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文明の発見

 明くる朝、作業用ドローンに自動で組み立てさせていた大型プリンターが完成していた、OSが作った核電池製造機、それがソーラーエネルギーで自動製造した電池は一晩で全て使い切った。

 ニュークリア電池と言えば半永久的に動くように思われがちだが、実はこいつは燃料で内部発電するだけの使い切りで、再使用は出来ない、その上使用済み電池は下手に解体すると放射能漏れを起こすという難儀な物体である・・・

 大型プリンターは内部構造にソーラーパワー変換機と衛星式マイクロウェーブチャージャーの二つのモジュールを持つ併用式なので、衛星が打ち上れば宇宙から大気の影響を受けない、直で効率良く収集した太陽エネルギーを取り放題になる・・・

 なってくれる筈・・・

 なってくれ・・・

 頼むぞ・・・


 結局、衛星の打ち上げ体制が整うまで、しょぼいソーラーパワーでの自転車操業になってしまったが、2日かけてソーラーパネルを増設、町工場並みの電力は確保出来た。


 衛星打ち上げロケットと衛星の組み立ては順調に進んでいる。

 この離れ小島に、希少なレア金属を含む大量の金属元素が埋蔵されていたので、揚陸艇を分解せずに済んだ。

 揚陸艇はそのまま俺の前線基地となり、3日分に相当する大量のエネルギーを消費して、全周波数で惑星の裏側に届きそうな程強烈な救難ラジオ発信をしたが返事は無かった。

 この星には我々の文明圏に所属するテクノロジーを持つ、開拓団や調査団等の存在は居ないらしい

 急に、衛星を打ち上げても味方軍と接触出来ないのでは?という不安が首を持ち上げ始めた。

 ここで救助も無く、孤独に一生を終える・・・そう考えると、かつて軍の簡易宿舎の、プライベートスペースが多段ベッドの1段しかない、囚人の様な前線基地建設作戦の毎日が妙に懐かしく思えた。


「ぷしゅ!」なんて音はしないが、突然背中に急な刺激を感じ、頭がカッと熱くなり全身の血が逆流する様な高まりを感じた。

「ナァ~ビィィィ!!!」

『大丈夫ですかケント中尉。』

「警告なしに突然『気付薬きつけぐすり』を注入するんじゃない!」

『音声確認はしました、しかし中尉の意識が戻りませんでしたので。』

 モニターにポップアップウィンドウが開き、偵察ドローンのものと思しき映像が映し出される。

「ん?何か見つけたのか?」

『北西方向に21マクロ進んだ所でドローン2号が発見しました。』

『ヒューマノイドタイプの都市です。』

「遺跡か・・・」

『いいえ、生きた都市です。』

 円形の低い壁に囲まれた密集型住宅の集合体、中央に川が走っているが岸が整備されており運河のようだ、ドローンが接近する反対側に耕作地が広がっている。

 近付くにつれ、人間っぽい生き物の行きかう姿が確認できた、遠目からもハッキリ男、女、大人、子供と認識出来る、素朴で奇妙な衣装だが、俺自身が認識する「人類」と差異は無いようだ。

『我々の文明圏種族にまず間違いない様です。映像で確認出来る限り、身体的特徴の相違が見当たりません。』

『しかしながら、このような建築、服飾の人類は私のデータにはありません。巡洋艦「ナタキル」のメインサーバにアクセスを希望します。』

 いや、現段階でそれが出来ないから苦労してるんだよ?興奮しすぎてバグっとりゃせんかい?この娘・・・

「おーおー、初期型農耕民族だな、ビークルは見当たらない・・・か。」

『建築、服装に多様性が見られます、鮮やかな染色もされている様ですね、原始的ですが、かなり文化は発達している様です。』

 今まで、自分自身で体験した事は無かったが、バロメア文明圏に所属しない独自文明を持つ、所謂「未開人」の発見は一つや二つでは無かった筈だ。

 惑星探査隊の遭難者の成れの果てか、違法入植者の末裔か、調べてみれば面白いかもしれないが・・・今は俺自身の置かれている状況の方が問題だ。

「よし、『バロメア星団せいだん憲章けんしょう』とやらにのっとって情報を集めといてくれ、俺は脱出計画の方を進めとくから。」

『了解しました。』

 少しの沈黙があった後。

『調査に向かわないのですか?』

「俺は原始人相手に神様ごっこやる気は無いね。」

『現在我々が直面しているエネルギー問題に対する解決の糸口がありそうですが?』

「んん?」

『こちらをご覧ください、この都市の権力者の住居と思われます。』

 一際大きな建物、他の簡素な住宅に比べ、敷地も広く装飾も多いし細かい・・・

 映像がエネルギー推移の色分け図に切り替わると、屋敷の部分が丸く黒い球体に隠れた。

『一種のエネルギーシールドと思われます。』

 屋敷の塀の上に設置された装飾から波動が出ており、シールドを形成しているらしい。

『例の謎のエネルギー波動を利用している様です。以前ご報告した小動物のバリアシールドの拡大版ですね。』

「普通に生活に取り入れてるのか・・・うーん魅力的だが、現地人と接触するのは面倒事が起きそうで嫌だな。」

『許可を頂ければ、調査致しますが。』

「取り合えず、言語解析はしておいてくれ、接触はするな、ドローンもだ。」

「必要なら各種ドローンの増産を許可する。」

『ありがとうございます。早速、疑似ぎじヒューマンボディの作成に取り掛かります。』

「な、おい、待て待て待てーい!」

『はい?』

疑似ぎじヒューマンボディって、おまえ接触せっしょくする気満々じゃねーか!」

『いいえ、これは万が一目撃された場合を想定しての「保険」です。』

『彼らにドローンを発見された場合、80%以上の確率で攻撃を受けてしまいます。』

『そのリスクを軽減する為に、彼らの見慣れた物に偽装するのがベストだと判断しました。』

 そう言いながらOSナビはドローンの発着場になっているスペースに、着々と疑似ヒューマンボディを組み上げている・・・しかもガイノイド(女性タイプ)だ・・・


 明くる朝、俺は女性士官に揺り起こされ、寝ぼけたまま揚陸艇を出ると、並んだ3人の女性兵士に敬礼された。

 サージェントの記章を付けた戦闘服に小銃を肩に掛けた者が一人。

 工兵のツナギを着た者が二人。

 俺の横に立つ尉官クラスの制服を着た者が一人。

 合計四人で全員同じ顔をしている。

「誰がここまでやれと言った!」

『てへぺろ。』

 士官服の女兵に全く抑揚のない外れたイントネーションで返された。

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