プロローグ
はじめまして、モノホシザオと申します。
初投稿ゆえに勉強不足な点も多々ありますが、どうぞよろしくお願いします。
湿った洞窟の中を少年が駆けた。
中性的でどこか頼りない印象を持たせるその顔は緊迫の表情を浮かべ、大粒の汗が額を滴り落ちていった。
その手に握るは細身の短槍。左手に握った槍が汗で滑り落ちそうになるのを必死で堪え、疲れで感覚の無くなった右腕は休ませておく。
「っ……はぁっ……!」
だが汗を拭う暇はない。少年は息を切らしながら、襲い来る無数の斬撃を防ぎ続ける。
そこで戦闘が開始されてからさほど時間は経っていないが、彼は早くも劣勢に追い込まれていた。
洞窟内は暗く、次はどこから来るのか全く読めない。かと言って、灯りを点ければ逆に自分の位置を相手に教える事になる。
周囲を警戒しつつ、歩みを止めたその時……
「ッ!?」
突如飛来した赤く光る斬撃。先程とは威力も速さも桁違いなそれを少年は槍で防いだものの、体勢を崩され、大きな隙が生じる。
そして、斬撃を放った本人がそれを見逃す筈もなかった。
「隙ありっ!」
洞窟内に響き渡る、凛とした女性の……少女の声。
少年に次の一撃を防ぐ手立てはない。
背後から接近する恐怖に彼は目を閉じ、そして……
―――暗い洞窟の中に、雷鳴が轟いた。