6-6 これもクエストでしょうか?
一気に終わらせてしまいたかったので少し長めです。
最初の辺りに汚い表現がありますので、苦手な方はご注意ください。
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6-5におかしい箇所があったので修正しました。
大まかな流れに変更はありません。
というわけで三人で精霊の祭壇へ向かう事になりました。
街を出る前にアイテム確認をして出発です。……なんですが、出発直前にパーティ登録したんですよっ。
今日でゲームを始めて丁度一週間。
初めてのパーティ登録ですっ。
特に気にしていませんでしたが、やってみると嬉しいものですね。
あとは足を引っ張らないように気を付けないといけません。
経験値やお金は分配されてしまいますからしっかり頑張りませんと。
とはいえ今日は人数が少ないので極力戦闘は回避することになりました。
私は上空から魔物の位置を確認。
キイさんの索敵範囲外の魔物を確認して、魔物の少ないルートを見つけて先導することになりました。
ですが全ての魔物を回避できるわけではないので当然戦闘も行いました。
盾役のバルガスさんも回復役のエリスさんも居ないので、基本的には攻撃に当たらないよう回避優先という方針です。
私が真っ先に飛び込んで先制攻撃。
魔物の動きが止まったところをキイさんが弓で攻撃。
プルストさんはキイさんのサポート、または状況によって攻撃に参加。
魔物の少ない方向に進んでいたので基本的には問題ありませんでした。
あの魔物を除いて、ですが……。
そんなに強かったのかと聞かれれば、そうでもないと答えるんですが……。
もう戦いたくありません……スライムとは……。
周囲に合わせたんでしょうか、今日見たスライムは茶色というか土色でした。
保護色だったんですがゼリーみたいに揺れて光ってたので、空からでも見えてはいたんです。
ですがスライムのいないルートは林を通る上、に魔物が多かったので選べなかったんですよ。
数も一匹なので大丈夫かなと思ってそのまま進みました。
それで他の魔物と同じようにまず私が攻撃しました。
そしたら攻撃した瞬間にスライムが破裂したんですよ、水の入った風船みたいにっ。
私は攻撃と同時に距離を取ってましたから大丈夫でしたが……周囲にはゼリーというか、ゲル状で茶色のドロドロが飛び散ってなんとも言えない光景に……。
しかも……しかもですよ……。
ものすごく臭かったんです!!
車の中に入り込んだ小動物の行き倒れが、夏の熱気でとんでもないことになったような匂いがしたんですよ!!
知らない人は幸せです。知ってる人は思い出させてごめんなさい……。
とにかくそれくらい臭かったんです……。
あとで聞いたらスライムには倒し方というものがあるんだそうです。
まずは私がやったように一撃で倒す方法。
ただし普通は距離を取ってするもので、倒した後はすぐに遠くへ離れることが鉄則だそうです。
二つ目は魔法で倒す方法。火の魔法で炙って小さくしてから倒す、または氷の魔法で凍らせてしまうのがいいんだそうです。
三つめはそのどちらもできない場合で、少しづず切っていく方法。
これだと派手に飛び散らないので、時間はかかるけど臭くならずに倒せるんだそうです。
戦ったことある人からすると常識だったようで、二人から『まさかあの匂いで恐れられるスライムを真っ二つにするとは思わなかった』と言われてしまいました……。
本当に……知識と経験って大事ですね……。
いいことの多い一日だと思ってましたが、まさかこんなことで帳消しにされてしまうとは本当に思いませんでした……。
で、ですがとりあえず問題はそのくらいでした。
人数は少なかったですが魔物にてこずる場面もなく、休憩してコーヒー飲む余裕もありました。
その時間は非常に申し訳ない気分でしたが……。
とにかく問題は無かったんですっ。
コホンッ。
そうこうするうち目的地である祭壇に到着。
ゲイル山の南西、山に登らず迂回した位置にありました。
コーブさんの言ってたとおり周囲に魔物は見えません。
祭壇とは言われましたが特に建物のようなものはありません。
石畳の広場のようになっていて、それ以外は四方に大きな石柱、中心にお供え物でも置くような丸い岩がある程度です。
小さなストーンヘンジみたいな感じでしょうか? 行ったことありませんが。
「場所はここで間違ってないみたいだけど……依頼された仕事って何なの?」
「中心の岩の上で魔石の魔力を開放してほしんだそうです。精霊の力になるそうですよ」
解放というと難しい感じに聞こえますが、魔石を割ってくれるだけでいいと言われました。
「お供え物って神様かよ……」
言われてみると確かに神様のような扱いですね。
コーブさんはそこまで崇めてると言う感じもありませんでしたが……そういえばこの世界の神様とか精霊さんってどういう立ち位置なんでしょう?
今度誰かに聞いてみましょうか。
「ですが魔石を先に捧げると魔素が乱れてしまうそうなので、先に精霊との契約をしますね。できるか分かりませんが」
「え、あれだけ調べてたのにまだ出来るか分からないの?」
「契約についての条件は、まず本人にある程度の力があることと、精霊が宿る器を用意すること。そして魔物のいない魔素の豊潤な地で封石に魔力を持って語り掛けて、精霊に認められれば契約できる、だそうなんです」
「器が宝石で場所が祭壇。ここまではいいとしてある程度の力か……レベルなのかスキルなのかもはっきりしないんだな」
「そのうえ精霊に認められるって余計わかんないね。その辺は検証班に丸投げかな」
検証班なんてあるんですか。
学術クランというのもあるそうなので、それもそういうクランなんでしょうね。
はたから見ると大変そうでも、本人たちはものすごく楽しんでそうな気がしますね。
「あとは魔力をもって語り掛けるだっけ。魔力操作かな……でもそれだとハードル高すぎるし」
「イベントアイテムでそれはないだろ。対応する属性の魔法を使えばいいとかじゃないか?」
「それが有力だね。イオンはどうするつもりだったの?」
「……考えてませんでした……」
「……えっ?」
「……器と場所のことばかり考えてて……すっかり忘れてました……」
全く何も考えてませんでした……。
初心者の館のことといい今回のことといい、最近なんか抜けてることが多いです……。
「またうっかりかーいいからねー少しくらい抜けてる方が」
「なんか安心するわ」
二人が何故か保護者な感じになってます……。
キイさんから頭撫でられてます……。
「でもせっかくなら魔力操作を試してみたら? 練習にもなるし」
「そ、そうですね。せっかく来たんですし」
ダメで元々と考えてきてましたので失敗は別に気にしません。
一人だと何もできずに帰ってしまうところでしたし……。
「といっても知っての通り的確なアドバイスなんてできないんだけどね。一応あたしのやり方になるけどいい?」
「お願いします」
何も知らずにやれと言われるより、多少でもとっかかりがある方が不安も少ないです。
翼を動かすときは本当に何もなかったですからね……。
「あたしの場合はお腹の辺りに魔力が集まってるんだよね、それに気付いたらすぐだったよ。どういえばいいかわからないけどさ、静かに集中してたらそこに“ある”って気付いて、あとは見つけた魔力を血が巡るように動かしてる感じかな」
魔力の集まりに気付く……ですか。
「アヤメも同じように体のどこかに魔力が集中してるって言ってたよ。アヤメの場合はその魔力を外に出して、魔法に自分の意思を乗せてコントロールしてるって言ってた」
意思を乗せてコントロール……。
「大体の人はその自分の中の魔力に気付けるかどうかが難しいみたい。でも人によってはお腹じゃなくて胸の辺りだとか頭にあるとか結構バラバラみたいなんだよね。そこに気付くとすぐみたいなんだけど」
やっぱり最初の問題は気付けるかどうかですよね……。
人によって魔力の集まる場所はバラバラ。
なので操作のやり方もそれぞれが違う。
そうなるとアドバイスも難しいですよね……。
「ひとまずわかりました。とりあえず試してみますね」
やるだけやってみましょう。
うまくいったらめでたしめでたし。ダメだったらまた今度、です。
あれよあれよと二日で色々判明してしまいましたが、別に急ぐことではありませんしね。
むしろここまでわかったんですから再挑戦も簡単というものです。
「じゃあ私たちは一応離れとくから、時間は気にしなくていいから頑張ってね」
そう言ってキイさん達は石畳の外側まで離れていきました。
私は中心の岩に近づいて【風精霊の封石】をストレージから出します。
岩の上に置こうとしましたが……何となく手に持ってる方が伝わりやすいと思ったので、手の平の上に封石を置きます。
ここからどうしましょうか。
飛んでるときは魔法を使ってるはずなので……まずそれに合わせてみましょうか。
ファサッ
飛ぶわけではないですがまず翼を広げます。
いつもこうやってますから、このほうがやりやすいと思うので。
それで魔力は……の前に風が気持ちいですね、ここ。
肌を撫でる程度の微風なんですが、何故かよそとは全然違います。
魔力のことは後回しにしてつい目を閉じて気持ちよさに浸ってしまいます。
丁度好い温度のお風呂にのびのびと浸かってるようですね……しかも溺れる心配もなく全身で……。
あぁ……いいですねぇ……。
翼の先端、羽の一枚一枚に至るまで風が撫でてくれるようです……。
そういえばここは魔素が満ちてるという事なので、だからこんなに気持ちいいんでしょうか。
ということは……この感じが魔素?
ならそれの感覚をたどっていけば……。
体から……翼を通り……羽の先へ……。
――――これでしょうか。
気付いた瞬間、自分の中で使っていなかった神経が繋がったような感覚がありました。
周囲に満ちる魔素。
風に乗って世界を巡る、力の流れ。
そしてそれとは違う、自分の中にあるもの。
背中、翼の根元辺りに集中しているそれ。
魔素とは違うのに、でも同じものだと言う感覚。
魔素が純粋な力だとすると、これは自分だけの力。
これが、魔力でしょうか。
周囲の魔素と違ってそこにあるというのはわかるんですが……どうしたらいいんでしょう。
自分の中の物なのによく分かりません。
それより周囲の魔素の方が動かしやすそうです。
翼に触れる部分から魔素に働きかけて……もう少しだけ風を強く……。
やっぱりです。周囲に意識を馴染ませるようにすると、魔素は自然と魔力となって動いてくれます。
これがアヤメさんの魔力の使い方でしょうか。
では自分の魔力を操作するには……逆にするといいでしょうか。
自分の魔力に合わせるように……周囲の魔素を馴染ませて……それを自分の魔力へ向けて……。
………………繋がりました。
先ほど繋がった神経が、完全に自分の物になったような感覚。
そしてわかる、周囲に満ちる魔素と比べてとても小さく、でもとても大事な物。
これが私の魔力。
ここまでわかれば、もう手足のようなものです。
いえ翼のようなものでしょうか?
現実の自分には無いのに、でも確かに自分の一部だという不思議な感覚。
とにかくこれも自分の一部とはっきりわかります。
であれば操作だって簡単です。
背中の魔力を動かして、体中に巡らせます。
これがキイさんの魔力の使い方ですね。
ぐるぐる回すように広げ、足の先から腕の先、翼の先まで。
そして手に持つ封石に向けて魔力を伸ばします。
それでこのまま語り掛ける、でしたっけ。
……どう話せばいいんでしょう?
契約しましょう。……なんか一方的ですね。
うちで働きませんか? ……雇用するわけじゃないんですから。
でもそれくらいでないといけませんよね。力を貸していただくわけですから、タダでというわけにもいきません。
週休二日制で就業時間は八時間。残業有り。有給有り。退職金制度は無し……ってそういうのではありませんよね。
でも私の場合は普通の生活もありますから基本的にそんな長時間になる事はありませんね。
それならフルタイムじゃなくてパートタイムで……そもそもお給料はどうやって支払ったらいいんでしょう。
魔力をあげるというのは必要最低限のことですから、それは交通費や住宅手当みたいなものですよね。
とするとやっぱりお金でしょうか。他にといえばお菓子くらいしか思いつきませんし……。
――お菓子でいいですわ。
そうですか? でもお金があればお菓子も買えますよ?
――大きな荷物は邪魔になるだけですの。
それもそうですね。
――だからお金はお姉様がお持ちになって、私はお菓子を頂くだけでいいのです。
なるほど合理的です。でも本当にそれでいいんですか? せっかくの契約なんですから、もう少し欲張ってもいいと思いますよ?
――構いませんわ。それに既に契約は結ばれてるんですから、これ以上は私のプライドが許しませんの。
え、もう契約してるんですか?
――そうですの。だから……
「そろそろ私を見てくださいませんか、お姉様」
聞こえた声に目を開けば、先ほどまで誰もいなかったはずの私の前に一人の少女がいました。
波打つ濃い緑の髪。
意志の強そうな目が印象的な端整な顔立ち。
同色のドレスは足元までふんわりと広がりまるでお姫様です。
「さすがは私のお姉様ですわ」
私の感想に満足そうに頷く少女。
しぐさの一つ一つがとてもさまになっていて本当に可愛いですね。
しかも手のひらサイズなので、まるでぬいぐる……。
「ぬいぐるみじゃありませんわ! 淑女にそれは失礼ですの!」
「ごめんなさい、つい可愛かったので」
手の平のうえで不満そうな顔をしますが、そんな表情も可愛いですね。
つい顔が緩んでしまいます。
「お姉様は見かけによらず意地悪ですのね……」
やれやれといった感じで首を振りますが嫌そうな感じではありません。
初対面にしては図々しいことしたと思うんですが……。
「それは私がお姉様の魔力で契約を結んだからですの。言うなれば私はお姉様の一部からできた存在なのです」
つまりお互いが自分に近いものだということですか。
「それで姉妹みたいなものということでそんな呼び方を? それに考えてることが伝わるのも?」
「両方ともその通りですわ。思考については今は魔力を流しているからで、いつも思考がわかるというわけではありませんの。それに普段はそうやって魔力を流していただかなくても、側に居るだけで魔力を供給してもらえますの」
それじゃ内緒話をしたいときには魔力を流せばいいんですね。
――その通りですの。
よろしいわすわ、と頷く姿がまた可愛いです。
「それよりお姉様、私に名前を付けてくださいまし」
「名前ですか? 封印される前の名前はなかったんですか?」
「ありましたが、それはあくまで以前の私ですの。お姉様の魔力を受け取った私は、既に以前の私とは違うものですの」
魔素の塊のような精霊が私の魔力の影響を受けたので、以前とはもう違うということですね。
「そういうことでしたら」
「お願いしますの。細かくは言いませんが、この気品溢れる私に似合う、優雅さと高貴さを兼ね備えた素敵な名前を――」
「では“ぐりちゃん”ですね」
「優雅さの欠片もありませんわ!!」
地団太踏む姿も可愛いですね。
「ダメですか?」
「どうしてそんなネズミの兄弟みたいな名前なんですの! この私を見てどうしてそんな名前を思いつくんですの!」
どうしてと言われると特に何も考えてないんですが……。
「今の私の名前はイオンと言うんですが、本当の名前は碧というんですよ」
「……それと私の名前に何の関係があるんですの?」
「碧というのは『みどり』とも読むことができるんです。精霊さんはとてもきれいな緑の髪ですから、それを表すという事で『レディ・グリーン』と。なので愛称はぐりちゃんなんですが……やっぱりダメですか?」
私の一部ということなのでぴったりだと思ったんですが……。
「そ、そんな顔しないでくださいまし。レディ・グリーン。それなら私も文句ありませんわ。初めからそう言ってくだされば、私だって何も言わなかったですの」
「……本当ですか?」
「本当ですのっ。ただし人に紹介するときは必ずグリーンと紹介してくださいまし。いきなりぐりちゃんはダメですの!」
「はい、ありがとうございます」
勝気そうで、でも人のことも考えれる優しい子で。
素敵な精霊さんでよかったです。
「そ、そんなことストレートに言わないでくださいまし……」
魔力流したままでした。
照れるぐりちゃんも可愛いですね。
「だからやめてくださいまし!」
「つい」
「ついじゃありませんの!」
やっぱり可愛いです。
「私はイオンと言います。これからよろしくお願いしますね、グリーン」
ですが初めはきちんと。
一旦魔力を切り、お辞儀をして初めましての挨拶をします。
これからどうなるかなんてわかりませんが、なんとなく長い付き合いになると思いますから。
「コホンッ、私はグリーン。お姉様のお傍に、素敵な風を運ぶことをお約束いたしますわ」
ぐりちゃんは手の上からふわりと浮かんで私と顔の高さを合わせ、空中でスカートを軽く持ち上げたお辞儀を返してくれました。
こうしてると本当にお嬢様ですね。
――いきなり真面目になるなんてズルいですの……。
ぐりちゃんのお姉さんですからね。
――なんで都合よく魔力流してるんですのー!
「ぐりちゃんのお姉さんですからね」
「心強いお姉様ができて嬉しいですわ……」
疲れたように降りてきて、私の肩の上に座るぐりちゃん。
そうしてるとつい撫でくりまわしそうになります。
「今妙なことを考えませんでした?」
「さすがぐりちゃんですね」
「少しは隠してくださいまし!」
「ところでぐりちゃん、この魔石の力を開放することはできますか?」
「流さないでくださいまし! それともちろんできますわっ」
ついついぐりちゃんと話し込んでしまったので結構時間経ってました。
あまりお待たせするのもいけないので早く仕事もやってしまいます。
中心の岩の上にコーブさんから預かった魔石を置きます。
ぐりちゃんが魔石の前に降り、手をかざしたかと思うと風の魔力が周囲に広がっていきました。
魔力を操作できるようになった今ならわかります。
周囲に流れる魔素。
魔石から出たばかりでまだ魔素に戻り切ってない魔力の流れ。
ですがぐりちゃんがその魔力を操作して、すぐに魔素に戻っていくのがわかります。
恐らくですが……魔素は魔力の元になる物。魔素を力として人が扱えるように準備状態に入ったものが魔力。
魔素が原油で、魔力はガソリンのような感じですね。
同じような二つのもの、でも本質は違うもの。
それが魔素と魔力なんだと思います。
魔力のまま放っておいてもいずれ魔素に戻ると思いますが、ぐりちゃんが手を加えることですぐに魔素に戻せるようです。
きっと精霊にとってはその方がすごしやすいんでしょう。
魔素の塊のようなものと言われる精霊は魔力ではなく魔素の方が重要ということですね。
「終わりましたわ」
さすが精霊です。すぐに終わって肩の上に戻ってきました。
「ありがとうぐりちゃん。それじゃ早く街に戻っておやつでも食べましょうか」
「私が満足できるお菓子であることを期待してますわ」
ハードル上がりました。
と、とりあえずドーナツから試してもらいましょう。
「あのお姉様、私そこまでわがまま言うつもりは……」
「重要なことですよっ」
「そ、そうなんですの……余計なこと言ってしまいましたわね……」
タルトもあるので大丈夫だと思うんですが……。
ダメだったら何か買いに行くか、リンジーさんに頼み込んでみましょう。
最初から期待を裏切るわけにもいきませんからね。
契約より緊張してきましたよ……。
ひとまず戻ってから考えましょう……。
「イオンならもしかしてとは思ったけど、うまく魔力操作できたようでよかったよ」
「やっと終わったかイオン……ってなんだそのぬいぐるみ」
「いきなり失礼な男ですの!」
二人のとこに戻ってそれぞれの一言目がこれでした。
自分も同じこと考えたのでどうこう言えませんが……プルストさんの場合本気でそう思ってるようですね……。
私は外見でどうこう言われてもあまり気にしませんが、それは私が変なのであって……いくらなんでも初対面の女性の外見を男性がどうこう言うのは……。
「このバカは放っといていいから。あたしはキイよ。よろしくね」
「ありがとうございますキイ様。私はグリーンと申しますの。お姉様の契約精霊として、どうぞよろしくですわ」
「レディ・グリーンです。愛称はぐりちゃんです」
「いきなりその呼び方はやめてくださいまし!」
「あはは、可愛いなぁグリーンは。私も様とかいらないからキイでいいよ。でもたまにぐりちゃんって呼んでいい?」
「ではキイさんと。たまにでしたら構いませんが人前では遠慮してくださいまし……」
さすがキイさんです。すんなり愛称呼びの許可を得ました。
それに比べてこちらは……。
「俺はプルストだ。よろしくなーぐり」
「こんな男に愛称を許した覚えはありませんの! 顔が良ければ許される時代は終わったんですの!」
「プルスト……いきなりそれは女の子に失礼でしょ……」
「プルストさん……」
「ちょっ、女の子って、どう見てもこいつぬいぐるみだし……」
「なんなんですのこの失礼極まりない残念男はーーーっ!!」
「ないわー……」
「それはちょっと……」
まさかここまで酷いなんて思いませんでした……。
「ごめんなさいグリーン。私が調子に乗ったばかりに……」
「お姉様は悪くありませんのっ。この空気読めない残念男が悪いんですのっ!」
「えっ、あの、皆さん?」
「二人ともごめんねバカのせいで。ドーナツ用意してあるからこんなの放っといて早く帰ろ」
「キイさん……私のためにそこまで……っ」
「あのー、もしもーし」
何か幻聴が聞こえますが、ぐりちゃんみたいな可愛い子を本気でぬいぐるみ扱いする人なんて、この場にいるはずありませんのでそのまま帰りましょう。
「じゃ帰ろっかー。イオン、上空からの偵察よろしくねー」
「わかりました。キイさんも何かあったらすぐ呼んでください。グリーンはしっかり掴まっててくださいね」
「わかりましたの」
「お願いだからちょっと待って! 俺が悪かったから無視しないで!」
正面に回り込んで謝るプルストさんですが……。
「あんた、何悪いことしたの?」
「え、いや、何って……いきなり本当のこと言ったこと?」
「行こっかイオン」
「そうですね。早く帰りましょう」
何やら障害物があったような気がしますが気にせず帰りましょう。
私の父と同じレベルの回答する人は、その程度で十分ですね。
「そういえばそろそろ改装も終わってるだろうから拠点に行こっか」
「そうですね、その方がゆっくりできますし。あ、タルトがあるので切り分けますけどお皿ありますか?」
「タルトかぁいいねー。お皿は大丈夫だよグリーンの分も含めて“丁度六セット”あるから。残りの三人がいても大丈夫だね」
「私もいいんですの?」
「当たり前でしょ。イオンの契約精霊ならもうクランの一員だって」
「キイさんありがとうございますの!」
よかったです。
では何の問題もなくなったところで早く帰りましょうか。
ひとまずニデスへ向かいます。
それぞれの街にある結界石は繋がっていて、一度行ったことある街なら結界石を使用して遠距離移動ができるそうなんです。
まるで瞬間移動ですよっ。
初心者の館で教えてもらってましたが使うのは今回が初めてです。
私は空を飛ぶのであまり気にしませんが、パーティだと移動も大変ですからね。
この世界には車はありませんので、どこ○もドア的な物も大歓迎です。
私一人だとあまり使うことはないかもしれませんが。
それにしてもどんなふうに移動するんでしょうか。
やっぱり視界がグネグネ歪んでいつの間にか移動してるんでしょうか。
それとも足元に魔法陣みたいなものが光るんでしょうか。
魔法陣だったらいいですが、視界が歪むと酔うかもしれませんね……どんな感じなんでしょうか……。
なんて気にしてましたが、実際はメニューから選択したら一瞬視界が白くなっただけですぐに移動してました。
なんかあっさりしすぎて物足りませんがしょうがないですよね……いちいち光ってたりしたら大変ですもんね……。
少し残念です……。
「……あの……俺、どうしたらいいの……?」
8/30誤字修正しました。
12/31
ぐりちゃんの表現について修正。
ぬいぐるみでお願いします……。
長距離移動はル○ラよりも旅○扉で。
精霊はぬいぐるみ&ですのになりました。
ツン成分はありません。
契約条件の詳細は、
器→宝石。ただし属性が合っていること。
ある程度の力→封印が解ける魔力量があること。
認められること→上ができればOK。あと基本属性が一致していること。違う属性はできない。
語り掛ける→キイの予想通り、その属性の魔法を攻撃でも補助でも何でもいいので叩き込めばOK。
イオンと同じくぬいぐるみ扱いしたプルストの扱いが酷いかもしれませんが、
同じセリフでも同性か異性かで全く変わってくると思うのです……。