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9-5 マリーシャと、クエストと、それから……。


「はっや!」


「本当に速かったわね……」


 ルフォートからオレストまではほぼ一直線でした。

 シーラさんの行ってたとおり街道が伸びていて、変わったものと言えば途中小さな森があったくらいです。

 森も越えて少し行くと山があり、少し登った辺りにオレストはありました。


 ルフォートやニデスと同じく、城壁に囲まれた街です。

 東西に細長い形状で、街の面積もルフォートに比べ小さいでしょうか。

 街の周囲は岩場に囲まれて木はほとんど生えておらず、街の中も石畳なので、全体的に石の町という印象を受けます。


 そんな街の入り口でマリーシャたちが待っててくれました。

 入り口へ向け高度を下げ、着地します。


「すいませんお待たせして」


「全然待ってないよっ、それよかやっぱすごいよ最高だよ!」


 また抱きつかれました。

 ここまではしゃぐマリーシャは久しぶりです。


「アイテムと装備の確認にお店に寄ってからここに来たんだけど、そしたらすぐにイオンの姿が見えるんだから驚いたよ」


 丁度良いタイミングだったようで安心しました。


「揃ったところで行きましょうか。クエストのことは歩きながら話すから」


「はい。マリーシャ、少し離れて下さい」


「はーい。いいなーグリーンはイオンの肩に乗れて」


「ここは誰にも譲りませんの」


「ふふーんだ私は腕組んじゃうからー」


 自慢げなぐりちゃんとマリーシャ。ですが二人ともすぐに『そっちもいいなぁ』という目に。

 そんなにいいものではないと思うんですけど。


 城壁をくぐり街の中へ。

 そこは空から見た印象通りの、石の街でした。

 山の斜面に合わせて作られたからでしょうか。街全体が坂になっているため、西の方向へ進むにつれて建物の位置が高くなっています。

 街の中心を貫く大通りは十分な広さがあって、通りに沿うように様々な店舗が連なっていて。

 ルフォートと違って特定の店が集中する整然さはなく、武器屋に挟まれた病院なんてのもあります。


 そして大通りから外れた路地の先は一層不思議なことになってそうです。

 大通りから覗くだけでも路地は非常に細く曲りうねっていて、知らない人が一歩踏み入ればすぐに迷ってしまいそうな、まるで都会の下町のような光景が見えます。

 ですが平屋の建物が多いためかいつも影に覆われているといったこともないようで、あまり暗い感じはありません。


 街の住人はいかにも腕っ節の強そうな男性が大勢居て、誰もが豪快な声を張り上げて仕事に精を出しています。

 加えて聞こえてくるのは……鉄を打つ音でしょうか。

 中心部に行くにつれ大通りには鍛冶屋らしい店が増えてきて、それぞれの技術を自慢するかのように様々な商品がショーケースに並べられています。

 そして砕いた岩のようなものを大量に運ぶ荷車も多数。

 多分あれは鉱石で、この辺りの山は鉱山なんだと思います。

 それでここに住む人たちはそれに関する仕事が中心なので、鍛冶屋が多いんじゃないでしょうか。

 鉱山都市、とでも呼べばいいんでしょうか?

 少し埃っぽいですが、でもとても活気に溢れた街です。


 あっと街ばかり見ててもいけません。

 今日はクエストをしに来たんですから。


「シーラさん、クエストはどういうものなんですか?」


「私も概要しか確認してないけど、依頼を解決するために調査から素材採取まで全部自分たちで行う、総合タイプのクエストね」


「調査というと……何か事件とかですか?」


 最後に『犯人は○○だ!』とか言うんでしょうか。

 そういえば伯父さんからもらったゲームソフトの裏面に、犯人の名前が書いてあったことがありましたっけ。文字がかすれて『犯人はヤフ』としか読めなくて、何のことかわかりませんでしたけど。


「事件というよりは事故かしらね。魔物に襲われて毒にやられた人を助けるというものらしいわ」


 全然違いました……。


「それ以上は私も知らないの。最後まで調べると面白くないから」


「あーあれか。そういえば俺も知らないな。報酬は悪くないんだけど、あとでもいいかなって思ってたし。ウェイストもやってないだろ?」


 頷くウェイスト君。

 マリーシャも知らないようなので、誰も最後まで知らないクエストということですね。

 誰かが退屈するということもなさそうで安心しました。


 そのまましばらく歩くと、建物の前に立つ一人の男性が目に入りました。

 頭の上にはクエストポイントのマークがあります。

 その人に向かって歩いてるので、今回のクエストはこの男性を……素通りして、そのまま建物の中に入っていきました。

 あれ?


「どしたのイオン?」


「表の男性のクエストを受けると思ったので……」


「ああ、アレ前にやったことあるけどただのお使いなんだよね。街の端から端まで荷物持ってくだけで戦闘も無いし」


 つい足を止めて不思議そうな顔した私に、マリーシャが答えてくれました。

 戦闘も無いとなると今回受ける予定のクエストには合いませんね。


「だからギルドにクエスト受けに来たんだよ」


「……ギルド?」


 言われてから改めて建物を見てみれば、確かに冒険者ギルドの看板がありました。

 クエストを受ける方法は、クエストポイントが出ているNPCに話しかけるか、ギルドで受注する、の二種類です。

 一応状況によって突然現れる緊急クエストなんてのもあるらしいですが、今回は関係ないですね。


「え、まさかギルドに入ったこと無いとか……」


「無いです」


「ホントにっ!?」


 そのうち行こうと思ってそのままでした。


「二人ともどうしたの?」


「イオンってばギルドに入ったことないんだって……」


 いつまで経っても入らない私たちに気付いて出てきたシーラさんに答えるマリーシャ。

 シーラさんはまたしても想定外と言った表情。本日二回目です。


「……ちょっと待って。もしかして今までは魔物と戦うことしかしてなかったの?」


「いえ、一応サブクエストはやったことあります。でも普通のクエストとかギルドの仕事は全然です」


「何でサブクエ先にやってんだ……」


 後ろで聞いてたリード君も驚いてます……。


「すいません……クランに入っていろいろ手順を飛ばしてたことは聞いたんですけど……」


「本人が現状把握をできてて問題が起きてないならいいわよ。……でもどんなことしてきたのかはじっくり聞いたほうがいいわね……」


「それはフツーに聞きたい」


「追々話します……」


 今から始めると、それだけで一日終わってしまいそうです。


「その辺は学校で聞きましょうか。それじゃ気を取り直してクエストを受けてしまいましょう。簡単に説明もするから」


「お手数おかけします……」


 そんなことがありつつようやくギルドの中へ。

 建物の中は、どことなく役所や銀行を思わせる光景でした。

 奥の方にはカウンターがあって、仕切りに区切られて数人の受付係の姿が見えます。

 壁は掲示板代わりなのか多数のポスター……いえ仕事の依頼書ですね、が貼られています。

 中央には順番待ち用の長椅子があって、よく見ればカウンターに番号札まで置いてありますね。

 と言っても今の時間は空いているようで、長椅子は誰も座ってませんし掲示板前にも数人しか居ません。

 シーラさんは慣れたように掲示板前に行き、こちらへ来るようにと手を振ってきました。


「初心者の館には行った? 行ってれば見たことあると思うけど、これが仕事の依頼書。報酬や内容、仕事場所が書いてあるからよく読んでね。決まったら受けたい依頼書を持って受付に行けばそれこからクエスト開始。内容を達成したら依頼主から依頼書にサインをもらって、ギルドに提出して終了。に何か聞きたいことはある?」


「選ぶ基準はどうしたらいいんですか? 報酬が良くても、難しすぎては失敗するだけなので」


 ギルドの仕事には難易度が明記されていて、数字が低いほど簡単な仕事。大きいほど難しい仕事と説明がありました。

 でもどの数字がどれくらいの難しさとかわからないんですよね……。


「基本的には自分のレベルより低い数字の難易度で、推奨人数以上で受ければ選べば問題ないとされているわ。もちろん例外はあるし、戦闘が無い物に関しては難易度が低くても難しいものがあるわね」


「戦闘が無いのに難しい……頭脳労働とかそういうのですか?」


「そうよ。他には特定のスキルが必要とか、時間制限の厳しいものもあるわね。ただ荷物を運ぶだけなのに、時間制限がやたら厳しいものとか。……それはイオン向きかもね」


 そういうのも、いつかやってみたいですね。


「で、これが今受けようと思ってる依頼書」


 そう言って指された一枚の依頼書。

 えっと……依頼は病気の治療。場所はオレスト。難易度は32。推奨人数は五人

 内容は魔物の毒で苦しむ人の治療。詳細は依頼主から、となってます。


「あまり詳しく書いてないんですね」


 個人情報とかではなく仕事に関することなので、もう少し書いてあってもいいのではと思うんですが。


「依頼によるけどこれは少ないほうね。詳細に書かれてないから単純な内容である場合と、そこも含めて自分で調べろということのどちらかなのよ」


 そういうところでもクエストの内容が推察できるんですね。


「もっと詳しいことが知りたかったら、ゲームの攻略サイトを見るかやったことある人から聞くしかないの。そういうのはネタバレだから面白くなくなるわね」


 シーラさんも詳しくは調べなかったと言ってましたしね。


「私はこれで大丈夫ですよ、難易度も合わせてもらってすいません」


「そうでもないわよ。難易度の割に報酬がいいから、なかなか大変らしいの。多分あちこち行くことになるんだと思うわ。だから遠い場合は、ね」


 任せた、という顔のシーラさん。

 初心者だからと何もさせないわけではなく、任せるところは任せてくれる。

 こういうさりげない気づかいは本当にすごいと思います。


「そういうことなら遠慮無く言ってください」


 移動だけなら役に立つ自信はあります。

 それ以外は足手まといだと思うので、そこだけでも頑張りましょう。


 マリーシャたちも問題ないとのことだったのでこの依頼を受けることになりました。

 ますはパーティ登録、それから壁に貼ってある依頼書を剥いで受付へ。

 パーティ登録してからでないと個人で受ける形になってしまうんだそうです。

 問題なく受理されたのですぐに依頼人のところへ行くことになりました。

 場所はメニューのマップに表示されましたので問題ありません。


 では、初めてのクエストの開始です。



しばらく、のんびりクエストとなります。



Q:犯人はヤフって何?

A:正しくはヤス。言わずと知れたネタバレの代名詞。Goo○le先生も『犯人』と入力した時点で予測変換してくれるほどネタバレ。



まさかチューニングゲーの話からゼロ○ンチャンプの話が出るとは思いませんでした……。

なぜかカジノとRPGの記憶が強いです。……レースゲーでしたっけ。


と、ここまで書いたらレース+RPGでラグーンなアレを思い出しました。

でも……あれのMemoryは……いろんな意味で忘れちまったのさ……。(意訳:メモリーカードのデータ飛んで泣いた)

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