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フロスト・サムライ  作者: 柊マキ
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四話

「なんだ、その目は!!」

胸が締め付けられ針山に寝ているのか、全身がちくちくする。母に近づいてきていたスキッ歯兵士だった。


「女のくせに!」

クソみたいな台詞の後母は髪を掴まれ容赦なく切り捨てられた。

母は最後まで俺たちを守ろうとうつ伏せに倒れた。

「あーあ。おめぇが殺しちゃ世話ねぇだろ…。ヤりたかったぁ〜…」

「今日で何人女を捕まえたんだ、もう十分だ」


スキッ歯は母を脚で退かし、豚兵士は死んだ母の身体、服が肌け露わになる太ももを撫で回し人肌の温もりが消える前に股を弄った。兄弟の手を引っ張り胸に刀を突き立てようとしている。

最初は一番泣いていた妹。泣きじゃくりながら俺たちの方へ手を伸ばしていた。

「ちょっと待て!!」

一瞬救いの神が現れたかと思ったが、声の主の豚がこっちに向かってくる。

「おいやめろ!あの母親の娘だ。高く売れるぞ!」

涙で赤く腫れる幼女の首を掴み顔を品定めをするよう物色する。

首を掴まれ足が宙に浮いた妹の顔はさらにますます赤くなる。

「だめだ」

すきっ歯の刀が胸に刺さった。抵抗も出来ず殺された。

「もったいねぇ、まだ女の幸せがなんなのかわからないまま死ぬなんて」

すきっ歯は刀に刺さったままの妹を壁に投げつける。壁に血を塗る妹を一瞬見ただけで本命の母の元へ戻る豚。

「いや、やめ」

「無論こいつもだ」

姉の方なんか見向きもせず刃を突き立てる。

それからは葉っぱから出てくる幼虫を潰す子供のように敵兵は俺の家族を殺して行った。


最後は俺だった。俺のはずだった。俺がずっともがいてた場所、それは母の服の中だった。母は足蹴にされた後、霞む意識の中、俺の存在を最後の力で匿ってくれていたのだ。俺の服をギュッと握りしめ抱き寄せてくれた。豚は母の下半身にか興味がなく、"未来"を隠した血だらけの帯から上は警戒されなかった。しばらくして動かなくなった一家を見渡し、満足げに鬼達は家を後にした。母の服から覗く血の池で溺れる兄弟、姉妹の姿を見た。冷たく重くなった母の腕を掴む。大きかった母の腕を。俺の裾を掴む指を一本一本引き剥がしていき、振り払うように母の最後の愛から逃げる。


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