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6-7 これもクエストでしょうか?

日が変わる前に間に合いませんでした……。

「お帰りなさい~」


 拠点ではエリスさんが一人でお茶を飲んでました。

 今日はテーブル側ですね。


「ただいま」


「ただいまです」


「……俺は帰ってきた……生きて帰ってきた……」


 結局プルストさんは一緒に帰ってきました。

 キイさんがパフェを奢る回数を増やしてましたが。


「アヤメは上?」


「そうですよ~何かあったんですか~?」


「用ってほどでもないけど、アヤメが興味持ちそうなことがあったからさ」


「それは私も気になりますね~」


 今は隠れてもらってるあの子のことです。

 帰る最中にいろいろ聞いてたんですが、そのうちの一つが宝石の中に姿を隠すことができというものです。

 せっかくだからドッキリをしたいというキイさんの提案で、ぐりちゃんには隠れてもらうことになりました。

 アヤメさん相手には下手すると大変なことになるかもしれませんが……。


 ――大変なことって何ですの!?


 わかりませんけど自信もってやれば大丈夫ですよ。多分。


 ――多分ですの!? それにわからないって大丈夫なんですのー!?


「あ、台所使いますね。タルトを切り分けますので」


「私お茶淹れますね~」


 ――思いっきり誤魔化されましたわ……。


「帰っとったかー」


 タルトを出したところでアヤメさんが二階から降りてきました。

 そういえば二階には何があるんでしょうね。


「二階にイオンの部屋出来てるからな、これ鍵や。部屋は右側一番奥やから」


 ……おく?


「部屋と言っても窓しかないので~すみませんがあとの物はご自分で用意してくださいね~」


 …………かぎ?


「ロフトほしいとか水回りほしいとか、何か改装したいことあったら相談してね」


 ……………………えっと。


「……改装というのは」


「イオンの部屋を準備するためだったというわけ」


 へや………………………………………………!?


「わっ、私の部屋ですかっ!?」


「おー驚いとるわー」


「静かそうなイオンさんが驚くのは新鮮ですね~」


 驚きますよ!

 部屋ですよ部屋!

 しかも私用の!

 確かに現実世界でも自分の部屋はありますがそれとこれとは別です!

 げ、ゲームの中でも私用の部屋って……。


「だ、大丈夫? ごめんまさかそこまで驚くとは思わなくて」


「えっと……多分大丈夫ですが……かなり驚きました……しかも改装までして……」


「言っとくけどお金は全然かかってないからその辺は気にしないでね。六人目用のスペースは元々作る予定だったんだけど、改装してくれるクランが忙しくなって後回しにされてただけだから。ていうか忘れてたみたいだけどね」


「ほとんどドア付けた程度で大した工事はしてへんけどな、念のためっちゅうことで二日ほど時間とられただけや」


 何でもないことのように言われますが……家の改装と聞くとどうしても凄い手間とお金がかかるというイメージがあって……。


「そ、そうなんですか。といっても部屋を持つというだけでなんだかすごい事のような気がするんですが……」


 拠点はクランのものなのでクランメンバーである私が利用するのはおかしくないと思いますが、そこに個人用の部屋までできるとなるとなんだかものすごい事のように思えてしまいます。

 言ってしまえばこの世界にプライベートスペースが存在するわけですから……。


「まぁ気持ちはわかるけどね。でも宿屋の部屋を一月単位で借りて自分用にする人とか結構いるんだよ」


「お金を持ってる人は~個人で家を所有してますよ~」


「クランによっては砦みたいなとこもあるしなぁ」


「こっちの世界は土地代とか不動産的な物の価値が低いんだよ。だから気にせず使ってね」


 皆さん普通と言った感じなので……そんな特別ということでもない……ですよね?

 宝石の件もありましたし、価値が違うと言われれば納得ですし。

 申し訳ない気は思いっきりありますが……せっかく用意してもらっておいて使わないほうが失礼とも思いますし、そういうことなら使わせていただきましょう。

 気をつかってもらったというより、クランメンバーに対する当たり前の対応と言った感じのようなので。

 社宅のようなものと思いましょう。というか思い込みましょう。

 とはいえしばらくは気にしてしまうと思いますが……。


「当分の間は気になると思いますが……使わせていただきますね。わざわざ用意していただいて、ありがとうございます」


「難しいかもしれないけどそんなに気にしないでね。価値から言えば今回のことがよっぽど上だし」


「また何かやったんか」


「やったのよ……」


 何かしましたっけ?


「この二日で効果不明のイベントアイテムの素性を完璧に調べ上げて、それについての用途、用法、その結果までね……」


「早すぎですね~」


「運が良かっただけだと思うんですが……」


 でも毎回こうなるわけでもありませんからね。

 あとでキイさんに普段はどうやってるか聞いてみましょうか。

 むしろ遠回りした方が楽しかったりするかもしれないですし……。

 次に何かあったらそういう寄り道的なことも意識してみたいですね。


「お茶がはいりましたよ~」


 私と同じくキッチンにいたエリスさんがお茶を運びます。

 それに合わせて私も切り分けたタルトをテーブルに運びました。


「それであの石どんな使い道があるん?」


「あ、はい。一つは装備の改造ですね。こっちは試してないのでどうなるかは分かりませんが」


「多分属性効果が追加されるんだろうけど他にもあると思うな」


 タルトを置きつつ答える私にキイさんが言葉を追加します。

 ですが他に効果なんてあるんでしょうか?


「そうですね~それだけなら素材が他にもありますし~。イベントアイテムでそれだけとは考えにくいですね~」


 そういえば私の装備にも風属性耐性(弱)があるんですし、あの強いゴーレムのアイテムならそれ以上でもおかしくありません。


「ん? タルトの数間違えてへん? 今日バルガスおらへんで」


「切り分けちゃうと~すぐに痛んでしまいますよ~?」


「お、俺の分まである……なんだかんだ言ってイオンやっぱり優しい……」


 テーブルのタルトを見てお二人から疑問の声が出ます。

 タルトは六等分。

 この場に居るのはアヤメさん、エリスさん、キイさん、プルストさん、私。

 さすがにプルストさんだけ仲間外れにはしません。

 やっぱり間違えてません。


「いえ、これで大丈夫ですよ。これがアイテムのもう一つの用途なので」


 つい笑ってしまいそうになりますが、そろそろ登場してもらいましょう。

 出番ですよ、ぐりちゃん。


 ――わかりましたですのっ。


 服の中に入れていたペンダントを首元から取り出し、それと同時に少しだけ光り出すペンダント。

 光はテーブルの上に降り、小さな人の形へ。


「お初にお目にかかります。イオンお姉様の契約精霊となりました、グリーンと申しますの。どうぞお見知り置きくださいですの」


 スカートを摘まんだお辞儀をしながらぐりちゃんの登場です。

 最後に可愛らしく微笑みも入れてほぼ完璧な挨拶です。


「愛称はぐりちゃんです」


「だから最初にそれを言うのはやめてくださいまし!」


 一つ物足りませんでしたがこれで本当に完璧です。

 これがなければぐりちゃんじゃありません。


「契約精霊……」


「グリーン……」


「さすがに二人も驚くよね……」


「驚かなかったら俺が驚くわ」


 お二人が固まってるとこは初めてですね。

 プルストさんは割と固まりやすいですが。


「……グリーン言うたな。ちょおこっちええか?」


「……私からもお願いします~」


「構いませんが……なんですの?」


 テーブルを歩いて二人の方へ向かうぐりちゃん。

 なんだか二人とも静かですね。そんなに驚かせたでしょうか?


「おおきになぁ、うちはアヤメ言うんや」


「私はエリスです~」


「グリーンですわ。改めてよろしくですの」


 二人ともものすごい笑顔ですが……なんでしょう……。

 まるでスーパーで半額シールを見つけた奥様方のような感じが……。


「よろしゅうなぁグリーン。そんでいきなりやけどお願いがあってなぁ」


「私からもありまして~」


「なんですの? お姉様と同じクランの方なのですから、私に出来る事なら何でもさせていただきますわ」


 あ、そんな言い方するとなんだか嫌な予感が……。


「大丈夫や。そこに立ってるだけでええんや」


「そうですよ~それだけでいいんですよ~」


「そうなんですの?」


「そうなんや、ただなぁ……」


「ただ?」


 ぐりちゃんが疑問に首をかしげます。

 しかし次の瞬間……。


「大人しく撫でられてればええんや~!」


「可愛がられてればいいんですよ~!」


 気が付けば二人の手がぐりちゃんをこれでもかと撫でまわしていました。


「かわええなぁ~ほんまかわええなぁ~」


「最高です~素敵です~」


「なんですのなんですのーーーーっ!!」


 ぐりちゃん、逃げようとしますが全く動けません。

 逃げ道を塞がれてると言うかそもそも動けないと言うか……。


「ええやんちょっとくらい~ちょっとくらいお持ち帰りしてもええやろ~」


「そうですよ~髪サラサラなんですから~」


「ちょっとじゃありませんの髪は関係ありませんのお持ち帰りもダメですの離してくださいですのーーー!!」


 しかもあんなに撫でられてても服も髪も乱れてません。

 恐るべき技術です……。


「やっぱりこうなったかぁ」


「キイさんは予想付いてたんですね」


「特にアヤメがねー。ああ見えて可愛い物好きだから」


 身長は私よりも低くて、誰かの膝の上に抱えられてるのがものすごい似合いそうなアヤメさん。

 今は大きな三角のお耳はピンと立ち、フカフカの尻尾は機嫌よさそうにふらふら揺れています。

 そのアヤメさんが、例えば大きなぬいぐるみを抱えてお昼寝でもしてると……。


「ものすごく可愛いですね」


「でしょ」


「二人ともー今度強制ダンジョン連行なー。イオンはぐりをくれてもええよー」


 残念ながらアヤメさんは不満そうでした。

 といってもぐりちゃんを撫でる手はそのままですが。


「私はお姉様のものですわ!」


「ますます欲しくなりますね~」


「だからダメですの!」


「ちょっとだけでええから」


「意味がわかりませんのーーー!! お姉様少しは助けてくださいですのーーーーーっ!!!!」


 言われてからようやくぐりちゃんを救出します。

 アヤメさんとエリスさんも満足気だったので二回目は当分ないと思います。

 一度はこうしとかないと多分いつまでも狙われますからね。

 それとぐったり気味のぐりちゃんはタルトを食べたらすぐ元気になりました。

 気に入ってもらえて安心しました……。


 それにしてもバトルデイズに行ったら今日の用事は終わるはずだったのが、いつの間にやらニデスに行って祭壇に行ってと、色々あった気分です。

 ……確かに今になって考えてみると、昨日精霊さんに会ってからイベントが繋がってますし、振り返ればもっと繋がってますね。

 これがサブクエスト……でしょうか?

 私がやっていたのはただ話を聞いて、その流れで仕事を受けただけです。

 クエストをやっていた、という感じはありませんが、後から考えると一連の流れが出来ていてそれが物語のようで、まるで自分が主人公のような感じがありますね。

 魔王を倒すのに洞窟や山や海に行かされてアイテム集めたり情報を集める勇者みたいです。あれは便利にたらい回しされてるようでしたが。

 とにかくキイさんがサブクエストを面白いと言うのはよく分かりました。

 しかもただこの世界を楽しんでいれば勝手にサブクエストになって楽しくなるんですから、いいことずくめです。

 たまには積極的にやってみてもいいかもしれません。

 これからはぐりちゃんもいますからね。

 本当、楽しくなりそうです。



自分用の部屋を持つのは凄いということではありませんが、部屋があってもメリットが小さいので持ってる人は多くありません。

生産系はもちろんもってますが。


今話はここまでです。

次はしばらく時間かかりそうです……いろいろ修正もしたいので……。

すいませんが気長にお待ちください……。

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