4-4 買い物です。パーティです。
ブクマ、評価、本当にありがとうございます。
さて、ここはどこでしょう?
ああいえ全く分からないわけじゃないんですよ。
メニューを見てたらマップというものがあるのに気付きまして、自分の行ったところが分かる地図が表示されました。
だから帰るのには特に問題ないんですが……あまりに適当に飛んできたせいで突然知らないところに放り出されたような気分になってしまったんですよね。
お店から出てまずは精霊さんのところへ飛びました。
まずは昨日のお詫びをしてそれからコーヒー飲んで一息。
でもやっぱりすぐに切り上げて飛んでしまったんですよね。
何故かと言えば装備を変えてから飛ぶのが一層気持ちよくなったんです。
昨日までは速度を上げると空気が痛いような感じがあったんですが、装備が変わった今では勢いは変わらないのにどことなく柔らかく感じるようになったんですよね。
風耐性が付いてると言ってましたしその効果かもしれません。
それで調子に乗ってどんどん高度を上げてスピードも限界まで……。
そんなことやっててふと地上を見てみれば、もうさっぱり分からないところまで来てました。
調子に乗ってやり過ぎました。
反省です。
とりあえず一旦降りましょうか。
コーヒー飲んで休憩です。
丁度目の前に山がありますのでその麓に降ります。
山頂に降りると昨日の様に魔物が出てくるかもしれないですし。
今はそんな気分じゃありません。
地上に降りて手ごろな岩に腰かけてます。
丁度いい岩が無いので槍は肩に立てかけます。
最初はしまってたんですがカラスが鬱陶しくて最近は街の外では出しっぱなしになってきました。
そのままコーヒーを出して一口。
静かで落ち着きますねー。
ここは山と林に囲まれたちょっとした広場になっていますが、動物の鳴き声は時折聞こえる程度です。
森の広場ほどじゃありませんが悪くないです。
そうしてゆっくりコーヒーを飲んでいると、林の方から人が現れました。
数は五人です。
全員に動物の耳がありますので獣人の方ですね。
「こんにちは」
「あっはい、こんにちは」
先頭を歩いていた女性に声をかけられました。
普通に挨拶されましたので私も返しますが、考え事してたのでちょっと詰まりました。
「こんなところに一人でどうしたんですか?」
「別にここに用事があった訳ではないんです。ただ休憩ついでにコーヒー飲んでただけで」
一応嘘ではないですね、用事があった訳じゃないですし休憩も本当なので。
本当は気ままに飛んでたら迷子になったんですが……。
この人たちも休憩に寄ったかもしれないのでコーヒー勧めてみたんですが、胃が荒れるとのことで遠慮されました。
コーヒーで胃が荒れるのは誤解だって何かで読んだ気がするんですが、誤解だとしてもあの苦みを受け付けない人は居ると思うんですよね。
カフェオレとかコーヒー牛乳は大丈夫でもコーヒーがダメな人ってそういう事だと思うんです。
やっぱりカフェオレ用の牛乳が早くほしいですね。
「もし時間あるんだったら一緒にこの山のダンジョンに挑戦しない?」
牛乳のことを考えていたらダンジョンに誘われました。
この山ってダンジョンだったんですね。
いきなり近寄らないで正解でした。
ダンジョンと言うと魔物がいっぱい出てくるアレのことですよね。
「ダンジョンにですか? 足手まといにならないでしょうか」
「地上は私たちやるんで空の敵だけお願いしたいんだけどだめかな。無理そうだったら途中で抜けてくれてもいいし」
空だけですか。
それなら何とかなるかもしれません。
駄目だったら謝りましょう。
「そうですね……こういうの初めてなのでよく分からないんですが、どれくらい時間がかかりますか?」
それに時間ですね。
夕方からお父さんが外出するので、代わりにお店を閉めないといけません。
ダンジョンに入るのも初めてですしパーティで戦うのも初めてですが、一人じゃないという事はそれなりに時間が必要という事だと思うのです。
「あたしたちも初めてだから予想になるけど、大体一時間から二時間かな」
二時間は……ちょっとギリギリ過ぎますね。
仕事に関することは余裕を持って行動したいです。
「一時間半くらいなら大丈夫ですがその後は用事があるので……」
そう答えると少しだけ皆さん顔を見合わせましたがすぐに結論が出たようで、
「是非頼む。空側を担当してもらえるんなら間に合うだろうしな」
そうリーダーらしい男性から依頼されました。
戦う事に興味出てきましたし、マリーシャといればいつか行くことになるでしょうから予習しておくのも悪くありませんし。
いい機会なのでパーティプレイの勉強をさせてもらいましょう。
「わかりました。しばらくの間ですがよろしくお願いします」
始まりは向こうからですが、むしろこの場合は私がお願いして連れて行ってもらう側ですからしっかりとお願いします。
その後メンバーの名前を教えていただきました。
キイさんは艶やかな黒髪が素敵な方ですね。
多分猫族だと思うんですか、長い尻尾も同じく奇麗な黒で触り心地よさそうです。
アヤメさんは狐族でしょうか。
巫女服のような服を着て金色の尖った耳にふさふさの尻尾が見えています。
全体的に小柄で……なんというか膝の上に乗せたい気分になります。
エリスさんは……よく分かりませんね。
グレーの丸い耳に尻尾ですが、キイさんほど細くはなくアヤメさんほど太くもありません。
あと胸の辺りがとても女性的です。
バルガスさんは多分熊族ですね。
身長も二メートルくらいあるんじゃないでしょうか。
頼れるお父さんと言った感じです。
最後がプルストさんですね。
リード君と同じような耳なので多分犬族ですね。
短めの濃いブルーの髪に端正な顔立ちも合わさって普通にしてるととても格好いい方です。
ただ皆さんに愛されてると言うか遊ばれてると言うか……適当な扱いをされているので特にそんな感じもありません。
普段からのようなので信頼されてるという事ですね。
皆さんいい人そうでよかったです。
一通り自己紹介が終わったところで出発になりました。
斥候のキイさんを先頭、私が最後尾となって進みました。
最後尾は背後から敵に襲われたら危ないと言われましたが、私だったら飛んで逃げれますから大丈夫ですと言うと最後尾になりました。
間にいると邪魔になりそうですし。
それに結局は取り越し苦労だったわけですしね。
というか私、必要だったんでしょうか?
初めのうちは出番が無いからという事で後ろから皆さんの戦いを見ていたんですが、全員がとんでもなく強いんですよね。
キイさんはまだ見えもしない魔物を索敵し数まで正確に言い当てます。
一度だけ背後から魔物が来ましたが、当然誰よりも早く気付いていました。
そうなれば魔物が現れる頃には準備が出来ていて、人の背丈ほどもある土と岩でできたウィンドゴーレムの攻撃をバルガスさんはびくともせず受け止めます。
それどころか向こうがよろめいてましたね、その隙をついて槍を突き入れていました。
後続の敵がこないなと思っていたらエリスさんが拘束魔法で足止めしていますし、同時に前衛の人達に補助魔法も使っています。
魔法ってそんなに一度に使えるんですね。
アヤメさんは氷で出来た槍を飛ばす魔法を使ってましたが、とにかくコントロールが精密です。
前衛の人達にかすりもさせずに魔法を飛ばし、陰に隠れて見えない魔物に正確に当てています。
止めるも曲げるも自由自在と言った感じでした。
プルストさんは何も考えず剣を振っているだけのようにも見えましたが、よく見ていると非常に効率的に魔物を倒しています。
バルガスさんが止めを刺しきれなかった魔物を倒し、キイさんに向かう魔物に攻撃し体勢を崩し、エリスさんの足止めが切れそうな魔物を吹き飛ばして時間を稼ぎ、アヤメさんの魔法が目の前を横切っても驚きもせず飛び込んでいく。
しかも特に示し合わせもせずそんな連携をしています。
精々名前読んだり単語を一言叫ぶだけです。
全員が全員好き勝手してるようにすら見えますが、その実、全て意味があるかのように魔物が倒されていきます。
ゲームの上手い人って本当にすごいんですね……。
予想されてた方もいると思いますが、今回からプロローグの別視点となります。