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5-6 ようやく現状認識しました……それとクランです。

一日開けてしまいました……。


「そういえばゲイルファルコンの魔法も全部避けとったけど、もしかして魔法が飛んでくるってわかったんか?」


 アヤメさんから話を振られますが今度は魔法の話ですね。


「ワイバーンが魔法を使う前に光が集まったのを見てたからですね。ゲイルファルコンも同じだったのでわかりました。そうでなかったら気付きませんでした」


「あ、やっぱり光が見えたんだ」


「……やっぱりって……私また何か変なことを?」


「そんなわけないてーいいことやー」


「そうですよ~とってもいいことですよ~」


 何故かアヤメさんとエリスさんの機嫌がとてもよくなりました。

 何故かお茶のお替りとお煎餅が用意されました。

 今度は一体何でしょう、私何やったんでしょう……。


「今度は魔法についての話だね。初心者の館に行ってないなら魔法の使い方も知らないよね?」


「はい知りません。自然に使ってるとは思うんですが、正しい使い方までは」


「なんか気になる言葉が聞こえたけど……とりあえず進めるね。まず魔法を使うには各属性の魔法スキルを成長させる必要があるの。スキルレベルが上がったらスキルショップで魔法を修得、覚えた魔法は音声コマンドで使用する。というのが流れ」


 スキルについてはよく分かりませんが、とにかく魔法に関するレベルを上げて、魔法の名前を言えば使えるという事ですね。


「だけどこの修得というのが問題でね、修得の際に威力や詠唱時間や飛んでく方向とかを設定できるんだけど、普通はその設定した通りにしか魔法を使えないの。真っ直ぐ飛ぶように設定したら真っ直ぐ飛ぶ、曲がるようにしたら必ず曲がる。詠唱時間も決まった時間が必ず必要、といった風にね」


「例えば火の玉が出る魔法があったとして、正面に飛ばずに真上に向かって飛ぶとかも設定できるんですか?」


「できるよ。といっても魔法によって設定範囲があるから、全ての魔法で設定できるというわけじゃないけど。アヤメの使ってたアイスシャワーはほとんど何も設定できないしね。それから一つの魔法を設定だけ変えて複数修得すること出来るけど、魔法によって限界数があってね、多い魔法でも三個が限界。だからあらゆるパターンを想定して修得っていうのはできないの」


 アイスシャワーは小さい氷の球が雨みたいに振ってきてた魔法ですね。

 もし好き勝手に設定できたら、雨が地面から空に向かって振っていくというのもできてたところですね……。

 修得数も納得ですね。いくつでも修得出来たらとんでもない数を修得する人が出てきそうです。


「設定や魔法についての細かいところは初心者の館とスキルショップで聞いてね。ここまでが普通の魔法の使い方でここからが本題。さっき言った設定通りの結果しか出ないはずの魔法は、魔力を操作することでその枠を超えることができるの。真っ直ぐな魔法を曲げたりとかね」


 魔力を……操作?


「魔力操作を出来る人は魔物が魔法を使う時に光が見えるの。イオンが見えてるのがそれ。最初にゲイルファルコンが出てきたときあたし引き留めようとしたでしょ? イオンは光が見えないから飛び込んでったと思ったんだけど、本当は逆だったんでしょ?」


「そうですね、魔法を撃たれる前に倒そうと思って飛びました」


 やっぱり、とキイさんは納得してますが……。

 魔力って……そんなのまであるんですか。

 耳や尻尾ならまだわかるんですが……普通の人間は魔法なんて使えませんし……。


「あたしだって最初信じられなかったけどね。でも初心者の館で操作できるって解説あったし、実際結果として表れてるしね……」


 戸惑った顔してたようですね、キイさんが言葉を加えました。

 初心者の館で解説があったのなら、魔力を操作できるのは不思議なことではないということですね。

 霊感がある人とかもいますし、そういうものでしょうか?

 ……考えてもわかりませんのでひとまず置いておきましょう。

 人間にないはずの翼を動かせる私がいるんですから、魔力を操作できる人がいたっておかしくないと思いますし。

 ……おかしくありませんよね?


「でもなんで光が見えるんですか? 操作とは関係ないようにも思えるんですが」


「そうでもないんだよね。……イオン、自分の中の魔力が今どうなってるか、わかる?」


 自分の中の魔力……?

 魔力なんて現実ではありませんし……一応今の体は現実の物とは違いますが、何が魔力とか分かりませんし……。


 ……この感じのやり取り、リード君から翼を動かしてみろと言われたときのようですね。


 そういえば私が翼を動かせるようになったのは、まず翼が自分の一部だと認識できたからでしたっけ。

 ゲームでは魔法が使えるはずなので、自分の中には魔力があるはず。

 なのに今の私は魔力を操作できない。

 ということは……。


「……魔力はそこにあるのに、まだ感じ取れていないということですね。光が見えるのは、魔力を感じるための第一歩、という感じですか?」


「正解っ!」


 操作しようにもまず“魔力がある”ということを感じ取れなければ何もできません。

 翼が目で見えていても、最初は自分のものとして感じ取れませんでしたし、それと似たようなものということですね。


「光が見えるのは尻尾と一緒で本能的にとか無意識的にとか、とにかく魔力を感じてるということらしいんだよね。魔力を一番感じ取りやすいのが目だから光は見えている。けど感覚としてはつかめてない。今はそういう状態ってこと。前はあたしもそうだったしね」


「前もそうだったということは、改善する方法があるんですか? ……いえ尻尾と一緒ということは必ず全員が出来るわけじゃないし、感覚的なものだから決まったやり方もないということですね?」


「その通り。種族特性だって人によって能力にバラつきがあるし、尻尾を動かせない人は今でも多い。そして魔力操作をできる人はもっと少ない。だけど種族関係なく操作できるから、魔力操作は全種族共通の種族特性という風な扱いとされてるの」


 尻尾を動かせる人以上に少ないんですか……。


「光が見えない人が訓練して見えるようになって、感じ取れるようになって操作もできるようになった例があるから、絶対無理というわけではない。かといって決まったやり方は無いんだよね」


 光が見える、魔力を感じ取る、魔力を操作する、という段階があるわけですね。


「それって相当難しいということですよね。だからそんなに少ないんですか」


「そうや。だから今でもたまにゴチャゴチャうるさい奴がおるんやわ」


「なので~イオンさんが見えると言うのは~とてもいいことなんですよ~」


 それで魔法使いの二人は機嫌がよくなったんですね。

 お互い同じものが見えるというのは理解もしやすいですからね。

 ゴチャゴチャというのは……その逆があったということですね。

 アヤメさんが一瞬かなり不機嫌そうな顔しました……。


「言うとくが魔力操作できる言うても好き放題動かせるるわけでもない。ウチらでも普通は設定した魔法を微調整する程度や」


「というと……真っ直ぐと曲がるものを修得しておいて、状況によって使い分け。真っ直ぐを使って少し曲げるとか、曲がるものを更に曲げるとか、そう言う感じでしょうか?」


「それであってるわ」


 プルストさん達を避けて魔法を命中させてましたがそんなことしてたんですね。

 野球のピッチャーみたいにものすごい曲げてました。


「なんか大したことはできないみたいに言ってるけど、アヤメが本気出すとかなりすごいことも出来るからね。ボス戦で使ってたアイスランスとか、本当は氷の槍が一本しか出ない魔法なのに、魔力操作で一つの魔法を同時発動させて最大三本出すんだから」


「……一本が三本になるって……同じ魔法でダメージは三倍ということですか?」


「さすがに丁度三倍にはならへんけどまぁ近いわ。同時発動の手順が入るから詠唱時間はごっつのびるけどなぁ。それでも三回詠唱するよりずっと短いから楽なんやわ」


「ちなみに私は~拘束魔法を操作してましたよ~。一番近い魔物ではなくて~後ろの魔物を足止めしたかったので~そういう風に操作しました~」


 そういえば正面はバルガスさんが止めてて後ろの魔物が魔法で足止めされてました。

 エリスさんから正面に魔法を使えば、正面の一番近い魔物が拘束されるはずですね。

 アヤメさんの後にエリスさんの話を聞くと地味に聞こえますが……こっちも何かありそうです……。


「ちなみにここのメンバーは全員魔力操作できるよ。アヤメとエリス以外はほんの少ししか操作できないけど」


 えっと……さらっと言われましたけど、それって相当凄いんじゃないでしょうか?

 五人だけとはいえ全員って。

 簡単にすごい人達だなぁなんて考えてましたけど……もしかして、かなりすごい人達なのでは……?


「それでイオン、さっきのはどういう意味なの? 自然にとかどうとか」


「あ、はい。空を飛んでるとき無意識に何かの魔法を使ってると思ったんですが……でも魔法の名前を言わないと使えないのであれば違いましたね……」


「そうでもあらへん。前衛の三人は無意識に魔力操作して体を強化する魔法使うとるしなぁ。それにその使い方は本人も気付いてへんからわかりづらいんや」


「気付かない間に使ってるものは無意識魔法とか~BG(バックグランド)魔法とか~そんな呼び方してます~。それに魔力操作を頑張れば~音声コマンド無しでも魔法を使えるんですよ~。威力は落ちますけど~」


「さっき以前はあたしもそうだったって言ったでしょ? 光が見えてても魔力の感覚はつかめてなかったんだけど、その時でも無意識魔法を使ってたみたいなんだよね。感覚がつかめてからやっとわかったけど」


 無意識魔法……そんな使い方もあるんですか。


 一旦魔法についてまとめると……。

 魔法はスキルを成長させ、スキルショップで修得する。

 修得する魔法は威力などを設定できる。普通に使うとその設定した結果しか起きない。

 魔力を操作することで、設定以外の結果を出すことができる。

 魔力を操作できる人は魔物が魔法を使う前に光が見える。

 光が見えるから魔力操作をできるわけではない。

 けど光が見える人は無意識魔法を使ってしまうことがある。

 身体を強化するといった使い方が出来るけど、通常の魔法とは違って意識してないので発動してるかわかりにくい。

 基本的に魔法は音声コマンドで使用するけど、魔力操作次第でコマンドなしでも使用できる。


 こんなところですね。

 三人がそうなら私も無意識に操作しているということかもしれませんね。

 振り返ってみて気付いたんですが、何故魔物が魔法を使用するときだけ光るんでしょう。

 アヤメさんやエリスさんにはそういった光が見えませんでしたし。

 光ってれば無意識魔法を使ってるかどうかもわかると思うんですが。

 プレイヤーと魔物の魔法では何か違うということでしょうか……。


「でもよくわかったねイオン。大体魔力の感覚をつかむまで気付かないのに。それともつかみかけてる?」


 キイさんの言葉に思考を切られましたが丁度良かったです。

 考えてわからないことは置いときましょう。


「いえ魔力操作とか感覚とか言われた今でもさっぱりです。でも空を飛んでる時には無意識魔法を使ってると思うんですよね」


「そうなの? やっぱりあのスピードとか?」




「それもなんですが飛んでること自体ですね。人間はこんな小さな翼じゃ飛べない(・・・・)はずなので」




「「「「…………………は?」」」」


 皆さん驚いています。

 どうも知らなかったようですね。

 魔法でもないと私が飛ぶというのは難しいと思うんですよね。

 最初に飛んだ時には気づきませんでしたが、繰り返すうちにおかしいと思いはじめたんです。


「イオンさんはご存知だったんですね」


 他の皆さんは固まってますがバルガスさんだけは知ってたようです。


「えっ、ちょっとバルガスどういうこと!? イオンは飛んでたじゃないっ」


「ええ、ですからそれが魔法の力ということです。そうですよね?」


「はい。さっきも言ったようにこの翼では小さすぎるんです。このサイズでは人間の体重を持ち上げるほどの揚力は得られないはずなんですよ。だから物理的な現象だけで飛んでるわけではないと思うんです。なので体重を軽くするとか、自分の周囲の風速を上げて揚力を稼ぐとか、そういった魔法を使ってると思ったんです。種族特性で飛んでると言われればそうなのかも知れませんが、それだけでは難しいんじゃないかなと思って……」


 あれだけ飛んでても体が冷えないので保温の魔法とかもあるかもしれません。

 でもそう考えるとやっぱり種族特性でしょうか。

 いくらなんでも無意識にそこまでいろんな魔法使ってるとも思えませんし、体重を軽くしたらスピードブーストも弱くなりますし……まだよくわかりませんね。


「そ、そうなの? 漫画とか絵とかそんなのばかりだからてっきり……」


「翼の大きさを私の身長と同じと考えて片側約160cm、横に広げると約350から400cm。そんなサイズで自由に飛べるなら、夏の琵琶湖に集まるバード人間さん達はもっと遠くまで飛んでると思うんです。翼の形が全然違うので比べてはいけないかもしれませんが」


「……言われてみれば……そんな気がしてきた……」


 何かで読んだはずですが、確か人間を鳥のような翼で飛ばそうとすると横幅が何十メートルにもなるとか……。

 小さい頃に図書館で調べたことなのでうろ覚えですが。

 ですがゲームということなので現実と違って何とかなるんだろうと思い、特に気にせず始めたんです。

 だから結局はゲームだろう考えていたはずですし、あんなにショックを受けたことに自分でも驚きました。

 まさか翼の動かし方から全部自分でする必要があるとは思いませんでしたしね。

 改めて考えると翼を動かすだけでは飛べないということなんですが、初めて飛んだ時の私はそんなこと全く考えずに崖から飛んでました。

 なのであの時自然に魔法が使えてなければ落ちて死んでたところですね。

 魔力操作についても種族特性と同じと考えていいということなので、初めから使えたのかその時使えるようになったのか。

 よく分かりませんがそんな感じなんでしょう。

 むしろ魔法で飛んでると分かってもがっかりしなかったあたり、私にとっての“空を飛ぶ”ということは案外適当なのかもしれません。

 でもこうやって飛んでる今なら分かりますが、スカイスポーツでは間違いなく満足できなかったと思います。


 自分の背中にある翼。

 翼を動かすだけ感じる解放感。

 風にのって空に上がる浮遊感。

 最初は頼りない感じもあって怖かったんですが……今では風を捕まえていると安心さえ感じます。

 そして風を切ってスピードを上げ続ければどんどん気分が高揚して。

 風に任せて流されているのも面白くて。

 それが全て自分の翼から感じる。

 私が、私の翼で飛んでいると言う感覚。

 もしかしたら飛ぶことよりも翼の方が重要なんじゃないかとすら思ってしまいます。

 この感覚はスカイスポーツでは無理ですからね。

 やっぱりゲームを始めてよかったです。



5/29一部表現を修正しました。


何度書き直しても長くなる……。

もしかしたらそのうち修正するかもしれません。


飛ぶのに魔法が必要云々言ってますが、詳しくは次回で。

なのでその辺はイオンがそう思ってるんだな程度にお願いします。


読者の方から画像を頂きました!

活動報告にURLを張ってありますので興味のある方はどうぞ。

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