12-9 嗚呼すれ違い。
ホーレック南の門から入って、南北に通るメインストリートを真っ直ぐ北へ向かいながらエレノアさんに街を案内して頂きました。
言われた通り見た目は他の街と全然違いますが、中身は普通の街です。
考えてみれば当然の話なんですけど、やっぱりこうも見た目が違うと意外に感じてしまいます……。
他の街と一番違うのは、戸建ての家が少ないことだそうです。木の上半分は○○さんが住んでて、下半分は△△さんが住んでる、とか。お店が数件まとまってる木もありました。
一本の木が一つのビルのような感じでしょうか。集合住宅とかそういう風に考えるとわかりやすいかもしれないですね。
街の中心部には、他の街と同様に結界石の広場。
今は広場を通り過ぎて、さらに北へ歩いています。
「正面に大きい木があるだろう。見た目は凄いが、実は何にも使われていない」
「え、そうなんですか?」
メインストリートのど真ん中に、一際大きな巨木が立っています。
まるで結界石の広場のようにそこだけ開けているので、てっきり何かの重要施設とか、そんなのが入っているかと思ったんですけど。
「当初はあの中に結界石を設置しようとしたそうだが、木を削るのが大変だったため廃案になったそうだ」
それでこんな位置にあるんですか……。
「引き抜いてしまうには大変すぎるし、かといって無理にどうこうする理由もないから放っておかれている。というか、ここより北側はあまり利用されてない区域でな。畑と空き地がほとんどだ」
言われてみれば、あの木を境に人通りが減ってますね。
「だが、鳥族の者には重要な場所でもあるんだ」
そう言うエレノアさんの言葉は含みがあるというか、隠し事を言いたくてたまらないというか。
何か面白いものでもあるんでしょうか?
でも鳥族に限定する理由って何でしょう……?
疑問を感じつつも大きな木を迂回しさらに北へ向かって歩いていると、すぐにその理由がわかりました。
そこかしこに見える、多数の鳥族。
しかもそのほとんどが、子供。
「……もしかして飛ぶための練習場、ですか?」
「ああ、その通りだ」
どこか自慢げなエレノアさんの返答も右から左へ流してしまうくらい、目の前の光景に釘付けになりました。
私よりも小さい、多分小学生くらいの子が中心の、多数の鳥族。
そんな子たちが地面の上で羽ばたく練習していたり、木の上から飛び立つ練習をしていたり。
ちらほら見える年長者は、飛び方を教えるように先導する子も居れば、うしろから声をかける子も居たり。
楽しそうだったり真剣だったり、みんな思い思いに翼を動かしていました。
「この辺りは人が少ないからな、空を飛ぶ練習に丁度いいんだ。自分一人で満足に飛べるようになるまで、ほとんどの者がここで練習する」
そういえばここに来るまでに見た飛んでる鳥族は、大人の方がほとんどでした。子供は中学生以上くらいからで、もっと小さな子供は歩いてましたし。
街中だと何かあったら他の方の迷惑になるかもしれないですし、しっかり飛べるようになるまでは仕方ないですよね。
でも落ちたら危ないのはここでも一緒だと思うんですけど、大丈夫なんでしょうか? 今練習してる子たちにもかなり危なっかしい子が、あっ。
「エレノアさん、落ちそうな子が居るんですけど」
ものすごいフラフラしてて、今にも失速しそうです。
「ん? あれか、補助具があるから大丈夫だ。……もしかして異世界には無いのか?」
……補助具?
というと、もしかして。
「落ちても安全な道具……魔道具があるんですか?」
「そうだ。見ていればわかる」
フラフラしていた子をそのまま眺めていると、失速はしないものの持ち直すことはできず、どんどん高度を下げて……あ!
ある程度高度が下がったところで薄い膜のようなものに包まれて、そのままゆっくりと地面に下りてきました!
「決まった高さまで高度が下がると魔道具が発動して、ああやって安全に地面に下ろすようになっている。例え高速で落下してきても、一旦その高さで停止するようになっているからな。墜落することはない」
「もしかして、ここに居る全員が付けてるんですか?」
「それが決まりだからな。付け加えると、補助具を付けた者同士が近づきすぎても魔道具が発動し、接触を防ぐようになっている。だから余程のことがない限りは大丈夫なんだ」
落ちても安全なうえ、接触もしない。
よく考えられてます……。
「人にはぶつからない代わりに木にはぶつかるんだがな。ある程度の怪我は勉強のうちだ」
さすがに完璧な安全なんてありませんよね。
それに木にもぶつからないようにしたら、この街で飛ぶのは非常に大変そうです……と、あれ?
「……あの、あっちの子たちは……もしかして……」
「ああ、レースを始めたようだな」
「やっぱりですか!」
北門の手前を二人の子が随分と速いスピードで飛んで行ったので、もしかしてと思いましたがやっぱり競争してるんですか!
「ある程度飛べるようになったら、技術向上の意味でも競わせることにしているんだ。何か目標があれば、練習にも力が入るからな」
そうですねっ、しかもスピードなんてわかりやすい基準だから尚更力が入りますよねっ。
「興味があるか?」
「それはもうっ」
今まで特に考えてませんでしたけど、見た瞬間にやりたくなりました!
公式イベントのリレーも一応競争でしたけど、あれは私と他の方では土俵が違いましたし。
でもここなら同じ条件で競えますっ。
やっぱりスピードを出したいのは私だけじゃないんですよっ。折角飛べるんですから速く飛びたいんですよ!
――私は何も言ってませんですの。
ただの独り言ですっ。
いいですね……私もやってみたいです……。
「……良かったらだが、私と飛んでみるか?」「いいんですか!?」
遠慮なくお願いしますよ? 本当にお願いしますよ?
「ず、ずいぶんな食いつきだな。ただ速さを競うだけだろう?」
「そうなんですけど、今まで競える方が居なかったので……」
飛べる人はいませんでしたし、さすがに魔物相手に競争なんてしたくありませんし。
「そういえば……異世界の鳥族は飛べない者が多いと聞いた気がするな」
「今のところ私だけらしいです……」
飛べない人が多いどころか、確認されてるのは私だけですからね……。
「なので速いとか遅いとかわからないので、無謀かもしれないんですけど……」
生まれながらの鳥族の方とは勝負にならないかもしれませんけど……でも、やってみたいんです。
「先ほどの戦いを見たからわかるが、イオンは決して遅くはない。戦闘とレースはまた違うが、全く勝負にならないということはないだろう」
「……本当ですか?」
「本当だとも。でなければワイバーンから逃げられないからな。正直なところ戦闘では敵う気がしないが……速さだけなら私もそれなりに自信があってな。そう簡単には負けんぞ?」
ニヤリとした表情で、「どうする?」と言うエレノアさん。
……もしかしてこれって、挑発されてるんでしょうか?
――もしかしなくて思いっきりされてるですの。多分ですが戦闘では敵わないからこっちで勝とうとケンカ売られてるんですの。
……本物の鳥族の方から、速さで?
――そうですの。
さすがに本物の鳥族の方には敵わないと思うんですけど……。
――でも、やってみたいんですわよね?
……はい。
無謀だと思いますけど、でも速さを競えることなんてなかったので……。
――平和的な争いですから、楽しむつもりでやればいいですの。
……それもそうですね。危険なことではないんですし、難しく考える必要なんてないですよね。
では。
「エレノアさん」
「やめておくか?」
またしても誘うような言葉ですが、返答はもちろん決まっています。
「是非、レースさせてください」
真っ正面からお返しして、勝負させて頂きます。
無謀かもしれませんけど、やるからには全力でいきますよっ。
レースをすることが決まったので、まずはコースの確認とルール説明をして頂きました。
ホーレックは上から見ると四角形の形をした街です。これはルフォートも同じですね。
スタート地点は街の北西、城壁の角から東に向かってスタート。
北側の城壁に沿うように飛んで、まずは北東の角へ向かいます。
北東の角で第一コーナー、城壁の内側にある木を回って、今度は南西方向へ。
次は結界石の北、来る途中で見たメインストリートにある巨木が第二コーナーになります。巨木を回ったら、今度は北西のスタート地点へ。
先にスタート地点へ戻ったほう勝ちとなります。
コーナーは二つだけ。上から見ると三角を描くように飛ぶ、たったそれだけのコースです。
ですが進路上には木がたくさん生えてますので、ただ真っ直ぐ飛ぶことはできない区間があるそうです。
最短ルートにこだわろうとすると木をたくさん避ける必要があり、スピードが落ちる。
スピードを落とさず飛べるルートを選ぶと、大回りになってしまう。
速さだけではなく、どのように飛ぶかも重要になっているとのことです。
次にルールです。
魔法や道具の使用は全て禁止。これは当たり前ですね。
ですが進路妨害はアリです。
良いルートは先に取った者勝ちということですね。
そして重要なのが、飛行補助具を付けて飛ぶということ。
補助具が発動した時点で失格になります。
これは事故防止の意味もありますが、それとは別に妨害の抑制と、最低高度の設定ができるんだそうです。
直接蹴ったり殴ったりして妨害しようにも、近づけば補助具が発動して失格になる。
枝を避けようと高度を下げすぎると、やっぱり失格になる。
高度を下げすぎると、地上を歩いてる人にぶつかって危険ですからね。
そのための補助具装着となります。
ルールはこれだけです。
補助具以外は当たり前のルールばかりですね。細かいことは気にせず、とにかく速く飛べばいいので安心しました。
あ、もう一つルールがありました。
最高高度は『木のてっぺんより高く飛んではいけない』、です。
曖昧な感じに聞こえますが、こちらは数人で監視するそうです。
と言っても普段はは二、三人程度のレースなので、普通に見ていればすぐ不正がバレるから監視員は必要ないそうですが、今回は用意することになりました。
いつの間にか、二、三人程度のレースではなくなっていたので……。
「エレノアさーん、このお姉ちゃん速いのー?」
「まだわからん。だがワイバーンをあっという間に倒していたぞ」
「「「「「おお~」」」」」
「しかも二匹同時にだ!」
「「「「「すげー!」」」」」
「これからレースをするのだが、お前らもするか?」
「「「「「するー!」」」」」
というわけで、練習していた子たちのほとんどとレースをすることになりました。
十人以上居ますけど大丈夫でしょうか……?
「あまり気にする必要はない。遠慮なく置き去りにしてやって構わんからな」
「いいんですか、それは……?」
「私がよくやっているからな。ついでに言えば私もよくされた」
そ、そうですか。
「冗談だ。同時にやったほうが準備の手間が少ないからな。速い者は速い者と競って、遅い者は遅い者同士で競うというだけだ」
そういうことでしたか。
車の耐久レースとかで、各クラスが同時に走るのと一緒ということですね。
「準備に少し時間がかかるからな、イオンは今のうちにコースの下見をしてくるといい。誰か案内してやってくれ」
「あっ、私やります」
手を上げてくれたのは、十歳くらいの女の子です。
どこか落ち着いた印象の子ですね。なんとなくエプロンが似合いそうな。
「ミーアか。丁度いい、あとで店に寄るところだったんだ」
「いつもありがとうございまーす」
店に寄る? もしかしてロールケーキのお店でしょうか?
お店のお手伝いとかでエプロン付けてそうですね。
「私ミーアって言います。それじゃイオンさん、こっちです」
「お願いしますね」
ミーアさんに連れられて、まずはスタート地点へ。
「……ところであの、聞いてもいいですか?」
の前に質問が入りました。
「その肩に乗ってる子なんですけど……」
私のことはエレノアさんから紹介されましたけど、ぐりちゃんのことはまだでしたっけ。
「この子は私の契約精霊です」
「グリーンと申しますわ。どうぞよろしくですの」
「わっ。あ、あの、ミーアです」
ミーアさんの前まで飛んで行って、目線を合わせてから挨拶するぐりちゃん。
いつも通り、スカートをつまんだ淑女の挨拶です。
「精霊って初めて見ました……こんなに小さくて可愛いんですね……」
「お褒め頂きありがとうございますの。精霊はいろいろな姿ですから、全てが私のような姿をしているわけではありませんわ」
「大人と同じような姿の精霊も居れば、動物の姿をした精霊も居ますよ」
「ホントですかっ? グリーンさんがこんなに可愛いなら、きっと他の精霊も可愛いですよね。見てみたいなぁ」
森と海の精霊さんを連れてくることは出来ませんけど、山脈の越え方がわかればフミちゃんを連れてくることは出来ますしね。
ロールケーキのお店にはアヤメさんも買いに行くでしょうし、そのときに撫でさせてくれると思います。
「ねぇミーア、その小さい子は?」
「イオンさんの契約精霊なんだってっ。可愛いよねー」
「えっ精霊? すごーいっ」
スタート地点が見えてきた辺りで声をかけてきた、ミーアさんのお友達。
その子もミーアさん同様、ぐりちゃんの姿を見て素直に驚きの声を上げました。
それを聞いたぐりちゃんは今まで以上に気をよくしてご挨拶。
いつになくご機嫌です。
これが、苦難の始まりだとも知らずに……。
レースのスタート地点は街の北西、城壁の上からとなります。
城壁は他の街と違って木製ですが、構造は変わりません。城壁の上は人が通れるようになっていて、両側の壁に凸凹が作ってあります。オシロスコープで見る矩形波みたいに。……この凸凹って何の意味があるんでしょうね?
スタートはその壁を蹴って飛びます。
基本的には全員一斉にスタートしますが、今回のように誰かと誰かが勝負するとわかってる場合は、その人たちを優先的にスタートさせるんだそうです。
「今回はエレノアさんとイオンさんの勝負なのでお二人からスタートです。でもスタートしてしまったら優先とかありませんから、後ろの人も抜きにかかってきます」
「あくまで先頭でスタートさせてもらえるだけ、ということですね」
「はい。でもあまり気にしないでください。そんなに速くない子ばかりなので、まず追いつけませんから」
レース中は後ろを気にしなくても良さそうです。
安心したところで、実際にスタートの練習。そのままミーアさんと一緒にゆっくり飛びながら解説してもらいました。
まずスタートしたら壁に沿って真っ直ぐ東へ。
障害物のない直線なので、スタートの加速力とトップスピードの勝負になりそうです。
北東の角まで来たら第一コーナー。城壁内側の木を回ります。
次は南西方向に向かうので、かなりキツいコーナーになりますね。
ストレートが長くスピードが乗るので、行きすぎて城壁にヒットしないように気を付けましょう。
無事曲がったら南西方向、メインストリートにある巨木を目指しますが、今度はただ真っ直ぐ飛ぶことはできません。
密集、というほどではありませんが、それなりに木が生えてるので左右に避けながら飛ぶ必要があります。ここはスラローム区間ですね。
最短ルートを飛ぼうとすると何度も避ける必要がありますが、真っ直ぐ飛べないのでスピードが落ちてしまうでしょう。
避ける回数を抑えると最短ルートを飛べないので、余分に飛んでしまうことになります。
その辺の判断が重要になりそうです。
第二コーナーの巨木を回ったらゴールまで向かうだけですが……巨木からゴールまで、枝がものすごく密集してます。
今は地面におりて下から見上げてますが、日があまり射さないくらい枝で覆われて見えます。
ここ以外はそんなことないので、そっちは剪定してあるんでしょうね。
ここが放っておかれているのが何故かはわかりませんが……いえ、下が畑みたいになってます。ただ雑草が生えてるだけにも見えましたが、よく見ると畝が作ってありました。
日光を適度に遮りたいから、なのかもしれないですね。
とにかく枝が多いので、第二コーナーからゴールまで真っ直ぐ飛ぶのは難しいです。飛ぶにしても、ゆっくり飛ぶ必要があります。
左右に避けるだけではなく、今度は上下も必要……というかまともに飛ぶのはかなり大変そうなので、迂回したほうが正解かもしれません。
畑があるなら無理に飛んで枝を折ってはいけないでしょうし。
「ここは左右どちらかに迂回する人が多いですよ。左は枝が少ないですが遠回りになります。右は枝が多いですが近いです。もちろん距離が短いのは真っ直ぐですけど……」
「スピードも落ちるし危険、ということですね」
「です」
やっぱり迂回するのが安全のようです……。
「……ところで、大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ」
迂回する方向を確認していると、心配するような声をかけられました。
主語が抜けてますが、視線が後ろに向けられているので何を指してるのかはすぐにわかります。
レースのほうは大丈夫かわかりませんが、あっちは大丈夫なので。
「可愛い~っ」
「素敵な服~」
「髪サラサラ~」
「ほっぺぷにぷに~」
「撫で心地最高~」
「貴方たちいい加減にするですのーっ!!」
ミーアさんのお友達に捕まって、ずーっと可愛がられてるぐりちゃんです。
可愛がられすぎて揉みくちゃですね。今まで見たことないほど弄ばれてます。
「ああ見えて怒ってるわけではないですから。それなりに楽しんでるみたいですし」
本当に怒ってたら、すぐ器に逃げ込むはずなので。
「淑女の顔をそんなに触るんじゃありませんはしたない! きちんと段階を踏んでまずは手を握るところからですの! 髪はもっと流すように触るですの強すぎると傷みますわ! そこっ、スカートにシワが寄るですのもっと丁寧に扱うですの! 私のような淑女を目指すならもっと頑張るですの!!」
「「「「「はーいっ」」」」」
怒るどころか教育してました。
「精霊さんってすごいんですね……」
「概ね同意します」
他の精霊が同じ目に遭ったらどうなるかは知りませんけど。
フミちゃんだったらひたすら撫でられっぱなしですね。撫でるほうも撫でられるほうも至福なので全く問題ありません。
「戻ってきたか、コースの確認は大丈夫か?」
「はい、ミーアさんにしっかり解説して頂きましたので」
スタート地点に戻ったら、既にエレノアさんが待ってました。
他の参加する子たちも揃ってきてるので、そろそろ開始ですね。
「そうだ、よければ何か賭けるか」
「賭けですか?」
自警団の人が賭けなんて大丈夫なんでしょうかと思いましたが、周りの子たちの声を聞いてるとそっちでも何か賭けてるようですね。
飴玉みたいなのを集めてる子が居るので、多分お菓子が賭け金です。
「娯楽の少ない街だからな、機会があるとすぐこうなる。現金は禁止だがな」
さすがに現金はダメですか。
「だが食事代程度なら問題ない。このあとに行く店の支払いを持つということでどうだ? 無論、土産代も含めてな」
「やります」
即答です。
別にお金に困ってるわけではないんですが、タダとなると妙に嬉しいのはどうしてなんでしょうね?
とにかくやるからには本気でしたが、一層やる気になりましたよっ。
「言っておいて何だが、負けると大変そうだな……まぁ、撤回するつもりもないが」
「私もです」
いい具合にお互い気合いが入ったようです。
「エレノアさーん、イオンさーん。準備できましたよー」
「では行くか」
「はい、よろしくお願いします」
ミーアさんに呼ばれて、スタート位置につきます。
位置に着いたところでぐりちゃんはミーアさんのところへ。アドバイザーが居ると不公平なので。
「勝負は一周、先にここに戻ってきたほうが勝ちです。準備はいいですか?」
「ああ」
「大丈夫です」
顔を見合わせ頷き合い、体勢を前傾させます。
「それでは全員、位置についてっ」
うしろで他の子たちもスタート体勢に。
「よーい」
それでは初めての飛行レース、
「スタートッ」
目一杯楽しみますよっ。
6/8 6/9 誤字修正しました。
唐突にエアレースどうこう言い出したのはこれがあったからだったり。
気付かれた方も多かったと思いますが。
カーレース用語(?)とエアレース用語(?)が混ざってるのは気にしない方向で……。
Q:耐久レースで各クラスが同時に走るのってなんで?
A:なんででしょうね?(オイ
一回スタートしたら八時間とか二十四時間とか走りっぱなしのレースなのにクラスごとにやってたら何日かかるかわからないからとか、追い越しのシーンが少なくて見てて面白くないとか、まとめたほうが集客もいいとか、その辺だと勝手に思ってます。
関係ないですがもうすぐル・マン24時間が始まりますね!
Q:オシロスコープって何?
A:電圧とか周期とか調べたりする計測機械。『今夜が峠です』って医者から言われた患者さんの部屋でピッ、ピッ、って音出してる心電図みたいなマシーン。
これがあるだけで研究室っぽい雰囲気になるのでインテリアとしても使えるスゴイアイテム。
オシロについては電気系の勉強した人のほうが詳しいかと。
Q:矩形波って何?
A: ̄|_| ̄|_| ̄←みたいな形をした波形のこと。方形波とも呼ぶ。綺麗に波打ってるのは正弦波。どうしてこんな波形になるかは各自調べてください!
Q:そんな波形がどうとか、車に関係あるの?
A:各センサーが正常に動いてるかとか結構調べられます。オシロじゃなくて診断機械で読み取れるので、そっちで調べるのが主流(のはず)。
Q:スラロームって何?
A:右に左に蛇行しながら進む区間みたいなやつ。スキーの回転競技みたいな。
あと二輪免許を取得する際の難関らしいです。
Q:最近私の出番ないなって思ったら一気に増えたんだけど?
A:このために控えてたんで。でもすぐに減るから大丈夫。
Q:読者的には良くても私的には良くないぞおい?