13-7 母のいる日常。
月曜日なのでいつも通り登校しました。
でも実は、明日から夏休みです。
なので真里の提案は当たり前とも言えるものです。
「碧ー、夏休みなんだからどっか行こうよー。海とか山とか川とか地下帝国とか宇宙基地とかー」
微妙に変なものが混ざってますけど。
「パリカルスに行けば海がありますね」
「山なら話題のトンネルにでも行ってみる?」
「川は……あんまりいいとこないか」
「ニデスまで行けば広い洞窟ダンジョンがある」
「ゲームの中じゃなくてーーー!!」
ダメでした。
「いやそっちも行きたいけど、でも夏休みくらいどっか行きたいっていうのは日本人の習性でしょ! 碧だって去年どっか行ったって言ってたし!」
「お父さんとツーリングに行っただけですけどね」
日帰りで。しかもタイヤを替えたから一皮剥きたいという理由で。
「折角受験もなんにも無い高二の夏なんだからそれっぽいことしたいの! 来年は無理だし!」
「それで来年になったらキレイに忘れて『受験前だから思いっきり遊ぶ』とか言い出すのね」
間違いないですね。
「いーいぃーでぇーしょおー!!」
珍しく駄々こねてますね……机をバンバン叩くのも力入ってます……。
「碧! どっかないのっ、碧が行きたいって言ったらどこでもいいから!!」
「いきなり言われても思いつきませんよ……それに今月いっぱいは仕事が忙しいですし」
両方とも事実です。仕事は私の分まで詰まってるというほどではありませんけど、手伝いは必要ですし。
「去年の今頃は、仕事が少なくて困ってなかったかしら?」
「今年もその予定だったんですけど、ちょっと事情が変わりまして……」
「何かトラブルでもあったの?」
「いえ、お母さんが帰ってきまして」
「ああ、それで」
「母親? 帰ってきたって何だ? つかそれと仕事の何が関係あるんだ?」
納得する東さんと、疑問が増えた相田君。相田君と西君にはお母さんのこと話してませんでしたっけ。
「私の両親は実は離婚してるんです。それで母は普段遠くに住んでるんですけど、両親の仲は悪くないので仕事の休みが取れると帰ってくるんですよ。家にいるあいだはうちの仕事を手伝ってくれるんですけど、母の手にかかるとどういうわけかあっという間に仕事が取れてしまうので、仕事量がものすごく増えてしまうんです」
「……すまん、どっから反応していいかわからん」
詰め込みすぎました。
「あまり深く気にしないでいいみたいよ。単身赴任の敏腕仕事人が帰ってきた程度に考えなさい」
「そんなのでいいのかよ……」
「大丈夫です。間違ってませんので」
東さんと真里にはお母さんのことをしっかり話してありますので、正しく認識してもらえてます。
「そういえばお母さんで思い出しましたけど、お母さんが真里と会いたがってたんですが、よかったらうちに」「行く!」
やっぱり即答でした。
「なのでこないだ西君が希望してた、お店の見学も合わせてはと」「行く」
西君も即答ですか。
「私も会ってみたいわね。碧のお母さんで、仕事がものすごくできる人。気になるわ」
東さんも大丈夫。
「俺は……行ってもいいのか? 雅人ほど車が好きってワケじゃないし、女子の家に行ってもいいもんかって気がするんだが……」
「私は構わないですよ? 暇かもしれませんけど」
「なら俺も行くわ。一人だけ外されんのもあれだし」
では相田君も決定。結局全員になりましたね。
「珍しいね。友達のお母さんに会うとかイヤがりそうだと思ったのに」
真里に言われて気が付きましたが、確かに相田君はそんなイメージです。実際相田君がどうなのかは見たことないので知りませんけど、大人と接する機会が少ないと身構えてしまうものだと思いますし。
私は仕事でいろんな人に会ってるので、あまり抵抗がないつもりですけど。
「得意っつーわけじゃないけど、会うくらいはいいだろ。ただ話すだけなんだし」
「前ならその『得意じゃない』ってだけで断ってると思ったのになー? あ、まさか碧の親だから?」
「なわけねーよ。まぁ、あれだ、ちょっとした心境の変化ってやつだよ」
「シンキョーのヘンカねー?」
「……なんだよ、その目は」
「ぶぇっつにぃー? じゃあうちの親と会っても平気かなーって思っただけだけどー?」
「なんでお前の親と会わないといけないんだよ」
「今なら無料で『お嬢さんを僕にください!』の予行練習させてあげるよー。セットでちゃぶ台返しされる権利も付けてあげよう!」
「断られる前提の練習とか嫌すぎる……」
どんな心境の変化があったのかは知りませんけど、真里も相田君も楽しそうなので、良いことですよね。
全員が来ることに決まったので、ひとまず予定を確認。
お父さんとお母さんの予定もあるので、確認次第連絡するということになりました。
あとの細かい打ち合わせはゲームの中します。現実で会えなくてもゲームで会えるとこういうとき便利です。
メールとかでもできることですけど、でも会って話すのとでは全く違いますし。
お母さんが仕事でVRを使う理由が、少しわかりました。
「みんなー、体育館には早めに移動してねー」
昼休みが終わる時間が近づいてきたので、黒田先生が集まるように言いに来ました。
午後は終業式とホームルームで終わりなので、みんなもう夏休みモードです。気の早い人はとっくに体育館に行ってるはずですし。
「佐々木さんたちも遅れないようにねー」
「わかりました。真里、行くわよ」
「なんで私だけ呼ばれたうえに引っ張られてるの?」
「スピーカーが動いたほうがみんな動きやすいでしょ」
「宣伝カー扱い! いや行くけどさ!」
真里が動き出すと本当にみんな動き出しました。
見てて面白いですね……。
「あ、新さんちょっといい?」
黒田先生に呼び止められましたけど、なんでしょう?
「変なこと聞くけど、新さんってお姉さんとか妹さんがいたりとか……」
「いえ、いませんよ」
姉も妹も(ぐりちゃんを除けば)いません。でも先生がそんな質問をした理由はすぐにわかりました。
正直『あ、またですね』といった感じですし。
「でも」
「だっ、だよね。なにかの間違いだよね。ごめんね変なこと聞いちゃって。新さんも遅れないでねー」
変なこと聞いて恥ずかしくなったのか、そそくさと去って行く先生。
まだ途中だったんですけど……続きはまた今度話しましょう。
先生が見たのは、多分間違いではないので。
◇◇◇
「碧、ちょっと話があるんですけど」
夕飯が終わって、洗い物して、お風呂にも入って、部屋に戻ってゲームをしようとしたら母から呼び止められました。
何故か、ものすごい笑顔で。
……最初からそんな顔されると不安しかないですね……。
「そんな警戒しなくても大丈夫ですよ」
考えてることを読まないでください。
「碧はこれからゲームにログインですか?」
「そうですけど……ゲームのこと、話しましたっけ」
私がゲームをしているということは、昨日の買い物中に話しました。
でも話したのはそれだけです。オンラインのゲームかどうかなんて一言も話してないに『ログインですか?』なんて。
お父さんから聞いたんでしょうか。
「聞いてませんけど、調べましたので。碧がBLFOのプレイヤーだということは、実は帰ってくる前から知ってました」
なんでそんな事を調べたんですか……というかどうやって知ったんですか……。
「BLFOのデベロッパーに出資してますからね。その運営状況について調べるのは当たり前です」
出資……って、まさかそんな繋がりがあるなんて思いませんでした。それは調べて当たり前ですね。
でも、あれ?
「お母さんの会社、ゲームの会社でしたっけ?」
「今はゲームパブリッシャーに出向してますので」
それででしたか。
「碧がプレイしてるとは知らずに調べてたんですけどね、見たらすぐにわかりました」
現実とゲームの中では外見が多少違うはずですが、何せお母さんですからね。
私だってお母さんを見たら気付くかもしれません。
「でもよく見つかりましたね。プレイヤーの人数は万を超えると聞いてたんですけど」
「新規プレイヤーと復帰プレイヤーが急増する原因になったプレイヤーとして、社内でも有名でしたから。公式イベントをアンカー一人で大逆転した、BLFO最速の鳥族さん?」
ものすご-く、からかうような笑顔で言うお母さん……。
見つかって当然だったようです……。
「デベロッパーも驚いてたみたいですよ。いろんな意味で予想外だったって」
「……聞くのが怖いんですけど」
「そこまで変なことは言ってませんよ。ただ初めての飛行成功者が出るまでに時間かかったということと、その初めての成功者が、あそこまで見事に飛ぶとは思わなかったということ、くらいです」
「時間がかかったのが予想外、ですか?」
飛行方法についてはホーレックに辿り着くまでなんのヒントもサポートも無いようなので、むしろこれくらい時間がかかると予想すると思うんですが。
「新しい街で見つかった練習場のことですね? あれが見つかるまで飛べないのが当たり前じゃないのかと。あれはあくまで飛べない人用のためのもので、本当はもっと早く飛べる人が出てくるだろうと予想してたみたいなんですよ。テストプレイヤーには翼を動かせた方も居たそうですし」
あ、テストで動かせた方は居たんですか。
考えてみれば当たり前ですね。誰一人として成功しないものを宣伝するなんて、さすがにマズいと思いますし。
「とはいえ本当に一人だけだったそうですけどね。しかも翼は動かせたけどまともに飛べなくて、飛ぶというより滑空する程度のものだったそうです。練習場に行ったら飛べるようになったそうですけどね。だから余計に、練習も無しで飛んだ碧に驚いたというのもあるようです」
結局練習場が必要になるんじゃないですか……。
「そんなのでよくそのまま販売になりましたね……アシスト機能を入れようとか、誰も言わなかったんですか?」
「そういう意見はありました。パブリッシャー側から。でもデベロッパーは嫌がったんですよ。『鳥族にだけそんな機能付けたくない』とか、『そんなシステムで飛んでも自分の翼で飛んだ感覚は味わえない。それなら別のゲームで十分だ』とか」
パブリッシャーは売るために機能を付けたい。
デベロッパーは自分たちの作りたいゲームではなくなってしまう。
難しいところです……。
「お母さんでもその意見を通せなかったんですか?」
「私はその意見を突っぱねた側です。コストも増えるし開発期間も延びますから」
お金と時間はどんな仕事でも問題になりますよね……。
「碧は好きになったんですよね、このゲームで空を飛ぶこと」
会社の話から急に私の話になって、仕事用スマイルから優しそうな顔になるお母さん。
「はい。毎日飛んでも全く飽きないくらいには好きになりました」
ただ飛ぶだけ。それだけでも本当に楽しいんです。飽きるなんてあり得ません。
でも、アシスト機能が付いてたらここまで好きになったかどうかはわかりません。
車にも運転をアシストする機能はたくさんあるので、なんとなくわかります。
ABS、横滑り防止装置、車線逸脱防止支援システム等々。軽自動車にも搭載されている当たり前の機能から、高級車にしか採用されていない機能まであったりと、多数存在します。
安全性を向上させるものが多いので大半の人は好意的に受け入れていますが、中にはそんな機能は邪魔だと言い切る人たちがいます。
例えば先ほど挙げた横滑り防止装置。わざとタイヤを滑らせることで行うドリフト走行の邪魔になるため、スポーツ走行を好む人には嫌われる機能です。
一般の人には関係ないじゃないか、と思われるかもしれませんが、車線逸脱防止支援システムについては普通の運転しかしない方から言われました。『勝手にハンドルが動いて気持ち悪い』って。
『未熟な運転を助けてくれる』と取るか『自分の意思を無視して勝手に動かされた』と取るかはドライバー次第。
便利な機能だったとしても、それを気に入るかどうかはまた別の話。人の好みや状況によって、合うものと合わないものがあるということですね。
ではゲームに飛行アシスト機能があったら、どうなっていたか。
そう考えて真っ先に思い至ったのは、初めてスキルを使ったときのことでした。
あの勝手に体を動かされる感覚には、本当に違和感を覚えました。大薙ぎや一突きは簡単な動きなので今はもう平気ですが、流星槍にはまだ慣れません。
もし、アシスト機能がスキルと同じように、勝手に体を動かすものだったとしたら。
本当にそんな機能なのかどうかはわかりません。でもデベロッパーの方が『自分の翼で飛んだ感覚は味わえない』と言うくらいには、空を飛ぶ感覚が今と違っていた可能性があります。
だからこそデベロッパーの方は嫌がった……はずで…………。
そこまで考えて、一つ気になることが出てきました。
「……念のため、確認なんですけど」
「なんですか?」
まさか、とは思うんですが……。
「アシスト機能を反対した理由に、私が含まれてたりとか……」
「もちろん含まれてますよ。碧がどちらを好きになるかわかりませんでしたから」
さすがにそんなはずないだろうと思いつつも聞いてみれば、あっさりと肯定されてしまいました。
気付いてくれたのが嬉しい、そんな笑顔で。
でも、私にはそれをそのまま受け止める事はできませんでした。
アシスト機能が搭載されていたら、空を飛んでも今のような感じではなかった。それこそ他のゲームでも味わえる程度のものだったかもしれない。
仮にそんなゲームだったら、私がここまでゲームを好きになることはなかったかもしれません。
でもアシスト機能があればもっと多くのプレイヤーが飛べていたはずです。
さきほど『復帰プレイヤー』という言葉が出たということは、それなりの人数が一度は離れたということ。
つまり、機能が無かったせいで売り上げは伸びきらなかったであろうということです。
それはお母さんの仕事に影響したということでもあるわけで……。
「私の仕事のことを考えてくれるのは嬉しいですけど、でも私にとってプラスにしかなってませんから、気にする必要はありませんよ?」
私の不安を払拭するように言われましたが、私にはマイナス要素しか思いつきません……。
「まず一番の理由ですが、あのゲームの売り上げで私の評価も上がりました。さっきコストのことを言いましたけど、実はあのゲーム、品質の割に低コストなところが社内で評価されています。鳥族のことで多少プレイヤーが減ったのは事実ですけど大きなマイナスにはなりませんでしたし、それ以外には特に問題は起きていません。BLFOより先に発売されたとある超大作よりも、社内での評価は上ですね」
……多少の売り上げ減少なんて問題ないくらいには、利益が出ているということでしょうか?
「それに鳥族にだけそんな優遇措置をしてたら、絶対に他種族のプレイヤーからクレームが来ます。空を飛べないという鳥族からのクレームは発売当初だけで収まりますけど、継続的なクレームは非常に大変ですからね。超大作のほうはその辺のコントロールが下手で、優遇措置を別の優遇措置で塗り固めるような事になってます。コストがものすごいですし、炎上だって日常茶飯事です」
……そうですね。鳥族にだけそんな機能があれば、絶対に不平不満が出ます。
あくまで全種族公平というスタンスでスタートしたなら、最初は大変でも後々は収まるはずです。
「パブリッシャー側から多少言われることはありましたけど、でもデベロッパー側は喜んでくれましたから、今後の交渉もまとまりやすくなりました。それに発売後しばらくしてから成功者が現れれば、テコ入れに丁度いい話題になりますからね。文句を言ってた人も、今は喜んでます。碧一人のおかげで勝手に売り上げが伸びたようなものですから」
いつの間にか売り上げに貢献してたんですね……。
「飛んだのが碧じゃなくてもこうなることは予想できましたので、こんな展開になるだろうと話をつけてありました。他にもそういったマイナス面がありましたが、全て潰すかプラスに転じるよう対策しておきました。むしろ碧のおかげで予想以上に伸びましたからね。文句を言う人なんて誰も居ませんよ」
……お母さんにとって、悪いことではなかったのはわかりました。
わかりましたけど……。
「会社のほうは大丈夫でも、プレイヤーの中にはショックを受けた人も居ると思うんですけど……」
「全てのプレイヤーを満足させるゲームなんて存在しません。飛べたら飛べたで、今度は上手く飛べないとかクレームが来るだけです。全ての条件を検討して、最後に残ったのが見知らぬ他人と自分の子供なら、こちらを優先するのが親というものです」
確かにそうかもしれませんけど……。
「……まさか、“私だから飛べた”なんて事は、さすがにないですよね?」
「VRゲーム機の仕様上、会社側で個人を特定することは不可能ですから、そんな機能はありません」
安心しました……本当に。
「それじゃあ、私も飛べなかったかもしれないということですね」
「その場合はこれからアシスト機能を実装させるつもりでした」
ダメだったら実装させるって、コストと時間はどこに行ったんですか……というかそこまでしなくても……。
「誰も飛べないまま半年経過したら何かしらの対応を検討する予定になってたので、機能の実装は予定の範疇です。実は碧の登場はギリギリだったんですよね。鳥族の状況をこれ以上放置するわけにはいきませんでしたし、碧があのイベントに出てこなかったら実装を進める方向で話が進んでたでしょう」
あ、そうですね。鳥族は飛べないだけではなく能力面から見ても不遇扱いされているわけですし、何もせず放置するわけにはいきませんよね。
「アシスト機能の有りと無し、碧がどちらを好きになるかわからなかったので、最初は無しにしました。コストや時間といった搭載できない理由もありましたし、アシスト無しを好きになれなかったとしても、後から追加することはできましたので」
最初からアシスト機能があったとしても使わなければいいじゃないか、とも考えますが、そんな機能が有ればきっと使ってたはずです。
多分ですが、初めてログインした日に『鳥族は飛べない』ではなく『アシスト無しでは飛べない』って教えてもらうことになったでしょうし。
アシスト無しを経験するには、アシスト機能が搭載されている状況では難しかったと思います。
「本当は今回帰ってきたときにBLFOをプレゼントするつもりだったんですよ。で、碧が飛べなかったら実装を提案するつもりでした、時期的に丁度いいですしね」
そこまで予定してたんですか……。
「ところが友達に誘われたからとはいえ、まさか碧が自分からゲームを買って、しかも空を飛んでるなんて、考えもしませんでした」
そう口にしながら出してくる、仕事で使うと言っていたVRゲーム機と、仕事には使わないはずのBLFOのパッケージ。
「ゲーム機はともかく、ソフトのほうは無駄にさせてしまいましたね」
「いえ、これは帰ってくる直前に買った物です」
帰ってくる直前? もう私がプレイしてるのは知ってたはずですよね。
「折角なので碧と一緒に遊ぼうと思いまして。呼び止めた本題がこれです」
「そういうことでしたか」
ゲームの話を振られたのでついアレコレ聞いてしまいましたけど、そういえばお母さんの用事についてはまだ聞いてませんでしたっけ。
呼び止めたのは一緒に遊ぶためだったんですね。
「でもいいんですか? 関係者がプレイしても」
「私は口とお金を出してるだけで、細かい仕様まで把握してるわけではありません。管理者権限だって持ってませんし、普通にログインして普通に遊ぶ分には一般のプレイヤーと変わりませんから。私以外にもプレイしてる社員は居ますしね。でもゲームの中では秘密にして下さいね? 関係してるというだけでもアレコレ言われますから」
特権もないし、一般のプレイヤー以上のことは知らない。
それなら大丈夫でしょうか?
「今日の予定は特に無いので、ずっと付き合えますよ」
問題が無いのならどうこう言う必要はありません。
お母さんとの時間が増えるのはいいことです。VRゲームならお母さんが家に居なくても一緒の時間を過ごせますし。そういえば黒田先生とレイチェルさんも似たような理由なんでしたっけ。
親とゲーム、なんて嫌がる人も多そうですけど、私は嫌ではありません。喜んで一緒にプレイします。
「ありがとうございます。それじゃ早速始めましょうか」
「はい。キャラクターの作成は……もう終わってますよね。名前はなんですか?」
これから作成ですねと言おうとしたら首を振られました。
最初から遊ぶつもりだったら当たり前ですね。何も知らなかった私とは違うんですし。
「ゲームの中では鳥族で、名前は“シオン”です。よろしくお願いしますね、イオン」
「……わざと似せましたね?」
「ふふっ」
笑って誤魔化さないでください。
どうしてそんな事したのかは予想つきます。
名前を似せたということは、鳥族のシオンはああなってるんでしょうし。
ゲームの中で皆さんに説明するのが大変そうですね……。
今から考えても仕方ないので、とりあえずログインしましょうか……。
お母さん、ではなくシオンのこともあるので、今日は拠点ではなく結界石の広場にログイン。
同じタイミングでログインしたプレイヤーは他にも居ましたけど、シオンの姿はすぐに発見しました。
私にとっては間違えようがありません。
「予想はしてましたけど、やっぱりなんですね……」
鳥族になったシオンを見て小さく溜め息を吐いてしまったのは、きっと仕方のないことだと思うんです……。
リアルでは夏休みシーズンが終わったのに作中ではこれからという……。
S社でSシリーズを作ってる某氏がとあるゲーム情報サイトのインタビューで『万人を納得させるものは作れないのだから(以下略』と発言してる記事がありましたが、あれと紫さんのセリフは関係ありませんので! それを見る前にここは書いてたんで!
それはそうと新作期待してます。
Q:ABSって何?
A:アンチロックブレーキシステムの略。現在売られているほとんど車に付いてる定番装置。教習所でも習うような気が。読んで字の如くタイヤをロックさせないためのもの。走行中にタイヤがロック(回転してない状態)するとステアリング操作もブレーキ操作も効かなくなってしまうので非常に危険。なので全力でブレーキを踏んでタイヤがロックしても、ロックした瞬間に油圧を抜いてロックを解除する。普通に乗ってるとABSは動かないので、そういえばそんな機能あったなーって人も多いかと。
Q:横滑り防止装置って何?
A:これも字面の通りですね。旋回時にステアリングの切れ角以上に旋回してしまっている場合(いわゆるオーバーステア)や、逆に旋回できていない場合(アンダーステア)に、四輪それぞれのブレーキを自動的に制御したりエンジンのパワーも制御して、車両の挙動を安定させる装置。なのでドリフトとかしてたらそれを抑えようとしてしまう。大半の車がこの装置を停止できるようにはなってるので、搭載車両でドリフトしたいなら止めればいいんですけどね。ちょっと高めの車(安い車種でも上のグレードになるとあったりする)から搭載される装置。
Q:車線逸脱防止支援システムって何?
A:車線を外れないように自動でステアリング操作をサポートする機能。サポートだけなので自動運転ではない。作動最低速度が決まっているのでどんな道でも作動するわけではない。使用するには自分からオンにする必要があるので、気に入らなければオンにしなければいいだけなんですけどね。(エンジン始動直後はオフになってないとダメって国交省が定めてるらしい(wikiより)。そんなものだと思ってたけどメーカーごとに違うのかと思ってた……)
横滑りと車線逸脱が日本語表記なのは、登録商標の関係で各社名前が違うため。ABSは商標権が切れてるらしいです。大変ですよねそういうとこは……。
こんな引っ張り方しておいて申し訳ございませんが、明日の投稿は難しいかもです……、