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未知のエネルギー

 翌朝、軽い電子音で目が覚める、装甲服のOSがセットした時計のアラームだ。

 早速この星の自転速度を計算し、24ポイントに区切り、日の出に合わせて俺が学生時代から使っているアラーム音を鳴らしたのだ。

 因みに俺は一切指示もリクエストもしていない。

 この特殊工作部隊では大半の者が朝の栄養注射で目を覚ます、ザイオン等は眠ったままフルオートで作業したり行軍したりしていた。

「よーし、揚陸艇からプリンターの土台を出そう。」

 そう言って、揚陸艇のカーゴの天井、つまりキャビンの底から大きな鉄骨を引き出すが、突っかえてすんなりと出て来ない、装甲スーツのパワーに任せて無理矢理引き出すと、案の定フレームが歪んでいた。

 このままでは使い物にならないので、歪んだ部分を切り落としプリンターで継ぎ足そうと考えたが、特殊鋼材のフレームを切り落とす工具が無い。

 超重量のリアクターを構築する為の土台は重要だ、生半可な設計ではリアクターが傾く、傾いたリアクターが故障する確率は非常に高い。そのためワザワザ別に造って持ち込むのだ。これが歪むってどんな攻撃だったのだろう。

 仕方が無いのでニュークリア駆動式切断機をプリントする。

 こいつは超高性能で戦艦の装甲材の加工にも使われるのだが、大型作業ビークルでないと移動させられない程重量がある。

 そんな物、この未開の地で一から作っていたら、衛星打ち上げまで年単位で時間が掛かる。

 簡易の工業ロボットボディに大型ビークルのオフロードホイールを付けた、作業用ドロイドをでっちあげる。

『それでは溶断ブレードが目標に接触した瞬間にアームの基部ごと吹き飛びます。』

『その設計ではホイールが干渉して作業角度が大幅に制限されます。』

『出力が大き過ぎて移動する度にボディに負荷が掛かります、2日と動けません。』

 等々、厳しい助言が飛ぶ中、俺は何とか日暮れまでに切断作業ドロイドの設計を終えた、ドロイドはものの5分で完成した。

『お疲れ様です。』

 OSの労いを受け、その間『彼女』が小型作業用ドローン4機、長距離偵察ドローン12機、交換用の汎用核電池製造機を完成させたとの報告を受けた。

(嫌味じゃないよな?)


 次の日、偵察ドローンによるこの島の探索結果の報告と目ぼしい生物の映像を交えたレポートを聞きながら、大型プリンターの土台を修理した。

 時間を掛けて設計した作業ドロイドは非常に優秀だった、特殊鋼の切断という難題を僅かな時間で狂いの無い正確さで成し遂げると、一切の存在理由を失った。

 ああ、解ったから、ちゃんと有用な機能を付けて改造してやるから、そんな多目的センサーカメラで俺を見るな。

 その後、2機の小型ドローンを駆使して大型プリンターを作成。

 分子固定ビーム発振機は作成に時間が掛かるので、残り5台のハンディプリンターの内2台を分解して使った。

 もう1台を使って、作業ドローンがまた別のドローンを作っている、その向こうで、別のドローンが、見慣れた(俺のと同じ)降下装甲歩兵用スーツを作っていた、予備のスーツだろうか?俺しか着る者が居ないのに?

 陽が落ちる頃、2機の偵察ドローンが帰還した、下面のロボットアームに何かを掴んでいる、ダークグリーンの金属片だった。

『偵察ドローン5が大型のパーツを発見しました、揚陸艇27号の外部装甲と一致、大気圏突入コース上でした。周囲2マクロを探索しましたが、小隊メンバーの残滓は発見できませんでした。』

 破壊された揚陸艇の装甲板を見ながら、一体どんな攻撃を受ければこんな風に破損するのだろう、等と考えていると。

『興味深い報告があります』OSナビが唐突に切り出した。


『ドローン11の収録画像です』

 装甲服の内部モニターにやや大きめのウィンドウが開く、大きめの爬虫類を思わせる4つ足の生き物が、小型の短い毛に覆われた生き物を捕食しようとしている様だった。

 巨大なトカゲが大口を開け威嚇すると、その鼻先に火の手が上がる。

「な!」

 炎の塊は勢いよく飛び出し、小動物に着弾すると、まるで焼夷弾の様に燃え広がった。

『まだです、ここからが非常に特異です。』

「火を吐いたぞ?」

『大トカゲが火炎弾を発射しましたが、吐いた訳では無い様です。』

 映像が停止し、実画像では無く色分けされたエネルギー分布図に切り替わる、素早くまき戻され、爬虫類が火を吐く前からスローモーション再生される。

 大トカゲの体内、前肢の少し後方に色濃いエネルギー溜りがあり、そこから絶えず薄く波紋の様な振動波が出ている。

 トカゲが大きく口を開くと、次の瞬間、全く唐突にその振動波が色濃く強くなった。

 そして、まばゆい光点がトカゲの鼻先に形成され、大きく膨らんでゆく。

「何だこりゃ?」

『こちらもご覧下さい。』

 狙われている小動物の映像も別のウインドウでポップアップされる。

 前足が短く、後足が大きい跳躍移動に特化した体形で、全体的に丸っこい印象だ。

 鼻面がやや飛び出しており、頭骨の左右に位置する目と目の間に骨が露出したような角が一対見える。

 それも直ぐにエネルギー分布図に切り替わる・・・やはりコイツにも体内に波動を出すエネルギー溜りがある。

 二者のウインドウを俯瞰ふかんで見ながら比較する。

 トカゲが頭を大きく突き出し、火の玉を発射する瞬間、小動物の方も二本の角の間にエネルギーを溜め始めた。

 火の玉が着弾しエネルギーが広がる、元々小動物の半身程もあった火の玉だが、着弾した途端に幾つもの小玉に分かれて周囲に広がった。

 光量が上がりモニターが一瞬真っ白にホワイトアウトするが、センサーは小動物が居た部分が白いドームに覆われて炎の広がりを綺麗に阻んでいる部分があるのを捕らえていた。

「バリアシールドだな、まるで」

『ワリアノ星系にある№331鉱山惑星で精神力によるサイコキネシスで物体を動かす能力を持つ生物の報告が記録されていますが、それに似たエネルギーだと類推されます、しかし現在『ナタキル』のサーバーにアクセス出来ない為詳しい比較検証が出来ません。』

 結局、大トカゲは自分の出した炎で小動物を見失った様で、炎の中から木立の中に無傷の小動物が走り込む所で動画は終わっていた。

「うーん、この記録は任せた、今は衛星の打ち上げと文明社会への復帰が最優先だ。」

『では、独自のメモリサーバー増設と専用調査ドローンの作成の許可を・・・

「うん、任せた。」

 面倒臭くなった俺は、すぐにでも脱出したい為、惑星の探査をOSに丸投げした。

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