14-2 空を飛ぶ練習、始めるよ!
数日おきに更新と言っておきながらこのざま(白目
後半は説明回なので後書きに簡易版を入れておきました。
説明読むのが面倒という方はそちらをどうぞ。
えーっと。
まずホーレックに来たら、ワイバーンが騒いでた。
エレノアさんにお願いされて、ワイバーンを倒した。
ミーアさんが怖がってたから、安心させた。
その時、少しだけ格好付けた。
うん、おかしいことなんて、何もしてないよね。
なのになんで!? なんでミーアさんからキラキラした目を向けられてるの!?
あ、その顔に見覚えあると思ったら、エレノアさんが『イオン様』って呼び始めたときと同じだった。
そっかぁ、それで私も『ロロ様』なんだぁ。
だからなんで!? なんでこんなことになるの!?
エレノアさんと違って命を助けたとかじゃないよね、普通に魔物倒しただけだよね!
それから少し話をしただけ。ちょっとカッコつけるような内容だったけど、でもそれだけだよね!
鳥族は強い人に憧れる習性でもあるの!?
「ミーア、実力のあるロロさんに憧れる気持ちはわかるが、ロロさんが困っているからその呼び方はダメだ」
わかるの!? 強いと憧れるの!?
「イオン様たち異世界の冒険者の方は、そういう畏まった呼び方は慣れていないらしい。できるだけ普通に呼んで欲しいと言われた。私はイオン様にお願いして許してもらったがな」
「そうなんですか? あの、私もそう呼ばせてもらうことは……」
期待に満ちた目を向けてくるミーアさんには申し訳ないけど、ゆっくり首を横に振る。
お願いだからロロ様はやめて欲しい……。
「残念です……。でもお礼だけはさせ下さいっ。うち喫茶店をやってて私も仕事を手伝ってるんです。なのでお茶の一杯だけでも! 励ましてもらったの、本当に嬉しかったから……」
「……。わかった」
「ありがとうございます!」
様付けを拒否したことにショックを受けた様子もなく、お礼できることに喜ぶミーアさんが眩しい……つい頷いちゃった……。
「いつお店に来てもらえますか? ロロさんはどうしてホーレックに来たんですか? 用事が終わるのはいつ頃ですか? ケーキは何が好きですか? 焼きたてを用意しておきます!」
ちょ、ちょっと待って! いっぺんに聞かれても答えられないから! 今度は私が慌てる番だから!
でも焼きたては嬉しいかも……。
「落ち着けミーア。ロロさんは飛行練習に来たんだ。いつ終わるとは決まっていない」
「そういえば異世界の方は飛べないんでしたっけ。……あれ? でもイオンさんは飛んでましたよね」
「飛べるのはイオン様だけだそうだ。ロロさんは飛べないにもかかわらず、あれほどの力を持つお方なんだ」
「飛べないのにあんなに強いんですか! ロロさんって本当に凄いんですね!」
力がどうとかについてはコメントを控えるとして、エレノアさんが代わりに説明してくれたのは助かった。
それにしても、鳥族にとって強いか弱いかって、実は重要なことなのかな? 飛び方の上手な人が尊敬されるっていうのは聞いたけど……。
……よく考えたら重要だよね。多分だけど、鳥族に限らず。
この世界って街の中は結界があるから安全だけど、外には魔物がいて危険だらけ。
外に出るには力が必要なんだから、それ自体が社会的地位になってもおかしくない。
というか現実世界だって昔はそうなんだっけ。力の強い戦える男性が偉い、みたいな。そう考えると不思議でもなんでもなかった。
でもだからって、こんな怪しい格好した私にあ、憧れなくてもいいんじゃないかな……。
「黒一色のピシッとした姿も素敵だし」
は、話し方だってぶっきらぼうだし、一言程度しか返さないし。
「言いたいことだけハッキリ言って、口数が少ないところも寡黙で格好いいし」
わ、私も女だし、憧れるなら男性の方がいいんじゃないかなっ。
「同じ女性……ですよね? なのに凄く強くて、本当に尊敬します!」
……もう、何をやってもプラスに受け止めちゃいそう……。
でもなんで私なんだろ? エレノアさんだって憧れる対象になりそうなのに。自警団の団長さんで強いんだよね。
「あ、忘れるとこだった。エレノアさん、武器屋のおじさんが探してましたよ。『直しようがねぇぞこんなもん! いっつも無茶な使い方しやがって!』って怒りながら」
「そ、そうか。後で顔を出しておこう……」
ミーアさんの伝言に目を逸らしながら返事をするエレノアさん。
なんとなく理由がわかった気がする……。
「そんなことよりロロさん。飛行練習するなら、私にお手伝いさせて下さい!」
お手伝い?
「私も最初は翼を動かせなかたんですけど、練習して今は飛べるようになったんです。だからきっと力になれると思うんです!」
ミーアさんも翼を動かせなかったんだね。それなら同じく動かせない私に丁度いいのかも。
でもお願いしてもいいのかな。教えるのに資格というか、大人じゃなければダメみたいな決まりとか無いのかな。
「イオン様から頼まれたこともあって異世界の者には私が教えることになっているが、本当は誰が飛び方を教える、ということは決まっていない。普通は手の空いている者が子守ついでに教えるようなものだ。ミーアは小さいのにしっかりしているから、子供達のお姉さん役のようになっていてな。いつも飛び方を教えているんだ。何人も飛べるようになっているうえ、丁寧で評判もいい。ロロさんさえ良ければ、ミーアから教わるのも悪くないと思うぞ」
そう思ってエレノアさんのほうを見たら、そんな答えが返ってきた。
ミーアさんに教わってもいいんだね。それに実績もあるんだぁ。
「喫茶店の仕事は?」
「基本的にお店はお母さん一人でやってて、私が手伝うのは忙しい時間帯だけなんです。それ以外の時間は普通に遊んでますから」
喫茶店のお手伝いは大丈夫? と思って聞いてみたら、一日中手伝ってるわけじゃないんだね。
まだ小さい子なんだから当たり前かも。
仕事といえば、エレノアさんだって自警団の仕事があるはず。教官として時間を割いてくれるように話が付いてるはずだけど、自警団の団長であることには変わりないんだから。
だったら負担は少ないほうがいいよね。私一人でどれだけ変わるかはわからないけど。
何より……。
「私なら大丈夫ですからやらせてください! 小さい子にも教えてますから自信あるんです!」
さっきから、ずーっとキラキラした目を向けてくるミーアさん。
様付けはなんとか断ったけど……。
「……わかった。お願いする」
これ以上断るのは、私には無理……。
「やったぁ! 私頑張りますねっ!」
眩しいよぉ……全身から嬉しいオーラが出てるみたいに眩しいよぉ……。
小学校の先生になってたら、こんな子を生徒に持つこともあったのかな……?
「話もまとまったところで、そろそろ行くか」
「はい!」
「……うん」
まとまったというか、まとまっちゃったというか……。
こうなったら無駄な抵抗はしないで、大人しくミーアさんから教わります……。
そんなこんなあったけど、気を取り直して自警団の詰め所へ。
そこでまずは約束の報酬から受け取った。
思ったより多めで内心ホクホク。緊急の依頼は高額だからいいよね。街の人にとっては良くないけど。
それから飛行練習用魔道具、【リーンバングル】を受け取った。
見た目は普通の腕輪。装飾なんてされてない、銀色の素っ気ない腕輪。それこそ、鉄板を切って形を整えただけですって言われても信じてしまうくらいに。
そんなバングルを受け取って、軽く説明を受けた。
まずバングルの効果。
バングルは最大三個まで付けることができて、数を増やすと効果が増える。
一つだけ付けている場合は、使用者の安全を確保してくれる。
墜落してもバングルの効果で保護してくれるし、他の使用者との衝突も防いでくれる。
ただし街中に生えている木や建物にはぶつかっちゃうから、そこには気を付ける必要がある。
人身事故の不安が無いだけでも十分だと思う。そんな車があったらいいなぁ……。
二つ付けると、腕の動きと翼の動きが連動するようになる。
腕を羽ばたくように動かすと、翼もそれと同じように動く。
翼を動かす感覚がわかれば、バングル無しでも動かせるようになる。
……はず。
確実に全員が動かせるようになるとは限らないって、改めて釘を刺された。
わかってたことだけど、私はどうなのかちょっと不安……。
三つ付けると、翼に魔力を流してくれる。
そもそも翼を動かすには、きちんと翼に魔力を流さないといけない。
だから強制的に魔力を流して、今度はその感覚を覚える。
もちろんこっちも釘を刺された。仕方ないとはいえ、何度も釘を刺されると不安が大きくなるね……。
バングルの効果説明の次は、注意事項。
大切に扱ってねとか、既に聞いてたけど街からの持ち出しは禁止とか。
鳥族にとって大事な物なんだから、言ってしまえば当たり前のことがほとんど。
だけど初耳な注意事項もあった。
『バングルを三つ付けていると、強制的に魔力を流す関係上、魔力消費量が増大する。バングルを付けているだけで、すぐに魔力が枯渇してしまうんだ』
リーンバングルは、例えば私の銃のような魔石式の魔道具とは違って、使用者の魔力で動いている。
魔石式の魔道具が、魔石の魔力が無くなれば使えなくなるのと同じように、リーンバングルは使用者の魔力が無くなったら使えなくなる。
つまり、練習には時間制限があるということ。
ただの魔力切れなんだから、魔力回復ポーションで回復できるそうなんだけどね。
でも普段この街で練習してる鳥族の子供達は、ポーションは使わないんだって。
子供に無理な練習をさせたくない、とかじゃなくて、単純に子供のお小遣いじゃ買えないから。
それは仕方ないよね……。
私たち異世界の冒険者はどんどん使ってねって言われた。
練習時間が増えれば、そのぶん早く飛べるようになる(かもしれない)から。
順番待ちしてるんだから、早く飛べるようになったほうがいいもんね。
お財布に余裕のある人はポーションをつぎ込んで、無い人は時間経過で自然回復を待つ。
もちろん私は余裕の無いほうです……。
魔力があるうちは、できるだけ練習に集中しよっと……。
ところで、魔力が無くなったらバングルを使えなくなるっていうことは、飛んでる最中に魔力が無くなったら墜落するかもしれないって事だよね。バングルの効果で翼を動かせてたのに、その効果が無くなっちゃ訳だから。
そう思って聞いてみたた、なんと空中で魔力が無くなりそうになると、自動的に地上に降ろしてくれ機能もあるんだって。
この魔道具、凄すぎないかな……。
『そうだ。誤解の無いように言っておくが、バングルを三つ付けていると魔力の消費が増大するのは間違いないが、普通に飛んでいるだけでも魔力は消費する。バングル無しで魔力が無くなれば本当に墜落するからな。飛べるようになっても、油断はしないことだ』
えっ、そうなの!?
『持久力に優れる馬族でも、何も食べず永遠に走り続けることはできないだろう? 同じ事だ。なんの代価も無く飛び続けることなど、できるはずがない』
い、言われてみればそうだよね……。
はたから見たら風に乗ってるだけ、たまに翼を動かす程度だとしても、動かす側はしっかりエネルギーを消費してるはず。
長い距離を飛ぶ渡り鳥だって、飛びながらご飯を食べる鳥もいれば、体に栄養を蓄えてから飛び始めて、到着時には体重がものすごく減ってる種類もいるって、テレビで見た気がする。
優雅に見えるかもしれない“飛ぶ”という行為も、実際にはエネルギーを消費してるんだよね。
それが鳥族の場合は、魔力を消費するっていうだけ。
考えてみればものすごく当たり前のことだった。
そういえば、イオンさん提供バルガスさん編集の資料に色々書いてあったっけ。
鳥族の翼は魔法的なもので構成されている可能性があるとか、飛んでる最中は高いとこを飛んでも寒くならないように魔法で体温を維持しているかもしれないとか、それどころか体重も魔法で変化させてるかもしれないとか。
飛ぶだけでもそんなに魔法が、というか魔力が関わってれば、消費して当たり前だよね……。
あれ? でもイオンさんは一日中飛んでる日もあるって言ってたような?
一日中って言ってもものの喩えで、途中で休憩くらいはしてるはずだけど。でもかなりの時間を飛んでると思う。
休憩中にはポーションでも飲んでるのかな。
『魔力の消費量は個人個人によって異なる。風の使い方が上手ければ自分の力は最小限ですむからな。端的に言えば、飛ぶのが上手な者ほど消費は少ない。そして飛行技術に優れるのだから、戦っても強い。今は居ないが、昔はこの街にもそういう鳥族が居たそうだ。イオン様もそれに当たるだろうな』
そもそもの消費が少ないから、少しの休憩でも回復が間に合う。
イオンさんの場合はそういうことかも……。
『と、注意するために脅すようなことを言ったが、少し慣れれば街から街へ魔力回復無しで飛ぶ程度のことはできるはずだからな。そこまで過敏になるほどではないが、忘れると大変なことになるのは理解して欲しい』
はい。気を付けます。
街から街まで飛べるならそこまで気にする必要も無いとは思うけど、でも墜落死とか絶対したくないもん……。
魔力回復ポーションは多めに持つようにしよっと。
バングルの説明で聞いた話は大体こんな感じだった。
魔力の消費とか、鳥族についてもっと詳しく聞きたい気もしたけど、今日はやめておいた。
だって早く練習を始めたかったんだもん。
それにそういうことは検証班の人が調べてくれるはずだから、待ってれば詳しい情報が公開されると思うし。
調べ物は専門家に任せて、私は飛行練習を始めよっと。
2/14誤字修正しました。
簡易版魔道具の効果説明。
その一。全周囲エアバッグ。これで墜落なんて怖くない! 人身事故も安心だ! ただし対物事故を除く。
その二。腕の動きと翼の動きが連動するようになる。イン○ラムのモーショントレーサーと一緒だね! これで翼を動かす感覚を掴め!
その三。翼に魔力を流してくれるので、翼が動くようになる。すげー魔力消費するけどな! 早いとこ魔力操作覚えよう!
追記。鳥族は魔道具無しで普通に飛んでるだけでも魔力消費するから魔力切れには注意な! 魔道具無しで魔力切れるとマジ墜落死だから!
イオンは回復無しで飛んでる? それだけ飛ぶのが上手いから低燃費って事で!
基本低燃費、時々ハイパワーな最新ハイブリッドスーパーカー的な感じだと思ってもらえれば!
言ってることがわからない? 考えるな! かんz(以下略
大体こんな感じ。
遅くなった言い訳。
緊急イベント発生と同時に冬休みさんがバックスタブされ退場。
流れるように平常運転開始。からの忘却の彼方に押し込まれた地元行事遂行というハメコンボに襲われておりました。
なんで忘れるかな……。
Q:なんか遅刻した小学生の言い訳シリーズみたいだな?
A:『宇宙人に攫われて!』とか『VRゲーやってたらゲームの世界から帰って来れなくなって……』とか言いだしたら末期だと思って下さい。