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2-6 VRゲーム、始めます。


 なんて気ままに飛んでる間に草原を超えて森に着きました。

 ですが森の上にかかった途端、複数の鳥が飛び立つのが見えました。

 カラスみたいに見えますが色は茶色です。

 ってこっちに向かってきますね。もしかしなくても魔物でしょうか。

 面倒なので逃げましょう。

 戦い方知らないですし。

 と思ったんですが森中色んな所から出てくるのでかなり邪魔です。

 カラスくらいだったら私にも倒せるでしょうか。茶色で強そうに見えませんし。

 一度くらい戦ってみましょうか。

 少しくらいは魔物と戦えた方が色んな所へ行けそうですし。

 武器は確か槍があるはずなので、メニューを開いて……装備の項目が無いですね。

 ストレージの中にあるでしょうか。


【冒険者の鉄槍】

攻撃力:10

状態:正常


 ありました。

 ではこれを取り出して。


「っとと」


 選択したらすぐに出てきましたが、いきなりだったので森に落としそうでした。

 出しましたがこれでいいんでしょうか。

 装備の項目が無かったのできっと持ってるだけでいいんでしょう。

 それではこれを構えて……前に構えるとそのまま敵に体当たりですよね。

 横に構えてすれ違うようにしましょう。

 よし準備できました。

 それでは。


 向きを一気に変え、一番近いカラスへ向けて加速します。

 そしてそのまま直進しカラスをギリギリのところで避け、槍だけがカラスに当たるようにすれ違います。


「クケェッ!」


 槍がカラスと当たると同時、嫌な鳴き声を残しながら森へ落ちていきました。

 森に落ちる途中、何か光のようなものを残して消えていきます。

 そしてその光もすぐに消えたかと思うと、頭の中にファンファーレのようなものが聞こえました。

 消えたのは無事に倒したからだと思うんですが、さっきの音は何でしょう?

 まぁ考えても分からないのでほっときましょう。

 今はほかのカラスを相手にします。

 気付けば十匹以上いるようで、これだけいると結構不気味です。

 さっさと倒しましょう。

 先ほどと同じ要領で二匹、三匹と倒していきます。

 数匹倒すごとにファンファーレが何度も聞こえます。

 正直うるさいですねこれ。

 カラスを倒すだけでこんな音がするのは何でしょう?

 それともそういう魔物なんでしょうか。

 鬱陶しいので全部倒せば音もしなくなりますよね。

 慣れてきたので槍を左に向け右に向け。

 加速して次々倒していきます。


 途中から数えてませんでしたが多分四十以上倒してようやく収まりました。

 弱い魔物はいっぱい出るからしょうがないですが多いと思います。

 リード君がこのゲームを見てハードだとか、戦闘はやめた方がいいような言動だったのはこういう事だったんでしょうね。

 飛んでるからよかったですがそうでなかったら戦闘なんてしたくありません。

 とにかくカラスのいない間に森を通り過ぎましょう。

 この森はどこを見ても同じような木しか見えないので面白くありませんし。

 でも降りてみると面白いかもしれないですね。

 ここまで一気に飛んできましたけど、いつもならじっくり時間をかけて観光しますし。

 丁度森の一部に開けてる所が見えます。

 広場の半分ほどは池のようです。

 森林浴とか気持ちよさそうですし、あそこに降りてみましょう。

 とそこまで考えてふと気になったんですが。


 着地って、どうしたらいいんでしょう?


 ……なんでしょう、空は涼しいのに急に汗が出てきました。

 鳥の着地とか飛行機の着地とかそういったのは見たことあります。

 でも自分がそうするっていうのは想像したことありませんでした。

 飛んでるとこしか想像したことなかったんですよね……。

 ああでもなんとかするしかありません。

 このままじゃずっと飛び続けるしかないですし。

 飛べるのに着地できないって恰好悪すぎます。

 ブレーキの無い車と同じです。

 着地が出来ないから飛びたくないとか絶対に嫌です。

 何が何でも着地します。


 えっとまずは鳥の着地を思い出しましょう。

 着地地点に向けて高度を下げてスピードも落とし、ぅわっ。

 スピードを落とし過ぎてそのまま落ちそうになりました。

 もう一度、今度はスピードはそこそこに高度も一気に下げて……一気にスピードを殺して着地っ。


「っとっとっとぁ!」


 勢いを殺しきれずに前につんのめってそのまま倒れました……体が痛いです。

 今更ですが森の限られた広場じゃなくてもっと広いところでやればよかったですね。

 まぁでも何とかなったので、あと数回練習したら大丈夫でしょう。

 後で練習です。

 今は森林浴をする時間ですから後でです。

 ゆっくりと体を持ち上げ、広場を見渡します。


 空から見ていた通り広場の半分ほどは池となっていて、小さな川に繋がっているようです。

 違いがよく分からないんですがこういうのは泉って言った方がいいんでしょうか?

 広場は下草に覆われていますが特に雑然とした感じはしません。

 周囲は木が立ち並び、手前は木漏れ日が気持ちよさそうですが奥は薄暗くなっています。

 森の真ん中にこんな空間があるのは不思議ですが、気持ちよさそうな場所なのでどうでもいいですね。

 それにゲームですしね。

 きっと休憩ポイントとかそういうのかもしれません。

 泉の方へ近づいてみると広場の中心、泉の淵に小さめの岩があることに気付きました。

 道路脇にある石碑みたいです。

 やっぱり何か彫ってあるんでしょうか。

 何も無かったら椅子にしましょう。丁度いい大きさです。

 そう考えて一歩踏み出した私の頭に、声が響きました。


《イベント発生条件を満たしました。これよりイベントを開始します》


 条件なんていつの間に満たしたんでしょう?

 それにイベントって何でしょう。

 しかも街中ではなくこんな森の中。

 周囲には魔物だって沢山いるでしょう。

 ああやっぱりです。

 TVゲームだったら休憩ポイントは敵が出ないんですが、ここは仮想とはいえ現実の世界。

 そういうわけにもいきませんよね……。


「グルォォォ」


 薄暗い森から現れたのは真っ黒な熊。

 大きさはおそらく三メートルくらいあるんじゃないでしょうか。

 腕だけでも相当太く、あの腕で殴られたら間違いなく死んでしまうでしょう。

 はっきり言って怖いです。

 よし。

 逃げましょうか。

 カラスなら何とかなりましたけど、あれは嫌です。

 せっかくの気持ちよさそうな場所でもったいないんですが……。

 仮想とはいえ、死にたくないです。

 助走をつけて飛び立ちました。

 そのまま熊に背を向けるように飛びましたが、すぐにまた声が聞こえました。


《イベント領域より離脱しようとしています。領域から離脱した場合、デスペナルティーが発生の上、最後に立ち寄った結界石へ転送されます。イベントを継続する場合は、イベント領域へ引き返してください》


 デスペナルティーということは、逃げても殺されるということですか。

 なんとも大変なイベントのようです。

 それとも全てのイベントがこうなんでしょうか。

 リード君がハードだと言ってたのはこういうのも含まれてるんですね……。

 でもどうせ死ぬなら戦っても一緒ですね。

 確か痛さは現実より小さく感じるってマリーシャも言ってましたし、どっちにしても痛いならやってみましょう。

 幸いにも熊の動きは遅いようなので、当たらないように気を付けて戦えば何とかなるかもしれません。

 うまくいけばゆっくり森林浴できるわけですからご褒美だってあります。

 よし。

 やってみましょうか。


 気持ちを切り替えた私は速度を上げました。

 熊を中心に回るように飛びつつ距離を詰め、熊の背後へ回り込みます。

 背後が見えたところでさらに加速。

 一気に背後を通り抜けると同時、槍を突き出します。

 熊を切りつけた感触が槍を通して伝わってきます。

 そして今更ながらに振り返ろうとする熊の、今度は横を飛び切りつけ距離を開けます。


「ガアァァァァァ!!」


 怒りを含んだような熊の叫び声が聞こえますが気にせず距離を開けます。


 飛んで、その勢いですれ違いざまに切りつける。

 一撃当てればそのまま距離を取って攻撃されないように逃げる。

 私にできる戦い方はこれだけです。

 私を警戒し振り回す腕を、今度は地面すれすれを飛び足を切り付けて距離を開け。

 動きがに遅くなったところを狙い腕に一撃入れて距離を開けます。

 まだ倒れません。


 やっぱりカラスとは違いますね。

 カラスがレベル1で戦う敵だったら熊はレベル10で戦うボスでしょうか。

 でも繰り返していけばそのうち倒せるでしょう。

 一のダメージでも百回繰り返せば百のダメージです。

 ひたすら繰り返していきます。


 腕と足を中心に攻撃を繰り返し、最初に比べ熊の動きは大きく鈍りほとんど一方的に攻撃するだけになりました。

 ですが窮鼠猫を噛むとも言います。

 こういう時こそ油断してはいけません。

 反撃をされないよう腕と足を主に狙っていましたので、今度は胴体を狙い更に動きを制限します。

 一旦高度を取り熊の背後を狙える位置へ。

 熊はこちらを見上げ背後を取られまいと動きますが今の足ではそれもままなりません。

 私は熊に向け急降下。

 先ほどの着地と同じように地面へ向けて飛びますがスピードは一切緩めません。

 熊は私を叩き落そうと腕を上げますが無視して突っ込みます。

 そんな動きで私のスピードについてこられるはずありません。

 腕を掠めるように避けそのまま熊の背を大きく斜めに切り裂きます。

 私はほとんど倒れそうな体制で地面に着地、そのまま地面を蹴って無理矢理飛びあがり、急いで距離を開けます。

 もう一度高度を取り今度は反対から狙おうと熊を見れば、熊は光を残して消えていきました。

 何とか、倒したようです。



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