12-2 嗚呼すれ違い。
12-2
イオンの視点になります。
メグルさんの再登場はきっと忘れた頃に(ぇ
前半は説明回になってるので、面倒な方は◇◇◇まで読み飛ばしてください。
後書きに簡単説明を入れておきます。
青。
目に映るもの全てが青い世界。
上は空。雲一つない、蒼穹の世界。
下は海。静かに凪いだ、紺碧の世界。
そんな場所で、なんの憂いもなんの気兼ねも無く飛び回れる。
となれば、私の心は決まっています。
気持ちいいですーーーっ!!
パリカルスから飛び始めて湾を抜けて、東に向けて海の上を真っ直ぐ飛んでます。
やってることはそれだけです。
でも最高ですっ!!
海面近くを飛んで海の中に手を突っ込んで冷やしたり、時々風に任せて高度上げて、わざと失速させてたり海面ギリギリで持ち直したり。
ひたすら好き放題飛べるなんて本当に気持ちいいです!
――今日は止めませんから、思う存分どうぞですの。
止められても今日は聞きませんからねっ。
――そんなにも楽しそうなお姉様を止めるなんて、無作法以外の何ものでもありませんの。
さすがぐりちゃんです!
――海に飛び込まないようにだけ気を付けるですの。
わかりましたっ。
ぐりちゃんの言葉に応えつつ、今度は高度を上げていきます。
最近戦ってばかりでしたから、今日はひたすら飛ぶんです!
こないだブレイズロードを攻略して、あれこれしているうちに結構な日数が経過してました。
ですがそのあいだ、何だかんだと戦ってばかりの日が続いてたんです。
まずブレイズロードにもう一度行きました。
プルストさん用の封石を取りに行く必要がありましたので、これは予定通りです。
初めて行ったときより人数は減りましたが、でも魔物は全て知ってる相手ばかり。
特に問題なく攻略成功しました。
ゲイル山にも行きました。
ロロさんと時間が合う機会があったので、折角なのでと行くことになったんです。
でも二人だけではありません。プルストさんとキイさんも居ました。
新しい剣を作るためにバトルデイズに来ていたプルストさんたちと、ばったり会ったからです。
その場でレイチェルさんに言いくるめられ……ではなく説得されて、四人で行くことに。
二人だけなら途中で帰ろうと思ってましたが、四人だったので結局攻略してしまいました。
ブレイズロードでロロさんがエレメントゴーレムの弱点を見つけてなかったら、絶対無理でした。それぐらい危なかったです。
人数が少ないのに攻略してしまったので、レイチェルさんは呆れてましたけど……。
マリーシャたちとクエストに行ったりもしました。
パリカルス周辺で魔物討伐のクエストを中心にこなして、レベルアップと素材集めです。
少し厳しいところを中心に選んでたので、みんな何度もやられそうになってました……。
そして何故かもう一度ブレイズロードです。
行く予定は全然ありませんでしたが、ちょっと状況が変わりまして……。
原因となったその日は、エスのメンバー全員が揃ってただけの普通の日でした。
話しの流れから、なんとなくクラン用のクエストを受けることに。
内容は範囲の広い防衛クエストです。あっちに行ってこっちに行ってと結構忙しいものでしたが、クエスト自体は問題なく成功。
ですが、プルストさんがものすごく凹んでしまいました。
無理もありません。その日出来上がったばかりの新しい剣が、修復不可になってしまったんですから……。
当然ですが、新しい剣は封石を素材にした、魔法付与のできる剣です。
そのうえキイさんから譲ってもらった一級鉄鉱石も使用したので、剣としての性能も折り紙つき。
『魔法付与したらどこまで強くなるか試してみようぜ!』というプルストさんと、『ブーストかけたらどこまで強うなるんかなっ』というアヤメさんの意見が一致。
フミちゃんブースト付き全力魔法を剣に付与し、そしてプルストさんがクエストのボスに全力のスキルで攻撃。
ボスは倒しましたが、剣も壊れた、というわけです。
このゲームの武器防具の破損システムは、少々ややこしいことになっています。
まず破損にはいくつかの段階があります。
全ての装備は初期の耐久値が400ポイントあり、100ポイント減るごとに破損が進行。
400から300までは無破損、300以下は小破損、200以下は中破損、100以下で大破損、となります。
耐久性の高い装備ほど数値が減りにくいですが、どんな装備でも無茶な使い方をすると大きく減ります。
武器の攻撃力は小破損で元々の70%、中破損で50%まで低下。
破損度に応じて、見た目も変化していきます。
とはいえ中破損までは見た目の変化はものすごく小さく、『よく見ると少し刃こぼれしているかな?』程度なので、攻撃力はともかく使用するだけなら大きな影響はありません。
そのせいで過去の私も破損に気付かず、【冒険者の鉄槍】を大破損させてしまった。というわけです。
その大破損ですが、こちらは攻撃力が一気に5%まで低下します。
そのうえ折れたりヒビが入ったり、見た目にも大きな変化があり、はっきり言って使い物にならない状態になります。
多分これ以上は使えないから諦めろという意味なんでしょうね。お金はかかるけど修理は可能だから、もう使わないほうがいいですよ、という。
大破損しても使い続けて耐久値が0になると、修復不可になってしまうからです。
防具の場合も基本的には武器と同様ですが、見た目の変化については違います。
助かることに、大破損や修復不可になっても見た目の変化はかなり小さいそうです。
なので万が一にも服が大破損して……なんていうことはありません。知らなかった頃は、その辺のことで不安に思いましたっけ……。
知らなかった頃、で思い出しましたが、私が装備を作ってもらったばかりの頃、ゲイル山攻略後に槍を修理したとき30破損していたと言われましたが、これは400中の30です。
ダンジョン一つで30が多いのか少ないのかはよくわかりませんが、このゲームではダンジョン一つで100減るくらいの武器を持つのが主流なんだとか。
耐久性はダンジョンの最後まで最大の性能を発揮させる程度にして、あとは攻撃力とか軽さとか、別の部分に性能を振るのだそうです。
オーダーメイドの場合も、既製品を買う場合も、それが一つの基準だと言われました。
なのでこのゲーム基準で言うと、私の槍は本当に耐久性重視で作られているということになります。
重視しすぎ? そんな事はありません。壊れないというのは安心して使えるということ。非常に重要なことです。
いつトラブルに見舞われるかわからない旧車に乗るのに、それなりの覚悟が必要なのと同じこと……何か違う気もしますね。
燃費の悪い車で高速道路に乗るようなもの、ですね。そう簡単ガス欠しないと思われるかもしれませんが、給油ランプが点灯した頃に運悪くガソリンスタンドの無い区間に入ったりしたら……という話は、何度か聞きましたので。
ただ私の槍の場合、本当は……、
『本当はダンジョン一つで5~10程度の減少を想定して作ったのよね。初心者って無茶な使い方するし、ついメンテのこと忘れちゃうから念には念を入れるつもりで。今となっては正解だったんだけど』
とレイチェルさんに言われてしまいました……つまりそれほど無茶な扱い方をしていたと言うことですね……。
頑丈に作ってもらったのは本当に正解でした……。
あ、でも最近はそこまで破損させてないって褒めて頂きました。強化させたからというのもありますが、それ以上に武器の使い方が上手くなってるって。
振り方一つで変わるそうなんですよ。その辺がダントツで上手なのは、予想通りというか、プルストさんだそうです。
普通の人以上に攻撃力重視にしても大丈夫なんだとか。さすがです。
だから今回の剣も、耐久性より攻撃力を重視してしまったそうなんですよね……。
そのプルストさんの新しい剣は、最終段階の修復不可。
たった一撃で、小破損、中破損、大破損を通り越して、です。
新しい剣は、僅か一日で二度と使えなくなってしまったんです……。
あまりに落ち込んでたのでさすがにアヤメさんも悪いと思ったらしく、ブレイズロードをもう一度攻略することになりました。
プルストさんの落ち込んだ姿を見てると、新車納車後、わずか二時間で全損事故したお客様を思い出すほどでした……。
その後の調査で判明したんですが、どうも魔法付与は威力が大きくなる分、武器に対する負担も大きくなる、ということのようでした。
考えてみれば当たり前ですよね。車がスピードを(法定速度を無視した人には言えないような数字で)出せば燃費が悪くなるのと一緒です。威力の大きい攻撃が、なんのリスクも無く使えるはずありません。
当然と言えば当然のことなんですが……いろいろ試す前に壊れてしまいましたからね……。
そういった魔法付与に関する細かい調査は、実は私が協力しました。
ゲイル山に行って手に入れた封石はロロさんが入手して、レイチェルさんの買い取りという形になっていたんですが、それを私の槍に合成することになったんです。
作る度に壊すわけにはいかないから、各種テストをして魔法付与の特性を確認したい。でもテストのためだけの装備を作って使い捨てるにはもったいない素材。
という理由から私の槍に合成することになりました。もちろん封石は私が買い取って、です。
私の槍は耐久性重視ですからね。そういう調査にはうってつけです。
ナイツオブラウンドにも魔法付与の出来る武器があったそうですが……。
はい、過去形です。強くて便利だからと使っていたら、こちらも壊れてしまったそうで……なので調査には使えなかったんです。
ナイツオブラウンドの件もあり、しばらくは封石を素材にした装備の作成、合成依頼は断ることにしたんだそうです。
作った装備が次から次へと壊れてしまうなんて、信用問題ですからね……。
私に調査協力をお願いされた理由は他にもありまして、それは封石を複数手に入れていても不思議ではないから、だそうです。
調査だから誰でもいいとなると、それを知った人で争奪戦というか喧嘩になるかもしれない。でも私だったら誰も文句言わないし、むしろ納得する。と言われました。
自分ばかり得している感はありますが、レイチェルさんだけでなく偶然来ていたマスグレイブさんも頷いてたので、多分大丈夫なんでしょう。
それでレイチェルさんから言われるまま、試し切り用の的を切ったり魔物を切ったり、テストを行うことになりました。
その結果わかったのが、
・付与できる魔法は封石と同じ属性の魔法のみ。
・一撃で効果は切れる。連続で攻撃しても、最初に命中する一発目にのみ効果がある。
・魔法の違いによる効果の違いはない。変わるのは威力だけ。
・回復や防御魔法など攻撃以外の魔法を付与しても、攻撃力に変換される。
・魔法の威力は増幅されるため、普通に魔法を使うより威力が大きくなる。
・もとの魔法の威力が大きくなるにつれて、武器に対する負担も大きくなる。
ということです。
武器に対する負担がどれくらいかという一例を出すと、ぐりちゃんブースト付きウィンドカッターを付与した場合で、約十回の攻撃で小破損することが判明しました。
この数字だけ見ると、多いのか少ないのか判断のわかれるところかもしれません。
ですが私は魔法専門職ではありませんし、槍も耐久性重視で作られています。
しかもこの数字は地面に立って攻撃した場合です。空を飛んでスピードブーストのかかった攻撃をすると、一気に半分程度になります。
プルストさんの剣が壊れたときは、アヤメさんのブースト付き全力魔法と、プルストさんの全力の攻撃スキル。しかも剣の耐久性は平均以下で、相手はクエストのボス。
もちろんボスと戦うまでのクエスト中もその剣を使ってたので、耐久値はそれなりに減ってたはず。
そんな状況で、そんな全力攻撃をしたら……。
壊れてしまうのも、無理ないわけです……。
魔法付与は、一回攻撃を当てるごとに効果が切れます。
なので気を付けるべきは、本当に一撃だけです。
ですが魔法付与重視で耐久性を上げれば、攻撃力などその他の面が犠牲になる。
そちらを重視したら、魔法付与の回数は減ってしまう。
非常に難しいものだということが判明しました。
◇◇◇
そんなこんなで調査が終わったら今度は実戦で試そうとなって、エスの皆さんで討伐クエストに行ったりダンジョンに行ったり。
ロロさんと魔物を狩ったり、もちろんマリーシャたちともクエストに行ったり。
といった感じで、ここしばらくは戦うこと、それに関係したことばかりの日が続いていたんです。
それも楽しかったのは事実ですが、ですが飛ぶ時間が減っていたのも事実です。
だから今日は飛ぶんです!
海を見たときからずっとこうしたかったんです、今日くらいはずっと飛ぶんです!
思いっきり飛ぶんですッ!!
高かった高度を一気に落とし、今度はまた水面近くへ。
海に突っ込むギリギリで持ち直し、全力加速。
何度も羽ばたき、どんどん上がっていくスピード。
スピードはどんどん上がってるはずなのに、そのスピードを感じさせない凪いだ海はもっと速くとせがんでいるかのようで。
肌に当たる風はどんどん強くなるのに、それすらもスピードの糧となるかのようで。
空の蒼、海の碧。
境目の見えない、青の世界。
私を取り巻くスピードは、音も何も無い、ただ青い世界へ私を連れ去り。
際限なく上昇するスピードは、私が紛れ込んだ青い世界をどこまでも突き進み。
色も青。音も青。感触も青。匂いも青。味も青。世界も青。
私は、ただ青い世界に――
《イベント発生条件を満たしました。これよりイベントを開始します》
…………私、今何してましたっけ。
――飛んでましたわ。空も意識も。
い、いろいろと危なかったです……。
――帰ってきてもらえて良かったですわ。ですが、ゆっくりしていられる状況でもないようですの。
ぐりちゃんが意識を向けるその方向。
海の中に、大きな影が見えました
ヘビ……でしょうか?
――そう見えますが……ヘビと言うには無理がある大きさですの。
未だ影しか見えませんが、その大きさは太さだけでも数メートル。長さは何十メートルになるか想像できない大きさです。
とりあえず高度を取りましょう。この高さだとすぐに食べられてしまいます。
――そうするですの。
言葉は落ち着いてますが、内心少し慌てて空に逃げます。
もう大丈夫かなと思えるほどまで高度を上げたところで、魔物が姿を表しました。
真っ黒な鱗に覆われた細長い……太長い体。
やっぱりヘビ……ウミヘビですか?
――そうとしか言えませんの……。
でもこんな大きな魔物倒せるんでしょうか……体力がものすごくありそうです……。
――鑑定しながら戦ってみるですの。
実は最近、新しく修得したいスキルがあったので、スキルショップにも行ってました。
その際に鑑定のスキルを取得しておいたんです。
正確なことがわからなくても、一人で戦う場合は目安があるだけで戦いやすい、と言われて取ったんです。
まだスキルレベルが低いので相手の名前もわからない場合があったり、体力の減少具合も誤差が大きかったりするそうですが。
そして予想通り巨大ウミヘビの名前はわかりません。そういう場合は何度か鑑定し直すと成功するそうですが……そのうちわかりますよね。体力減少を確認しながら戦いますので
とりあえず攻撃してみましょう。
そこそこ高度は取ってたつもりですが、その巨体を生かして噛みつこうと体を伸ばしてくる巨大ウミヘビ。
ですがかなりの巨体なため、そこまで速くはありません。
余裕を持って避けて、その体に槍を振るいます。
ズザシュッ!
堅そうな鱗でしたが、一応切れました。……切りましたよね?
――間違いなく切りましたの。
体の大きさに比べて傷が小さすぎるせいでしょうか。何もなかったかのように再度向かってきます。
やっぱり倒せない気がします……。
――私もそう思いますが、でも一撃で諦めるのは早過ぎるですの。
そうですね。しばらく攻撃を続けてみましょう。
5/31装備の耐久値から%表記を削除、ポイント制にしました。
簡単説明にブレイズロード@三回目を追記しました。
燃費云々で表現を追記しました。
簡単説明。
・ブレイズロード@二回目行って、プルスト用の火精霊の封石ゲット。早速剣を作成。
・その剣持ってクエスト行ったら、修復不可の完全破損した。
・プルスト『orz』。
・イオンの槍に風精霊の封石を合成して、魔法付与について調査開始。
・付与する魔法が強いと武器に対する負担も大きいことが判明。
・壊れた原因→アヤメのブースト付き本気魔法+プルスト全力スキルをボスにぶっぱ=やりすぎ。
・ブレイズロード@三回目、プルスト用の封石げっと。
・調査終わった。もう飛び回っていいよね!
・海飛んでたら唐突にイベント開始。
・今ここ。
破損について、以前にロストは無しの方向で考えてますと活動報告のほうで書きましたが、やっぱり有りにしました。
Q:旧車ってそんなに壊れるの?
A:そこまで古いのは触ったことありませんが、どんなに気を付けても予期せぬトラブルは発生しやすいと思います。昔近所にあったハコスカはしょっちゅう積載車で運ばれて行きました……。80年代の車でも結構……え、80年代は旧車?そそそそんなはずはっ。(どこから旧車と呼ぶかは人によりますが、旧車のイベントとかでは75年までだったり79年までだったりが多いらしいです。)
Q:ガソリンスタンドの無い区間とか、高速にあんの?
A:今は知りませんが、2015年時点では瀬戸内海側から日本海側まで130キロ以上無いという恐ろしい区間があってですね……。高速下りればあるんですが。あと無料区間なんで下りても問題ないんですが。ていうか調べたらもっと長い区間があるとか……。
Q:納車後二時間で全損させる人なんて、本当に居るの?
A:私自身は見たことないですが、話には聞いたことあります。あと事故で百万オーバーの修理をした車が、納車当日に同じくらいの金額がかかる事故を起こしたのは見たことがあります。
私『おかしいなー。今朝返した車がまたある気がするんだけど。しかもまた壊れてる気がするんだけど。……私直したよね?夢の中で直したとかじゃないよね?』
皆さん気を付けましょうね!あ、そのケースではしっかり保険に入ってたので金銭的ダメージは大丈夫だったようです。ただ精神的ダメージは……。とりあえず保険もしっかりね!
全く関係ありませんが、先ほど夜だというのに突然の来客がありました。
呼んでもないのに勝手に来る本当に迷惑な輩でした。しかも帰れというのに無理矢理押し入って平然とのんびりしていくという横暴っぷり。
五分もいなかったとかそんな事は関係ありません。そのうえ気が向いたらまた来るって言いながら帰ってくんですよ。もう一体お前何なのかと。
皆さんもそういう輩には気を付けましょうね!
ちなみにヤツの名は『停電』と言います。UPS欲しい……。
【停電さん】・ω・`)<呼んだ?