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8-1 初めてのイベントです!

お待たせしました。

今回は幕間無しです。


時系列は6話の翌日、ぐりちゃん契約の次の日からになります。


 さて今日もゲーム開始です。

 ぐりちゃんが待ってますからね。

 ……学校はどうしたですか?

 やっと真理にエンジンがかかったらしく、真面目に勉強してたのでほとんど話をしなかったんです。

 お尻に火がついたとも言えますけど……。




「こんにちは、ぐりちゃん」


「ごきげんようですのっ」


 ログインしてぐりちゃんに器から出てきてもらいます。

 そのまま肩に乗せて、今日はまず買い物からです。


「こっちは市場ではありませんが、何を買うんですの?」


「家具です。全部揃えるわけじゃありませんけどね」


「そういえばあの部屋、何もありませんでしたの……」


 用意してもらった部屋は大体十畳ほどと広さは十分すぎるほどだったんですが、家具類は一切ありませんでした。

 なのでまずはキイさんに教えてもらった家具屋さんに行きます。

 場所も武器屋通りの一本隣なので、特に遠いところでもありません。

 あっ、その前にバトルデイスに寄っていきましょうか。


「ぐりちゃん、先に武器屋に寄りますね」


「もちろん構いませんが、どうしたんですの?」


「ぐりちゃんの器を用意してもらったので、そのお礼をしようと思ったんです」


「そういうことならぜひ私にもご挨拶させてくださいですの」


 ぐりちゃんによるとこの器はものすごく居心地がいいらしく、器として申し分ないものだったそうです。

 器にも良し悪しがあるようで、良くないものだと満足に力が出せないのだとか。

 不純物とか魔力の有無とか、その辺のことなんじゃないかと思います。

 装備を作ってもらったときといい今回といい、レイチェルさんは良いものを用意してくださるので助かります。


「ご来店ありがとうございます、イオン様」


 すぐにレイチェルさんと会えてよかったです。

 今日はここで買い物というわけではないので、他の仕事中に呼ぶのは申し訳ないですし。


「こんにちはレイチェルさん。今日は買い物ではないんですが……」


「ご来店くださるだけでお店としては嬉しいですから。……失礼しました。ご来店ありがとうございます。エメラルドのお嬢様」


 何も言ってないのにぐりちゃんにも挨拶されてます。

 てっきりぬいぐるみか何かと間違えると思ってました。


「ご丁寧にありがとうございます。私はイオンお姉様の契約精霊となりました、グリーンと申します。どうぞよろしくですの」


 ぐりちゃんは私の時と同じようにふわりと浮かび、高さを合わせて挨拶しました。


「愛称はぐりちゃんですので」


「やっぱり言われましたけどやめてくださいまし!」


「それよりグリーン、こちらのレイチェルさんが器を用意してくださった方ですよ」


「そういうことは早く言ってくださいましっ、コホンッ。レイチェル様の選んでくださった器のおかげで大変快適に過ごせております。心よりお礼申し上げますわ」


 そう言ってもう一度お辞儀するグリーン。

 それに対しレイチェルさんもお辞儀を返します。


「お褒めにあずかり光栄です。総合武具店バトルデイズ店長のレイチェルと申します。グリーン様も、御用がありましたら何なりとお申し付けくださいませ」


 二人を見てると本当にお嬢様とメイドさんみたいですね。

 サイズ差が無ければとても絵になる光景です。

 今は微笑ましいという感じですけどね。


「お姉様、何か失礼なこと考えてません?」


「素敵な光景というより微笑ましいなぁと」


「だからもう少し隠してくださいましっ」


「グリーンに隠すことなんてありませんよ」


「そういうのはズルいですわ……」


 疲れたように肩に座るぐりちゃんですが顔は赤みを帯びています。


「お二人は仲がよろしいのですね」


「契約の際に私の魔力を使用したので、私の一部がグリーンの中にあるんだそうです。それもあってですね」


「それでお姉様ですか。素敵ですね」


「何よりグリーンは可愛いですし」


「それも納得ですね」


「ふ、二人ともやめてくださいですの……」


 照れるぐりちゃんを見て笑う私たち。

 やっぱり可愛いです。


「今日来たのは契約がうまくいったという報告と、グリーンの紹介です。お時間頂きありがとうございました」


「お急ぎのところ、わざわざありがとうございます。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします」


「急ぎというわけではないんですが、家具を探そうと思ってまして……」


 どういう形で販売してるのかわかりませんが、作ってもらうことになると時間がかかるかもしれませんし。


「そうでしたか、ではこれ以上お引き留めするわけにはいきませんね。イオン様、グリーン様、またのご来店をお待ちしております」


 笑顔で見送られお店をあとにします。

 あまり長居をしては仕事の邪魔になりますからね。

 今の私はレイチェルさんに勧められると何でも買ってしまいそうなので……。


 お店を出て今度こそ家具屋さんへ。

 武器屋通りの一本隣、教えてもらったお店はバトルデイズの隣裏ですね。

 お店の名前はホームデイズと……あれ?

 今まで意識してませんでしたが、何やら随分と名前が似てる気が……。

 しかもお店の入り口は何やら見たことあるような形で……。


「いらっしゃいませ。イオン様」


 中には見たことのあるレイチェルさんが居ます……どういうことでしょう?


「もしかしてここもレイチェルさんのお店だったんですか?」


「私の、というわけではありません。バトルデイズからは販売のためのスタッフを、ホームデイズからは技術を、という形で提携しております」


 それでこのお店にも居るんですか。

 どんなに良いものでも販売できなければ売り上げは上がりませんからね。

 その点、レイチェルさんなら納得というものです。


「それでイオン様、本日はどういったものをお探しでしょうか?」


「あ、はい。ベッドとテーブルと椅子ですね。拠点の自室に置こうと思いまして」


「かしこまりました。デザインや機能面の希望はありますか?」


「デザインは部屋が板張りだったので、それに合わせてもらえれば大丈夫です。機能は特にありません。あまり頻繁に使うことはないと思いますので、安めの物でお願いします」


 拠点は外観は工場ですが中身は普通の家でしたし、二階は壁も床も板張りだったので一応合わせます。

 それに拠点ではほとんどリビングに居ると思いますので本当に最低限です。

 他は必要になってから買います。


「寝具と……その様子ですと部屋には何も無いようですね。カーテンは必要ありませんか?」


「両方ともお願いします」


 今回も丸投げです。

 お手数おかけします……。


「あ、それとなんですが……もしグリーンにも使えるものがあればお願いしたいんですが……」


「私のまで用意しなくても……」


 さすがに無いですよね……。


「かしこまりました。グリーン様のサイズであれば作成もすぐにできますので、同じデザインでご用意いたします。多少お値段はしますが……」


「大丈夫です。無理を言ってすいません」


「お姉様っ、そんなお金をかける必要はっ」


「ぐりちゃんは気にしなくていいですから、ね?」


 それでもぐりちゃんは遠慮しますがそのまま注文しました。

 必要なものなので無駄遣いではありません。

 ぐりちゃんと寝るのもいいなぁと思いますが……寝返りで潰してしまいそうだなと考えると……。


 それより今回もレイチェルさんに頼って正解でした。

 在庫が無くても代替案を提示してもらえるのは本当に助かります。

 三十分ほどで用意できるとのことだったので、予算だけ告げていったんお店を離れました。

 今のうちにドーナツを買いに行こうと思うのです。

 リンジーさんにお願いすることがありましたし。

 今日はリンジーさんは居るでしょうか……。


「やーいらっしゃーい」


 よかった、居ました。


「こんにちはリンジーさん。今日は十二個ずつでお願いします。あとコーヒーもですね」


「ありがとうございまーす。今日は多いねー。……そっちのお嬢さんの分かなー?」


「初めまして。イオンお姉様の契約精霊、グリーンと申しますの。どうぞよろしくですの」


「リンジーだよーよろしくー」


「愛称はぐりちゃんですが、人前では控えてます」


「思いっきり使ってますの!」


「こう見えて教える人は選んでますよ」


「全員に教えてる気がしますわ……」


「いい人ばかりなので仕方がありません」


「結局全員ということですのね!」


「あっははー二人はいい組み合わせだねー」


 あと教えるのはマリーシャたちくらいですけどね。

 それにしてもリンジーさんもぐりちゃんに気づきましたね。

 レイチェルさんもすぐに気付きましたし、特別なことでもないということでしょうか?


 数については精霊さん用に各三個と、私とグリーンと拠点用と予備用です。

 精霊さんは今まであるだけ食べてましたが、昨日から各三個に抑えると言われました。

 堕落しそうで怖いそうです。節度は大事ですからね。


「ところでリンジーさん、パフェの件でお願いがありまして」


「材料集まってないからまだなんだけどー、なにー?」


「このグリーンの分と、もう一人食べてほしい人がいるのでその人の分もお願いしたいんです、あ、料金はプルストさんが出しますので」


 昨日のも合わせて七個分になってますからね。


「二つ追加ねー了解だよー」


 間に合ってよかったです。


「じゃーこれ商品ねーありがとうございましたー」


「こちらこそありがとうございました」


 さて買い物も終わりましたし、しばらくぶらついてからホームデイズに戻りましょうか。


「あの、お姉様……?」


「何ですか?」


 伺うような、というか申し訳なさそうな表情です。


「その、なんでも私の分を用意してくださるのは嬉しいのですが……」


「もしかして迷惑でした?」


 そういえばサイズが違いますから全部は食べきれないかもしれませんよね。

 せっかくの美味しいものを最後まで食べられないというのも、何だかかわいそうですし……。


「そうではありませんの本当に嬉しいですのっ。……でもお姉様の負担にはなりたくありませんの……」


「そんなことでしたか。嬉しいならやめる必要はないですね」


「そんなことって、私だってお金は重要なものだと知っていますの。無駄遣いはよくありませんのっ」


「必要だと思ったものしか買ってませんよ。だから無駄遣いじゃありません」


 家具なんて本当に最低限ですしね。


「でもっ」


「それにグリーンは私の妹じゃないですか。妹と仲良くしたいけど不器用な姉は、物で釣るような真似をしててでも妹のご機嫌を取りたいんです。だから気づかいのできる優しい妹は、空気を読んで受け取ってください」


「お姉様……」


 非常に投げっぱなしですが、他に妹なんて居ないのでどうしていいかよくわかりません。

 なのでこんな姉だと思って諦めてください。


 ――お姉様は“こんな”ではありませんのっ。やっぱりお姉様はズルいですの……


「ぐりちゃんのお姉さんですからね」


「お姉様には敵いませんの……」


「だったら受け取ってくださいね。姉命令です」


 疲れたようなため息を吐くぐりちゃん。

 でも顔は緩み始めてます。


「そういうことなら仕方ありませんの」


 兄弟なんて居ないのでよくわかりませんが、少なくともぐりちゃんが居ることでどこか浮かれてるようなんです。

 新しく出来た妹を構いたいというか、早く仲良くなりたいとか、そんなことを考えてしまいます。

 でも私には兄弟なんて居ないのでどうしていいかわかりませんし、でも一緒に居ると何かしてあげたいですし。

 そんなわけで早速やり過ぎたようです……次からは気をつけないといけませんね。

 でも無事受け取ってくれたので次からも……あれ、何やら腰に手を当てて言い含めるようなポーズをとってますが、どうしたんでしょう。


「ですがやり過ぎは事実ですの! 今後買い物はしっかり者の妹が事前に検討するですのっ!」


 あ、あれ? 何やら変な方向に……。


「甘々のぼんやりした姉は騙されないように妹に頼っていればいいのです。無駄な浪費っ、勝手な買い物は許しませんっ! これは妹命令ですのっ!」


「騙されたことは無いですし浪費というほど買い物してませんが……」


「ダメですのっ! 少しの気のゆるみが大惨事に繋がるのですのっ!」


「それには同意しますが……でもぐりちゃんのも買いたいですし……」


「ダメですのっ!」


「えっと……」


「絶対っ、ダメですのっ!」


「……………」


「絶対ですのっ!」


「……いつものドーナツくらいは……」


「お菓子は必要経費ですの」


 最低ラインは確保できました……。

 というかこのやり取り、私とお父さんみたいですね……。

 ぐりちゃんが私に似たのか、私が父に似たのか……いえきっと前者です。そうに違いありません。

 そんなところまで父に似たくありません……。


 何て考え事してたからですね、危うく人とぶつかってしまうところでした。


「あっ」


「おっと」


 相手は背の高い男性でした。

 小さめの尖った耳ですが……馬族の方でしょうか?

 オールバックで肩まである濃い茶色の髪が目立ちます。

 それが(たてがみ)みたいなので、なんとなく馬族だと思います。

 背が高くて少しだけ見える腕にはしっかりと筋肉がついている方ですね。

 大柄すぎずむしろ細めの印象なので、細マッチョと言えばいいんでしょうか。


「すいません。ちょっと考え事してました」


「ああいやこっちこそ……っ!?」


 目を見開いて動きが止まりましたが……もしかしてどこかぶつかったでしょうか?


「あの、大丈夫ですか? どこかぶつかりましたでしょうか」


「……はっ、いえ! 大丈夫です!」


「そうですか? もし怪我でもあればポーションありますが」


「いえ! ホントに! 大丈夫です!」


「それならよかったです」


 大丈夫とはっきり言われてますし、疑うのも良くありませんからね。

 それにしっかり鍛えてる方のようですし、本当に大丈夫なんでしょう。


「あ、甘いものは食べられますか? よかったらこちらどうぞ。少し買い過ぎてしまったので」


 何も無しというのもなんですからね。

 ドーナツ多めに買っておいてよかったです。


「はい! 大丈夫です!」


「よかったです。男性は甘いもの苦手な人も居ますからね」


「はい! 大丈夫です!」


 プレーンとチョコを一つずつお渡しします。

 三つは手からはみ出そうでしたので。


「今日は本当にすいませんでした」


「いえ! 大丈夫です!」


 言葉は元気ですが……なんか無理してる感じもありますね。

 ……もしかして何か予定でもあったでしょうか。

 だとしたら引き留めて悪いことしましたね。


「気をつかっていただいてありがとうございます。それでは失礼しますね」


「はい! 失礼します!」


 そう言ってものすごい勢いで走っていきました。

 やっぱり予定でもあったんでしょうね。


 ――お姉様……多分違うですの……。


 そうなんですか? でも急いでたようですし。


 ――私からはこれ以上言えませんわ……間違いの可能性もありますの……。


 不思議なぐりちゃんです。

 でも無理に引き留めてしまったのも事実ですし、またお会いしたら改めて謝罪しましょうか。





Q、レイチェルさん、パジャマは勧めないの?

A、「男も居るクランだし、男に見られるかもしれないと思うとちょっとね。だから部屋着も難しいのよねぇ……」

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