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13-10 母のいる日常。


「準備もできたし始めましょうかー」


「どんな感じにします? あたし的には記者会見風よりトークショー風だと思ってるんですけど」


「当然トークショーです。記者会見にしたら私が質問できないんで」


「おお、言われてみれば。ってなるとタイトルはあアレかな。でもベタすぎ?」


「ベタだからいいんです。わかりやすいネタで掴んどかないと後が続きませんからねー。おっと安心してください。後半になれば変化球投げ放題なんで!」


「さすが大先輩!」


「ふっふっふ。やらかしすぎても私が何とかしますんで全力で行きましょう後輩ちゃん! では行きますよ!」


「はい!」


「メグルと!」


「マリーシャの!」


「「新人さん、いらっしゃーい!!」」


『うおおおおおおおおおおおおお!!』


 喫茶店のテーブルを使った即席トーク場と、それを囲む多数のギャラリー。

 イベントでもなんでもないはずなのに、どういうわけか相当な盛り上がりを見せていた。


(……なんで、こんなことになったんでしたっけ……)


 その中で一人だけ、その勢いに付いていけていない様子のイオン。

 こうなった流れを振り返ると、そうなってしまうのも仕方がないのだった。


 ジークフリートからの謝罪も終わり、さぁ移動しようかなとイオンが考えたところにまさかの乱入者。

 しかもセレック、プルスト、キイ、マスグレイブ、メグル、マリーシャという、法則性も何もない顔ぶれ。敢えて法則を見いだすとすれば、イオンと直接顔を合わせたことがあるという程度。

 それらがほぼ同時に登場したのだから手に負えない。

 中にはイオンのこととは関係なくたまたま居合わせただけという者も居るが、この状況ではそんな事など関係ない。

 容赦なく、カオスな状況に巻き込まれることになった。


 しかしある意味で幸運だったのは、そんな状況でも躊躇せず喋りまくる、メグルとマリーシャが居たことだろう。

 案外とすんなり、この事態を動かしていた。

 ただしメグルとマリーシャはこの日が初対面。最初は一悶着あった。


「「…………」」


 何故か無言で目を合わせ、


「「(キッ!)」」


 睨み合い、


「「(ジー)」」


 視線を外してイオンを眺め、


「「…………」」


 再び見つめ合ったかと思うと、どちらからともなく近づき、


 ガシッ!


 長年の戦友のように握手をして、二人して笑顔になった。


『メグルと言います。この状況どう思いますか』


『マリーシャです。イオンがまた何かやったんじゃないですか。原因は一発でわかりますけど』


『ですよねー。もう誰がどう見ても面白い状況ですよねー』


『首を突っ込まないわけにはいかないですねー。でもここで立ち話もあれだし、どっか移動したほうがいいんじゃないですか』


『市場脇の喫茶店にしましょう。スペースあるしあそこプレイヤーのお店だし、正面が広場だからギャラリーも見やすいし。私店長に連絡付けるんで誘導お願いしてもいいですか』


『任せて下さい。あ、シーラいいとこに。誘導手伝ってー!』


『……一体どんな状況なの、これは……』


 誘導したマリーシャの、いかにも居るのが当然といった態度に誰も疑問を感じないまま移動を開始。

 あまりに自然に場を移し始めたため、ワケもわからず付いてきてしまった者もチラホラ。

 そんなこんなでカオスの場を市場前の喫茶店に移し、メグルとマリーシャの手により何故かトーク番組風のタイトルコールによりカオスを再スタート。

 イオンのように『なんでこんな所にいるんだっけ?』と思いつつ、面白そうだからとりあえずノッとこう、付いていこうという、行列があるからとりあえず並んでみようぜ的な空気に引っ張られた者たちは、やっぱりワケもわからないまま、でも面白いからいっかーと歓声を上げるのだった。


「さぁワケもわからず始まってしまいましたこの状況! 無軌道すぎてまったくオチが読めないこのスリルがたまりません! 司会進行はクラン・よろずやのメグルがお送りしまーっす!」


「握手しただけなのに何故かこき使われつつにこの場に引っ張り出された無所属のマリーシャです! お手伝いポジションだけど顔面パイ投げまでなら許せるんでお願いしまーっす!」


「今まで埋もれてたのが不思議なほど頼もしいお手伝いさんだ! でもパイ投げはやめたほうがいいですよ。ノリにノってやらかしたあとの、ふと我に返った瞬間の空しさがもうハンパないですよ、アレ」


「メグルさん、今まで苦労してたんですね……。あたしも幼稚園児に混ざってやった畑いじりという名の泥遊びで本気になって子供の相手してたら、親御さんからガチで心配されたときは凹んだですよ……」


「お互い大変ですね……」


「頑張りましょうね……」


 しみじみと頷いて、何故か抱き合う二人。最初っから全力で脱線していた。


「コホンッ。気を取り直しまして、この場は突如ルフォートに出現したイオン型ミステリースポットに吸い寄せられて形成された驚きの怪現象を紐解いていくためにセッティングしてみました」


「最初っから新人さんとは関係ないようなこと言ってますがタイトルは変わりません。どっかで新人さんを紹介したらそれでおっけーですよね!」


「まさしくその通り! タイトルなんて飾りです。中身が面白ければどうでもいいのです!」


 今日会ったばかりのはずなのに何故か息ぴったりのメグルとマリーシャ。

 そんな二人を見るシーラは、混ぜてはいけない二人が出会ってしまったことに頭を抱えていた。

 一方、マリーシャのもう一人の友人であるイオンはというと……。


(イオン型ミステリースポットってなんですか……なんなんですか……)


 あまりの言われようと周りの温かい目にさらされて、羞恥に悶えていた。


「さてさて私たちだけで話をしてても先に進まないのでまずは気になる新人さんにお話を伺ってみましょう! というわけでこの場の誰もが注目しているこのお方、イオンさんにあり得ないほど似ているこちらのお姉さんです! こんにちは! まずお名前を伺ってもよろしいですか!」


「こんにちは、シオンと言います。よろしくお願いしますね」


 にこりと微笑んで、会釈をしながら自己紹介するシオン。

 いかにも優しげなお姉さんといったその雰囲気に、ギャラリー一同、ほんわかした空気に包まれた。

 その完璧過ぎる人畜無害アピールに、一部の人間は頬を引きつらせていたが。


「よろしくお願いしますシオンさん! 見た目が似ていると名前も似ているのはお約束ですね! やっぱりお名前はイオンさんと決めたんですか?」


「いえ、勝手に似せました。そのほうが面白そうだったので」


「優しいお姉さんポジかと思いきや茶目っ気アリのいたずらお姉さんですか! もちろん私的に大好物です!」


「あー、色々納得しました。やりにくそうってわけでもないのにどっか微妙なイオンの態度はそれでなのかー」


「その通りです……」


 これが噂のお母さんかー、と内心納得したマリーシャ。

 イオンも察しのいいマリーシャに助かったらしく、ようやく言葉を発した。


「むむっ、さっきから気になってましたけど本当に仲良いですねお二人とも。ツーカーで話しちゃって羨ましい。イオンさんとシオンさんの関係も気になるけどこっちも気になるなー。ちなみに私は百合にも理解ありますんで遠慮なくどうぞ!」


「百合? 花のですか? すいません花のことはよくわからなくて……」


「ごめんなさい私が悪うございました。所詮私は心の汚れた女です……」


 本気でわからなかったイオンに素早く謝るメグル。非オタに対する盛大なネタ滑りにより、かなりのダメージを受けるのだった。


「メグルさんが撃沈したから代わりにあたしが聞いてみまーす。聞いちゃダメかもだけどみんな気になるだろうから地雷は踏んどきます! ズバリ、リアルでの二人の関係は!? 言っちゃダメなら笑顔でスルーお願いします!」


 リアルでの関係については、気にはなっても触れないのが当然のマナー。

 とはいえ、この状況でそれが気にならない者がどれほど居るだろうか。

 ダメならダメでいいから一度は聞かなければ気が済まない。そう全員の思いは一致していた。


 マリーシャは直接確認したわけではないが、今の状況と学校でのイオンの言葉からほぼ事情を理解している。

 断られる可能性も理解しているし、その場合のリスクが何もないことを理解していたからこそ踏み込んだ。


 そんな踏み込んだ質問を受けたイオンとシオン。

 お互い顔を見合わせ、軽く頷いてからそろって口を開き、


「母です」


「娘です」


 そんなセリフを、なんでもないように口にした。

 あまりにサラッと落とされた爆弾だったらしく、しばし沈黙がその場を支配する。

 そして数秒後。




『ははぁああああああああああああああああああああああ!!??』


『むすめぇえええええええええええええええええええええええ!!??』




 その他、多種多様な絶叫が飛び交い、この日一番の騒ぎになるのだった。


「いやー私としたことがつい本気で叫んじゃいました! っていうか本心ではもっと叫びたいんですが話が進まないので我慢します! でもてっきり年の近いお姉さんとか実は双子発覚って誰もが考えてたのに、まさかまさかのお母様とは思いませんでした! 前に本気で叫ばされたのってイオンさんのデビューだったんでこの短期間で二回目ですよ。どうしてくれるんですかいつもありがとうございます!」


「それはそれは、どういたしまして」


「返しにソツがないあたりはさすがお母様! 色んな意味で素晴らしい!」


 年の近い姉、双子説の辺りでギャラリー一同はうんうん頷いていた。

 このゲームでは容姿設定は自由自在というわけにはいかず、一部しか変更できない。

 現実世界では『似てる』と言われる人同士が同じ種族でキャラクター作成しても、システム補正がどう働くかわからないため、作成結果は全く似ていないという場合もある。

 とはいえ全くのランダムに補正が働くというわけではい。

 既に存在している双子プレイヤーや兄弟プレイヤー、親子プレイヤーなどはそれなりに似た容姿になっている(もちろん似ていないパターンもある)ため、骨格レベルというか遺伝子レベルで近い場合は似やすい傾向があるという風に認識されているのだ。


 そんな情報が広まっていることからわかる通り、ゲーム内で血縁関係であることを公表しているプレイヤーはそれなりに存在する。

 というか、普段の言動から自然とバレてしまうことが多い。

 イオンとシオンはその似すぎているほど似ている外見から、誰もが血縁関係だろうと予想する。

 現実世界でのことだからと切って捨てて黙っているのは簡単だが、そんなバレバレのことを黙っているくらいなら、いっそ公表してしまったほうが色々とオイシイし、変な誤解だって生まれない。

 そんな考えもあり、シオンは公表することにしたのだった。


 ちなみにイオンはそこまで考えていない。

 『親子でゲームしていると知られたからって、何か問題あるんでしょうか?』くらいなものである。

 先程ルドルフと巌には『知り合い』と紹介したが、自分から言いふらすほどではないと考えていただけで、関係を聞かれれば普通に答えていた。


 他にも親子のプレイヤーが居ることなどイオンは知らないが、実際そのどれもが特に問題にはなっていない。

 問題にはなっていないが、ネタにされることは多い。

 ある意味、イオンにとっては一番苦労するかもしれない選択なのだが、最初に盛大にネタにされてしまえば、その後は扱いが固定されて対応が楽になると、シオンは知っている。

 メグルとマリーシャがカオスを一層盛り上げる状況を作っても何一つ口を出さなかったのは、それを狙ってのことなのだった。


(こんな大騒ぎの状況なのに、シオンなんで楽しそうなんですか……)


 それ以上に、今の状況を面白がっているようだったが。


「一番気になることも聞けましたし、次は本題に入りましょうか。あんな場所に人が集まっていた件についてですね」


「ログインしたら人がものすっごい居たんで何事かと思いましたよホント。周りの人の話聞いたらイオンがどうのって言うからまた何かやったのかって」


「私は変に人が集まっててその中にイオンさんが居るらしいってタレコミあったんですっ飛んできました! でも本当になんであんな騒ぎになってたんですか? あそこに居たってことはログイン直後だったと思うんですけど、まず最初に何があったんです?」


「そうですね、ログインしてすぐです。結界石の広場を出て、イオンの案内でお店に向かうところでした」


「でも広場を出てすぐにルドルフさんと巌さんを見つけたので、挨拶してたんです。シオンと私は紛らわしいので、きちんと紹介しておこうと思って」


 話の内容は先ほどの集まりにシフト。それに答えるのはもちろん今日の主役であるシオン。

 それをイオンが引き継いで話が進み、話の流れからイオンの視線を受けたルドルフと巌は頷くだけで肯定していた。


「あー、確かに顔見知りの人くらいには言っとかないと、変に誤解されますもんねー」


「間違えやすくっても、間違えやすいって知ってたら気を付けますもんねー」


「メガネと髪の色以外に違いがあります? ってくらいに似てますもんね。嫌でも気を付けますって」


「でもそれだけだとあれなので、お店に行って装備を整えようかなと思ったんですよ」


「ああ、同じ装備をオーダーするんですね!」


「見てみたいですけど余計紛らわしいですってマリーシャさん! 見たいですけど!」


「ふふっ、お金が貯まったら考えてみますね」


「マジですか!」


「やたーっ!」


「装備を整えるとは言いましたけど、全く違う装備にするとは言ってませんので。だから皆さん、見慣れた装備でも気を付けて下さいね」


「紛らわしいけど私が見たいんで止めたりしません! みなさん気を付けましょうね!」


『はーーーーーい!!』


 確かに紛らわしい。だが見てみたいのはギャラリーも一緒。実にイイ返事が返ってきた。


「それでルドルフさんと巌さんに紹介したまではわかったんですけど、なんでジークフリートさんまで? 言っちゃなんですけどこないだセクハラされたって聞いてたんですが、違いました?」


「いえ、それは本当です」


 イオンが肯定した瞬間、ギャラリーから睨まれてビクッと体を震わせるジークフリート。ちなみにこの場で一番キツい視線を飛ばしたのはマリーシャである。

 そんな視線にさらされたため反射的に立ち上がって弁明しそうにるジークフリートだったが、マルグレーテから脇腹をつねられ席に座ったままにさせられた。マルグレーテがそうしたのは、まだイオンのセリフが続くと思ったからだ。


「でもその件で謝りたいと聞いたので、それならお話くらいは聞いてみようかなと思ったんです。それでしっかり謝って頂きましたので、たまにお話しするくらいはいいかなということになりました。もちろん二度目はないですけど」


「なるほどそういうことですか。ここ数日ジークフリートさんが結界石の広場でずーっと正座待機してるのは知ってたんで、それくらい本気だったらと思わなくはないですね」


「イオンがそれ以上言わないのに、周りがどうこう言うのも何か違いますしねー。でも次やったらあたしも怒りますんで!」


「私もよろずやの総力を持って潰しにかかりますんで! あとギャラリーの皆さんにも協力して頂きます。いいですよねー!?」


『いいともー!!!!』


「振っといてなんですけど返事ソレですか!? ノリ良すぎじゃないですかねこの皆さん! でも変にいじめたりしちゃダメですよ! あくまでセクハラ再発した場合だけですからね、暁の不死鳥の他の人らは関係ありませんからね!!」


『はーい!!!!』


「よろしい! それじゃジークフリートさんマルグレーテさん、今後は気を付けて下さいね!」


「「肝に銘じます!」」


 女としてセクハラには厳しいメグル。マルグレーテが居るから大丈夫だとは思いつつも、しっかり釘を刺しておくのだった。

 ジークフリートがセクハラ通報されたケースは、ほとんどが“しつこいナンパ”の範疇(もちろん本人にナンパしているという意識は一切ない)で、身体的接触が伴ったケースというのはイオンが初めて。

 だからこそ今回のセクハラの件が大きくなったし、それでもこういうケースでは一応初犯ということで見逃された部分がある。

 本人たちは知らないが、その立場はいろいろな意味で崖っぷち。ギリギリで踏みとどまっていた。

 だがイオンとは無事に和解することが出来たし、メグルも釘は刺したものの、ギャラリーに向かっても『理不尽な叩きはダメ』と釘を刺している。

 そのおかげで、今後再発さえしなければこれ以上叩かれることはなくなった。

 大勢の前でさらし者にされているようにも見えるが、実は助かっているのも事実なのだった。


「それじゃ次に行きましょうか。ジークフリートさんの次は誰が来たんです?」


「誰というか……」


「メグルさんたちを含めて残りの皆さんはほぼ同時だったので、誰が先というのはないですね」


「え、ホントですか」


「それはあの微妙な空気が流れる状況になりますねー」


「トドメを刺したのは、メグルさんとマリーシャさんだと思いますけど」


「「えっへん!!」」


 シオンの突っ込みに胸を張るメグルとマリーシャ。

 この二人こそ双子レベルのシンクロ率だった。


「なら片っ端から聞いてきましょうか。プルストさんとキイさんはどうしてあそこに居たんです? 騒ぎに巻き込まれたイオンさんを助けに来たって感じではないように見えましたけど」


「ただの偶然だな」


「ダンジョンから帰ってきたとこだったし、なんか人多いなーってくらいだったね」


「俺も偶然だな。人が多いなとは思ったが、プルストに用があったから先に声だけかけとこうと思ってな。近づいたら誰かさんに巻き込まれた」


 プルストの偶然という言葉に乗っかって、自分の状況も言ってしまうマスグレイブ。

 誰かさん、の辺りではメグルに視線が向けられていたが、さすがの回避能力でメグルの視線は既に明後日の方向を向いていたため、視線を刺すことには失敗していた。


「最後はセレックさんですね。まぁ大体予想つきますけど、ここはババーンとお願いします!」


「ドカーンでもいいですよ!」


「い、意味わかんないですが……大したことじゃないっていうか、多分メグルさんと似たようなものですよ。結界石の広場近くでイオンさんが何か騒ぎに巻き込まれてるって聞いたから、何か力になろうと思って来たんです」


 セレックの言葉にやっぱりですかーと納得したのは、メグルを含むこの場の大多数のプレイヤー。

 元々イオンに限らず鳥族プレイヤーを大事にすることで知られていたので、イオンに何かあれば駆けつけないはずがないと、誰もがそう考えていた。

 しかも、セレックのイオンに対する想いは先日のシオンの件でうなぎ登りの青天井。

 今現在はシオンの件は本当に誤解だったと理解したので、イオンに対する想いは若干収まっているのだが、当然ながらここに来るまでは知るはずがない。

 イオンが囲まれていると聞いて、すっ飛んできたのだった。


 誤解のないように付け加えておくと、今回すっ飛んできたのはジークフリートが居ると聞いたからだ。

 イオンとジークフリートにはセクハラの件があったので心配して当然。誰彼構わずイオンの敵認定して、突っかかろうとしていたわけではなかった。

 ルドルフと巌のことはセレックも知っているので、この二人のことしか聞いていなければ慌ててすっ飛んでくるようなことはなかっただろう。

 シオンとの件があったおかげで、そのくらいは考えて行動するようになっていた。


「つまりイオンさんが不逞の輩に絡まれてるんじゃないかと早とちりしたんですね。私も似たようなものですが!」


「同じく!」


「ま、まぁそんな感じです。アライズの件もあって、つい過敏になってしまったっていうか」


 メグルに軽く突っ込まれて、言い訳というかつい本音をこぼしてしまったセレック。

 こんな人の多い場所で特定のクランに対するマイナス発言が駄目なことはわかっているはずなのに、それでもつい口が滑ってしまったあたり、まだアライズに対しては色々と思うところがあるのだろう。

 ギャラリーにも『まぁそう考えても仕方ないよなー』という空気が漂った。


 だがそんな空気を変えてしまう発言が、意外なところから飛び出した。


「アライズ……って、なんですか?」


 事情を理解していない、どころかアライズという存在そのものを知らないといった様子の、イオンだった。





10/2誤字修正しました。


メグルとマリーシャの一悶着、内心は多分こんな感じ。



「「…………」」

 何故か無言で目を合わせ、

マリーシャ『何この可愛いお姉さん。イオンと知り合いなの?』

メグル『なんですかこの可愛い子。イオンさんとどんな関係なんですかね?』



「「(キッ!)」」

 睨み合い、

マリーシャ『でも渡さないから!』

メグル『でも渡さないですよ!』


「「(ジー)」」

 視線を外してイオンを眺め、

マリーシャ『……けど独り占めはどうせ無理だし、お姉さんとも仲良くしたほうが面白そうだなー。ていうかこんなテンションなのにイオンと仲良いって、なんかあたしと同類な気がする』

メグル『……って言ってもイオンさん独占できるわけじゃないし、この子も面白そうなんですよねー。あんなノリなのにイオンさんの近くに居られるとか、私と同じ匂いがしますねー』


「「…………」」

マリーシャ『あのー』

メグル『休戦ですか? おっけーですよ』

マリーシャ『あたし的にはお姉さんとも仲良くしたいなーって』

メグル『もちろんおっけーですとも。そっちのほうが面白そうですからねー』

マリーシャ『ありがとうございまーす。可愛いお姉さんゲット!』

メグル『こっちも可愛い子ゲット! じゃとりあえず』


再び見つめ合ったかと思うと、どちらからともなく近づき、

 ガシッ!

メグマリ『『これからよろしく!!』』



シーラ『混ぜるな危険……』


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