表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/152

8-9 初めてのイベントです!


 ……気のせいでしょうか。今、優勝と聞こえた気がするんですけど……。


 ――私にもそう聞こえましたですの。


 でも二人しか抜いた覚えがないんですが……。

 丁度その抜いた方がゴールに……あれ、リレー前に話をしたホースメンの方ですね。

 でも私がスタートする前の順位は……。


「イオーンッ、グリーンッ、お疲れー!」


 声をかけながら走ってくる皆さんが見えたので考えを中断します。

 聞いてみるほうが早いです。


「お疲れ様です。ところでさっき優勝と聞こえたんですが……」


「そーだよっ、五人抜きして逆転勝利だよ!!」


「でも二人しか抜いてないような……」


「チェックポイントは別空間だし、それに森は広いから全然会わなかったでしょ。でも第四ゾーンに入った時点で二位だったよ」


 そういえばそんな風にできてましたっけ。それで知らない間に順位が上がってたんですか。


「二人しか抜かなかったので、てっきり四位だと思ってたので……」


「驚いた?」


 もちろんです、と頷きます。


「それはわかるけどさ……」


 何故か我慢限界といった感じのキイさん。……だけではなく皆さんもですね。

 どうしたんでしょう?


「驚いたのはこっちだよ!! 岩に突っ込むわ木に突っ込むわっ、でも全部避けたと思ったら最後は本当にボスに突っ込むしっ! 見てるほうは気が気じゃなかったんだから!!」


「動画だったらいいんですが~生だと心臓に悪かったです~」


「ウチはぶっ飛びすぎておもろかったけどなー」


「力を認めるとかじゃなくて思い知らされた気分だ……」


「手は抜かないようにとお願いしましたが、まさかここまでとは思いませんでした。予想の遙か彼方を飛んでくれてありがとうございます」


「ご、ごめんなさい? ありがとうございます? どういたしまして……でいいんでしょうか?」


 怒られたのか褒められたのかよくわからない感じですが……。


「あの……私、少しはお役に立ちました? 何かやり過ぎてたりとか……」


 私は楽しかったのでいいんですが、あまりに皆さんバラバラな言いようなので変なことしたんじゃないかと……。


「「「「「当然!!」」」」」


 ……少し不安だったんですが、皆さん笑顔で吹き飛ばしてくれてようやく安心しました。


「サイコーだったよ!」


「あれくらいで丁度ええわ」


「不安以上に面白かったですよ~」


「次もこの調子で頼むな」


「むしろもっとやっていただいて構いませんので、遠慮なくどうぞ」


 少しはお返しもできたようですし、皆さんにも楽しんでもらえたようですし。

 そのうえ私も楽しめて。

 全力で頑張って、ホントによかったです。


「皆さん、ありがとうございます」


 楽しいイベントに誘ってもらえてよかったです。

 ……元はと言えば自分が原因らしいですけども。

 ま、まぁ皆さんも楽しんでもらえたので良かったということで。

 次があれば、また頑張りましょうか。


「見つけたーっ!」


 突然聞こえた大きな声に目をむけると、そちらから一人の女の子が走ってきました。

 左右でくくったピンクの髪。それと大きな瞳が元気と明るさを感じさせる活発そうな方です。

 しかも背中には翼があるので鳥族ですよ。


「イオンさんは初めまして他の人はお久しぶりですっ! 本イベントの実況を担当させていただきましたクランよろずやのメグルです! いきなりですがエスの皆さんっ、会場にむけてヒーローインタビューさせてもらえませんでしょうかっ!」


 そう言いながらプルストさんにマイクをむけるメグルさん。

 この方が実況さんだったんですか。

 お話ししたいとは思ってましたがインタビューは少し恥ずかしいです……。

 プルストさんはどうする? と他の皆さんを見てますが……。


「この状況で逃げるほうが面倒だと思いますよ」


「だよな。ってわけでお手柔らかに頼むわ」


 変に断るってこじれても嫌ですしね。

 バルガスさんもこうなるかもと言ってましたし。

 大人しく諦めましょう。


「ありがとうございます! ではまずエスの皆さんっ、優勝おめでとうございます!」


 マイクのスイッチを入れたメグルさん、インタビューの開始です。


「あー、ありがとな」


「大盛り上がりのうえに賭けも大荒れでもう最高だったですよ! 賭に負けたみんなっ、ブーイングするなら今だーっ!!」


 ブウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!


「うまいこと儲けたみんなっ、お礼はいいから叫べーっ!! あとなんか奢ってくださいっ!!」


 うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!


 大荒れと言われましたが儲けた人も多かったらしくブーイングに負けてないです。

 金額が大きかったのもあるかもしれませんね。私が賭けた時点での単勝の倍率は十倍近かったですし。


「というわけで今日夜道で刺されそうな人ナンバーワン、リーダーのプルストさんからお話を伺いましょう。あ、ホントに刺そうとしても返り討ちだからみんな諦めましょうねー」


「嫌な評価だなおい。大体主役はあっちだろ」


 私のほうに視線を向けるプルストさん。

 えっ、もう私の番ですか? 主役かどうかわかりませんが、頑張ったのは皆さんも一緒だと思うんでけど……。


「何を言ってるんですか。まだ全員走りきってませんけど、現時点での最速ボス撃破記録はプルストさんですよ! 気が早いですがおめでとうございます!」


「マジか? 決まってないけどサンキューな」


 さすが実況さん、よく見てます。


「なのでマンティコアと戦う際のアドバイスを一つお願いします!」


「アドバイス? あー……受けずに切れ」


「いつも通り上手すぎて参考にならないアドバイスをありがとうございます! さぁ次は動物捕獲最速のキイさんに伺ってみましょう!」


 え、もう? と言うプルストさんをスルーしてキイさんへ。

 スキル修得のときはわかりやすいと思ったんですが、今のは……。


「私が最速? イオンじゃなくて?」


「イオンさんには申し訳ありませんが飛行部門を新設して別枠扱いにさせていただきました。というわけでおめでとうございますっ!」


「な、なんか微妙だけどありがとう……」


 また私のほうに話が、と思いきや別枠になりました。

 むしろ当然だと思いますし他の人の順位に影響がないのは良いんですが……少し複雑です……。


「キイさんの索敵能力は以前から高く評価されていましたが、今回二匹目からほぼコンパスを使わなかったのはさすがとしか言い様がありませんでした。獣人雑伎団も同じようなやり方をしていましたが、それより精度が一段上だったという印象です。ポイントはどういったものでしたか?」


「一番は匂いかな。なんかそこだけ浮いてたんだよね、新築の家に芳香剤を置いた直後みたいな感じ?」


「新築に入ったことはないですがなんとなくわかります。今までの芳香剤が売ってなくて、違う芳香剤を開けた直後とか結構違和感ありますし」


 新築は私もわかりませんが、新車の場合と似たようなものでしょうか。

 新車の、あの素材が発する匂いを嫌う人は結構居るんですが、その匂いを嫌ってすぐに芳香剤を置くと、それぞれが主張してしばらく変な感じになるんですよね……。


「そうそう。森と動物の匂いがまだ混ざり合ってなくてさ、だから動物の匂いがわかりやすかったんだよね」


「なるほど、その辺は急ごしらえのイベント会場ならではの問題ですね。わかりやすい説明ありがとうございましたっ。次は妨害したプレイヤー数最多のアヤメさんお願いします! 今回のイベントはいかがでしたかっ?」


「すっきりしたわー」


「わかりやすいコメントありがとうございます! ちなみに今回の作戦はアヤメさんが考えたんでしょうか?」


「うしろの腹黒のっぽや」


「私が考えたのは走行中の妨害だけで、スタート時にまとめて吹き飛ばすのは爆弾キツネさんの提案です」


「つまり混ぜるな危険と言うことですね! 次回も期待してます!」


 腹黒のっぽ、爆弾キツネ、混ぜるな危険……ごめんなさい非常に納得です……。


「ではそのままバルガスさんへ。特に記録はありませんが、防具は盾一つなのにノーダメージ達成でした。地味に見えますが盾役としてはものすごいですね」


「ありがとうございます。例え防御しかできなくても負けなければ勝つチャンスはありますからね、盾役としては良い結果だと思います」


「そんなこと言う割に、ボスに対しては容赦なくシールドバッシュ決めて結構な速さで倒してましたね。むしろ守ってるのか攻撃してるのかわからなかったぐらいですが」


「攻撃は最大の防御ですからね。盾役として当然のことです」


「あ、あれ? 盾役なのに攻撃優先なんですか?」


「方法はどうあれ、ダメージを防げるならどっちでもいいと思いませんか?」


「思いませんよ! 人格者に見えますがその無茶苦茶なとこはやっぱりエスの一員ってことですね! 頼みの綱のエリスさんっ、リレーには出てませんが一言お願いしますっ」


「次はお昼寝できるイベントがいいですね~」


「いろんな意味でありがとうございます! そして皆さんお待ちかねっ、本イベント最大の注目人物! イオンさんにお話を伺いたいと思います!」


 ついに私に回ってきましたけど……皆さんいつも通りでしたし、私もそれでいいんですよね?


「えっと、よろしくお願いします」


「よろしくお願いします! もちろん最初はリレーのお話からですよっ。本題までもうちょい引っ張るから、観客のみんなはしっかり屋台で買い食いしてってくださいねー」


 屋台の宣伝が入りました。

 それで私が最後だったんですか。


「……でも気になったので先に伺いますが、その肩に乗ってる子はなんですか? ぬいぐるみのようにも見えますが、見間違いじゃなければ動いてるような気がしたので……」


「こないだ私と契約した風精霊です」


「初めまして。お姉様の契約精霊、グリーンと申しますの」


「あ、どうも初めましてメグルと申します……って契約精霊ですかっ!? しかもお姉様!?」


 あれ、レイチェルさんもリンジーさんも普通に挨拶してたので、驚くようなものじゃないと思ってたんですが……やっぱり珍しいみたいですね。

 メグルさんかなり驚いてます。


「横から失礼します。契約精霊についての情報は既に検証班に投げてありますので、詳細はそちらを待ってください。先ほど暫定版がBBSに上がったようですのでまずはそちらをどうぞ。ちなみに現段階ではゲイル山を攻略するしか方法がありませんので、どうしてもという方は頑張ってください。それと飛行方法とは関係ありませんので念のため」


「解説ありがとうございますっ! ビジュアルはいいのにぬいぐるみはちょっとマイナスかなーなんて思った私が愚かでした! 小さな彼女は立派なレディッ、姉をサポートする精霊様でしたぁっ!」


「そこまで言われると照れますの。でもありがとうございますわ」


「はうぁっ!」


 メグルさんの前にふわりと浮いてちょこんとお辞儀。

 それを見たメグルさんは何故かダメージ受けたようにのけぞってます。


「わ、私、子供とか小動物とか、小さくて可愛い子に弱いんですよぅっ! あのっ、握手お願いできますかっ」


「握手なら構いませんの」


「ありがとうございますっ。で、では失礼して……」


 メグルさんは握手と言うより指で触っただけみたいな感じですが、それでもとても満足そうです。


「はぁ~最高ぉ~……グリーンさんありがとうございましたっ。エネルギー補給したところでようやくイオンさんに話を伺いたいと思います。まず真っ先に聞きたいんですが、あんな飛び方して怖くなかったんですかっ!?」


「いえ、私も怖かったです」


 岩にぶつかったらものすごく痛そうでしたし、木に翼が引っかかったらどうなるんだろうとか、考えたくありませんでした。

 坑道では壁にも魔物にもぶつかりそうでしたし、結構危ない場面は多かったです。


「じゃなんでハリウッド映画もびっくりなギリギリスレスレなとこ飛んでるんですか! 見てるだけなのに滅茶苦茶怖かったですよ!!」


「そのほうが速く飛べると思ったので」


「やっぱり速さですか! じゃあ坑道で魔物に道を塞がれたときどう思いました!?」


「スピードが落ちるので邪魔だなぁと」


「私の言ったことは間違ってなかったーっ!!」


 さすが実況さん、見てるだけでわかるんですね。


「そんな無謀に見える飛び方をしてる一方で、ボスのマンティコアと戦う際にはウィンドアーマーを使う堅実さもありました。でも結局防御なんてせず全部避けてましたね。使った意味あったんですか?」


「すれ違いざまに切りつけるようにしてるので、魔法で防御しておけば遠慮なく近づけますから」


「やっぱり攻撃のためですかっ。スピードブーストを十分に生かすためというのはわかるんですが、防御のことは考えなかったんですか?」


「防がなくても、避ければいいですよね?」


「そっかーそうですよねー。……じゃなくて、なんですかこの『常識ですよね?』的な流れは! 確かに言われる通りですけどそうなんですけど!!」


 基本的に一撃離脱で攻撃してますから、飛んでくる魔法以外は相手に接近したその一瞬だけ注意が必要です。

 なのでウィンドアーマーは意識して防ぐためではなく、その一瞬に不意を突かれた場合用ですね。

 頼り切っては面白くありませんので、避けきれないものだけ魔法で防げばいいと思います。

 防御も覚えないといけないとは思うんですが……それはそのうちということで……。

 最近そのうちと言ってるとそのまま放っとくことが多い気がしますが、そのうちでお願いします……。


「話は変わりますが、第二ゾーンのチェックポイントでウィンドアーマーを使わなかったのは……」


「見てからでも避けられましたので」


 結構危なかったですけど。


「……イオンさん、気付いてないかもしれませんが、あそこを盾も魔法も無しで純粋に避けきった人はイオンさんだけですよ。つまりそれだけ避けるの難しいんですよっ! 攻撃力もあって回避力もあって、速さだけじゃなく戦闘面もものすごいですねっ!!」


 そうだったんですか。

 ダンジョンであんな状況だったら魔法を使ったと思うんですけど、今回使わなかったのはイベントだったからですね。避けたほうが面白いくらいに考えてましたので。

 それに他の方の映像を見てたら簡単な防御魔法だけでは防ぎきれないようだったので、私の魔法では使っても防げなかったはずです。

 それなら魔法を使わないほうが、防御を意識せず避けることだけに集中できますから。

 でも戦闘面がものすごいというのは過大評価な気がしますが……。


「魔法はまだ全然ですよ?」


「そこまで完璧だったら最強プレイヤーどころか人外プレイヤーですよっ!」


 それにはなりたくないです……。


「でもどうしてそこまでして勝ちたかったんですか? 結果から見れば大成功ですが、途中一つでもミスがあれば勝てなかったはずです。そんな限界を突き詰めてまで勝利にこだわった理由はなんですか?」


「その……特に勝とうと思ってなかったので……」


 今更ですけど飛んでるときには一度も考えませんでしたね……。

 一応順位を競うリレーなのに……。


「そうなんですか?」


「私がスタートする時点で六位だったので、もう諦めムードだったんですよ。だから順位は気にせず好きにしていいよと言われて、でも折角なので全力でやろうかなと」


「開き直りから全力を尽くしたことが最良の結果を生んだと言うことですね。でもそれこそあんな危ない飛び方しなくてもよかったんじゃないですか?」


「できるだけ楽しもうと思ったんです。適当にゆっくり飛ぶのもいいですが、折角のコースなのでギリギリまで攻め込んだほうが面白いかなと思いまして」


 第二と第四が特に面白かったです。

 もう一度飛んでみたいですね……。


「つまり怖さよりも速く飛ぶほうが面白くてそっち優先したってことですね!! 可愛い顔してやっぱりこの人も無茶苦茶です!! 突然の新メンバーかと思いきや立派にエスの一員でしたっ!! 文句つける愚か者はいるかーっ!?」


 ノオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!


「観客の皆さんいい返事をありがとうございまーっす!!」


「えっと……見た目はともかくありがとうございます」


 何かいろいろ言われましたが……と、とにかくエスの一員と言われたのは嬉しいです。

 これで少しはクランの一員になれたかなと思いますので。

 やっぱり頑張って良かったです。



一撃離脱は一度攻撃したらすぐに逃げるというくらいの意味で使ってます。

空戦技術的な突っ込みはご容赦下さい……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ