小さいころ驚かされました。

 確かに私には真似できませんでしたっけ。

 なんというか、筋肉の動かし方を言葉で聞いても、筋肉がその通り動くとは限らないというか。


「尻尾が動くっていうのも理由はよく分かってないけど、昔の人間って猿だったらしいじゃん? 尾てい骨は尻尾があった跡だっていうし。だから尻尾は人によっては動かせるっていうのが定説になってるんだ」


 今は無いけど昔は尻尾があった。

 動かせる人はその尻尾の筋肉を、本能的に動かせる人だということですね。


「でも翼の動かし方なんて分かんないだろ? 要はそういう事なんだよ」


 そして翼はそもそも昔の人間には無かった。

 だから本能的にも分からない。だから動かせない。

 もし仮に今の学説が間違いで昔の人間に翼があったとしても、今無いのは変わらないので動かせるようになるとは限らない。


 つまり、動かし方の分からない私には……。


「飛べないんですか……」


 本当に……残念です……。


「ホンットごめん!最初に言っとけば良かったのにあたし言わなかったから……」


「いえマリーシャは悪くありませんよ。断った私が悪いんですから」


 私が落ち込んだことに気付いたマリーシャから謝られますが、マリーシャは一切悪くありません。

 種族について二人が解説してくれる時、私は自分で決めると断っていたんです。

 そこだけは変える気がありませんでしたから。


「それだけでも言っとけば違ったのに……」


「私が断るというのがどういう事か、マリーシャがよく分かってるから言わなかったんじゃないですか。マリーシャは私の事を考えてくれただけですから、本当に気にしないでください」


「でもさ……」


 ゲーム機の時と違って本気で落ち込んでるようです。

 私のことはどうでもいいんですが、私のことでマリーシャが落ち込むのはダメです。

 何とか持ち直してくれないでしょうか。


「本当に大丈夫ですよ。キャラクターは再作成ができるんですよね? 次は違う種族を選びますから、再作成が終わったら一緒に遊んでください。確か一度作成すると一週間再作成できないんでしたっけ。その間は本番前の予行練習としてこの世界を観光してますから。私に観光させたら一日ほっといても大丈夫って知ってるじゃないですか。私もその間目いっぱい楽しみますから」


 そこまで一気に言って、だから気にしないでくださいね? と言えばようやく、うんと小さな声で答えてくれました。


「そういうことならまず目の前の初心者の館に行っとくべきだな。ゲームの細かい説明が受けれるし。それが終わったら自警団のとこ行って兵士と訓練だな。こっちで戦闘の練習ができる」


「あんたさっきは戦闘に引っ張り出すなとか言っといてなんで戦闘の練習とか勧めてんの!」


「練習くらいはやっとくべきだろ!」


 なんとかマリーシャが持ち直してくれました。

 空気を壊してくれたリード君には感謝ですね。


「それじゃ私は適当に観光してますから。二人はいつも通りゲームをやっててください」


「んー……本当に大丈夫?」


 まだ疑われてるようです。


「本当に大丈夫です。そろそろしつこいですよ?」


「……わかった。それじゃあたしら行くけど、一応フレンド登録しとくから何かあったらすぐ呼んでね」


「はい、その時は遠慮なく呼びますから」


 マリーシャに教えてもらいながらフレンド登録して、そのあと更に念押ししてからようやく二人とも行ってくれました。

 マリーシャの心配性にも困ったものと言いますか。

 ゲームの中でも鋭いと言いますか……。


 私が落ち込んだままだというのは、多分ばれてるんだと思います。


 それでもあのまま二人でいてもお互い落ち込むだけですから、むしろマリーシャが気を使って私から離れてくれたと思います。

 本当に優しい人と友達になれたと思います。


 さて気を使われてばかりいるわけにはいきません。

 このまま明日学校で会うと間違いなく今の繰り返しです。

 少しでも観光して気分を持ち直しましょう。

 リード君は初心者の館に行くように言ってましたが、あまり面白くなさそうなので明日にします。

 とはいえどこに何があるか分からないので、まずは適当に歩いてみましょう。

 遠くに壁のような崖が見えますから、まずそこまで行ってみることにします。

 というわけで歩き始めましたが、早々に悩むことになりました。

 いえ良い意味でです。

 どこを向いても興味を引くものばかりで、ついつい足を止めそうになってしまいます。


 特に建物が目に留まります。

 いかにもヨーロッパと言った感じのレンガの建物はその形を見ているだけ飽きません。

 ああいう建物って中から見てもレンガなんでしょうか。

 いえそれだと寒いので壁紙とか貼ってありますよねきっと。


 あっちの建物は一階が全部開かれて食堂になってるようですね。

 オープンカフェが併設……と言うよりは大衆食堂の感じですね。

 二階から上はやっぱり宿屋でしょうか

 ああいうところの宿って、下がうるさくて寝れないと人とか居るんじゃないでしょうか?

 それとも二階は代金が安いとかあるんでしょうか。


 あっちは木がメインの建物みたいですね。

 日本と違って壁に筋交いがいっぱい入っているのが見えます。

 建築はよく知りませんが、なんで日本は筋交いがほとんど見えないんでしょうね?

 日本は高さの無い平屋が一般的だからでしょうか。

 でも筋交いが多くてごちゃごちゃして見えるかと思えば、きちんとそれもデザインになってるようで非常に面白いです。


 いつの間にか周囲の雰囲気が変わってきましたけど、今度はお店が増えてきたようですね。

 やっぱり最初に見えるのは武器屋なんですね。

 道路沿いのショーケースに剣が並べられています。

 刃がうねったような剣もありましたけど、ああいうのって本当に切りやすいんでしょうか?


 その隣も武器屋ですが、こっちは槍ばかり並んでいます。

 この辺のお店はそれぞれ得意な武器を並べて差別化してるんですね。

 突きに特化したような形もあれば、剣の持ち手が伸びただけのような槍もあります。

 一応武器は槍を選びましたがどれがいいのかさっぱりです。


 防具屋がありました。

 全身覆う金属の鎧がありますが、あんなの着て本当に動けるんでしょうか?

 車のドアなんて1ミリ以下の厚さしかないのにあの重さです。

 手で歪みますし包丁でもあれば簡単に貫通できます。

 包丁を例に出した訳は秘密ですが、とにかく魔物の攻撃を防ごうと思ったら何ミリ必要なんでしょう。

 なんて真面目に考えてしまいましたが……魔物とか魔法とかあるんですから軽くて強い鎧とかもありますよね。


 武器屋通り(?)が終わると普通の民家が並び始め、どうも崖に近づいてきたようで次第に建物も少なくなってきました。

 崖をよく見るていると上の方まで続く階段が見えます。

 ついでなので上まで行って、街の形を把握しましょう。


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