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ドーナツショップ

作者: 高山純次郎

 私が好きな曲をモチーフにして作成致しました。恋って儚いものですね。

 こんな気持ちは初めてだ。先週から僕の様子はおかしいみたい。熱もないのに熱があるような気がする。それに心が苦しい。おまけにその人のことが頭から離れない。もしかして明石(あかし) 友哉(ともや)、僕は恋をしたのか?

 その人に出会ったのは一週間前に遡る。


「友哉、腹減ったな。なんか食いに行きたいな。」

「そうだな。マックはこの前食ったしな。」

僕は友人の彰人(あきと)と遊んでいた。いつも貰った少ないお小遣いで買い食いをする。週に一度は買い食いをしている。それに買い食いは大人になった気がする。

「そうだ。ドーナツ屋行かない?」

彰人はそう言った。

「え?ドーナツかよ。なんかカッコ悪いな。」

「なんでだよ。意味わかんねぇ。いいから行くぞ。」

「仕方ねえな。」

僕は男がドーナツを食べるのはダサいと思ってた。なぜかしらそういう時期があるものなのだ。

 僕と彰人はチャリンコを漕いでドーナツ屋に向かった。

 そのドーナツ屋はミスタードーナツとは違い、チェーン店でなく地元密着型のドーナツ屋である。全商品百円なので物凄く安い。

 店名はシンプルにドーナツショップである。しかし、人はいつも多い。

 今日は夕方なのでそこまで人は多くないが店内には何人かが居る。

 ここの店もトングでドーナツを選ぶ形式である。

「どれにするか。」

「コスパいいやつがいいよな。」

そう言っていると後ろから店員さんが来た。

 その瞬間、僕は体に電撃のようなものが走った。

「私のオススメはこれよ。」

案内してくれた店員さんは恐らく高校生だろう。めちゃくちゃ可愛い人だった。アイドルにいそうな感じだ。

「え、これなんて言うんですか?」

彰人は可愛い店員さんに聞いた。

「エンゼルフレンチよ。」

「俺これにしよ。」

そう言って彰人はトレーにエンゼルフレンチを載せた。

「ボクは何にする?」

お姉さんは聞いた。私は胸がドキドキしている。呼吸がしずらくなった。

「自分も同じのにします。」

そう言って僕もエンゼルフレンチをトレーに載せた。

「じゃあお会計でいいかな?」

「はい。」

彰人が先そう言った。

「じゃあ、今日は来てくれたお礼に割引しておくね。」

 ドーナツは二人合わせて百円になっていた。

「い、いいんですか?」

僕は吃りながら聞いた。

「いいの、いいの。また来てね。」

そう言っておねいさんは笑顔で手を振ってくれた。

 僕たちはお持ち帰りしたので近くの公園でドーナツを食べた。いつもお母さんが買って来るものの数倍は美味しく感じる。何故なのか。

「やっぱり美味いな。あっ、もうこんな時間か。そろそろ帰るか。」

僕はずっとボーっとしていた。

「お前大丈夫か?帰ろうぜ。」

「おっ、そうだな。帰るか。」


 それから一週間経ってもこの調子だ。あのお姉さんのことが頭いっぱいで困っている。

 そして今日もいつものように公園で遊んでいる。何人かで遊んでいたがみんな塾や水泳があり、また彰人と二人きりになった。

「なんか食いたいな。」

いつものように彰人がそう言った。

「ドーナツ屋行こう。」

僕は即答で言った。

「え?お前はドーナツカッコ悪いとか言ってなかったか?」

「あん時はおかしかったの。いいから行こうぜ。」

「まぁ、いいけど。」

 僕はまたドーナツ屋に行った。あのお姉さんもいる。

「いらっしゃい!また来てくれたのね。ありがとう!」

そう笑顔で言うもんだから胸は高まった。

「俺、今日はこれにしよう。」

彰人は適当にオールドファッションをとった。

 僕はあえてお姉さんを呼んだ。

「今日のオススメはありますか。」

多分顔を真っ赤にしながら言ったと思う。

「うーん、今日はポンデリングがオススメかな。」

お姉さんのオススメ通りポンデリングを取った。

「今日も割引しておくね。」

「あざす。」

彰人は適当に言った。よくこんな可愛子ちゃんの前でいつも通り居られるよな。

 そしてまた、僕たちは公園に行った。

「あのさぁ。」

僕は彰人に聞いてみることにした。

「あの店員さんどう思う。」

「いい人だよな。毎回割引してくれるし。」

「他には?」

「なんだろ。」

こいつはまだガキだったか。

「なんでそんな事聞くんだ?」

「なんとなく。」


 それから僕たちは暇さえあればドーナツ屋に行くようになった。それで確信を得た。僕はあのお姉さんが大好きだ。初めて恋をした。同級生にはしなかったのに何故だろう。あの笑顔を忘れられない。

 ある日、悲劇は起こった。いつものように遊びに行くためにチャリンコを漕いでいた。僕はすぐに気がついた。ドーナツ屋のお姉さんがいる!しかも制服姿でいつもよりさらに可愛く見える。話しかけてみようかな。

 そう思ってると曲がり角から男子高校生が来た。その男子高校生はお姉さんと一緒に歩き出した。そして手を繋いだ。何故だ。もしかして彼氏なのか。そうに決まっている。会話は聞こえないがさっきから楽しそうに話している。

 僕は泣きそうになりながらチャリに乗って家に戻った。遊びたい気分では無くなった。

「あら、帰るの早いね。」

家に帰るとお母さんはそう言ったが無視して部屋に戻った。僕はずっとベットで泣いていた。なんで悲しいんだろうか。あのお姉さんが好きだから?ショックだったから?確かにあんなに可愛い人だったら彼氏ぐらい居るに決まってるよな。

「友哉!ご飯よ。」

夕食の時間になっても僕はベットの中にいた。

「ご飯いらない。」

僕はそう言った。

「具合悪いのかしら。後で薬持ってくから飲みなさいね。」

本当に具合が悪くなりそうだ。病は気からって本当なんだな。

 気がつけば時間は夜の八時だった。お風呂も入ってなければ宿題もやってない。とりあえず宿題やらなきゃ。今日は辞書が必要だから納戸から取りに行こう。

 納戸に入ると昔やっていたゲームやCDが置いてあった。中にはテープレコーダーとカセットテープが置いてあった。お父さんが昔使っていたものだろう。僕は音楽を聞かないからよく分からないけど。

 辞書を探し出せたので部屋に戻ろうとした時あるカセットテープが目についた。そのテープにはドーナツショップと書いてある。試しに聞いてみようかな。

 僕はレコーダーとテープを持ち出して部屋に戻った。使い方はよく分からないので何となくで弄ってみた。

 そしたら曲が流れた。

 何だか切なさを感じる今の気持ちにぴったりだ。

 この恋は呆気なく終わってしまったのか。いや、僕が大人になってももう一度あのお姉さんに会いに行こう。それまではあのドーナツ屋に行かないでおく。でも、最後に手紙くらい渡したいな。

 次の日、彰人とゲームをする約束があったが断り一人でドーナツ屋に行った。

 そしていつも通り選ぶ。お姉さんは今日もいるけど少し忙しそうだ。最後くらい話したかったけど。僕はエンゼルフレンチを載せたトレーをレジに持って行った。

「ありがとうね。今日も来てくれたんだ。お友達は?」

「今日は一人で来たかったんで。」

「大人だね。」

その笑顔が可愛くて余計に心が痛い。僕は紙袋に入ったドーナツを受け取り手紙をレジの近くに置いて行った。何を書いたかは秘密である。僕はそのまま店の外に出た。

 僕は店の外から店内の様子を見た。お姉さんは手紙を読んでいた。そして僕の方に笑顔で手を振ってくれた。ありがとうって言ってた気がした。僕も手を振った。恥ずかしかったのですぐに近くの公園に行った。そして昨日のレコーダーをリュックから取り出した。そしてこの曲を聴く。そして甘いドーナツの味を噛み締めた。

拝読していただき誠にありがとうございました。小学生の頃って恋に落ちやすいですよね笑。

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