8-8 初めてのイベントです!
二つ同時投稿になるように予約してみました。
お好きなほうからどうぞ。
(前書き後書きは同一です)
タッチと同時に助走、まずはいつも通り空へ。
ですがいつもより高度はとらず、前へ。
そのまま何度も羽ばたいてひたすら加速します。
第一ゾーンは何もない草原ですが飛んでるだけでも気持ちいいですね。
すぐ下を流れる地面がいつもよりスピードを意識させて、もっと速く飛べそうな気がしてきます。
いつもは魔物を気にしてこんなに低くは飛びませんが、こういうのもいいですね。
――お姉様、本当に魔物は倒しませんの?
第一ゾーンのチェックポイントは矢が飛んできますが、魔物を倒せばその数が減ります。
ですがあるチームがスキルを使ってスピード任せに駆け抜けていたので、私もそれを真似しようと思うのです。
――大丈夫なんですの?
多分大丈夫ですよ。
――多分なんですの!?
あれくらいのスピードなら私も出てると思うんですけど、比べたことありませんし。
――せめて何体か倒したほうがいいと思いますの。当たれば痛いですの。
じゃあ危なかったときは避けましょう。
――そういう問題じゃないですのーっ!
なんてやり取りしてるうちにチェックポイントへ。
入った瞬間、ひときわ大きく羽ばたいて一気に加速。
タイミングばっちり、矢は一本も当たりませんでした。
――運がよかったですの……。
第二ゾーンです。
ここは高度制限があるので注意しませんと。
でも……実際見てみると、岩は大きいですが転がる速度はあまり速くないですね。
思ってたより岩と岩の間隔も広いですし……これなら近道に行っても大丈夫そうです。
――予定では遠回りコースだったですのっ。
予定は変更です。だってこっちの方が面白そうですし。
――危険度が増すのになんで面白そうなんですのーっ!?
そんなものですよ。
――意味がわかりませんのっ!!
とにかく近道のルートへ。
転がってくる岩を右に左にと避けていきます。
右、次も右、戻して左、また右、二つ続けて左……。
岩と岩の間を縫うように、隙間から隙間へ飛び込むように。
自然と岩の近くを飛ぶことになりますが、すれ違うだけなのでそれも一瞬。
なので怖くはありません。いえむしろ……。
……楽しいですねこれ。予想以上に。
第二ゾーンはどのクランも苦戦していたので、きっと楽しめるんじゃないかと思っていました。
岩を避けるだけでは速くありませんし、速くしたら難しくなりますし。
カーチェイスしながら道路を逆走する映画みたいです。
すれ違う岩の圧迫感が私を遠ざけるようで、でも最短ルートを行きたい私はもっとギリギリまで近づいて。
転がる岩をかすめるように飛び続けます。
――危ないですのーっ、もっと余裕をもって避けるですのー!
それじゃ速くないですし。
あ、一人抜きました。
――速ければいいんですのっ!?
そのほうが面白いので。
――いくら面白くても危ないですの危険過ぎですの!!
速ければすぐにこのゾーンも終わりますよ?
――危険から逃げるために危険度を上げるって本末転倒ですの!
そんな逃げるなんてもったいない。
――何をどうしたらもったいなんですのー!!
もう終わってしまいました……。
でもまだチェックポイントがありますねっ。
――矢が飛んできますのっ、今度こそ余裕を持って避けるですの!
もちろんです。ペナルティは嫌ですからね。
――安心しましたの……。
岩と岩の間を飛ぶルートから、岩を盾にするようなルートへ変更します。
ぶつかるギリギリまで岩を盾にして真っ直ぐ飛び、寸前で別の岩へ変更。
そうすると岩とすれ違うのではなく岩にむかって飛ぶことが増えたので……今度はチキンレースみたいですねっ。
やっぱりスピードは緩めないように気をつけましょう。
そのほうが面白いですっ。
――結局こうなるんですのねっ!!
転がってくる岩をギリギリまで盾にして、接触しそうになると素早く違う岩へ。
時折丁度いい岩が無く矢に狙われますが、運良く数も少なかったので回転しつつ左右に移動して避けます。
魔法と違って飛んでくるタイミングがわからないので、見えた瞬間に避けないといけませんが……速度はゲイルファルコンの魔法くらいなのでなんとか避けられます。
……矢も避けられるのでこうやって飛んだほうが速いでしょうか?
――当たったらペナルティがありますからやめてくださいまし!!
そうでした。ペナルティは嫌です。
つい速く飛べるほうを考えてしまいます。楽しいから仕方がないですね。
――決して仕方なくありませんの!!
あ、終わってしまいました……残念です……。
――ようやく一息つけますわ……。
第三ゾーンに入って一度着地、コンパスとケージを拾います。
動物はリスを五匹ですね。
方角は……あっちですか。
目の前には背の高い木が立ち並んでしますが、枝の位置も高く木と木の間隔も広いので、適度に日が差し込む明るい感じの森です。
でもこの森……映像で見てるより木が少ないようですね。
これなら……。
――お、お姉様?
まずは間隔の広いところにむけて助走。
――待ってくださいですのーっ!!
そのまま飛んでコンパスの示す方向へ。
やっぱり、なんとか飛べますね。
でも全力は無理ですね。
翼も若干たたみつつ、羽ばたきも小さめにしないと当たりそうです……。
――木がっ、木が迫ってくるですの危ないですのーーーっ!!
枝が高いところにある森で助かりました。
速度を落とせばなんとか飛べます。
……でも倒木は危ないです。
――だから危ないって言ったですのーっ、やっぱり走るですのー!!
そうですね。少しは走りましょう
行く手を遮るように斜めにかかった倒木。
翼を完全にたたみ、衝突寸前で倒木の真下を通り抜けいったん地面へ。
そのまま前に進む勢いを殺さないように地面を蹴って、もう一度離陸。
危なかったです。
――危ないのは倒木じゃないですのーっ!! それに全然走ってませんのー!!
確かに、倒木は危ないだけじゃなくて、もっと早く気付けば逆に利用できそうですね。
そんなことを考えているとまた倒木があったので、今度は下をくぐらず、上から飛び越すように蹴ってスピードを稼ぎました。
こういうことですね。
――そうじゃありませんのーっ!!
っと行き過ぎました。
通り過ぎた木の根元に捕獲対象が見えたので、頭と足の位置を反転させ着地するように木に足をつき、そのまま蹴って逆方向へ。
飛ぶのに集中してて気付かないところでした、危なかったです。
目的の木の近くに着地。リスはすぐに逃げようとしますが……。
「ウィンドアローッ」
リスの進行方向を塞ぐように魔法を撃ち、動きの止まったところで捕獲しました。
アヤメさんがやってた方法です。他のチームも真似してたので私もやってみましたが、うまくいってよかったです。
さて二匹目へ行きましょう。
――もう好きにしてくださいですの……。
呆れたような声のぐりちゃんですが、動物を一緒に探してくれたおかげで残りもすぐに捕獲完了。
第四ゾーンへむかいました。
このゾーンは坑道ということで狭い通路だと言われてましたが……。
映像を見てなんとなくわかってましたが、結構広いですね。
皆さん武器を振り回しても全然壁に当たらないので横幅だけでも三車線の道路くらいあると思ってましたが、ほぼ予想通りの大きさです。
道路のトンネルのように丸形じゃなく四角いので天井まで広いですし、これなら飛びやすそうです。
――もうわかってますの……止めないので好きに飛ぶといいですの……。
許可も出たことですし、遠慮なく行きましょう。
――今までのどこに遠慮があったんですの!!
手抜きしたつもりはありませんが、ぐりちゃんも納得してくれてると気持ちよく飛べるので。
やっぱりそのほうが嬉しいですからね。
――……ごめんなさいお姉様。足を引っ張るような真似をしておりましたの……。
だから無理矢理にでも慣れてもらおうと、警告も無視してたんですよね。
今更ですけどごめんなさい。
――無理矢理過ぎですわ!! あーもうっ、こううなったらとことんやって下さいまし!! しっかり者の妹が、どんなとこでもついて行きますわ!!
ありがとうございます、ぐりちゃん。
森を出た勢いをそのままに、坑道に飛び込みます。
皆さん最短ルートの道を走ってましたので私もそのルートを行きます。
違う道を使うと迷いそうですし。
通路の広さはそれなりにありますが曲がり角は結構急です。というか直角が多いです。
そんなところにスピードを落とさず飛び込んで行くと、当然ですが曲がりきれません。
どれだけインを攻めても、どれだけ体を傾けても曲がりれません。このままだと壁に衝突します。
なので仕方なく地面を走ります。スピードは多少落ちますが仕方ありませんねっ。
――お姉様。足がついていても壁は壁です地面ではありませんの。それにどうしてそんな嬉しそうなんですの。
ぐりちゃんの言うとおり、壁に叩き付けられる前に壁を地面に見立てそこを走り、そしてまた飛びました。
壁を走るって、いつかやってみたかったんですよね……。
映画で車が壁を走るシーンとか、無茶苦茶に見えますけどなんかこう……。
――もういいですのわかりましたですの……あ、次は左ですの
ぐりちゃんの指示に従って分岐を左へ。
また壁を蹴って無理矢理曲がります。
曲がってすぐに魔物が居ましたが無視です。
天井スレスレ、壁ギリギリを飛んで全部素通りです。
戦うのはボスだけでいいと思うので。
……だからそんな、壁のように横に並ばないでください……。
しかも天井に張り付いてる魔物も居ますし……仕方がないです。
――真ん中が一番いいですのっ。
了解ですぐりちゃん。
言われるままに魔物の壁、その真ん中にむけて加速して、
「大薙ぎっ!」
一番脆そうなガイコツの魔物を薙ぎ払い、骨が吹き飛んだところをそのまま通り抜けます。
スキル修得しておいて本当によかったです。
――あの程度の魔物でお姉様の暴走を止めることなんて、できるはずありませんの。
……暴走……。
――こ、言葉の綾ですの! それより次は右ですの!
どうせ暴走するなら爆発とかしたほうがいいでしょうか?
――やめて下さいましーっ!!
そんなスキル持ってないので冗談です。そろそろボス部屋ですし。
――次を曲がればボス部屋です。その前の魔物に注意して下さいですの。
今までよりも大回りするように分岐を曲り、角の近くに居た魔物を素通り。ボスの居る部屋に飛び込みます。
ボスはいつも部屋の真ん中に居たので……。
――思いっきりやってやるですのー!!
ぐりちゃんの声も勢いに乗せるように、強く羽ばたいて加速。
「ガアアアアアアアアアアア!!」
出会い頭、すれ違いざまに切りつけました。
そのまま大きく距離をとり、改めて魔物を確認。
姿は映像で見たのとほぼ同じ、ライオンの体にこうもりの翼、尻尾はサソリ。
映像で見るより少し体格が大きく見えますね。
その辺が強くなっていると言うことなのかもしれませんが、私的には狙いやすくなったようなので問題ありません。
でも油断はいけませんし全力でやると決めましたので……ぐりちゃんっ。
――いつでも大丈夫ですのっ。
「ウィンドアーマー!」
ぐりちゃんブーストも入れた防御魔法を展開。
これで攻撃に専念できます。
その間に体勢を直したマンティコアが魔法を撃ってきます。
それをすれ違うように避けて接近して切りつけます。
すぐに反転。先ほどのすれ違いで尻尾に当たりそうだったので、今度は横から尻尾を切り落とします。
唸り声を上げ怒りをぶつけるようにもう一度魔法を撃つマンティコア。
ですが。
――そんな遅い魔法にお姉様が当たるわけありませんのっ。
発動はワイバーンより遅く、速度はゲイルファルコンより遅い魔法。
むしろ丁度いい隙ですね。遠慮なく突っ込みます。
「グガアッ!!」
今度は胴を狙った一撃を入れていったん距離を取りました。
苛ついたように叫び、羽ばたき始めたマンティコア。
そのまま空中を駆けるように真っ直ぐむかってくきますが、その速度はワイバーンとは比べもにならないほど遅いものです。
それならばと、こちらも正面から飛び込み――
「ウィンドカッター!」
至近距離から魔法を撃ち込み、動きを止めたところに槍でも一撃。
いちいち行動が遅いです。
それに空を飛ぶくらいなら、地上から飛びかかられたほうがよっぽど危ないですよ。
私の考えを読んだように、今度は私にかぶさるように飛びかかって来ます。
ですが空中では足の踏ん張りが効いてないからか、やはりその速度は大したことないものです。
私は羽ばたき一つで上を取り返して、
「大薙ぎっ!」
叩き付けるように切りつけました。
その衝撃に耐えきれず地面に落ちるマンティコア。
だいぶ弱ってはいるようですが……さすがに強いらしくまだ倒れません。
……あれ、やってみましょうか。
――止めても無駄だというのはわかってますの。やるなら全力でいくですの!!
できる妹で助かります。
天井まで高度を上げて、距離を取り。
確かめるように槍を握り直し、前に向けて構えを取り――
いきます。
一際大きく羽ばたくと同時にきつい角度で地面にむけて急降下。
一気に速度を乗せ、魔法を発動させようとするマンティコアの頭めがけて、ただまっすぐに。
「一突きっ!」
ズドンッという衝撃音が響き、地面に縫い付けるように槍を突き立てました。
私の体ごと突き刺すように突っ込んだので、その衝撃に潰されたかのように体を地面に貼り付けたマンティコア。
これ、地面にむけると結構衝撃が来ますね……。
スキルと魔法のおかげで痛くはありませんが、やっぱり使うのは控えましょう……。
――使わないとは言わないんですのね……。
そんなことを考えつつ槍を引き抜きこうとすると、マンティコアの体が光に包まれ消えていきました。
なんとか倒せたようです
これで一通り完了ですね、あとはゴールまで飛ぶだけです。
開いた出口に向けて助走し離陸。
短い通路の先は逆行でよく見えませんが……誰か居るようです。
折角ここまで来たんです。抜けるなら抜きたいですね。
これで二人目ですから結局は四位ですけど。
ぶつからないよう天井近くまで高度を上げ、すれ違うと同時に外へ。
そして目の前に広がるのは、既に見慣れたいつもの青空。
肌を撫でる風が爽やかに体を包み、外に出たということを一層感じさせてくれます。
こういう狭いところを飛ぶのも面白かったですが、やっぱり気持ちよさは空を飛ぶのが一番です。
そんな外の空気を味わいつつ、高度下げてゴールへ。
そのままゴールラインを超えたところで着地しました。
無事のゴールに安心して。
何より、しっかり楽しめたという達成感もあって。
楽しかったという感情が、終わった今でもまだ沸いてきます。
こんな楽しいイベントを用意してくれた運営さんには本当に感謝です。
お礼を言う相手はここに居ませんが、つい誰にともなくその場でお辞儀。
結果は四位でしたがとても楽しかったので、またこういったイベントがあるといいですね。
ぐりちゃんもありがとうございました。おかげでものすごく楽しめました。
それと初めての実戦で危ないことばかりしてごめんなさい……。
――どういたしましてですの。それに私もお姉様というものがよく知ることができましたから、構わないですの。何よりお姉様が楽しかったのだからそれでいいんですのっ。……でも大変だったのであとでお菓子を食べたいですの。
いろいろ屋台がありましたから、何か食べに行きましょうか。
――そうするですの。
それじゃ皆さんと合流して屋台のほうに……。
『最後の最後で大逆てぇぇぇぇん!! 優勝はエスだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
…………………………………………えっと?
片方だけじゃ物足りないと思ったので二つまとめてという力業……。