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5-7 ようやく現状認識しました……それとクランです。

昨日飛ばしてしまったので本日二回目。

いきなり最新に来てしまった方は一つ前からどうぞ。


「それにしてもバルガス、魔法がないと飛べないって知ってたのに何で公表しなかったの?」


 そういえばそうですね。

 今のところバルガスさんのイメージは計算で動く方という感じですが、かといってよくない状況をほっとくような人とも思えません。


「知ってたわけではありません。今気付いたんです」


「じゃあさっきの何か知ってたようなセリフは?」


「それは鳥族の翼では飛べないという部分に関してのみです。これについては私が書くよりも先にBBS書き込みしてた人がいましたからね。飛ぶための書き込みというよりも、飛べないことを証明するための場になっていましたが」


「何で今になって気付いたの?」


「ゲーム発売前後はちょっとした都合でネットのアクセスが難しいところにいましたので。私がログインしたのは十日後だったので既に騒ぎは収まっていたため、鳥族のプレイヤーに会わなかったんです。パーティを組んだこともありませんし、顔を合わせることはあっても会話は事務的なことだけ。まともに話したのはイオンさんが初めてと言えるほどです。その程度の関わりの方に対して、鳥族の地雷的な話題を振る気は起きませんよ」


 地雷レベルにまでなってるんですか……。


「それでイオンと話してやっと気付いたと……」


「で、何に気付いたん?」


 アヤメさんの催促に返答せずお茶をすするバルガスさん。

 その後、ただの仮説ですが、と前置きをして話し始めました。


「鳥族が翼を動かすためには条件が二つ。一つは尻尾と同じ、本能レベルで自分の体として認識できること。そしてもう一つは魔力操作をできること、です」


 一つ目はリード君から聞いてたのでわかりますが……魔力操作も?

 難しいこととはいえその条件を満たす人は他にもいたんじゃないでしょうか。


「……そっか当時は魔力操作の話がまだなかったっけ」


「まだなかった……ですか?」


 どういうことでしょう。


「ゲーム発売直後は様々な情報が飛び交いましたが、その中でも大きな話題が三つありました。一つ目が鳥族について、二つ目が種族特性について、三つめが魔力操作についてです」


 鳥族以外はゲームにとって重要な要素ですね。

 誰でも使えるわけがないので、肯定と否定が飛び交ったと思います。


「重要なのは、これらの話題は先ほど挙げた順に発生したことにあります。しかも発生時期がずれているため、話題と話題の重なった時期が少ないんです」


 順に発生したということは……鳥族は最初、魔力操作は最後なので……。


「種族特性については発売前からアナウンスがあって誰もが注目していましたが、始まってみれば肝心の鳥族は飛べない。それについての悪評が吹き荒れ、そこから派生するような形で種族ごとの特性の話題となりました。そして魔力操作についてはゲーム発売後に発覚した要素だったため、目につくほどの話題となるまでかなり時間がかかったんです」


「……魔力操作の話題が出る頃には鳥族の話はもう忘れ去られてて、混ぜて考えることはされなかった?」


「その通りです。加えてその頃には鳥族の能力面での不遇も発見され、更に人口は少なくなっていました。それでも残った人は、もう飛ぶことを考えてない人がほとんどだったでしょう」


 それで鳥族が話題になっている頃は、魔力操作の話が無かったということですか。


「話を戻して魔力操作が必要な理由についてですが……恐らく鳥族の翼は魔法的な力で形成されてるんだと思います」


「……翼が魔法、ですか? でも触れるし感覚もありますが……」


「西の森に行ったのなら森の精霊と会いませんでしたか? このゲームの精霊は魔素から構成されていると言われていますが物理的な実体も形成します。翼を同じようなものと考えたらいかがでしょう」


 そういえば精霊さんはドーナツも食べます。

 美味しいと感じてるということは魔法、いえ魔素でしょうか? それから作られた体でも、普通の体と変わらないということですか。


「そしてそう考えると鳥族の能力の低さもわかります」


 鳥族はリード君曰く、あんまり強くない、魔法も微妙、器用さもいまいち、ということでした。

 いいとこ無しですね。


「このゲームのステータス的な数値は二つだけ。“身体能力値”と“魔法能力値”です。この数字は力や素早さを総合的に表した数字なので、同じ数値のプレイヤー同士でも能力には大きな違いがありました。そして鳥族の場合は数値が同じのはずなのに明らかに他の種族に劣っていました。しかも身体と魔力の両方がです。ですが翼を扱うために、その数値の一部をあらかじめ占有していたとなると辻褄が合います」


「例えば他の種族の身体能力値の内容が“力”、“素早さ”、“体力”から構成されているとしたら、鳥族はそれプラス“翼”があったから他の数字は低かったということね……」


「魔法能力値については翼の形成に加えて先ほどイオンさんが言った魔法を使っているからでしょうね。飛ぶときは体重を軽くし、スピードを上げる時は周囲の風を強め、急降下時は体重を重くするといったように」


 そういえば翼を動かすだけならともかく、空で羽ばたかせるのは相当な筋力が必要だったはずですね。

 魔素で作られた翼でも普通の体と変わらないから、翼を動かす分の力を知らないうちに割り当てていたということですか。

 魔法能力についても翼自体が魔素で出来てるうえ、飛ぶにも魔法が必要。

 体重を軽くすることも出来れば重くすることも出来る。それならスピードブーストにも影響ないかもしれません。

 身体能力も魔法能力も、総量は一緒だから翼に取られた分、他のことについては弱くなっているということですね。


「割り当ては鳥族だけというわけではありません。馬族などは身体能力値の上がりやすい種族ですが、数値の割に攻撃力や防御力は低めです。ですが種族特性として持久力が高いので、その分が数字に反映されていると言われています。他の種族も大なり小なりそういう部分があるでしょう」


「犬族猫族がスタンダードなのは、そこまで特化した能力じゃないから割り当ても小さくベースの能力が高い。鳥族の場合はその割り当てが大きいから、同じ数値で比べると劣ってしまうと」


 それでいいとこ無しの状態になってしまったと。

 飛べればいい私にとっては最高ですが、そうでない人には選ぶ理由が無くなりますね……変更されて当然です。


「けどそれなら一人くらい飛べる人がいても良かったんじゃない? 当初あれだけ人がいたんだし」


「そう言われると難しいですね……」


 キイさんの突っ込みにバルガスさんが悩み始めます。

 確かに翼の動かし方なんてなかなかわからないものだと思いますが、かといって私一人というのはいくらなんでもおかしいと思います。

 飛ぶということに憧れる人は世の中にはそれなりにいると思いますし、だから最初は鳥族の人気が高かったとんだ思います。

 そういう人たちは飛び方とか想像したこともあると思うんですよね。なので中には翼を動かせる人がいても不思議じゃないと思います。

 ……なんか自分の言い訳みたいですね、これ。

 でもそういえば……。


「ゲームが始まってすぐはキャラクターの再作成が頻繁だったんですよね? でも一週間再作成できないように変更があって、その期間ができたおかげで人気のない種族の特性が判明するということもあったと聞いたんですが」


「そうですね。中には全部試したなんて言う人もいました。人気が出た種族は先ほども挙げた馬族ですね。持久力が高いと判明して長時間戦いたい人に人気が出ました」


「それってゲームの体に馴染むのに時間が必要だから一週間になったんじゃないかと思うんです。私もゲームを始めた直後は翼の感覚は無かったんですが、しばらくすると気付けたので。といってもそれしか理由はないんですが……」


 アナウンスではキャラクターの特性を把握してほしいというような内容だったと聞いていますが、それは強さがどうとかじゃなく獣人そのものに慣れるためだったんじゃないかと思うんです。

 でないと一週間はさすがに長すぎると思うので。


「……なるほど。言われる通りかもしれません。ゲーム開始直後は駄目でも次第にできるようになったプレイヤーはその体に馴染んだ結果。ゲームの中の体は見た目こそ現実に近いとはいえ実際は獣人という全く違うものです。“馴染む”というのは納得いきます。特に翼という現実にはない器官ならなおさらです」


 かなり適当なこと言ったつもりだったんですが、バルガスさんは納得してますね。


「……プレイ始めてすぐなんだけど、音が大きく聞こえ過ぎて頭痛かったからキャリブレーションしたんだよね。そのときに一週間程度で慣れますよって言われたのを思い出した。キャリブレーションと言っても単純に音が小さく聞こえるようになったって訳でもなかったし、何やったんだろうって思ったっけ。慣れた今では大きい音でも大丈夫だしね」


「キイさんの場合は最初から100%適合してしまったということかもしれませんね。あまりに現実の自分と違い過ぎるので、50%程度から徐々に慣れさせるために適合をずらす(・・・)調整だったのかもしれません」


 普通は最初から獣人の体を100%扱うことはできない。だから耳の感度がいいはずの獣人の体でも、聞こえるのは人間と同じ範囲。

 キイさんの場合はすぐに100%扱えた。耳の感度は100%の範囲で扱えるけど、感度調整は人間のやり方しかできないので音が大きく聞こえてしまった。

 キャリブレーションは100%扱えた体を50%までずらした。ずらしただけなので、馴染んでしまえばまた100%使えるようになった。その時には感度調整も獣人のやり方に慣れていた。

 こんな感じでしょうか。


「イオンも同じで始めてすぐに100%適合した例って訳ね。キャリブレーションってどれくらいの人がやってるんだろうね」


「BBSに書き込みはありませんから、ごく少数でしょうね」


 自分がどうかはわかりませんが、キイさんのような例は珍しいということですか。


「尻尾を動かせるのが五十人に一人、魔力操作は百人にと言われています。尻尾より更にハードルの高い翼と魔力操作を合わせた条件とすると、おそらく千人単位で考えなければいけません。正確な数はわかりませんが、全プレイヤー数は十万を超えるのに鳥族は数百しかいないとさえ言われています。条件に合う人が見つからなくても不思議ではありません」


 そこまで少なかったんですか……道理で見かけないと思いました……。


「尻尾に比べより理解の難しい翼。今でも扱る人の少ない魔力操作。発売当初のプレイヤーの中にも両方をできた人がいたかもしれませんが、両方使えるほど体に馴染む前に他種族へ変更してしまった。新たに始める人はそもそも飛べないものとする人がほとんど。だから今まで飛べる人はいなかった。……ほとんど偶然の結果ではありますが、一応話は繋がりますね」


 仮説としては頼りないですが、とバルガスさんは締めました。


 さっきまで種族特性は翼を使って飛ぶ、ということだけで、魔法は別と考えていたので魔法も使っているんだろうと考えていました。

 けどこの話を聞くと、種族特性は翼も魔法もひっくるめて“飛ぶ”ということに特化したもの、という感じですね。

 バルガスさんは仮説と言ってますが、本人からすると実にしっくりします。

 私としてはこれが答えでもいいくらいですね。




ようやく飛ぶための条件が出ました。

数撃てば当たってたはずなのに撃つ前に人がいなくなったという。

それと先入観は恐ろしいものだと思います。


途中適合が100%とか50%とか出てますが適当な数字ですので目安程度にお願いします。

本当に100%適合してるわけではありません。

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