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お迎え

作者: 暁 白花

 長男信仰:嫁の務めは長男あととりを産むこと。


 専業主婦:非常に立場が弱い。旦那の母親の代わり。女中さん扱い。

     :生活が旦那の稼ぎで成り立っている為に逆らえない。

     :離婚されてしまうと路頭に迷う為に逆らえない。

     :それ故に父子喧嘩が起こった場合、敵となる。


 子供の品行、成績、活躍:他者からの親が行った教育の評価。 善なら親として賞賛され、悪なら失敗と失格の烙印を押される為に、近所の目や同じ学年、地区の親の目を気にしてしまう。旦那にも教育の悪さを責められる――

     

 それは呪いであり、それは私の罪。


 子供と喧嘩をした。激しく言いあった。

 理解出来なかった。サボりだと思っていた。

 噂され恥ずかしいと言ってしまった。

 お前が休んでばかりだから旦那に責められると子供に八つ当たりし、詰ってしまった。

 産まなければ良かったと言ってしまった。

 産まれたくなかった。お前らが避妊しなかったのを此方の所為にするなと反論された。

 子供に淫らな女だと言われたようで頭に血が上った。

 気に入らなければ出ていけ、此処は親の家だ、と言った。

 子供が出ていく、と家を飛び出して行った。


 雨が降っていた。


 子供が家を出てどれだけの時間が経ったのだろう。

 玄関外で鈴の音がした。

 子供が大事に持っていてくれたマスコットに着けた鈴の音だ。

 それは元気に帰って来たよ、ただいま、と言う合図。

 私は慌ててたちあがり、躓きながらも玄関へ急ぐ。

 玄関を開ける。

 子供は居なかった。

 足下には濡れたマスコットのぬいぐるみだけがあった。


 子供を探しに出た。見つからなかった。


 子供を失い、過ちから、どれだけの年月が過ぎただろう。

 ベッドの傍らにはあの日から濡れたままのマスコットがある。

 虐めにあっていたと失った後になって知った。

 避難した家にもてきがいて、居場所が無い生き苦しいと。


 今日もチリリンと鈴がなる。

 私はおかえり、と言えただろうか……。優しく迎えられただろうか。

 それも判らない。

 マスコットに手を伸ばして撫でることも叶わない。

 

 迎えに行こう……。雨の向こうに……。抱きしめて温めてあげよう……。そして謝るのだ……。

 

 

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― 新着の感想 ―
落ちてしまったマスコット人形が、泣いているようで悲しいですね。 読ませていただきありがとうございました。
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