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除隊辞令

すみません、これでやっとプロローグ終わりそうです。

もうちょっとで「無双」しますんで・・・

 次の接触ランデブーで探査機は無事『ナタキル』の艦橋残骸に取り着く事が出来た。

 まあ、本当は色々あったのだが、大きな破損も無く艦内に侵入出来たので「成功」と言っていい筈だ。

 一重ひとえに「アラナ」の機転のお陰で想定よりも性能の良いAI(エーアイ)を搭載していた事に起因する。

 またもや勝手にやりやがった、自分の分身をじ込もうとしたのだ、と俺は踏んでいる。

「白状しろ。」と詰めたら、しれっと悪びれる事もなく「惑星の反対側に回った時に、こちらのコントロールが外れた場合でも問題無く行動出来る頭脳を持たせた。」と事も無げに答えやがった。

 俺の考えの及ばない部分を補完してくれるのは良いのだが、「事前に言え。」という俺の希望は中々聞いて貰えない様だ。


 『ナタキル』の残骸についてだが、探査機が取り着いてから直ぐに全体の構造を把握、3D分子プリンターやレーザートーチ、分解機をフルに使って全体のバランスを整え、各所に姿勢制御用の『ロケットモーター』を設置した。

 『ナタキル』AI(エーアイ)は残念ながら復旧出来なかった。

「アラナ」の説明では敵の攻撃によって船体がバラバラになった際、とんでもないエネルギーの逆流が起こり、根幹部に致命的なダメージを受けてしまって、オペレーションシステムとしての機能が維持出来なくなったとの事だ。

 なので、思考ルーチンの部分は切り離し、全体のメモリ部分を『アラナ』に乗っ取らせた。

 結果、システムは全て『アラナ』が掌握し、数ヶ月かけて衛星軌道上に造る筈だった、静止衛星は苦もなく完成した。


 もちろん、一筋縄の作業では無かった。

 またも、『オートマトン工法』の応用で、施設内の不要なアイテム・・・士官室のドアやら備品、非戦闘時の休憩所等の施設、食料品・嗜好品の分子合成機やそのリソース、果ては同スピードで一緒に外を飛んでいる細かい残骸等も拾って材料にした。

 これ以上は資材を持ち込まねば無理だろう。

「宇宙要塞」とまでは言わないが、簡易的な「宇宙港(スペースポート)」や「外宇宙航行艦(ジャンプシップ)」が建造出来る「造船所ドック」が造れるように資材を打ち上げ出来る『マスドライバー』を用意したいし、それらのエネルギーをまかなう『マイクロウェーブ』発信型の発電施設も構築したい。


 そうやって、『ナタキル』艦橋残骸はちょっと(いびつ)な『宇宙ステーション』に生まれ変わった。

 その間、惑星を1周半したが、何とか静止軌道まで減速移動させる事が出来た。

 通信装置が生きていた事もでかい。艦橋下の発電システムも、想定より大きくちょっとした部品の交換で生き返ったのは幸運だった。

「『超亜空間通信システム』起動しました、問題無く発信出来ます。」

「よし、良いぞ!・・・

「一つ問題があります。」

 ソシアナが暗い声音こわねで声を潜めて言った。

「現在のこの惑星座標ですが・・・『惑星連合星図』を含めた人類の記録星図に存在しません。」

「どういう事だ?」

 ソシアナは更にトーンを落とし、俺に不安げな視線を送る。他のメンバーは俯き、俺を見ない。

「まず、空間X(デギナ)(あたい)が『バロメア星団連合』勢力圏の50倍以上あります、更にY(イデラ)()は100倍以上あります、最後に『バーシュ』()ですが・・・

 ソシアナは、言うか、言うまいか、迷った様な口調で思い切った様に告げた

「『バーシュ』はマイナスを指しています。」

「計測機が壊れてるだろ、それ。」

 俺は呆れたように「ヤレヤレ」といった口調で言ってみた、まあこの場合彼女がそんな初歩的な見落としをする筈が無いのは解っていたのだが。

「12回以上テストしました、この惑星近辺では全く誤差無しです。」


「星団連合標準星図」から座標『バーシュ』()がマイナスに割り込んでいるという事はあり得ない。それは概念上この世に存在しない、という事だ。

 アヴィアがそれに真っ向から相反する報告をして来た。

「超空間シークレットライン、繋がります。」

「第58艦隊本隊です。」

「な、んだと・・・


「第58艦隊臨時指令、バーミルトン・ラー・スノップ少将です。」

 モニターに、AI(エーアイ)のCGオペレーターではない、本物の人間のオペレーターが取り次ぎ、壮年のいかめしい男性が映る。

「『巡洋艦ナタキル』の生存者は君か!なるほどな。私は『第58艦隊』の臨時指令を任されたスノップだ。」

「先の敗戦で我々は艦隊の五分の一の艦艇を失い、『惑星103』まで後退し、艦隊の再編を行っている。」

 そこまでで映像にノイズが入り、激しく乱れた後画面はブラックアウトし、白字で『音声のみ』と表示されてしまった。

「もうあまり・・・ザ・・ザザ・・い様だ。手短にい・ズザザ・・

「生き残れ!フクッシマーくん!先の突入戦の英雄たるきみ・ザザ・・なら、きみなら、きっと・・・ザザザ・・

「最早、我々にきみを救う・・ザザゾ・・無い、申し訳・・ゾゾゾッ

「今も座標はズレ続けて・・ゾゾゾザッピィーー・・・きみに、除隊を言い渡す!・・・

「何も渡せる物は無いが、そこに残った物は全てきみのじゆ・・・ゾゾゾ・・・

「生き残れ!フクッシマーくん!君に幸多からん事を・・・・ブッ。」

 通信はそのまま切れてしまった。


 暫く沈黙が続き、ややあってアヴィアが言った。

「駄目です超空間通信、繋がりません。」

「ああ、良い、もういい・・・


 思えば、物心付いたガキの頃にこん大戦は始まった。

 『クソガキ』だった俺には『戦争』が何か全く理解出来なかった。

 『クソガキ』はそのままはすに構えた『ワカゾー』になり、何時の間にか「軍人になる事」が漠然とした将来の夢・・・いや『決定事項』になっていた。

 親元を離れ、『ジュニアスクール』から『寄宿衛星』で学生時代を過ごし、周りの学生達の親が戦死した公報を受け取るのを何度か見た後、俺の生まれた『人工衛星都市』が消滅し両親・親戚が行方不明になった知らせを受けた。

 その時にはもう俺の中で進路は決まっていた。

 正直、『トロスト星間商業連合』の奴等が憎かった訳じゃない、ガキの頃チョット会っただけで、画像でしか顔を知らない『親』の仇なんてどうでも良かった。

 只、「敵だから倒す」だけの認識、コンベアで流れて来る部品のボルトを締めて次へ送る、『作業』だった。

 軍を辞めるなんて夢にも思っていなかった、しかもこんな形で。


「除隊になっちまったな、ははは、なあ?明日から何しよう?」

 アラナは、どういうかおをして良いのか解らないのだろう、半分泣きそうな、それでいて決意を秘めた様な硬い表情で、俺の行動を見守っている。

 なく突き出された両手の指が時々(わず)かに曲がっては伸び、曲がっては伸び、を繰り返しており、彼女の混乱を示していた。

 もちろん、それは俺の事をおもんばかっての事だとは解っていたのだが、俺はまるで他人事の様に「おもしれぇ」と俯瞰ふかんで観察していた。


「中尉、いえケント様、今日はもうお休み下さい。」

「ええ~?でも、俺が知らない間に何処かの誰かさんが勝手に『作戦』進めちゃうしなぁ~」

「どうか、お願いします。」

 最敬礼でアンドロイド達が俺を囲む

「ええ~、でもなぁ~・・・

 意地悪く高いトーンで返す。

「どうか、お願いです、どうか・・・

「解ったよ、取り敢えず次は『マスドライバー』のラインを選定して調査を頼む。俺は・・・そうだな、現地人の都市『ラタタ』だったか?の資料を見せてもらうか。」

「!・・・了解しました。『ラパタ』の資料をピックアップしておきます。」

「ん?ああ、『ラパタ』ね?」

 記憶違いで都市の名前を間違えたのはそんなにダメだったか?

「書き溜め」はここまでです、次回更新には暫く掛かります・・・悪しからず。

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