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廃棄惑星に追放された俺、万能物質《マター》生産工場を手に入れて銀河最強の生産者になる  作者: 廣瀬誠人
第2章 帝国貴族編

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第21話 宇宙海賊退治

 海賊退治のために、執務室を出ようとした――その時だ。


 俺はふと足を止め、窓の外の宇宙を見上げた。


「……いや、待てよ」


 俺の脳裏に、ある考えが閃いた。


 これから俺が目指すのは、領地全体の軍事的な自立と、裏で準備している「革命軍」の実戦経験だ。


「予定変更だ、シズ。フェンリル号は待機させておけ」


「では、どのように対処なさるのですか?」


 俺は執務室のデスクに戻ると、惑星エンドへの超光速通信回線を開いた。


 ホログラム・モニターに、訓練の煤にまみれたグレイ・ヴォルフ大佐の顔が映し出される。


『閣下。なんだ、もう寂しくなって連絡してきたのか?こっちは今、新兵たちの根性を叩き直している最中でね』


「いいニュースだ、大佐。実地訓練の機会をやる。動く的(ターゲット)を用意した」


 俺は宇宙海賊艦隊の座標データを転送した。


 ヴォルフがデータに目を走らせ、ニヤリと口元を歪める。


『宇宙海賊団『ブラッド・ファング』か。……おいおい、こりゃあデカイな。戦艦、巡洋艦、その他小型艇合わせて、総数3万隻。宇宙海賊団というより、独立国家の軍隊レベルだぞ』


「5万名の兵士たちを動員しろ。彼らの初陣だ。圧倒的な力で、完膚なきまでに叩き潰せ」


『了解した。で、どの艦を使う?何隻出すか?』


 俺は少し考え、そして告げた。


「いや、単艦でいい。『ラグナロク』を出せ」


『……は?』


 さすがのヴォルフも、その艦名を聞いて絶句した。


 『ラグナロク』


 オメガ・ドックの最深部に眠る、艦隊の中でも最大最強の旗艦。


 旧時代の技術の粋を集め、来る決戦の為に建造された、全長20キロメートルに及ぶ超弩級戦艦だ。


『おいおい、正気か?たかが宇宙海賊相手に、神殺しの剣を抜く気かよ。オーバーキルにも程があるぞ』


「ハエを叩くのにハンマーを使う。それが、敵に『絶対的な恐怖』を植え付ける一番の方法だ。それに、5万人全員を一度に乗せて運用訓練をするには、あの船が一番手っ取り早い」


『……ククッ、違いない。あのバカでかい図体なら、5万人乗せてもゴーストシップみたいにスカスカだろうがな』


 ヴォルフは愉しげに笑った。


「それともう一つ、仕事がある。惑星エンドから出撃する際、上空にある帝国軍の監視衛星も掃除しておけ」


『監視衛星?帝国軍の備品だぞ。壊せば帝国首都星(セントラル)がうるさいんじゃないか?』


「構わん。許可なら取る――事後承諾でな。『宇宙海賊討伐の緊急発進に伴う余波で、不幸にも故障した』ことにする。あるいは『宇宙海賊の流れ弾が当たった』でもいい。報告書はどうとでもなる」


『了解。掃除ついでに空も綺麗にしていくとするか。……総員、配置につけ!実戦だ!』


 通信が切れる。


 俺は再び窓の外、迫りくる宇宙海賊艦隊の方角を見据えた。


 シズが新しい紅茶を淹れてくれる。


 俺はヴォルフ達が来るのをゆっくりと待つことにした。


 ***


 一方その頃、惑星エンドでは。


 地下50,000メートルに広がるオメガ・ドックが、かつてないほどの高エネルギー反応に震えていた。


 5万名の兵士たちが、広大な通路を走り、巨大なエアロックへと吸い込まれていく。


 彼らが乗り込むのは、視界に収まりきらないほどの巨艦。


 超弩級戦艦『ラグナロク』だ。


 艦橋は、それ自体が一つの大広間のような広さを持っていた。


 ヴォルフは中央の指揮官席に座り、慣れない手つきでコンソールを操作する元軍属のオペレーターたちに檄を飛ばした。


「初めて乗る艦だが、ビビるな!こいつのAIサポートが貴様らの未熟な操作を完全補正してくれる!貴様らはただ、目の前の敵を殺す意志を持てばいい!」


「は、はいっ!メインエンジン、出力上昇!臨界点突破!」


「よし。オメガ・ドック、天蓋開放。『ラグナロク』、発進!」


 ズズズズズ……!!


 惑星の地殻が悲鳴を上げ、大地が割れる。


 赤茶けた荒野に巨大な亀裂が走り、そこから黒い山脈のような船体が浮上を開始した。


 砂嵐を切り裂き、重力を無視して上昇するその姿は、まさしく神話の怪物の目覚めだ。


 大気圏離脱コース上。


 ヴォルフはモニターに映る小さな光点――帝国軍の監視衛星を睨みつけた。


「進路上の障害物を排除する。副砲、照準合わせ」


「し、照準固定!」


「撃て」


 ラグナロクの側面にある、無数にある砲塔のごく一部、副砲の一門が火を吹いた。


 放たれたのは、副砲の大出力レーザー砲だ。


 これだけで大陸を一つ消し飛ばせる威力がある。


 青白い光の帯が空を走り、監視衛星を掠めた――いや、直撃する必要すらなかった。


 その余波だけで、衛星は原子レベルまで分解され、光の粒子となって消滅した。


「障害物排除確認。大気圏離脱!」


 ヴォルフは鼻を鳴らした。


「脆いもんだ。帝国の目玉も、俺たちの前ではガラス玉以下だな。……よし、超高速航行(ハイパードライブ)エンジン起動!ノルド・ステーションへ急行する!」


 ノルド・ステーションの周辺宙域。


 宇宙海賊団『ブラッド・ファング』の艦隊は、無防備なステーションを前に勝利を確信していた。


「ヒャハハ!聞いた通りだぜ!監視衛星もねえ、軍の駐留部隊もいねえ!あるのはボロいステーションと、成金の男爵様だけだ!」


 宇宙海賊船のブリッジで、船長が下卑た笑い声を上げていた。


「野郎ども、まずは港を制圧しろ!金目の物は全部奪え!新しい工場で作ってるドロイドも高く売れるらしいぞ!抵抗する奴は宇宙へ放り出せ!」


 彼らは完全に舐めきっていた。


 この辺境の領主など、脅せばすぐに金を出す臆病者だと。


 その時だった。


 空間センサーが異常な数値を弾き出したのは。


「せ、船長!超高質量の重力反応!至近距離にワープアウトしてきます!」


「あぁ?帝国軍か?チッ、逃げる準備を……」


「ち、違います!規模がおかしいです!質量反応、計測不能!こ、これは……超弩級戦艦です!?」


「はあ!?何を寝言を言って……平和な現代に超弩級戦艦なんて存在しねえ...」


 空間が歪み、裂ける。


 そこから現れたのは、巡洋艦でも戦艦でもなかった。


 宇宙海賊たちの視界を、そして思考を塗りつぶすほどの、圧倒的な「壁」。


 全長20キロメートル。


 ノルド・ステーションすら小さく見えるほどの超巨大戦艦が、宇宙海賊艦隊の目の前に鎮座していた。


 白銀の威容あるその姿は、死神そのものだ。


「な、な、なんだありゃあああああッ!?」


 宇宙海賊船長が悲鳴を上げる。


 彼らの乗る戦艦など、ラグナロクの超高速航行(ハイパードライブ)エンジン1つよりも小さい。


 数万隻の大艦隊ですら、この巨体の前では羽虫の群れにしか見えない。


 ラグナロクのブリッジから、全帯域通信を通じてヴォルフの声が響き渡る。


 それは宇宙海賊たちの耳元で唆されているかのように鮮明だった。


『こちら、フライハイト男爵領・私設防衛艦隊旗艦『ラグナロク』。貴様らが領海侵犯及び略奪行為を企てた宇宙海賊だな』


「し、私設艦隊だと!?こんな化け物を持ってる男爵がいてたまるか!」


『降伏勧告は行わない。貴様らは害虫だ。害虫に権利などない』


 ヴォルフの冷酷な宣告。


 同時に、ラグナロクの船首が宇宙海賊艦隊に向けられた。


 そこにあるのは、艦の全長に匹敵するほどの巨大な発射口。


 新兵器、惑星破壊兵器『対消滅縮退砲(スーパー・ノヴァ)』の砲門だ。


「目標、敵艦隊中央。チャージ率、1%。……フッ、1%でも過剰火力か」


 ヴォルフが獰猛な笑みを浮かべ、トリガーに手をかけた。


「消えろ。『対消滅縮退砲(スーパー・ノヴァ)』、発射!」


 ズウゥゥゥゥン……!


 空間そのものが悲鳴を上げた。


 発射されたのは、光ではない。


 漆黒の闇だ。


 重力崩壊を起こした極小のブラックホールに似たエネルギービームが、宇宙海賊艦隊の中心へと放たれた。


「な、なんだこれは……!?吸い込まれ……うわあああああっ!!」


 着弾の瞬間、闇が膨張した。


 それは周囲の空間ごと、数万隻の宇宙海賊船を飲み込み、押し潰し、素粒子レベルまで分解していく。


 爆発音すら聞こえない。


 光も、音も、物質も、すべてが漆黒の球体の中に消えていく。


 圧倒的な静寂と、絶対的な破壊。


 数秒後。


 闇が収束し、消滅すると、そこには何も残っていなかった。


 数万隻の艦隊も、数億人の宇宙海賊たちも、デブリ一つ残さず、宇宙から拭い去られていた。


 完全なる消滅。


 ラグナロクのブリッジでは、一瞬の静寂の後、5万人の兵士たちから割れんばかりの歓声が上がった。


「やった……やったぞ!」


「俺たちの勝ちだ!」


「見たか帝国!これが俺たちの力だ!」


 彼らは抱き合い、涙を流して喜んだ。


 今まで逃げることしかできなかった彼らが、初めて手にした圧倒的な勝利。


 自分たちの操る艦が、敵を一撃で粉砕したという事実は、彼らに強烈な自信と誇りを植え付けた。


 ヴォルフは騒ぐ兵士たちを見守りながら、深くシートに背を預けた。


「……フン、呆気ないもんだ。だが、いい初陣にはなったな。兵士に自信をつけさせることができた」


 ノルド・ステーション、執務室。


 俺はモニター越しにその一方的な蹂躙劇を眺め、満足げに頷いた。


「素晴らしい威力だ。やはり『ラグナロク』は桁が違うな」


「ええ。ですが旦那様、少々やりすぎたかもしれません。ステーションの反対側でも強力な重力震を観測しました。窓ガラスが何百枚も割れたとの苦情が入っております。監視衛星は事前に破壊してありますので、帝国軍には感知されませんが」


 ギリアムが苦笑しながら、割れたティーカップの破片を片付けている。


「経費で直しておけ。それよりシズ、帝国への報告書だ」


「はい、作成済みです。『宇宙海賊の大規模艦隊が来襲。我が領の防衛隊が迎撃に成功するも、激しい戦闘によりエンド周辺の監視衛星に流れ弾が命中、ロスト。宇宙海賊艦隊は動力炉を暴走させて自爆特攻を試みたため、残骸は回収不能』……これでよろしいでしょうか?」


 シズが無表情で読み上げる内容は、事実とはかけ離れた出鱈目だが、証拠が何も残っていない以上、帝国も追求しようがない。


「完璧だ。送信しておけ」


 これで、近隣の宇宙海賊や小賢しい領主たちは、二度と手出しできまい。


 そして帝国も、「辺境になかなか骨のある私設軍を持つ男爵がいる」と認識するだろうが、まさかそれが自分たちを滅ぼす牙だとは夢にも思うまい。


「パパ!すごーい!おっきな船!」


 ルルが部屋に入ってきて、モニターを見てはしゃいでいる。


「ああ、すごいだろうルル。あれが、俺たちの守り神だ」


 俺はルルを抱き上げ、その頬にキスをした。


 平和な日常と、圧倒的な暴力。


 その二つを両立させながら、俺の国作りは加速していく。


 俺たちは静かにグラスを傾けた。


 帝国首都星(セントラル)から最も遠くの彼方で、新たな時代の足音が響き始めていたのだ。

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